大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(27) 「モジャ公」

今夜は藤子不二雄先生の「モジャ公」(虫プロ商事刊)です。こちらは虫コミックス版で、
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こちらは朝日ソノラマ刊のサンコミックス版、共に全2巻です。
FUZIKO-mojakoh-sun-comics.jpg
連載は1969年の週刊ぼくらマガジン(講談社刊)創刊号から1年半ほどで、他に1970年の1年間たのしい幼稚園に掲載された幼児用のバージョンがあるし、ぐっと近年になって1995年から藤子・F・不二雄原作、MASAHITO作という名義の「宇宙フレンド モジャ公」なる作品も描かれました。

TVアニメ化もされた作品で、1995年に開始されて翌年の藤子・F・不二雄先生逝去をはさみ、1997年まで続きました。
藤子F先生存命中の最後の新作アニメとなったこの「モジャ公」、私は放映時には既に大人になっていたため子供の頃に観ていた他の藤子アニメのようには思い入れがない…というより、観てません。
しかし漫画の方は、まぎれもない名作!これは声を大にして言う事ができます。


ある日の地球で…天野空夫という頭も身体能力も良くない少年が、かあさんに0点のテスト用紙を見つかってガミガミと叱られて『いやになっちゃうな きえちまいたいな』などと思っていると、突然タイムロックがかかって、現れたのはモジャラン星系第二惑星からやってきたモジャラドンモという宇宙人。

モジャラは通称が作品タイトルと同じくモジャ公で、毛玉に手足が生えたような可愛い奴。時々働く予知能力と、口の中に何でもしまえるのが特技でしょうか。
ドンモ はロボットです。こいつも役立たずなのですが、頭をぶつけると電子頭脳が具合良く働いて頭脳明晰になる事があります。

ここで揃った空夫、モジャ公、ドンモの3人の共通点は
『なにをやってもしかられてばかり 世の中がいやになっちゃって……』
と感じている事で、一緒にモジャ公らのロケットで『宇宙へ家出』するのです。
そして地球の常識と違う様々な星を冒険し、そこの星人と出会っていくストーリー。これが面白くないわけありません!!
以降、作品の舞台はずっと宇宙のどこかになるので、プロローグとなる地球が舞台の1話目に出た「ドラえもん」のしずちゃん(源静香)にそっくりなみきちゃんもほとんど出てこないのが勿体無いですが。

パンチカードで出てきた星に行く、出たとこまかせの家出宇宙旅行は…まず到着したメルル星で、地球よりはるかに進化した科学技術力にカルチャーショックを受ける空夫。
ただここでは何でも機械がやってくれるので考える力を失くしていて、一桁の足し算を暗算で出来る空夫が天才少年扱いされてモジャ公達も見直す、という楽しい話でした。

しかし!次のカミカミ星では月が出ると狼になるカミカミ星人達に喰われそうになり、詐欺師ばかりの人工星・コスカラ星でだまされ、恐竜の星では空夫もモジャ公も血しぶきを上げながらバリバリと喰われる!
…とまぁ、自由を謳歌するどころか命がけでハードな旅になるのです。

その恐竜の星では、まずドンモが食べられるのですが、その時の空夫とモジャ公のセリフ。
『ざんこく……』
『これはギャグまんがじゃなかったか?』
『藤子不二雄はくるってる!』
『すこしでも人気をとろうとおもって』
というやり取りがあります。
この時期の漫画シーンは、大人向けの傑作が次々と生まれて殺伐とした劇画が流行していましたので…藤子F先生も編集者からそのような要望を受けて過激な内容で描き、自分のさわやかな子供向け漫画を描きたい気持ちとの葛藤ゆえにこの部分を入れたのだと思われます。

藤子F先生自身が面白がって描いた「21エモン」が人気を博す事なく終了してしまったので、その二番煎じとして描いた力作「モジャ公」ですので、人気を得るため時代に合わせた内容にして今度こそ勝負、という気持ちもあったでしょうに、それでも
『今度も面白がったのは作者だけということに……』(藤子・F・不二雄談)
という結果に終わってしまいましたが。
それから約25年後、ついに「モジャ公」がアニメ化されたのが藤子F先生の存命中に間に合った事だけはファンとして嬉しく思います。
あと「モジャ公」連載開始直後の1969年には、ついに時代の動きに合わせる必要も無い金字塔にしてライフワークとなる「ドラえもん」が連載開始された事も!

ちなみに上記の『藤子不二雄はくるってる!』のセリフは、現行の単行本では『作者は頭がおかしいんだ!』に変更されていました。
コンビ解消して作者名が変わっているのだから、それは仕方ないでしょうね。

続いてまだまだ、空夫とモジャ公とドンモのトリオは様々な冒険を重ねます。
ある星では金のために命がけのロケットレース(アステロイド・ラリー)に参加し、空夫の命を狙うクエ星人のムエに宇宙の果てまでも追われて伝染病が蔓延するナイナイ星での決闘、詐欺師オットーにはめられてジュゲム三番星フェニックスで自殺フェスティバルに出演させられるはめにもなり、これは怖いぞ死人の星・シャングリラでは…
と、どこに行っても命がけの冒険になってしまいます!

また空夫達のトリオ以外にも登場キャラがいちいち良くて、地球人以外では今作のヒロインでしょうか…モナ・モナシスは宇宙で一、二と言われる大富豪の娘で、重要な役割もあります。
「アステロイド・ラリー」編にて頼んだ料理は
『アルゴル産のワインに カノープス龍のスープ デネプ白鳥のむしやき 火星のこけをつけて』
でした。

そして世界的記録映像作家のタコペッティ
「宇宙残酷物語」とか「宇宙の皮をはぐ」等の作者という事ですが、すると当然モデルはグァルティエロ・ヤコペッティですよね。
私は彼の作品が大好きで、ビデオで持っているのにDVD化された時は全て買い直したりしたものですが、「世界残酷物語」「世界女族物語」「さらばアフリカ」等の代表作を持つヤコペッティ監督って…あれ、藤子F先生の作品にモデルとして使われるような有名人でしたっけ!?
モンド映画というジャンルを築いた偉大な監督だという認識はありますが、あくまでシネフィルの中でだけ有名な人だと思っていたので、このキャラには驚きます。
また彼が危険が迫ると口がとがる、いいキャラなんですよ…

そんなこんなで迎える最終エピソード。
あの悪役・オットーが地球全体をスケールのでかい大ペテンにかけて金儲けを企み、空夫達は大いに翻弄された上に地球にいられなくなって、また宇宙へ家出する話で作品は終わります。
この「地球最後の日」が最終話ならそれは良かったのですが…実は雑誌掲載時にはその後掲載された「不死身のダンボコ」というエピソードがあり、この話が最後になるのに最終回としての要素は無いのが混乱を読む所。
ここで写真を載せた虫コミ版、サンコミ版では共に「地球最後の日」で終わっていて、後に出た全3巻の藤子不二雄ランド(中央公論社刊)版でようやく収録されていますが、掲載順が違う。
そこで1989年出た全1巻の愛蔵版…ここで藤子F先生の手によって改めて「地球最後の日」を最終話と位置付けた加筆が施されて、正式に完結した。そんな逸話があります。

「モジャ公」は藤子F先生の得意とする生活SFギャグ作品でありながら、かなりシュールでブラックユーモアやグロ描写すらも効いていて、毎号読み切りではなく連続したストーリーで掲載したために他の作品より描き込めた部分もあります。
いつもの破天荒なアイディアに加えて絶対的なピンチに生まれる泣きの要素、加えて時代の流れにより作者が望まずとも描かれた箇所も含め、だからこそ生まれた貴重な、そして面白すぎる傑作であると愛してやみません。


きみたちが死ねば心もなくなる!すべては無だ
ところがシャングリラ人はちがう!
心とはなにか もともと脳細胞をかけめぐる電流のはたらきにすぎない
脳が死ねばどうなる? 心もきえる
そんなあぶなっかしい からだなどにたよっていては あんしんして生きられますか
そこでわれわれは 心とからだのきりはなしを こころみせいこうした
ドンヒル神像はコントロール=タワーなのです
たえず国民の心をさぐり……のぞむままの世界をかんじさせてくれるのです
これこそ ほんとうの天国だとおもいませんか



  1. 2009/11/21(土) 23:59:14|
  2. 藤子不二雄
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梶原一騎(49) 石井いさみ 4 「野獣の弟」

今夜は梶原一騎原作、石井いさみ絵による「野獣の弟」(立風書房刊)です。
KAJIWARA-ISHII-yaju-no-otouto.jpg
1970年にスタートして中一コース中ニコースにて掲載された作品で単行本は全2巻、『青春編』『怒涛編』と別れた野球漫画です。

日本の漫画史にあまりにも多大な影響を残した偉大なる梶原一騎先生ですが、長らく絶版のまま復刻されていない作品はいくつもあります
しかも誰からも復刻を望む声は上がらず、完全に忘れ去られている作品も…
今回の「野獣の弟」も、そんな一つと言えるでしょう。
確かに傑作とは呼べない内容ですが、梶原一騎作品だと愛情数十%アップして読んでしまう私にとっては大事な作品なのですが。

まず絵の担当が梶原一騎先生と交流が深かった、そして自身も後に売れっ子漫画家になる石井いさみ先生ですが、この時はまだまだ下手くそであり、構成力が弱くて出てきたキャラも生かしきれずにすぐ消えるし、そもそも主人公の性格すらイマイチつかめないし絵柄がころころ変わる始末ですよ。
それでも男気や根性の尊さを学べるし、トンデモ漫画としても突っ込み所満載なので、そこらへんを楽しんでもらいたい。


昭和四十五年のある日…巨人軍の長島茂雄が多摩川グラウンドでトレーニングしていると、ありあえない事に赤ちゃんが一人でハイハイして『ながちまあ〜』などと、ばぶばぶ言いながらグラウンドに入ってきて、長島の打球が直撃しそうになったその時!
続けて突如現れた少年が素手で球を捕球して赤ちゃんを助けるのです。この男こそが本作の主人公・海童猛巳

海童はお礼ならプロのピッチャーのタマをじかに打席に立って対面してみたいと、勝負を申し込むのですが、期待させといてその勝負の結果は手も足も出ない無様な三振。
赤ハジさらして逃げていった海童ですが、ただ一人…長島茂雄は彼のメチャクチャなフォームの中から恐るべき野獣の臭い、限りなき可能性を嗅いだと、自宅にまで連れ帰って秘密計画を打ち明けるのです。
曰く海童猛巳は長島と同類の野獣…つまり野獣の弟であるというわけで、巨人軍が今後も勝ち続けていくために必要になる長島の後継者に仕立て上げる、そんなストーリー。

早速長島家の地下室で始まる特訓ですが、心眼を開くために壁の八ヶ所からランダムに出てくるボールを素手で取る事から始まります。
後ろから来るボールも心眼で捕るべく、連日血まみれになりながらや続けた特訓がついに実を結ぶと…次は本場の野球を経験すべくアメリカへ飛びます。
そこでもまたヘンテコな特訓や厳しい生存競争に身を晒されながら、海童は
『日本男児が毛唐やニグロなんぞにへいこらできるかよ!!』
と根性と才能で乗り切り、長島と文通しながら、ついには大リーグのサンフランシスコ・ジャイアンツの一員としてメジャー・デビューしました!

そして野獣の才能を開花させます。
海童が出塁すると本作のヒロイン的な(アメリカ編しか出ませんが)、アメリカ版ウルトラかわい子ちゃん・ドリス曰く、
『さあダイヤモンドがジャングルと化すのね 野獣がとびかかり かみまくるジャングルに!!』
というわけで、実は頭脳プレイも得意な事を見せて大活躍。

そしていよいよ長島から帰国指令が下り、共に伊豆の山ごもりで
『野獣のおきては…かみさくか かみさかれるか ふたつにひとつ
オ オレはかむ…息をしているかぎり かみさくがわにまわってやる』

と、ど根性を見せて最終テストにも合格。
長島茂雄が個人費用で後継者の育成をしていた段階が終わり、ついに川上監督に引き合わされるのです。
さらに海童は巨人の2軍相手のテスト試合で監督のド肝を抜くと、何と実績も無い無名の選手ながら(元大リーガーのはずですが…)2軍を飛び越え1軍の巨人軍選手として出場!
その背番号は4。4は死に通じると誰もが嫌う番号を平然としょいこんだケンカ野球男の誕生です。

見事に長島の期待に答えた野獣の弟・海童猛巳でしたが、中日から大利根豪なる…二軍戦で審判をKOして相手チームの選手十数人と一人で大乱闘を演じた末にその半数を病院送りしたというケンカ狂の投手が海童潰しのために登場し、一度は惨敗を喫します。
しかし野獣はキバのあるかぎり、とどめをささぬかぎりうかつに手を出すと跳ね起きてかみつく!雪辱を果たして、ペナントレースの結果は巨人軍の優勝(この時代はこれで7連覇ですよ!)。
実はこれらの勝負にも、プロ選手が欲を出すとどうなるか、その人間の精神性を描いた部分があって面白いです。

さて実際に作品タイトルの通り野獣の弟に成長した海童猛巳。
これで今作も終了する所ですが…最後にオフシーズンに行われる、対大リーグのオリオールズとの日米親善試合が描かれます。
そこでは日本人がヤンキーとの体力差、パワーの差を見せ付けられる展開になってしまうのですが、野獣のアニキ…長島だけはキバでものを言って実際に打ちます。
とはいえ、この「野獣の弟」連載時は既に34、5歳で体力の衰えが現れてきている時代であり、だからこそ『野獣の後継者』問題に目を付けた作品「野獣の弟」が生まれたわけです。
で、注目の主人公・海童猛巳のオリオールズ相手になる打席、それは作品の最終ページを飾る事にもなるのですが、ここでこそ梶原一騎先生の思想を見せた単なる凡退。

この試合では負けて終わる結果となりましたが、他の梶原で多くみられるような絶望的な敗戦ではなく、今日は負けても次の勝利に続けるべく終わりです。
作中観客のヤジの中にあったように、同原作者の代表作「巨人の星」じゃなくて紳士ジャイアンツらしくもなくガラが悪いから巨人の黒星…そんな海童猛巳の物語でした。


てやんでえ!!
オレの母国の日本は読んで字のごとく日の本 日いずる国だぞっ
先祖代々太陽は神サマなんでえ!!

日本じゃイワシの頭も信心からといってよ 信ずりゃなんでも神サマなんだっ
オレはガキのころから太陽の無限のエネルギーにほれた
だから神にした どこがわるい!!



  1. 2009/11/18(水) 23:48:53|
  2. 梶原一騎
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梶原一騎(48) 上村一夫 17 「昭和一代女」

今夜は梶原一騎原作、上村一夫絵による「昭和一代女」(講談社刊)です。
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1977年に創刊されたアパッチという雑誌で、創刊号から翌年まで連載された作品で、単行本は全1巻。

私にとっては一番好きな原作者・梶原一騎先生と一番好きな劇画家・上村一夫先生という組み合わせなので超重要作品扱い、単行本も激レアで…そして面白いです。

何しろ"昭和の絵師"が作画を担当してますので、梶原一騎原作にしては男臭さや根性の要素は抑えて、梶原作品でもう一つの重要な要素である文学性を前面に出しています。
戦中→戦後が舞台になっている事もあり、ちょうど名作「おとこ道」に近い感じでしょうか。実際に共通する部分が多々あります。
上村一夫先生の仕事としても違和感は無く、前回紹介した「マリア」と同じく1人の女の人生を追っています。


あの大東亜戦争の最中で反国家的な言辞のため特高警察に睨まれた評論家の鷹野壮介
彼が特高から隠れて潜伏していた留守中に妻の香子が連れて行かれ、素っ裸にされたうえ激しい拷問を受けて病に倒れ、東京中をB29が爆弾を一般市民の頭上に落としまくっている中…ついに力尽きて死んでしまいました。
その二人の落とし種である一人娘こそが「昭和一代女」の主人公、鷹野翔子です。

すぐに終戦を迎え、それまで良家に生まれ育った幼い翔子も母は死に父は行方不明で、戦災孤児として盗みを働きながら生き延びていました。
そしてアメ公相手のパンパンの所で居候してトラブルに巻き込まれたりしながらも、さらにたくましく生き続けます。

次に登場する時はナイフ使いの名人・山猫ショーコとしてズベ公どもを率いて上野で縄張りを持っています。
そして占領軍の黒人兵士ともめた時、現在は国鉱会なる暴力団まがいの小右翼団体を率いている父・壮介と偶然にも再会するのです。
しかし父は、かつて母が拷問を受けていた時に隠れていて助けなかった事を知り、戦中に母を連れ去って拷問した特高の男に復讐を果たすと父の元から去り、再び孤児生活に戻ってケンカに明け暮れ…ついには女子教護院・愛聖女子学園へ送致されます。

おっ、梶原一騎作品で教護院といえば…そう!ここでも出ました!!
個室の先輩達による『ネジリン棒』『パラシュート部隊』等の拷問です。女子が主人公のお話でも、やはりこれは出ます。
「あしたのジョー」と同じように、豚の大暴走もあります。

ただし翔子は徹底的に抵抗し、その腕と頭脳から部屋ボス連合を全員やり込めて教護院のボスにまでなりました。
またここでの重要な出会いは、ミスター・ナメクジなどと呼ばれているインテリ教官・矢崎慎之介
彼は他のいやらしい教官達、また見てきた大人達とは違うと感じました。
『なんだか自分でもよくわからないけど…よくわからないって悪い気分じゃない
よくわかって見えすいた人間ばかりだもの』

というわけで、肉体的には自分よりずっと弱い彼に対して、憧れの気持ちを持ちます。
実は知的な父への本能的な憧れの代用といった隠れた部分もあるのですが、とにかくこれから大人になっていく翔子の心理描写が上手いですよ。

もはや教護院で圧倒的な力を持つボスになった翔子でしたが、憎いはずの父が狙撃されて重態だと知ると脱走して仇を討ちにいくのです。
仇であるカミカゼ敬は気が狂い、危ない所を自分の体と引き換えに救ってくれた義理の母・藤江が女将を務める赤坂の料亭"万竜"で働くようになりました。
元々お人形さんのような顔をしていた翔子ですが、大人になって美しさに磨きがかかった六年後の晩秋、今や文学賞受賞の新進作家となった矢崎と再会し、ついに処女を捧げるのです。

『法悦境・・・・法悦境だ!』とその美しい体を味わう、羨ましすぎる矢崎。
事が終わってベッドに仰向けで横たわる二人ですが、翔子は無表情のまま矢崎のある部分を握ってます。エロいです。
この時は大人の女になっていても、まだ未成年ではある翔子。もっと前の幼女時代にもヌードになったり他のヤバイ性描写もありますから、それもこの作品が復刻されない理由の一つなのでしょうか。

作品はもうクライマックス。その後の翔子は清駒の名で芸者として披露目をし、政治家や政界名門の男達と次々浮き名を流して昭和一代女、どこまで行くのか…といった所で終わり。
その影に矢崎の謎の自殺、他にも様々な悲劇があるのですが、矢崎が回想したスタンダールだったかリラダンかの言葉で、『真に魅力的な女は男を破滅させずにはおかぬ』というのがあるそうです。

そんな所も上村一夫先生が描く主人公っぽいし、もちろん絵は文句無しに良い。
文芸色を強く出した梶原一騎原作も良くて、らしいセリフがいくつも出てきて嬉しく思います。
今ではあまり想像出来ないこの超個性二人の組み合わせですが、相性はいいんですよ。
物語としてもまだ翔子が活躍していく途中で、これから何をやるのか見たいのに…単行本で全一巻、『朱の章』のみで終了した理由は、掲載誌であるアパッチの廃刊でした。
作者の巨星二人ともが今や墓の中。失われた鷹野翔子の物語、続きはあの世に持ち越しです。


女に白状させる極意は まずその気どり 虚飾から引き剥ぐこと
すなわち素っ裸に剥きあげることよ!
柳橋一とウグイス啼かせた玉の肌を
隅の隅まで晒す覚悟あってのことかな?
フッフッフッ
脱げい!! 丸裸を晒すんじゃ!!




  1. 2009/11/15(日) 23:11:35|
  2. 梶原一騎
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劇画(102) 上村一夫 16 「マリア」

今夜は上村一夫先生の「マリア」(ワイズ出版刊)です。
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1971年から翌年まで漫画アクション(双葉社刊)にて連載されたファンには有名な作品ですが、かつてアクションコミックスのB5判サイズで一度まとめられた事があるものの長らく単行本にはなっておらず、またそのアクションコミックス版は全20話のうち13話までしか収録されていなかった…
それが2003年についに上・下巻の全2巻で単行本化され、それも全話無修正収録した完全版という事で、この時に私が飛びついたのは言うまでもありません。


都下私立愛蘭女子学園…その授業中に起きた突然の雷雨の中、校庭に乱暴な運転で入ってきたロールスロイス。
そこから降りてきたのは美少女は転校生のマリアこと三条麻里亜で、車も運転手からハンドルを奪って初めて自分で運転してみたようです。

転校初日から番長と闘い、マリアに惚れた二つのスプーンのマークを制服に縫い付けてるクラスメイトの前で全裸になってレズ行為、それも青姦を行う…というのが第1話目。
あ、スプーンってレズビアンのシンボルらしいです。

2話目でマリアの家族が紹介されますが、三条家の実権を握る独裁者の祖父と美しい母がいて、自殺した父の後に婿入りした養父(妖父)はホモ!
次に出会うのは辺り一帯の高校の大番長である桐人(きりひと)。日本の漫画では良くキリスト的な奴を『きりひと』という名で登場させますが、本作の主人公であるマリアはキリスト教の聖母と同じ名前。
やはり桐人はマリアの相手役で、彼の家庭もまた酷い畸形家族。二百年続いた華道の蒼星流という家柄なのですが、それを仕切る母は息子である桐人と肉体関係を持ち続ける盲目の女。父は病の床にある…と。
それから殺し殺されのいろんな破滅を迎える。

ホモやレズは当たり前、近親相姦に自殺に殺人…もうタブーの大安売りといった状態ですが、その中で芸術的な描写と凄い画力、言葉でも文学的な表現がふんだんにあり、まぁとにかくいい時代の上村一夫作品らしいセンスが満載の傑作、というわけですね。

前半だけでお腹一杯になりそうですが、
『わたしはお母さまのように 耐えることに快感を覚える女にはなりたくない
今日かぎり学校を止めます
ええ教科書には わたしの知りたいことは 何も書かれていないし………
風に吹かれてさまよいながらでも自分なりに生きてみたい』

というわけでマリアは大金持ちの家から出て、バッグ一つ持って1人で生きていく事になります。
そして後半に当たる下巻部分では、流れるままに棲みついた田舎の農村でのマリアの生き様が描かれるのです。

死んだ桐人の子を妊娠している事が発覚しますが、里に似合わぬ美人のマリアは田舎者特有の差別を受け、またさらなる弱者やヤバイ殺人も描かれますが、話の進行するペースがゆっくりになっていて悲しい話や人間の醜さは際立って刺さる。
そして次の漁村で出会った屈強な海の男とは、生まれた桐人の子と共に幸せな家庭を築く事を暗示して作品も終わる…つまり、今までマリアと関わった多くの者は不幸な結末を迎えてきましたが、マリア自身はハッピーエンド!

とはいえ作品で描かれたマリアの波瀾万丈な半生は、まだ成人もしていない時代だけなわけで、今後も気になります。
ただこの周りの人間を惹きつけたり不幸にしたりする力…ある種のカリスマみたいな物が描かれていて、もちろん読者にも伝わってきますし、田舎の漁村の主婦では終わるわけがないのかもしれません。

他にも文章で書いていてはキリがないほど、魅力的な上村一夫先生の表現力や名シーンには痺れます。
現在の漫画界にはないこんな作品を読むにつけ、古本を漁っていると起こる出会いに感謝し、1970年代初頭の作品が好きで良かった、とか思うのです。


桐人 お別れに来たわ
あなたが自分自身のために死を選んだように
わたしは自分自身のために生きようと思う
いつかはどんな形であれ あたしだって死んでしまう
だから生きたいの

あなたもあたしも同じ奇形家族の中ではぐくまれた
あなたは華道の名家の長男 あたしは戦後成金の長女………
それだけのほんの少しの違いだけで あなたは死に急ぎ あたしは生きのびた
因果と言ってしまえばそれまでだけど
因果の語意は学校では教えてくれない

だから……教えてくれないことを知るために あたしは生きたい
でもいつかは あなたのそばに行く……



  1. 2009/11/12(木) 23:10:22|
  2. 劇画
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メタルK「危険な遊戯の巻」について

今夜は"ウェンディーズ"から…こんばんは、BRUCEです。
shinjuku-wendies1.jpg

私は以前…もう4年近く前ですか、某社に頼まれて書き始めたのがこの漫画紹介ブログをやっているきっかけとなったのですが、ブログ名も名作漫画ブルースだったその時代のある日、巻来功士先生の大好きな作「メタルK」について書いたのです。

そしたら…いや、とにかく「ココ」ですので見てください。
何度か名前を変えながら斑猫女史とこの猟師の爺さんという人が何度も書き込みをくれてまして、何度かペンネームを変えながら恐らくは全て1人で、それも第2話目にあたる「危険な遊戯の巻」だけについてここまで熱く長く、長期に渡って書いているのです。
これは下手にレスしないで見守ろうと、忘れた頃にやってくる書き込みが来ると即座に『承認』するだけでクスクス笑っていました。
「危険な遊戯の巻」については、日本一熱いページになったのではないでしょうか。

そしてどうやらkacchandoと名乗っていますが、こんな事書くのは斑猫女史とこの猟師の爺さん様でしょう…
K's room
というブログを始動させているようです!!
写真も使って、「危険な遊戯の巻」のヤバさについて一目瞭然で分かるようにしています。
斑猫女史とこの猟師の爺さん様、面白すぎますね。

大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)ではゲストライターも増やしていこうかと考えてますので、何か書いてくれませんかね〜。
また、K's roomの更新も楽しみにしています!
  1. 2009/11/09(月) 23:43:59|
  2. 古本 番外編
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プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
二代目BRUCE LEE、あだ名は大悟です。


詳しくはこのURLをごらんください。↓
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名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っているブログです。

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