先日紹介した
「修羅雪姫」の続編、
「修羅雪姫 復活之章」(
小池書院刊)です。

単行本上下巻の全2巻で、実写映画版に出演した二人が帯に登場してますが、原田芳雄さんの方は昨年永眠してしまいました…
もちろんこれも
上村一夫作(絵師)、
小池一夫作(戯作)で、2本目の実写映画化
「修羅雪姫 怨み恋歌」に合わせて1973年末から翌年までの
週刊プレイボーイ(
集英社刊)にて連載した作品。
前作の本編と言うべき復讐譚は版を変えて何度も出版されていましたが、こちらは何と2006年12月に初めて単行本化されるまで幻の作品扱いだったのだから、不幸な扱いです。帯文を読むに、映画に主演した梶芽衣子すらも今作の存在を知らなかったのではないでしょうか。
この同時期に公開された映画版と、漫画版…共に二本目の続編となるこれらの内容は関係ないのですが、どちらも反体制運動に巻き込まれる所が共通点と言えますね。
さて
「修羅雪姫 復活之章」ですが、そこまで単行本にならずにいたのは決して失敗作だからではないと思います。というのもまだまだ
上村一夫&
小池一夫両者の全盛期に描かれた作品であり、物凄く面白いのですから。
どうやら前作のラストで復讐を果たした後に海に身を投げた雪が、ある男に助けられたと同時にいきなり殺し合いの場面に巻き込まれ…そこから1年半後の世界が描かれています。前作と比べて特筆すべきは、
修羅雪姫こと
鹿島雪の人生に、実在の人物を絡めている事!
人殺しである雪が、今回は何と"御茶ノ水女子高"で
『スエーデン式体操』を教える教師となって登場します。それは
井口あぐり(実在する、日本女子体育の母)と出会ったからで、そのためにまた血生臭い修羅の世界で生きる事となるのです。
伊藤野枝や
樋口一葉も登場して雪に命を助けられたりしますが、この二人といえば後の上村一夫作品でも出て来ますね。そう…前者は
「菊坂ホテル」で、後者は
「一葉裏日記」でと、共に後期の重要作品で扱われています。
雪が毛唐の体操であるスエーデン式体操を教えているという事で"立憲玄武党"という国粋主義の団体から責められた時は、いきなり男達の目の前で全裸になり、時に大股開きもするこの体操を実践してみせるほどの熱心さを見せますが、全ては井口あぐりらの恩義に報い意思を継ぐため。
しかし実在の人物である井口あぐりらが、今作で最大の敵である陸軍省の奴らから激しい拷問を受け、犯されたりもしているのですが…さらに歴史と違い殺されちゃってますが、この内容は大丈夫なのでしょうか!?
散々いたぶられた後に、ようやく雪がかけつけ…
『修羅雪姫参上!!』と叫んでの登場シーンから敵達を次々と斬り捨てるのだから、スーパーヒロイン物としての部分が強くなっていますね。
新たに判明する
「修羅雪姫」の続き部分として、幼少時代から雪を鍛えたあの和尚は既に他界しており、荒れるにまかせているお寺も出て来ます。
今回の修羅雪姫は反政府活動に加担するため『てろりすと』として扱われるのですが、考えてみれば元々が大量殺人犯で追われる身…しかし捕まらないのも納得出来るほど、とんでもなく強いだけじゃなく演技・変装の名人で度胸があり、頭が良くて機転が利くのですね。
そんな雪でも大ピンチという場面は出てくるのですが、その危機の脱し方もまた小池一夫的であり、上村一夫絵が随所でそれを盛り上げ…唸ってしまうほど素晴らしい。こんな作品が埋もれていたなんて信じられませんが、とりあえず今は単行本化している事に感謝しましょう。
わが身の数奇を悲しみ 罪業を悔い
せめて世のため人のため いくばくなりと
役にたってから死にたいと願う身に
いかで再び修羅の舞いをまわせるや
- 2012/05/08(火) 23:59:08|
- 劇画
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今夜は
「修羅雪姫」。
小池一夫(雄)原作(戯作)、
上村一夫作画(絵師)の作品であり、数多い名作を残してきた巨匠達二人の経歴の中でも共に代表作として数えられていますね。
週刊プレイボーイ(
集英社刊)にて1972年から翌年まで連載した作品で、こちらの
スタジオシップ(STUDIO SHIP)版だと全3巻。各巻で巻頭にカラー口絵、巻末に予告編が付いています。

実はその前に雑誌サイズ(B5判)のプレイボーイ増刊、
プレイボーイCOMICS版で全2巻というのも出てましたが。


漫画の歴史を遡ってみるに芸術的とか前衛的な物より、結局バトル物こそがスタンダードであり圧倒的に人気を博すもんですよね。
私もガロ系だとか有難がっていても、未だに毎週各漫画雑誌でチェックしているのは格闘技漫画、不良漫画、ヒーロー漫画…つまりは少なくとも『戦い』の要素が色濃い作品ばかりを読み続けていますし。
しかし
上村一夫先生はもちろん芸術家としか言いようのない方であり、戦いより日常を描く方が多い劇画家ですが、そこにエンターテイメントの
小池一夫原作が加わって相乗効果でとてつもない名作に仕上がったのが
「修羅雪姫」。
明治時代の日本を舞台にした時代劇で、主人公は美しい女…
鹿島雪、通称
修羅雪姫。
高い報酬を貰って殺しを請け負い、傘に仕込んだ刀で標的を殺す、といういわば女版
「ゴルゴ13」とも言えるのような殺し屋の話でスタートします。
虎中に入るためわざと囚われの身になってまで目的の人物に近づく辺りもますますゴルゴ的で、小池一夫先生が初期
「ゴルゴ13」で原作に関わっている事を思い出しますね。スタジオシップ版の単行本では、カバーに書いてある作者の代表作としても
「ゴルゴ13」「御用牙」「子連れ狼」となっています。ちなみに、上村一夫先生の方は
「怨獄紅」「乱華抄」「同棲時代」。
すぐに修羅雪姫の目的が分かりますが、これが陰惨な話です。
母親の
鹿島小夜はある事から四人組の悪党に夫と息子の司郎を殺され、自身は二日二晩に渡り三人の男(もう一人は女なので)に犯され続けました。後に一人を殺したものの投獄され、生きて出られぬ無期徒刑となったために残る三人へは復讐を果たせなくなり…
そこで一計を案じました。獄中で看守や坊主など男を誘ってはさかりのついた牝犬のように性交を繰り返して身篭り、産まれた子に怨念を託す事にしたのです。産まれたのは女の子でしたが、それが雪。
小夜はすぐに死にますが、監獄で同囚だった
お寅が雪を引き取り、幼少の頃からある和尚の元で厳しく剣を仕込まれて…成長したのが母の恨みを貫くため、怨敵を捜して彷徨う復讐の修羅雪姫、というわけです。
修羅雪姫の剣は細身のもので、ほとんど逆さ斬りで使います。田舎娘から貴婦人までなりきった演技、変装も名人。絵も上手いし、さらに母やお寅と同囚だった
タジレの菊にスリの技も習い…全ての技術が復讐のために活かされます。
仇と同郷(島根県会見郡古市村)であり日本の乞食組織の元締めである差配の
松右衛門に協力をあおぎ、さらに小説家の
宮原外骨(もちろん宮武外骨がモデル)に修羅雪姫の復讐話を小説にしてもらってまで仇をおびき出して悲願を達成する…勧善懲悪の物語でした。
この長編のテーマは『復讐』であり、最終話でようやく最後の四人目に『因果応報』を味あわせてやるのですが、こいつだけ他の三人と違い既に老いて病床にある上に、あの事をずっと悔いていて今は娘と二人暮らしという状態でした…それでも悲願を果たし、物語は終わります。あのグリム童話
「白雪姫」をもじったタイトルながら、何という内容でしょうか。
ちなみに私が10代の頃ですが、最初に買った
「修羅雪姫」はこちらの全5巻、竹書房の
バンブーコミックス版でした。



他に
秋田漫画文庫版や
角川書店版もありますが、一番最近のは映画版
「修羅雪姫」の影響を受けてクエンティン・タランティーノ監督が作った
「キル・ビル Vol.1」に便乗し、2004年に出た
小池書院版。

表紙も
「キル・ビル」を意識しているこれはいわゆるコンビニコミックで、ペーパーバック形式の物。
1巻を『修羅怨念編』、2巻を『因果応報編』として分厚い全2巻でまとめていますが、これが傑作なのは1巻の終わりを
「外題之九 恐喝源次郎朦朧節」の途中にしている事でしょうか。さしもの修羅雪姫も取り押さえられて裸に剥かれ、恐喝源次郎の巨大マラに迫られ、冷や汗をダラダラたらしている…ちょうどそんな場面で終わるんですよ。これは初めて読む読者にとって、2巻の発売が待ち遠しくてしょうがないでしょう。
だってこいつの怒張(男根ですね)は並外れて大きいために、女陰が裂けて生命を失う事にもなりかねないらしいのです!
ちなみにこの後、やはり強かった修羅雪姫が返り討ちにしてやりますが、根っからの悪人ではなかった恐喝源次郎を哀れんで
『スマタでよければ……』と、巨大マラにまたがって死ぬ前にいかせてあげるのだから、泣ける話です。
作品の主題となった復讐とは直接関係がないこの話も傑作でしたが、他にも殺し屋・修羅雪姫としてのエピソードにも実は傑作が多かった。最強の敵とも言える関東一の大親分・
柴源とその手下達との対決を描く
「外題之十 女意和戸開帳異聞」もそんな一話だし…
「外題之十二 青春白衣涙断譜」なんて看護婦長とレズプレイに高じているうちに刀を仕込んだ傘を白痴の少年に持っていかれちゃう異色作、さらにさらに…いや、というより全話が傑作である
「修羅雪姫」です。
近年になって海外版も多数の国々で上梓されて評判になりました。この面白さは世界共通なのだと、嬉しく思ったものでした。

ちなみに映画
「修羅雪姫」は最初が梶芽衣子主演・藤田敏八監督で1973年に公開されました。原作に忠実にいくつかのエピソードをアレンジしてまとめていて、梶芽衣子の魅力も全開したこちらも大好きです。いや、原作に忠実とはいってもさすがに梶芽衣子を原作の雪のように脱がせるわけにはいかなかったのか、裸になったりはしませんが…あ、子役の雪は全裸になります。
冒頭で
『おまわしだ おまわしだ 女陰様(ほとがみ)さまのお成りぃ!』っというあのシーンがある(観てない方には分からないでしょうが)、これはようやくレンタルビデオで置いてる店を見つけて借りダビングした若き日が思い出されます。当時はカルト映画扱いされていてマニア以外には忘れ去られてました…が、やはりタランティーノのおかげで話題になり、その時に目出度くDVD化もされましたよ。

私が買ったのは1974年の続編
「修羅雪姫 怨み恋歌」と合わせたBOX仕様になっていて、こちらが外箱。


中身と、封入されているカード。


このDVD化で嬉しかったのが、映像特典として何と
『上村一夫原画集』が2本共に収録されていた事!他に小池一夫先生、梶芽衣子さまのインタビューもあるし。
主題歌のレコードも持っています。

さらに映画版は、2001年に突如公開された釈由美子主演版もあり、こちらもやはり上村一夫モノの一環としてDVDを買っていますが…

これは設定変更が著しく、全然別物に仕上がっています。漫画の映画化の際にはよくある話ですが…これなら、
「修羅雪姫」の名前使わないでオリジナル作品にすれば良かったのでは?まぁ復讐モノではありましたし、色々な人がそれぞれの
「修羅雪姫」を作るようになれば面白いですかね。あと、これはアクション監督にドニー・イェンを起用しているという日本映画としての快挙もありました。
他に変わった所では昨年に吉野公佳主演でテレビドラマ化して、それがパチンコ機CR修羅雪姫に使用されています。
さて、今回紹介した単行本で復讐も終わり完結したと思われた
「修羅雪姫」ですが、実は後に続編の
「修羅雪姫 復活之章」というのが描かれ、さらに何と2009年になって
池上遼一先生の画による
「修羅雪姫・外伝」なんてのも存在します。そちらも、次回から紹介する事にしましょう。
私は娑婆にやりのこしてきたことがあるのさ……七度生まれかわっても……
はらさなければならない怨念があるんだよ だけど私は無期徒刑……生きてここからはでられない
だけど生まれてきた子はすぐにここから出ていける
その子に私の怨念をたくし 私も死んで その子の心に乗移る……
それしか方法はないじゃあないかえ
- 2012/05/06(日) 23:28:18|
- 劇画
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