大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(71) 中野善雄 3 「人間兇器」 3

梶原一騎原作、中野善雄劇画による「人間兇器」(日本文芸社刊)の紹介は、今夜で最後。
KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki13-14.jpg

この13巻からだと、主人公・美影義人の鬼畜ぶりがよく分かる所からですが…スター歌手のブルボン・バルチモアがハワイの無人島で作り上げた城を奪い取り、裸にした若くて美しい女優や歌手の卵らをはべらかしてハレムの王様になって好きなだけヤリまくりご馳走食いまくりで快楽に溺れている所。
このクズ、許せん!そう思うと同時にこれは男性なら誰もが妄想した生活、桃源郷か。
しかし島に一緒に来たスーザンとブルボンが美影の魔の手からの脱出に成功したため、島には警察が大挙して空と海からやってきて囲まれるハメになりました。

悪あがきする美影の前に現れたのは、またも朝日奈薫子。もちろん美影を救うためですが、旭掌拳の達人である彼女の回し蹴りで彼を失神させて逮捕させ、法の手に委ねるのでした。
それから裁判でネバダ州立・重罪犯刑務所での懲役20年を喰らって、しかもブルボン及びその妻(大財閥令嬢)の巨大な権力による秘密指令で囚人の中の殺しのエキスパート達が美影を消しに走る!
最強の実戦カラテ"日本空手道 空心会"で神の手(ゴッドハンド)・大元烈山に指導され、ニューヨーク支部でインストラクターを務めた美影の腕も、物の役に立たない。様々な手口で殺されかけるものだからビビッてしまい、美影が入った雑居房のボスにケツ穴のバージンを差し出してまで助けてもらおうとしますが、それでもストップはかからず。

四六時中凄腕の殺し屋達に狙われ、看守までグルなものだから常にビビッて頬もこけたやつれ顔になった美影ですが、投げ殺しガレンコの攻撃を利用して運よく脱獄に成功!
シャバに出るなりトラックを襲い、次いで刑務所長の家をターゲットに定めると夜を待って侵入!所長の女房と『張ち切れそうなケツした可愛い娘』の親子ドンブリを楽しむべく、いつも通り脱がせると...おお、女の躰が欲しいのならと娘を守るために脱いだ所長の女房の方も良い。本作を初めて読んだ20年くらい前にはおばちゃんの裸は勘弁して~と思った私も、今は熟女の良さにも目覚めているので...良い!
これらを楽しもうという所で所長から帰る連絡が入り、美影は女房と娘をベッドに縛っておくのですが、大股開かせて、まんぐり返しってやつですか、あの姿に縛っているのだから芸が細かい。

警官隊に包囲されても、一家の3人を縛って人質にしているので意外と落ち着いていて、まんぐり返し状態の女房と娘のパンツを剥ぎ取ると『絶景かな 絶景かな 親子ドンブリのケツ較べ!』なんて楽しんでますが、逃走の道具にするためあられもない姿の恥ずかしい写真を撮りまくり。このヌード写真を使った脅しも本作で度々使われていますが、しかし大元烈山の顔がちらついてにわかインポになり、股座の凶器は発動しなかたのが珍しいパターンか。
持ち前のIQと人質を使って狡猾な手段で包囲網を突破した美影ですが、ロッキー山脈で罠にはまってピンチ。何とグリズリーに襲われて死の恐怖におびえるのですが、この人食い熊の片目を潰して抵抗するあたりは仮にもカラテの達人の面目を保ちました。その後、逃げ込んだ小屋ごと谷底に落とされますけどね。

一方で空心会も凶悪な犯罪者を弟子に持った責任を問われ、大元烈山は命がけで広げ守ってきた全米の支部を全て閉鎖する事を宣言。
そしてアメリカに残るただ1人の弟子となった美影を待つ大元は、
『あれは死にません 死ねません 因果なことに……
 そのぶざまなまでの生命欲こそ 彼の唯一の強さであり
 またカラテ道の奥儀にも近いのです』

と予言。同時に凶悪事件を起こす美影をこそ忠実な愛弟子たちより評価しているふしを見せるのです。

で、美影はロッキー山脈でグリズリーに小屋ごと谷底に落とされた後、これがまたとんでもない悪運の持ち主なのでキャンプしているガール・スカウトの集団に遭遇します。この女子たちが脱獄犯のニュースを聞いて最初は『脱獄犯を我々の手で捕まえてやりたい』とか威勢良い事を言ってて、実際に気を失っている美影に遭遇して縛っていましたが、カラテ家は関節を常人とケタ違いにやわらかくしているのであっさり抜け出され、バスジャックされて自分達が人質になるリアリズム。本作で美影は一貫して自分より弱い者に対しては強さを発揮、特に女性に対してはサディズムを見せる事を繰り返しています。
で、バス内で『パイパイもケツも色気たっぷりなムチムチのガキども』ことガール・スカウト隊員全員が裸にされて酒池肉林。そのピチピチな肉林を窓際に並べてバリケードにするわレズビアン・ショーを命じるわでね、

うら若き乙女たちに何たる非道!こいつ、許せん!(タテマエ)
おお!男の願望を叶えた勇者よ!(ホンネ)

といった所ですが、妻子のヌード写真をという弱みを握られている刑務所長に雇われたギャングの手で人質もろともバスが爆破される…その時、大元烈山が現れて阻止!しかし美影が要求した人質パイロットとして乗り込んで彼を制圧するのでした。前回も書いたとおり、犯罪を犯して捕まり、でも許してもらうと、また犯罪に走りって捕まってを繰り返すのが本作ですからね。
ガール・スカウト隊員たちは全員が糞尿まみれの上、美影によって人格が破壊され錯乱して色情狂になっている情況ですが、それは物語上はどうでもよくて。
で、美影は古巣のネバダ砂漠の刑務所に戻されると、当然復讐に狂った刑務所長による拷問を受けますが、しかし
『ひとたび師弟の契りを結んだ以上 たとえ弟子が地獄に堕ちようとも どこまでも抱いてゆくのが師!』
というやつです。
大元の温情で美影を救うと、例のネガを手に入れた事による脅しでこの師弟がネバダ州立重罪犯刑務所のカラテ師範になりました。大元も綺麗事で動く人間ではないのですが、ここまで常識外れてワルで邪拳にを使う美影こそ世界数百万の弟子の誰よりも素質があり空心会の後継者だと見ていると。
あと全米の支部を全て失った空心会ですが、今度はこれをきっかけに全米の刑務所を押さえれば、政府と役所絡みなので巻き返しが可能だとの野望も持っています。
反省などしない美影は、ならばと早速大元の七光りを使って刑務所内で威張り散らして他の衆人に猥談させたり、それで火照ったムスコを可愛い囚人に慰めさせたりしているのだから、相変わらずひどすぎる主人公。

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki15-16.jpg

かように、もはや殺されるか終身刑しかない身だった所を救われて刑務所内での地位も高くなり、自分勝手に非道を積み重ねてきただけなのに世界的大組織である空心会の後継者と考えている事まで言われたら、今度こそさすがの美影も素直に大元について行くと思いますよね。
しかし普通じゃないのが本作の主人公、美影義人。パンクというか反骨精神もカッコいい場合はあれども、彼の場合はIQ高いとはいえバカなんでしょうか…そうすると、このような者に過度な期待をかける大元も実はバカなのかもしれませんが、そうです、またも裏切ります。
『つながれた安全よりも 自由な破滅を!』
と、ここは強固な意志を持っているんですよね。

何度も書くようにその繰り返し劇画だから当然そうなるのですが、ちゃんと飽きさせない力はあります。このアメリカ刑務所編は面白く、カラテ指導で全米の刑務所を回るうちについにきた、女子刑務所。テネシー州のここで、凄い美人の鉄火娘が、これまた凄い美女でサディストな女医に浣腸拷問されるシーンに出くわします。
そこで完全に火がついたか股座の凶器の出番です!しかもサド具合でも上手な美影は上手く女医を抑えて浣腸返し。ええ…本作で浣腸が登場するのが何度目か、もうバカらしくて数えてません。急ぎながらもじっくりというか、ネチネチと拷問、
『サドがサドを責めいたぶる……これぞサディスト最上の法悦境なり……クククッ!』
というわけで楽しむのですが、そのワルさを大元に見つかり、自分より弱い相手とは違って『ヒーッ』とか『お許しい~~ッ!!』とか言って情けなく慈悲を請いますが、許されるわけもなく、手向かいしてもかなう相手でもなく。

『美影 おまえがサカリのついたブタのように罪を犯す根源は その股ぐらにあるッ』
というわけで大元の秘儀で美影の睾丸は下腹に食い込ませ、玉袋は空っぽの皺袋にされてしまいました。その間睾丸は精液の生産も止めるそうで、淫ら心を催さぬのだと。これで美影もタマなしとなり、脳より実質的に身体を支配していたとも言える暴れん棒な股座の凶器に悩まされず大人しくなるのか?
まぁそんなわけはなくて今度は二人が乗る車での移動中、美影が運転する時に民間人の住宅に突っ込んで、あえて巻き添えのケガ人を出して逃げるという策。大元がケガ人を放置して追ってくれば共犯にされかねないし人道上からも許されないと計算してのこの作戦は成功。トラック運ちゃんをぶっ倒して病院に運ばせると、直腸わきに没入した睾丸をようやく下ろせて股座の凶器も復活。
治してくれた医師を気絶させると、看護婦詰所に乗り込んでその凶器をすぐさま使用!黒人白人入り乱れた看護婦達を全員を犯しまくるのです。

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki17-18.jpg

それから医師に化けて救急車を使って逃走、続いて資金調達のため銀行強盗!
これにあっさり成功したというのに、町の権力者の奥さんだという生意気な女が銀行へ入ってきたから事態は変わり…
『おれにゃ奇妙なクセがあってな おまえさんのように気どってお高く止まった女を見ると そのケツの穴を見たくなるんだ!』
というわけで丸裸に剥いて遊んでいたせいで警察に通報されて銀行内に篭城するはめになりました。
行員と客の若い女達を全て全裸にして狙撃手からのバリケードにする。前述のガール・スカウト隊員時と同じ手口であり、本作の連載開始年に起きた梅川昭美の三菱銀行人質事件が元ネタではありましょう。
裸でバリケードにされている美人秘書の股を支店長のオジンがチラチラ見てたりするリアリティもありながら、ついに警官隊が麻酔ガスを投じて突入。しかし美影はあらかじめ聞いていた抜け穴から、見事に脱出するのでした…

しかしこの抜け穴には待ち構えていた者たち有り。
まがりなりにもカラテの達人である美影を闇の中で一撃失神させ、起こすと今度は命がけの実力テストをさせます。決してヒーローくさくなく、悲鳴じみた気合いをかけ嘔吐するほどに恐怖しながらも生命欲の強さゆえに戦う美影は、そのテストに合格。
そのテストをした機関は...美影が恐れた空心会でもFBIでもなく、『アメリカの闇のホワイト・ハウス』ことCIAでした。必要とあらばいくらでも汚くなれるCIAは『兇器のカラテを使う極悪等ヨシト・ミカゲ』に興味を持っており、ある目的のために利用しようというのです。

その目的とは...反戦の女神として知られる女優でフォーク・シンガーの大スター、イブ・レスリーを殺す事。イブは性的、知的魅力と異常な情熱でアメリカの若者達の教祖(カリスマ)になっているのですが、これが反戦を謳って母国アメリカに楯ついている影響で兵役を拒否する信者も続出している、と。
もう国家としてアメリカも黙っていられないため、日本公演で来日するのに合わせて旅客機内で殺すよう美影に命じたのです。機内だと狂信的な親衛隊もファーストクラスの客席までは入れないし、ボディガードも武器は持てない。そして美影のカラテなら素手の一撃で事故に見せかけて殺す事も可能、というわけですね。

いよいよ飛行機はロサンゼルス空港から日本に向けて飛び、機内で策を弄しているうちに不審な行動を白人スチュワーデスにとがめられ、ヤバイと思って気絶させると、トイレでバックから二つの穴(ホール)とも犯してやるのですが、これでまんまとスチュワーデスも楽しんで喜んじゃって。はいはい、このパターンもいつもの事ですね。ビッグなイチモツを持っていると、犯しても女性は喜ぶ事がほとんどであると、とても勉強になります。
で、ある方法でイブ・レスリー殺しもあと一歩までいくのですが、麻酔ガスで眠らされて失敗!イブは無事に来日して後楽園球場で5万人の観客の前で反戦を訴えて、日本の与謝野晶子が詠んだ反戦の詩「死にたまふことなかれ」を歌にして用意したりもして大成功。
そうすると美影はCIAの制裁に怯えますが、もう一度きりのチャンスでイブが泊まるホテルに潜入するも、またしても失敗。というか殺せる所まではいきましたが、彼女の壮絶な本性を知って断念。

まぁ結局この後はイブの事もCIAの追跡も立ち消えになって終わるので、アメリカで指名手配中の凶悪犯となっている美影としては、結果的にCIAを利用して偽パスポートまで貰って日本へ帰る事に成功したとラッキーな展開になったのです。
で、適当に入った"札幌ラーメン 一ちゃん"という店でラーメンを食べる。ここで判明するのですが、美影も昔は1日1度はラーメンを食わにゃすまなかった男であり、外国を放浪してても狂おしいほど恋しくなったのはラーメンの味なんだそうです。同じラーメン好きとして、一つここで美影に親しみを覚える事が出来ました。
ラーメンのネタでもう1つ、時代を感じるセリフがあるのですが…
『札幌ラーメン……おれが日本にいた頃にゃ 支那ソバだけで ミソ使うラーメンなんざなかった』
だそうです。

で、この札幌ラーメン 一ちゃんで雇われ店長として働いていたのが偶然にもかつて美影が空心会の本部道場で指導員をしていた時にシゴかれていた野口でした。
こいつと呑み歩いて情報収集し、住んでるのが新宿御苑近くのアパートだというので送る途中、新宿のスケバン・グループに襲われて...って、当然こんなもんは簡単に撃退して、そのまま歌舞伎町界隈でそのグループの用心棒としてセンセなんて呼ばれて居候。もちろんスケバン達は皆、美影の股座の兇器で味見されています。
麻雀をして酒を呑み、
『ところで疲れマラってやつか 催してきやがった…
 一パツの相手はルミかマリか?』

なんて、また羨ましい立場にいますな~!
しかしスケバン達もセンセのはハードすぎて後でいつもガニ股になっちゃうからと、拉致した敵対するスケバン娘を賞味すべく差し出してきたり。

こんな天国にいた美影もCIAの影に怯え、次は沖縄へ。本作は散々世界を股にかけて舞台を移動してきたので国内ではスケールが小さくなった気もしますが、でも本土復帰前のアメリカ統治下にあった沖縄ですね。
ハワイで捨てたきりの朝日奈薫子が自分の子供(雅哉と名付けられています)と暮らすこの地へ来たのは、美影お乱心したのか謝りたいという気持ちもあったみたいなのですが...彼女の姿を見つけると、何とアメリカでプロレスラーにのマイケル・ダグラスに敗れて姿を消したきりだった、あの恐ろしい拳鬼が一緒にいて仲睦まじくしているのを目の当たりにしました。そう桔梗十八郎、久々の登場です!
やはり美影に家庭生活とか安定なんてものは似合わない、許されない。

泣いて去った美影はバーで酒をあおってトイレに入ると、そこにMPが入ってきて日本人娼婦を美人MPのキャサリンが全裸にして屈辱的なポーズを取らせたりの身体検査をしているおいしいシーンが繰り広げられます。
それからいつものクセが出てキャサリンをカラテで脅して同じポーズ取らせた後に犯してと、またツキが回ってきているのですが…
実はこの地に、美影の恐れる魔の手が迫っていました。世界一のカラテ組織を作り上げたのが美影のせいで完全に失脚の身となった大元烈山が沖縄入りし、しかも空心会を失って自暴自棄になっているのか、悪魔のような強さを見せながらMP相手に暴れています。いくら銃を持ったMPでも、本作最強の超人・大元を逮捕などできるわけがない。
一方の美影は大元の報復という恐怖を忘れるためさらってきているキャサリンをまた犯していますが、この女も好きモノで、やっぱり美影のカラテだけでなく股座の兇器の方に屈服して協力者となる…かと思いきやあっさり裏切り、手柄のためCIAに協力して美影逮捕に動く。逮捕の場となるはずだった海上で、今度は大元が現れてCIAやMPを追い払うのだから、もう誰が味方で誰が敵なのか分からない。
いや、いつもいつも、大元は美影のどんな凶行すらも許しているのです。

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki19-20.jpg

それからの大元烈山は、全国テレビ放送されているプロレス会場で大巨人レスラーのミゼラブルにケンカ売られてそれを逆にKOしています。これはまた、プロレスVSカラテの戦争が始まる事になるのか…
いや、大元はカラテ界を追放されている身なのでカラテ代表として戦うのもおかしい。そこで新しい格闘技団体を作れば良いと、高弟の天坊豪や大元の一門に戻った桔梗等、一握りの実力者達で"ザ・格闘技"を結成。一から始めた団体でプロレス界とも対決すると言うのです。

美影義人の方は無事に沖縄を脱出して都内で普通に呑んだりしてますが、声をかけてきた女とディスコに行った後にホテルでは本性を現して、まんぐり返し状態に縛って秘所には飲んだコーラ瓶を突っ込んだりして遊んでますが、貸ボート屋でバイトなんか始めてます。
適当に寝転がってたら客が来ちゃったので『マスかいてなくてよかった』と思う美影でしたが、来た客は朝日奈薫子でした。久々のちゃんとした再会で、さっそく美影は薫子を犯すのですが、
『ヒヒヒッ………穴のあくほど よーく見てやるぜ もっとも もともと穴があいてるがよ』
とか言ってますな。
その後、CIAとザ・格闘技、美影を狙う組織同士で彼の身柄の取り合いになった末にザ・格闘技の手に落ちますが、八ヶ岳で修行をし直すように命じる書状を渡しただけで解放してくれました。命拾いした、とはいえ美影がそんな言いつけなど疎ましく思うだけで、守るわけはないのです。山ごもり修行なんざ趣味じゃねぇ、金髪女どもとヤリまくっていてぇと、すぐにザ・格闘技を潰すべく動くのです。

さてザ・格闘技の旗揚げ興行の相手はプロレスではなくて、「四角いジャングル」で本作の原作者である梶原一騎先生自らが日本に広めた"全米マーシャルアーツ"でした。結局プロレス界とは親戚関係という事でプロレス側が放った奴らですが。
ほとんどケンカルールで体重別の代表戦を戦いますが、ザ・格闘技に負けて欲しい美影が途中でスパイして彼らが対マーシャルアーツとして用意してきた"飛び後ろ回し蹴り"の対処法を売ります。自分をプロレスの世界組織ルートで海外脱出させてくれるのを条件に。どこまでも汚い主人公です…
さらにマーシャルアーツ側は、神の手・大元烈山への切り札としてスーパーヘビー級にとんでもない怪物、ボクシング界もプロレス界も永久追放になった過去を持つモンスター・クレイジー・ガマールを用意しています。風貌はでかい黒人で頭にバンダナを巻いているので、つまり現実世界では空心会のモデルになった極真空手の人間、つまり大元烈山側の弟子であるウィリー・ウィリアムスですよ。

この大元烈山VSクレイジー・ガマールは、つまり大山倍達VSウィリー・ウィリアムスという架空の師弟対決を実現させているのか。
そして始まった化物同士の対決ですが、大元が誰も見た事のなかった極意・受け崩しで勝って本物の人間兇器ぶりを見せました。
勝ってしまったザ・格闘技の一派に殺される事を恐れた美影はプロレス側にかくまってもらい、あてがわれたホテルの部屋で『話し相手』として来てくれたかつての人気歌手でハーフのグレース・三宅をいたぶり、裸にさせて両足首をつかんで逆さ吊りにして足を開いて絶景ポイント確認...とかやっちゃってるから、その後プロレス側にも怒りを買って(というのがそもそもの罠だったのですが)、もっとプロレス側に協力してカラテ技と大元烈山一派の裏をかく方法を全てを教えるように迫られるのでした。

そこで教える相手とは…プロレスの実力最強と言われる275キロの超巨人ミゼラブル!そうです、一度大元の乱入でKOされている男ですが、あの時は油断をつかれたのもあるし、今度は復讐心に燃えております。
この男には美影ごときのカラテでは何も教えられなかったのですが、ミゼラブルは
『グフフフッ おれは2穴(ツーホール)が趣味 つまり男も女として愛してやれるタイプでな』
というわけで、美影とその場にいた女子プロレス太平洋岸チャンピオンのヘレン・トロイもろとも犯されるのでした。

ここでオカマ掘られている美影がまたおかしくて、
『ゆッ 許して……………ヒャアアーッ』
と、悲鳴まで女になっちゃっています。
作者としても改めてこのシーンを入れたかったのでしょう、
『因果応報を絵に描いたごとし!!
 過去 美影義人によって凶悪に 変質的に犯され嬲られぬいた
 無数の女達の恐怖 悲哀 屈辱が いま義人自身の立場であった!』

としています。

これで自分も裂け痔になって暴力で犯された女達の痛みを知り、変わる事が出来るのか!?
何度も繰り返しますが、反省しないのが美影です。その直後に、カッコばかりでチャンピオンになった日本のアイドル女子プロレスラーのリル・火野に目をつけます。テレビ中継を見ながら
『ここでパンツさげ シコシコとマスかくのは並みの青二才………
 美影義人は逆にズボンはく!』

とか言って、シコらなかっただけの事をやたらカッコつけています。
で、ミゼラブルの手で(というかイチモツで)一緒に犯されたヘレン・トロイと手を組み、八百長の打ち合わせに来たリル・火野を2人で陵辱。お決まりの浣腸で奴隷にして2人に性的奉仕させて。エロ写真撮られまくったあげきにガチなプロレス技もかけて遊んでますから、本作ではポッと出のリル・火野こそが本作でも指折りの酷い目に遭っています。

こうして美影が絶対に勝てる相手にカラテを使っていますが、その少し前には大元烈山VSミゼラブルの最強決定戦が行なわれていましたが、これが凄い...そうだ本作はカラテ劇画のはずだったと思い出させてくれますね。
千駄ヶ谷の東京体育館を舞台にし、リング下ではプロレスVSザ・格闘技の全面戦争になるし、肝心の大元とミゼラブルは場外の駐車場までなだれこんで結局警官隊に止められて引き分け。大元の半生で初の引き分け星が付いてしまいましたが、プロレス側はさらにミゼラブルより強い"幻の帝王"を出してくるそうです。

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki21-22.jpg

さて美影義人がアイドル女子プロレスラーのリル・火野をいたぶりまくった件では続きが有り、リルが実は女子プロレス団体のオーナー、しかも政界とも暴力団ともつながっている大物とデキていた為に、生き恥もヘッタクレもなく話しちゃいました。そのため美影はヤバい事になり、共謀したヘレン・トロイは暴力団の手で物凄い私刑されています。口とケツから水を注入しまくったりしたあげくに、犬に犯されて記録映像も撮られるというエグさ。
では美影の方は...これが我が身可愛さに朝日奈薫子を売り、ポンコツになったリル・火野よりも活躍出来るタマだからと代用レスラーとして差し出すのです。

相変わらずの聖女・朝日奈薫子は美影を救うためにこの話を受けて、またザ・格闘技の一派にバレないように↑の21・22巻の表紙のような覆面をかぶり"ミス・桜"としてリングに上がります。
この美しきルックス、しかも盲目でありながら本作の全女性キャラで間違いなく最強の薫子なのであっという間に大スターになりました。

プロレスVSザ・格闘技の戦争も決着をつけなくてはなりません。
今度こそ大元を潰すべく最後のカードとして出してきた幻の帝王という最強レスラーは、覆面で顔が分からず。覆面は額に『?』が描かれたシンプルなデザインで、正体を隠してミスター・フーと名乗っています。ただし、この前に大元が引き分けた超巨人ミゼラブルに完全フォールで勝っている人物だとか。それって言っちゃったら何人もいないだろうからすぐに正体バレそうな情報ですが、都合よくここではバレず。
?の位置が違いますが、名前からしてもやはり梶原一騎作品「タイガーマスク」のミスター・?(みすたー・くえすちょん)みたいな奴ですね。しかもストロング・スタイルのレスラー養成機関"蛇の穴"(スネーク・ホール)の出身で現在はチーフ教官だと言います。はい、本作の世界では虎の穴ではなく、蛇の穴という機関が出来てきましたが、これは現実に存在します。あのカール・ゴッチらを輩出したので知っている方も多いと思いますが、ただ)のスネーク・ホールじゃなくてスネーク・ピットだったはず。もちろん、虎の穴のように世界中から孤児たちを集めてきて地獄の特訓させている事はないと思います。

さてザ・格闘技の一派、つまり大元の高弟たちはプロレス側に付いてカラテの技を売った美影に天誅を加えるべく全員が自ら破門されてまで動こうとしますが、大元の考えは単細胞な弟子達と違って深い。
何故こうまで美影の裏切りを許し続けているのかも弟子達に諭すこの場面でさらにハッキリしますが、邪道な性格とカラテの才能を買っているだけではない。キリスト教に対しての持論を述べ、実は誰よりもイエスの奇蹟を信じていたユダと美影を重ね合わせているのです。つまりジタバタあがいて邪魔をするように見えながら、弟子の中で誰よりも大元の力を信じ夢を見ているのは美影だと…そして、怒る弟子達の前でさんざん悪行を重ねて空心会を解散まで追い込んだ美影を『かわゆい』と言うのです。

この長かった本作でも最後の、最強を決める一戦の行方は…
レフリーなしルールなし、しかも金網デス・マッチで逃げ場なしという条件で怪物同士が戦うのだから、当然凄い事になります。勝負の結果は、あるアクシデントから大元の勝ちとなるのですが、実際は休戦みたいな感じで近いうちに場を変えての再戦を誓いました。
次は堂々と再戦するため覆面を抜いだミスター・フーの正体は、カール・イスタスでした。もちろんプロレスの神様、カール・ゴッチがモデルでしょう。我々読者は、架空の大山倍達VSカール・ゴッチ戦を見れているのだから幸せ者です。

美影の方は女子プロレスのコミッショナーで元大臣の大物政治家、そして巨大なるワル・五木玉堂に倒して美人局みたいな手法で脅しつつ取り入り、こいつの秘書兼ボディガードとして働く事にして国家権力をバックに付けた!
おっと、本作は強い男たちのデス・マッチや権力闘争だけを描いていて良い作品ではない。そう、女体を使ったサービスシーンを適度な間隔で確実に挿入しなくてはいけません...という事で、美影は大元VSミスター・フーが行なわれている最中、五木の愛人で女優の珠井美鈴をホテルに送り届ける前に襲う...
この珠井美鈴は、美影が高校に入った頃すでに清純派スターだったそうで、いろんな女優や歌手のプロマイドでマスかいてた彼も彼女を使った回数がトップだったのだとか。そんな女優の実物を迎えに行って、付き人でカワイ子ちゃんなマコ諸共カラテで脅して脱がせて嬲りぬいて。

でもその後で五木の力の物凄さを見せられた美影は彼のために本気で力になる事を誓い、汚職事件をもみ消すために動く。その事件を追求している代議士の真船健を抑えるため、女子高生の娘・ひろ子を襲っていたぶって脅し、父親を汚職追求から手を引かせました。目的のために目の前にある処女マンには指までしか挿入せず、バカでかい股座の兇器を使用しなかったのは、偉いぞ美影義人。
今までも私利私欲というか快楽のために悪事を重ねてきた酷すぎる外道でしたが、こんな政治絡みの汚い仕事にも平気で手を染めるようになった美影。でも、これがいけなかった。国家権力に庇護され利用出来る立場になったと喜ぶ美影でしたが、そこだけは鬼門だったのです。大元が知ると、
『たかが武道界からハミ出だした背信 悪徳などとちがうて 政界がらみは国家万民に害をおよぼす!
 責任者として斬らねばならぬッ』

と、彼をかばい許し続けた果てについに、初めてそれを口にしました。同様に、命がけで美影を助けてきた聖女・朝日奈薫子も…

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki23.jpg

でも美影の始末の前に、今度こそ決着をつけなくてはならない大元VSカール・イスタスの「人間兇器」最強決定戦。
前の金網デス・マッチよりもっと危険なネール デス・マッチ、リングの周囲にギッシリと五寸釘を敷き詰めた地獄での対戦です。いやー凄いですよ、本作を真面目なカラテ漫画、格闘技漫画なのだと勘違いしてしまいそうな熱戦です。
でも大丈夫、そのテレビ中継を見ながら美影がちゃんとやってくれますから!玉木を振る赤坂一の芸子・毬千代を財布のトリックで泥棒だとハメて、局部の方もハメてエロ調教してく喜ばせています。
その裏での本物の男達による戦いは壮絶を極め、ガチの殺し合いがテレビの放送コードに引っかかって途中でスタジオからの歌謡ショーに切り替わる始末。
結果はやはり、大元が勝ちました。それもカール・イスタスを髪の毛まで真っ白にして発狂させ...そうですプロレスの神様が発狂負けして笑い狂っているのです!

美影は五木玉堂の第一秘書に登りつめ、さらに国際的指名犯人の身であるのに政界に打って出る野望も燃やしているのですが…
もう誰も並ぶ者なき世界一だと証明した大元烈山が反逆を繰り返す美影義人に最後のケジメをつける舞台となったのは、三浦半島の油壺。神奈川県なので美影の故郷でもあります。ここで大元一派に囲まれて絶体絶命の所も、持ち前の異常な生命欲を発揮して車で脱出、薫子に生ませた我が子・雅哉を人質に取るという外道ぶりを発揮して逃げました。
その道中で暴走族にからまれて、これはいつものパターンですが弱者には強い美影のカラテで男3人を倒し、女3人は下半身を全部脱がせてアクロバットさせて遊んでいると...ええ、女子に放尿させて
『やったッ やりよった!! おりからの朝日に映えて これがまことの黄金シャワー!! ギャハハハ……』
って、最後の最後までこんな事してる美影でしたが、その行為が仇になって再び大元一派に囲まれました。もう逃げられない。

大元烈山と1対1で戦って勝てば見逃してくれると言いますが、やはりまるでどうにもならない実力差があり、完全に詰み...という所で1人で残してた雅哉が車をいじって暴走し、崖から落ちる所を間一髪、まさかと思われた美影が飛び込んで命がけで雅哉を救ったのです!
で、美影本人は崖下の海に転落して終わり。そんな、ラスト数ページで直前までの人格と変わるなんてありか!?
これを桔梗は『さしもの外道・人非人も最期のドタン場で人の子 人の親にめざめたか』と評しますが、天坊は『きゃつはクルマを奪って逃げようとしておったにすぎず もののはずみで 坊やは放り出されたにすぎん』と評す。
その真相は藪の中ですが、ラストは海に向かって大元も薫子も涙するシーンで幕を閉じます。

そうそう、この日本文芸社のゴラクコミックスは多くが最終巻だけ帯を付けていたと思いますが、この23巻にも付いていますね。
KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki23-obi.jpg

己を磨き最強の人間兇器となって人生を渡るはずだった野望家の美影義人は、結局は成りきれず半端なままあっさり命を落とす結果となりました。ええこんなに長く、梶原一騎原作作品第二位の23巻まで続いてこの結末。
単行本の最終ページには作者2人のコメントが載っているのですが、梶原一騎先生は
『当初は美影をパーフェクトな「兇器」となりとげさせる構想だった』
と書いています。その姿も見てみたかったですが、連載途中に逮捕された事なども影響しているのか...それではリアリティが無いと判断されたのかもしれません。
中野善雄先生の絵があまり達者でない事や、下品な表現を使い続けた事が判断をくもらせる気はしますが、本作は人間とは何か、綺麗事ではないその存在を描いた傑作かのかもしれません。私はもう、この己の快楽だけを求める姿勢に憧れも抱いてますからね。
とにかくこれをどうにか終わらせ、あの「一騎人生劇場 男の星座」へと続いたのです。下手に本作が長引いていたら、梶原先生の余生から考えて男の星座は生まれていなかったのかも…そう思うと震えてしまいます。

ちなみに「人間兇器」以前にゴラク誌で描いた「惨殺者」には美影義人の前身キャラクターと言える無門鬼千代が登場しているし、所謂『カラテ地獄変』シリーズは内容そのものが兄弟作品でしょう。それらがまたどれも傑作なので、絶対に読んで欲しい。
さらに暇があれば、三池崇史監督がVシネマ化した「人間兇器/愛と怒りのリング」も...ええ、笑うなかれ、脚本と出演で梶原先生の実弟である真樹日佐夫先生が関わっていますから!


大元烈山よ あんたはカラテの道から神に近づけばいい!
おれは凶器カラテで神に挑むぜ!!



スポンサーサイト
  1. 2016/12/08(木) 23:59:15|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

梶原一騎(70) 中野善雄 2 「人間兇器」 2

梶原一騎原作、中野善雄劇画による「人間兇器」(日本文芸社刊)の続きです。
KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki3-4.jpg

前回も書いたように本作は、お下劣カラテ劇画。
主人公の美影義人は、最低な環境で育ちながらIQは高く運動神経が良くてケンカも強い。そんな彼が"日本空手道 空心会"と出会ってカラテの腕と…『股座の凶器』と自称するバカでかい持ち物を武器にのし上がって行こうとする物語。
さぁ横浜の売春宿出身の悪ガキが、どこまで立身出世するのか見て行こうではありませんか!

他の登場人物で前回紹介した主要な人物が、やはり空心会の総師・大元烈山。大山倍達総裁をモデルとした強さの頂点で『神の手(ゴッドハンド)』と称される達人。
空心会で拳鬼と呼ばれ最高師範まで登りつめながらも旭掌拳に寝返った桔梗十八郎、旭掌拳当主で盲目の美女、そして聖女な朝日奈薫子
あとは美影に陵辱され、オジサン読者の心にホッコリと灯火を与えてくれる無数の美女達…が、本作の大事な所。

前回の最後で空心会の支部がなかった鹿児島県に送られた美影が、桔梗率いる旭掌拳に捕まって殺されかけた所で大元館長が登場し、桔梗をも倒して空心会が鹿児島を獲る…同時に都道府県の全てを制した所まででした。
まず美影は鹿児島から帰京して、東京本部の指導員になりました。国内に四十万、海外に四百六十万の門下生を有する空心会の本部指導員ともなれば地方の支部長あたりとは同格となるそうですが、これが漫画の主人公としては微妙ですよね。大元に目をかけられてマンツーマンで鍛えられた美影だし、もちろん強いのですが、決してこの作品世界で1番や2番とかではない...というかざっと50番目くらいの強さではないでしょうか。しかも強者には媚び、弱者は徹底的にいたぶる性格がね...悪役じゃなくて主人公なのだからますます画期的ですよ。

それと女癖の悪さというか変態さ。本部指導員になったのに、早速トルコ嬢と暴力屋台の女を逆さ吊りにしてもてあそんでいます。
桔梗に狙われている身の恐怖心から『キチガイになって』修行に打ち込んだカラテも強くなっていますが、空心会夏季合宿の千葉県は九十九里浜でいざ決闘を申し込まれると、やはり桔梗にはかなわない。やられる!?と思ったその時に朝日奈薫子が間に入って桔梗を殺人者にしたくない一心で美影をかばって打たれて気絶。その隙に美影は桔梗を打って卑怯な手ながらついに勝利。
しかもこれからですね、自分を守るために気絶している聖女・朝日奈を綱でギチギチに縛り付けて秘所を御開帳。
『聖女も横っちょにくっついてるわけじゃねえぜッ』
と納得して犯し、やったあ!!とか叫んでます。それだけこの聖女を自分でも神聖視し過ぎていたのですね。ここで処女を犯し抜いた美影は、
『人間兇器のゆくてに………
 これで聖なるものなんざ 存在しねえッ
 ただ勝つのみ
 ただ強くあるのみ
 ただ征服するのみ!』

と、信念を固めるのでした。

で、またここで美影の股座の凶器の威力というか男根主義な作者の主張で恐ろしい事に犯された朝日奈薫子が古風な女であるが故に処女を与えた相手である美影の『従順なペット』に化身してアパートで生活を共にする展開!
そして、たった3巻でここまで最低な主人公を描いてきた原作者の梶原一騎先生から衝撃の告白があります。
『「人間兇器」が無明の外道界に思いあがって輝く今 あえてここに告白するなら
 本編こそ 現在は極真空手(館長・大山倍達)の副館長格でもある原作者(梶原一騎)の初の半自伝的作品である』

と!!
カラテの才能はありつつも、繰り返し説明すると強者には涙流して命乞いや土下座するは、弱者・女性には異常に強くて放尿を強要したりね、こんな梶原作品史上最も情けない主人公を半自伝だなんて言えるのは凄いと思いますが、この後の展開を見ると梶原先生の生活と全然違う(スケールアップし過ぎて実生活ではありえない)ので、これは間違えて言っちゃった感じでしょうか。ちなみに本当に自伝作品として描いた(といっても大幅に創作が含まれていますが)、あの「一騎人生劇場 男の星座」は、「人間兇器」の長期連載が終了した1985年に描き始められています。

さて聖女だった薫子をモノにしてしまった美影ですが、2人の生活のために安アパートを借りて暮らすようになりながら、空心会でのカラテ修行に打ち込む日々。
しかし自分を狙う桔梗の影に怯え、しかも薫子が妊娠したと知って目標の人間兇器となる道の邪魔になると思い...その2件から逃げるために空心会ニューヨーク支部のインストラクターとして渡米。そうあっさりと薫子を捨てて、本作は世界一の犯罪都市ニューヨーク編へと突入します。

空心会ニューヨーク支部長は天坊豪。長いわりにシンプルで出続けている登場人物が少ない物語となった本作では、数少ない主要キャラの1人か。
アメリカ人門下生の白人や黒人達を厳しく力で鍛える実力者で大元館長の忠実な部下ですが、真面目なだけでなく女癖が悪い所も目立ちます。美影の歓迎と教育を兼ねて悪徳バーで美女達を全裸に剥き、カウンター上にケツ向けて並ばせた上であんな事こんな事しちゃってますからね。
ここで天坊の下について安心するかと思えた美影、しかし狙う側の桔梗は執念深く、何とアメリカに渡ってこのニューヨークまで追ってきました!
もう、見苦しいまでに叫び声を上げて夜のニューヨークを逃げ惑う美影は、なりふりかまわざ警官に助けを請うも桔梗は警官すら一瞬でKOしちゃうし、敵対していたプロレスラー集団にまで利用して助かろうとするも、拳鬼・桔梗はそいつらも倒して追ってくる。
ほとんどターミネーターみたいな桔梗に追われて美影は土下座するわ、命じられるまま地下鉄にいたホモのカップルの前で裸踊りもしようとする何とも情けない主人公ですが、ここである理由から桔梗に許されて命拾いしました…

そんな中のニューヨークではカラテVSプロレスの企業戦争が巻き起こっていて、全面戦争の様相を呈する状態だったのですが、あのルー・テーズと並びプロレス界の帝王と称されるレスラーのマイケル・ダグラス(ハリウッドの大俳優と同名ですが、もちろん関係ありません)が登場して1対1の勝負で決着を着ける事になりました。
天坊豪は他のレスラーなど相手にならないくらいお強いのでしたが、本物は違った...その勝負でマイケルにコブラツイストでやられてしまいました。その雪辱を果たすために今度は桔梗がマイケルに挑戦し。
桔梗と美影は勝負の前に敵情視察でマイケルの試合を観に行くと前座は女子プロレスで、その試合してた女子プロレスチャンピオンがリング上でカラテを侮辱する発言。美影は怒って...て、でもこいつはカラテの名誉のためとかそんな事を思う奴ではない。
『おれは勝てそうな相手にゃ すぐトサカにくるんだ!』
の名言を残し、シャワー室に乗り込んでレイプ。いや本当、自分より強い相手には平気で情けない命乞いもするし涙どころか小便だって漏らしてまで闘いを避けるのがこの物語の主人公なんです。
で、犯った後のケツに栄光のチャンピオンベルトを乗せて『女子プロレス界の正義の黄金バット 強姦固め(レイプホールド)の図!』とか言ってなぶってスカッとしている最低の男でした。しかも良家の夫人や令嬢、そしてこの女子プロレスラーはレイプされても騒げないと計算の上。
そうそう話はマイケルに挑戦する桔梗に戻りますが、帝王強しで拳鬼と呼ばれた桔梗までもがまさかの敗北!

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki5-6.jpg

空心会カラテの地上最強はもはや誰も信じず、ニューヨーク支部から女子部と少年部以外の弟子が全員去った所についに乗り込んできたのは親玉・大元烈山!
大元VSマイケル、つまりは空手VSプロレスの勝者を決める頂上決戦が行なわれるわけですが、その前にまた美影、今度はハリウッド女優のリンダ・イザベラがギャングに襲われている場面に出くわします。大スターの彼女が無理矢理ヌード写真を撮られている所まで見物して、いよいよ輪姦されるという所で助けに入り、お礼をたんまり貰うと同時にヌード写真のフィルムはこっそり抑えて後のゆすりネタに取っておく。最低の主人公具合は一貫しています。
さて本作における最強の男である大元、トイレ内での激戦の結果ようやくマイケルを倒して便器に頭を突っ込んでやった所をマスコミのカメラの餌食にして、プロレスに負けて愛想つかした弟子達を呼び戻すのでした。

あとはプロレス・ギャングどもの報復、そして美影は個人的にもリンダ・イザベラが放つ刺客や罠で命を狙われます。
18歳の新進グラマー女優をあてがわれた時はヤッタ後で自分の頭の両耳を両足ではさんで立たせるのですが、これが『最高の鑑賞法』なんだそうです。そのまま尻を下げさせてトイレで腰掛けるような姿を下から鑑賞すると...『絶景かな 絶景かな!』の言葉が漏れています(笑)
しかしこの女を提供されたのは罠で、部屋に拳銃持ったギャングが飛び込んでくるのですが、それは練習した手裏剣打ちで撃退。いよいよリンダ・イザベラ本人が出てきた時はチャイナ・タウンの暗殺部屋で罠を仕掛けますが、それをかわして怒った美影。故郷・横浜の銀幕で観たスターのオ××コを見て感激した後は女体を操る拷問、そして浣腸!美影の知識では、お高い女ほど浣腸ブチこむとメタメタになるらしいですからね。
『BUBUBU BURI!!』と脱糞させたら(本当にこういうシーンではローマ字の描き文字になる)、ちゃんと犯して『やったッ!! ハリウッドの大女優を 日本の少年院あがりのガキがいま!』と感激。しかし例の股ぐらの凶器でよがれせまくった後は、またもや犯された女の方も男に惚れる都合良い展開です。

そのリンダ・イザベラ人脈を使って影からプロレス側と和解させる活躍をした美影。
大元烈山の方は
『すべからく物事が一件落着してホッとする人間はつまらぬ より大きなことに挑むバネとせにゃいかん』
と言って秒速でマディソン・スクエア・ガーデンにて全米の空心会支部指導員が終結してのUSカラテ選手権大会を開催決定させ、そこに美影も出場。これで点数を稼いで支部長昇格の野望を果たそうとするのですが...アメリカ支部の要・ニューヨークの指導員でありながら情けないKOされて面目丸潰れ。
その敗因も実力差ではなく女の蜜壷の誘惑に負けての事であるのを大元には見抜かれ、一介の道場生に格下げされるのでした。プロレスと抗争していたちょっと前まで大元の超人的すぎる強さに惚れて『身も心も捧げたい女のような心理』になっていたというのに、支部長への道が断たれたとなったら簡単に空心会を裏切る事にした美影!
ああ、この大会をダシに現実世界で当時梶原一騎総監督として製作していたドキュメンタリー映画「最強最後のカラテ」についての宣伝も入れまくってますね。私も大好きな映画です。
KAJIWARA-saikyo-saigono-karate.jpg

さて、あっさりと大元烈山に反旗を翻えした美影義人。
ただ大元の前から蒸発しただけでなく、ある策略を企てます。それは我が身をもってその強さを身にしみたヘビー級ボクサーを集めてカラテを仕込み、人間兇器の軍団を作って空心会を潰そうというもの。1流の実力を持ちながら問題を起こしたりして干されてるボクサー達を集めたのは、やはりリンダ・イザベラの人脈と資金。こうして彼女の虎の威を借りるキツネ状態ながら出来上がったヘビー級カラテ軍団!
初心者を装って空心会に入門させるスパイ作戦まで実施した上で、いよいよ互いに七名ずつ選手を出し合っての全面戦争に突入。

その前に選手達にカラテの実戦経験を積ませるためにブルックリンの香港カンフー系道場に道場破りをかけるのですが、その時は女子部のこんなカワイ子ちゃんまで陵辱しています。
『残忍になれ 残忍に徹せよッ 人間兇器に 美影義人よ!』と自ら言い聞かせながら。
KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki6-ura.jpg
まぁ、全巻それぞれに読者サービスの濡れ場が用意されているのでね、普通に強さを競うカラテ漫画みたいにならないのがこれ、「人間兇器」なのです。

そうそう、物語とは関係ありませんが本作で劇画と担当している中野善雄先生は英語・アルファベットに弱いようで、1ページ丸々使ってニューヨークの街並みを描くシーンなんかでは地下鉄の入口に平気で『SABWAY』とか書いてあったりします(正しくはSUBWAY)。

さて真紅のカラテ・ジャケットで血まみれの『ブラディ・カラテ軍団』を名乗る事にした美影側VS大元率いる空心会の対決の場は"MSG"ことマディソン・スクエア・ガーデン。嗚呼、MSGなんて文字を見るとHR/HM好きの私にはマイケル・シェンカー・グループ(Michael Schenker Group)にしか見えませんが、一般的にはマディソン・スクエア・ガーデンみたいです。
ここでの対決は意外にも...なわけないか、主人公でありながら悪玉の美影側が勝つわけもない。大元側は指導員まで勤めた美影にも教えていなかった秘儀『二段がけ蹴り』でブラディ・カラテ軍団を圧倒し、大将戦で美影にぶつけてきたのは現実世界の極真会館所属だった熊殺しのウイリー・ウイリアムスそっくりなウオーレス・ウイラード
美影のけっこう強いけど最強ではない中途半端なカラテの技では勝てるわけもない相手ですが、頭が回るので対処法を知らない二段がけ蹴りを喰らいたくない一心からアントニオ猪木対モハメド・アリ戦のあれ、リングの上に寝転がりアリキックで対抗。情けない事にマフィアを雇ってリング下から消音拳銃(サイレンサー)で相手選手を倒すのが狙いで…
それも大元の弟子が多くいるFBIによって阻止され、美影は試合中というのに逃亡して一般市民を巻き込みます。それも18歳の娘を誘拐してある場所に監禁。自分の生命だけを大事にして足掻く彼の策略がこの時は実を結び、空心会によって嬲り殺しにされる所から一命をとりとめるのでした。

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki7-8.jpg

リンダ・イザベラには裏切られ、警察からも追われる身となった美影はフロリダ州のマイアミ・ビーチに逃げ延びています。
この地で人種差別を受けるも、その差別した白人女を犯してスッキリし、次に渡った先は…メキシコ!
メキシコといえばプロレス(ルチャリブレ)。この、メキシコのマット界で『ザ・カミカゼ』を名乗り覆面レスラーとして生き延びている美影。FBIや警察、世界中に支部がある空心会にも追われる身には覆面は便利ですね。ファイト・スタイルは国辱的な、つまり卑怯者で道化的な日本人を演じた「空手バカ一代」で有名なグレート東郷をモデルにしたもの。一応は本格カラテも使えるわけだし、憎まれ者のヒールとして人気を博して金も稼いでいます。
もちろんオフの時には覆面を取って闘牛場にガール・ハントに行き、引っかかったセニョリータをとんでもないカッコに縛り上げて陵辱したりと楽しむ事も忘れていません。『どぎつい女遊びをやりすぎて まともなセックスじゃ刺激がなくなってきてやがる』との事でして、はい。

そして、ここからさらにもう一歩上に行くための美影流のやり方が出ます。メキシコのプロレス界で絶大な力を持つプロモーター・オルテガの娘、モニカ。ヒールである自分を汚らしい・けがらわしい・臭い等と罵ったこのクソ生意気な女を言葉巧みに誘い出して処女を犯した上で物凄いスタイルにさせて写真を撮りまくり、ついでにうしろの穴もバージンを奪った所で私利私欲のために利用するのです。また後でも呼び出して体を頂いた上に、得意の浣腸で脱糞もさせているし…
この作戦でプロレスでベビーフェイスのスターに転向しただけでなく、カラテへの冒涜に怒る空心会のメキシコ支部からもレスラー達を後ろ盾にして身を守る事にも成功しました。しかし、空心会メキシコ支部の奴らを半殺しにした事で大元烈山と天坊豪がメキシコへ乗り込んできてしまいました。

メキシコのプロレス界でスターになると映画界でのスターも兼ねる習慣があるので、美影=ザ・カミカゼも正体がバレない覆面レスラーである事だし映画に出ちゃってて、新人女優のパロマ・リオを引っ掛けて犯し、その肉体で大元らメキシコ入りの不安を忘れようと努めたり...
ともかくその1ページ丸々使って『ZZUN!』とぶち込まれたパロマは、美影のどでかい股座の凶器が功を奏して大喜び。えっと…今さらですが犯された女性が喜ぶとか女性はやっぱりデカチンが好きとか、現在では迷信のように言われていますがこの時代・この作者はそう思っているという事で暖かい目で読み進めてあげてください。
パロマを服従させた美影はもちろんそれを利用し、大元と違って女にメがない天坊に先制攻撃を仕掛けます。女と酒・薬の力で天坊を病院送りにすると、大ボスの大元の方は闘牛、次いでメキシコ一の巨漢レスラーでセメント試合なら最強の実力者と噂される悪役のサガトラをぶつける!

美女とセックスしながらテレビを見て喜ばせている美影も、大元のツラが画面に映ると股座がしぼんで反射的にビビッてますね。
そこで徹底的にカラテの特徴や対策をサガトラに教え込んで、しかもサガトラの覆面の中に鋼鉄ヘルメットを仕込むまでして闘い...何と一度はあの無敵の大元烈山を破ったかと思われ大元にハラキリさせる所でしたが、サガトラも失神していたのと悪質反則がバレて勝利は大元の手に。
それから空心会、というか天坊豪の逆襲が始まって国外逃亡を企む美影らを捕らえようとするのですが、美影を裏切って1人で逃げようとしたパロマを捕まえて全裸にして拷問して、さらにお決まりコースで犯して…なんてやってるから、ついに映画女優とヤレて感動している天坊の隙をついて美影が攻撃して天坊を海に叩き込み、メキシコからの逃亡成功。
パロマは恐怖で頭が狂ってしまいましたが、この美しい女体ゆえ南米に売り飛ばして逃亡資金にするという、虫唾が走るほどワル!
そして逃亡先が、よりによって打倒バティスタ独裁政権、有名なカストロとゲバラによる革命前夜のキューバなのでした…

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki9-10.jpg

キューバ編は、美影義人の情けなさに輪をかけています。まず入国時には空心会カラテ・キューバ支部の目をくらますために女装なんかして行くも、バチスタ政権打倒の革命軍にとっ捕まって…
まぁ本作の悪い奴ら全員がすぐに女とみたら全裸にさせる習慣がありますが、この革命軍たちも女を殴って脱がせて並べてみたり、もちろん浣腸や拷問もしています。よって女装していた美影も脱がされて男とばれて投獄されて。
しっかし多くの女性が裸に→拷問を受ける→性的な慰みの対象に、というコースもまたかって感じです。ひどい!許せない!
...なんて言ったって、作品がそっち方面にながれて突っ走ったのも、そういった描写を見て股間を膨らませて喜んでいる我々読者が居るからなんでしょうけどね。

投獄された美影は、スペイン語を分からないふりして同房になったバチスタ政権側の役人達を売る密告。全ては自分の命を守るためにと革命軍にゴマすり、スパイ、そしてカラテ教師に起用される。
そして革命軍を特訓している所に、あのチェ・ゲバラが登場!英雄の前でいい所を見せて売り込もうとする美影でしたが、ゲバラは
『あの男の目の光が あまり気に入らん
 獣の目だ 刃物の目だ
 人間らしい理念があれほど欠けた 目付きの男もちょっとめずらしい』

なんて言ってます。まさにそう見抜かれた通りですし、そこまで言われているその男は、一応主人公なんですけどね。かつてナチス時代の生き残りゲシュタポの手記を、マスかきながら読んでたほどのクズとはいえね。

習ったカラテを実戦で使ってみたくなった革命軍たち。しかし政府軍はあらかた掃討してしまった...というわけでブタども、つまり衆人になっている元上流階級の女性たちを引っ張り出してきて全裸にして逆さ吊りし、急所マークを付けて大の男達が蹴りまくり、犯し...って何度も書いてますがひどすぎる!
それからキューバ革命軍とバチスタ政権が組んでたアメリカ・マフィアとの抗争である理由から渦中に巻き込まれた美影は、何度も殺されかけています。しかもビッチのマチルダに前歯も全部折られて口を封じられたり、古代ローマの悪魔帝王カリギュラも考え付かなかったほどの拷問で半年がかりで殺される約束もされています。が!
マフィアに連れて行かれて殺される運命だったアメリカに上陸した所で、ゲバラの救いの手が入って助かり、すると狂い死にそうな精神状態だったのもあるからでしょうか、美影みたいな男でも何と感謝の涙を流す。

ここからはキューバの事は基本的に忘れて、アメリカのニューヨーク編に突入です。
命が助かって涙を流したあの気持ちもすぐに忘れた美影。FBIの病院で前歯も入れ歯してもらい、当地で自由の身になると早速絡んできた暴走族たちをカラテでこらしめて全員裸にさせ、マジソン公園で4組並べてセックスさせたりして遊んでいます。
そして一緒にアメリカに上陸している、美影の前歯を折ったマチルダを徹底的にシメあげるべく動く。そうしないと人間兇器として自信喪失してしまうからですが、そして相手は女だから美影の好きな自分より弱い奴ではありますが、でもその情夫はブルックリンを仕切るマフィアの大物ロッコ・サラバスなのです。
その度胸は凄いのですが、後にそのせいでいつも通り自分を追い込む事になる。でも一時の感情で動いてる部分もあるのかもしれませんが、プライドの高いマチルダをついに暴力で屈服させてもちろん全裸+ミジメすぎる格好をさせる事には成功しました。散々痛めつけてもいますが、股座の凶器でよがらせてあげたらもう美影の虜。兇器ウタマロを食らって愛しちゃうようになる女も、これで何人目だ。

次に美影はロッコ親分を裏切りたいマチルダと組んで、ある資金を奪おうとしますが結局は計画が失敗。美影は梶原作品ではおなじみの、マフィア組織の支配下に実在すると言われる『地下プロレス』界へ放り込まれるのでした。
そこは女子の部は残酷エロ・ショーですが、男子の部は命がけで壮絶なデス・マッチが行なわれている!パンクラチオンの再現のような世界で闘う選手たちは実力レベルも高いのですが、そいつらが地上のプロレスのように甘いものではなく、ショー的要素を取り除いた本気の殺し合いをするわけですが、そこでも空心会で大元烈山に仕込まれた美影のカラテはある程度通じていて、弱めの相手を当てがわれているとはいえ連勝。相手の目を潰したりの残酷な闘い方が客の好みにも合って人気も博しています。
激しい殺し合いでも、マフィアに嬲り殺しにされる恐怖よりは楽。ロッコ親分の前では情けない顔で涙まで流して命乞いする美影ですが、果たしてこの地獄から逃れる事は出来るのか!?

KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki11-12.jpg

行き地獄の地下プロレス界で強制的に殺し合いをさせられ続けている美影義人、これはもういつか負けて殺される時まで続けるしかないのか。ロッコ親分を裏って一緒に悪事を働いたマチルダは捕まって拷問され、リングで散々辱めを受けた末に殺された…
そんな状況の美影を救いに来たのは、生まれた美影との間の子を連れて日本から来た朝日奈薫子。空心会カラテ・ニューヨーク支部にいた大元烈山を訪ね、世界的組織であり裏社会に通じる後援者も多い彼の伝で地下プロレス界まで潜入し、女子の部でチャンピオンになれば美影を解放するという条件も下で闘う!
盲目とはいえ普通に闘えば薫子より強い女などいないのですが、男女混合タッグマッチのきたない手口でついに薫子も裸に剥かれ、ケツの穴までサディスティックな客達にさらされる…その時、美影が助けにリングに突入と、およそ彼らしくないヒロイックな行動を取りました。こんなマネをしてはもう拷問されて殺されるしかない運命に気付いてリング上で失禁までしますが、今度は大元がリング上に乱入。美影の行動を見て彼を許す事にし、実力とコネを使って薫子共々地下プロレス界から救い出すのでした。

そして美影と薫子は本来の夫婦の形のように一緒に日本へ帰る事となり、途中で空心会カラテ・ハワイ支部でゆっくりしていくよう便宜も図られるのですが、ここで落ちいて幸せな家庭を築くようなら美影義人じゃない。
『人間凶器あえなく失格し 平凡な親子水入らずの生活を甘受していいのかッ?
 多くの若者が そうして飼い馴らされ オトナになってゆくように………』

そう悩み、あっという間に行動に移します。命を救ってもらって涙を流して土下座までして感謝していたのに、ホント、ハワイに着いて薫子の知り合いに会ってすぐダッシュに逃げてるから、色々と早っ!としか言いようがありません。

それからの美影の行動は、まぁ今までとほとんど同じ。反省しないのが美影。
つまりはレイプその他の犯罪行為を犯しまくって得意になり、大元の怒りを買って捕まり、許してもらうと心を入れ換えるとか言いながらすぐに犯罪に走り、また捕まって…これをずっと繰り返しているのが本作「人間兇器」なのです。

このハワイ編では、オアフ島から逃げて次に賑やかなマウイ島へ行くとそこで同じ日本人をカモにして稼ぎます。カラテの腕と、ハワイアン・マフィアの組織に属しているとかハッタリで脅して金を奪うと、警察に追われる身となって逃げる途中で海上にて若いカップルからボートを奪う。
気が強い白人娘・スーザンは『ジャップのくせにどうなるかわかってるの!?』と言ってましたが、その差別主義者発言が美影に火を付けてバックの穴の処女も含めて犯しまくられる。
そうこうしているうちに島の方向を見失ったボートがガス欠で海上に漂流。喉が渇いて狂いそうになる2人ですが、海水を飲んだらどうなるかスーザンで生体実験したら狂いそうになって泡吹いて...でも、美影は失禁した尿を頂いて飢えをしのぐのだから鬼畜。これ以上漂流が続けばグラマラスな白い肉に食らいつくはめになって『人間凶器ならぬ人間食い!』と心配しますが、悪運強くどこかの島に漂着。

そこはエルヴィス・プレスリー…じゃない、エルヴィスをモデルにした歌手ブルボン・バルチモアのプライベート島でした。ライフル持った私兵に警護させ、アメリカ本土からたくさん連れて来た女優や歌手の卵らを相手にハレム、桃源郷を作って王様暮らしをしているのでした!
ブルボンが若い娘達をオモチャにしている姿を見て美影は興奮してもよおし、まだ連れて来ているスーザンとまぐわって夜まで我慢。
暗くなったら美影による侵略が開始され、私兵を倒して屋敷に侵入すると電話交換機を破壊して絶海の孤島に孤立させました。暴帝、ブルボンは己のイチモツをしゃぶらせながら美人に給仕させて美味い酒を飲み、目の前で裸の若い娘達に色々やらせて楽しむ、まぁ大方の男が夢見そうな分かりやすいハレムを楽しんでいる所でしたが、美影が乗り込んで制圧。
当然、美影も同じように女達をオモチャにして楽しみ、さらなるソドムの市の出現。ここでとりあえず股座の凶器をしゃぶらせながら、他の女達を脅すセリフが最高で、こうです。
『おれをナメるなよッ もっともジュニアはナメられてるが………』
と、たまにこういうギャグみたいな所もあるんですよね。

シカゴの大財閥令嬢で絶世の美女でもあるブルボンの妻も何も知らずに島に来てしまうと、並べた女達に尻を向けさせての歓迎。
『尻 尻 尻 尻 尻 尻!! この尻ってやつは いかなる哲学も思想も美もサマにならなくしちまう道化者でな!』
だそうで、さらに女達に放尿もさせて、と。
ブルボンの妻も裸にヒン剥かせたら逆さ吊りにしてケツの穴の確認、次は手足に手錠して四つん這いにさせて、女達に叩かせるわ気絶しても逆さ吊り状態からプールに落とし込んで遊んだり。もちろん美影の股座の凶器を使った普通のレイプもしますが、今まで金持ちや女優や世界中の女をやりまくった美影をしてこの女が最高みたいです。
と、今は無人島ハレムを支配して得意の絶頂の美影ですが、お約束通り次は…という所で今夜はお別れ。次回で最終巻まで紹介しようと思います。


凶器とは鋼鉄であろう
鋼鉄はいかにして鍛えられるかな? 灼熱の溶鉱炉でドロドロに溶けて 煮えたぎっての果てはじめて鋼鉄よ!
その灼熱のドロドロとは人間の強さ弱さ煩悩もろもろの迷い それらが地獄の釜で溶け合っての鋼鉄でなくば ちゃちなブリキの凶器にすぎん!
フフフフッ……このブリキの凶器め もっと悩め 苦しめ ドロドロに溶けてみい!
また遭う非までに……な



  1. 2016/11/23(水) 23:59:45|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

梶原一騎(69) 中野善雄 1 「人間兇器」 1

今夜は梶原一騎原作、中野善雄劇画による「人間兇器」(日本文芸社刊)。
KAJIWARA-NAKANO-ningen-kyouki1-2.jpg

本作の作画担当、中野善雄先生もこのブログで紹介するのは初めてでしたが、まぁ正直あまり知りません。この「人間兇器」だけで強烈な印象を残してはいますが…あと読んだのは、梶原先生の実弟である真樹日佐夫先生を原作とした「女子レスラー炎の身上書」くらいかな。
「人間兇器」の初出は1979年から1985年の週刊漫画ゴラクと長期連載ですが、途中で原作者の暴力事件を原因とする逮捕、そして闘病も重なり一年半ほど休載しています。それでもとにかく完結して、単行本はゴラクコミックスで全23巻。

単行本の巻数で見ると「空手バカ一代」に次いで2番目に長い作品でしょうか。
その長さのほとんどをレイプ、浣腸、拷問に費やし…と書くと大げさかもしれませんが、とにかくそれらが繰り返し繰り返し描かれる不道徳な作品なので、好みは分かれると思います。私はまぁ、笑ってしまいながらも大好きですね。
完全に漫画ゴラク読者のオヤジ達に合わせたお下劣な内容ながら、やはり凡百のセックス&バイオレンス作品とは違う、梶原節なセリフ回しの良さも光ります。

主人公は美影義人。後に世界を股にかけて暴れ回るこの作品の主人公も登場時は中学生、舞台も日本の横浜で時は昭和30年。
本作のスタート以前にも問題児すぎて中学校をたらいまわしにされているらしい美影ですが、また教師を汲み取り式便所に叩き込み、告げ口(チツクリ)した女生徒のスカートを剥いてを教壇の上で尻叩きのお仕置き、学校を飛び出して伊勢佐木町での窃盗から追いかけてきたアメリカ兵士の黒人をドブ川へ叩き込む。警察に捕まるも取り調べの警官をぶちのめしたりと、ヤバすぎます。この導入部分で読者に知らせたい事は、この作品の主人公は常識外れのワル、そして正義の味方(ここでは「黄金バット」の名が繰り返されます)がヘド吐くほど嫌いという事。
家族構成も出てきますが、座布団売春している飲み屋を経営する母親(売春場所は2階にある美影の部屋)、それと3年前に麻薬がらみのイザコザで殺された男が父親。こんな環境なので美影はまるで家族に執着がなく、ここで少年院送りになりますが出た後もこの母親は話題にすら出てこない…と言いたいところですが、実は2巻でと後の話になりますが、炎熱と煙地獄に燻された時に回想だけながら母の面影がよぎっています。
そこまではまだ、世間なりに親子の愛情が残っていたという表現でしょうか。その後もロッキー山脈でグリズリーに食われかけた時とか、やはり回想で1コマだけ出たりもあったのですが、話題にも出ないままどんどん忘れていった感じでした。

美影はまず神奈川少年鑑別所に送られますが、ここでも暴れて部屋の主をぶちのめしています。そしてもう一つ重要なのは身体検査のシーンか。少年達の裸を点検し続けている係のおじさんが大げさに魂消ていますが、そうです美影は人並み外れてあれが『でかい』のです。
この時はただのケンカの天才だった美影は後に出会う空手で鍛えていくのですが、それは男用の兇器。こちら生まれ持った『股座の凶器』では女達を操る事になります。ちなみに中一の時に初テスト済みだそうです。

鑑別所の次は横浜家庭裁判所で判決が下り、武蔵野特等少年院に送致される事となりますが、この裁判官が『心を入れ替え更正の日々を送りなさい』とか言ってるのに切れて、何と裁判所内で裁判官席に突入して、
『かるがるしく吐かすなあ!!
 これから家に帰っておまんま食って かあちゃんとオ××コして寝る野郎がよ!』

と言いながら裁判官を蹴り上げるのだから、もう気持ち良いほどの凶暴性。

こんな美影が、さすがにレベルの違うワルが集まる特等少年院ではおとなしくなるか!?
確かに最初は剣持浩介という男、シャバでは右翼テロ少年の政治犯で殺しをやってのけてる大物が登場して美影もぶちのめされ、梶原原作の少年院ネタでおなじみの『ねじりんぼう』と『パラシュート部隊』(本作での呼称は単にパラシュート)を喰らい…
完膚なきまでにやられた美影ですが、これで骨抜きにされるようなタマではありません。気を失いそうになりながらこの中で自分の中の凶器を磨き抜く事を考え、
『生き地獄を住めば都に変えたとき……美影義人は本物の凶器になりおおせる!』
と誓うのだから、この挫けないメンタルの強さは見習いたいもの。
集団の力で体を土中に埋められて頭から小便かけられる屈辱にも、『これも凶器の鍛えられる過程』と耐える。

しかし美影は特等少年院五百名のボスとして君臨する剣持に、隙を見つける…
それは剣持が女神のように大事にしている美しい姉。美影は逆転のチャンスとみて弟の面会に来た姉を豚小屋でレイプ!その処女を奪って写真まで撮りまくるのだから酷いけど、こんな男が今作の主人公なのだからしょうがない。
そのフィルムを種に剣持をぶちのめし、下克上するのです。少年院で出会う憎い奴なんだから、本作ではこの剣持浩介が「あしたのジョー」における力石徹のようなライバルなのかと思いきや、あっさり作品から退場。
それから不平分子を粛清していった美影が特少のボスとなって特権を手にするのですが、その特権として作業さぼりやメシ食い放題なんてのはともかく、『美少年との男色行為』もあるのが凄い。
そんな環境を楽しみながらも一人で図書館に入り浸って六法全書を読み込んだりしていて、持ち前のIQの高さに加えて勉強した事も己の凶器として役立てるべく学んでいく。

そして特等少年院を出所。
まずは"ピンクサロン美麗"でバーテンを始めますが、美影義人がまっとうに働くタマじゃないのはご存知の通り。店のナンバーワンであるルナを犯すと、股座の凶器の力で女をメロメロにして貢がせ始めるのです。しかも美影が指定する金持ち客と売春させ、また同じ手口で店の他の女にも貢がせて。
そんな股座の凶器ばかりを活かした生活をしながらも、『頭(ヘッド)も肉体(ボディ)もとぎすまさんことには天下一の凶器にのしあがれずさびついちまう』という事で出会ったのが、"日本空手道 空心会"
そしてその総師・・・・大元烈山!!この国内に数十、海外に数百の支部を有する巨大カラテシンジケートの首領はかつて数百人のレスラーやボクサーとも戦って全勝し、牛や熊とまで戦ったという"神の手(ゴッドハンド)"の持ち主。ええ、もちろん大山倍達がモデルである事は言うまでもない人物ですね。

大元烈山館長に見込まれ、茶帯まで昇級した美影は、街のチンピラ3人をあっさりぶちのめした後で改めて空手の力を痛感しますが、その場に現れた暴力団の用心棒は、総髪で長身の空手家・桔梗十八郎
美影はあっさりのされてしまいますが、後で知る所によればこの桔梗、かつて空心会で本部師範代まで上りつめた天才でしたが、その空手は鹿児島で流派を開いている"旭掌拳"のために学んでいた事がばれて破門となった男。まだやっと茶帯の美影がかなうわけもない相手でした。
美影はいつの日か桔梗をブッ倒す事を誓ってますます空手修行に打ち込むのですが…
剣持浩介なんかと違って、桔梗十八郎はこの後本作で全編通して登場する事になる重要人物。そもそも桔梗が旭掌拳のためにスパイみたいなマネしたのは、その旭掌拳当主・朝日奈薫子を慕っているがための事。この薫子は古代・琉球拳法の流れをひく旭掌拳の当主だけに女だてらに達人、しかも美女ですが、ある理由から盲人となっています。その性格はもう、聖女のようと言うしかありません。

美影義人は股座の凶器の力で支配している女たちがいましたが、ルナは暴力団たちによって逆さ吊りにされて(出た!)、その状態でパンティを取られると…力のある暴力団側について他の女達と共謀して美影を裏切り、今まで稼がされた金を持って去りました。
そしてボロボロになった美影ですが、これで目の色が"無"になって空手道の入口に立ったと評価され、大元館長自ら熱心に教えてくれる光栄にあずかって鍛えられ、初段を許され黒帯を得ると新設された鹿児島支部に送られます。
この鹿児島県は都道府県で唯一空心会の支部がなかった土地で、桔梗十八郎が率いる旭掌拳の縄張り。当然対立する事となり、とてもかなわぬ桔梗に追われて山中に逃げ込みますが、そこにハイキングに来ていた女子5人を人質に取り、裸に剥いて四つん這いにさせたりと非道の限りを尽くし…でもついに桔梗の手に落ちて殺されかけると、そこに大元館長が登場してかつての弟子・桔梗を倒したため美影は助かり、同時に空心会は鹿児島を獲るのでした。

ここまででまだ2巻。
しかし普通、漫画の主人公というのは自分より強い敵に立ち向かっていき、いつかは乗り越えるというのが定跡じゃないですか。自分の命を顧みずに強敵に挑んで…ねぇ。
でも現実ではそんな奴はバカで早死にする結果になるだろうし、本編の主人公はとにかく弱者には強い!こんなの通常の格闘漫画のルールから外れまくりだし、とても「あしたのジョー」と同じ作者が書いた物語だとは思えないでしょうが、、ある意味で目からウロコな作品。
また次回よりこの続きを見ていきましょう。


女どもよ こっちからサラバ……
この地獄の底の充実感に比べては
おまえらと粘膜こすり合わせる陶酔なんざ 浅い 浅い



  1. 2016/10/10(月) 23:59:42|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

梶原一騎(68) やまさき拓未 1 「英雄失格」

今夜は梶原一騎原作、やまさき拓味作画による「英雄失格」(小学館刊)。
KAJIWARA-YAMASAKI-hero-disqualification1-2.jpg

本作の作画担当、やまさき拓味先生もこのブログで紹介するのは初めてだったと思います。1949年生れの和歌山県出身で、1972年のデビュー作が梶原先生に次ぐ漫画原作者の巨匠・小池一夫先生を原作に迎えた「鬼輪番」
それからも代表作の一つとなった「青春動物園ズウ」を筆頭に小池一夫原作が多いのですが、私にとっては1990年代に週刊少年チャンピオンでよく見かけていた作者という印象も強いです。特に競馬漫画「優駿の門」シリーズは長く続いてました。

この「英雄失格」は1977年から翌年の週刊少年サンデーで連載していた作品で、オリジナル単行本は少年サンデーコミックスで全6巻。サブタイトルとして小さく『アンチ・ヒーローたちの詩』とあります。
梶原作品には珍しいオムニバス形式で、7つの物語が描かれます。タイトル通り英雄失格した敗者たちを、全編に登場する主人公というか狂言回し役の"オールスポーツ新聞社"記者・宇井無策の目を通して。
この宇井無策は28歳にして腹は出てフケだらけの不潔さ、黒縁メガネのブ男。しかもガキの頃からひどい運動音痴だったからこそスポーツ全般に憧れを持ち理論だけは詳しくなり、人間コンピュータと呼ばれるほどの知識を活かしてスポーツ記者になったという男。よって野球だけの担当とかにならず、全種目を受け持つほど優秀ではあります。
そんな彼が出会い、応援するも挫折していく様々なスポーツ界の男たち…

第1話は、『グラス・ジョー』。
まずはボクサーが題材です。ボクシングのフェザー級で若きKOキングとなったシャーク・南波が、全日本新人王決定戦で先天的なグラス・ジョー、つまりガラスのようにもろいアゴの持ち主だったと判明して負けてしまいます。
この弱点は致命的で、筋肉のある場所と違って下アゴの生まれつきの弱さだけは鍛えようがない。そしてアゴの防御に徹していてはせっかくの殺人パンチも活かせず、再起戦も失敗。
しかしシャーク・南波はそれでも勝てる秘策を思い付き、とんでもない訓練を始めるが?!
変則すぎる奇想天外なスタイルが見ものですが、やはり悲劇が待っています。まぁタイトルからも勝って終わりはしない事もバレてしまっていますけどね。

第2話は、『怒れるネッシー』。
プロレスラーが題材です。日本の、それも商売が下手で弱小団体である"東洋プロレス"から登場した日本人の覆面レスラー、ミスター・ネッシー。体格にも恵まれており、厳しいトレーニングで鍛えた技で圧倒的な強さを見せるその尾男には、悲劇の過去があった…。

ここでミスター・ネッシーの過去を語るため、この短い話の中で数話を使ってネッシーの父編になりますが、その父もアメリカのプロレス界で活躍した日系プロレスラーでした。太平洋戦争時にアメリカに移民していたので日系人は敵国民とされてジャップ・ハウス(日系人収容所)にブチこまれていたのですが、終戦後は体格が良いのを見込まれて反日感情を利用したヒールとしてリングに上がるようになりました。ゼネラル・トージョーのリングネームで闘う彼は、もちろん同じ梶原一騎原作の「空手バカ一代」でおなじみのグレート東郷がモデルですね。
彼の国辱プレイと『テンノーヘイカ、ばんざーーい!!』とか言ってやられる姿は少年時代のネッシーには我慢がならず、実力も無い父親に英雄レスラーになる事を求めるのですが、ゼネラル・トージョーも子供のためそれに答えてストロング・スタイル(実力派)に転向しようとしたのが悲劇の始まりでした。ボクシングのジョー・ルイス、空手家の大山倍達にコーチを受けた後に、リングの上で真剣勝負をするようになったゼネラル・トージョーは、アメリカ中のレスラーを敵に回して毎日ボコボコにやられ続け、ついには廃人になった後に淋しく死んだ。

それからミスター・ネッシーは父の遺産を全て自分を鍛えるためにつぎ込み、大山倍達の空手から始めてありとあらゆる格闘技をマスター。そして誕生した格闘の天才怪物は、プロレス界に復讐を始めたというわけです。
この後でミスター・ネッシーは敵地アメリカに乗り込んで大暴れ。プロレスの本場のレスター達を相手にも無敵の強さを見せていき、ついに史上最強のレスラーとの呼び声高きルー・テーズとも引き分けて(テーズは60歳を越えていましたが)、ブームも起こし本物のスターになったミスター・ネッシー。
しかしこれでは『英雄失格』にならない。誰も勝てない実力を持つ彼を倒した強敵は、何と女でした。アメリカ・プロレス界のギャングどもは美女を使ってターゲットを骨抜きにする手を使うそうで、少年時代からの過激な特訓で顔を打たれ続けて覆面の下は醜い怪物のような顔になっているミスター・ネッシーだからこそ女には弱く、墜ちてしまった。
金も女も、さらに鍛えた体も失くした彼はそれでもリングに戻り、今度は醜い素顔をさらしてミスター・フランケン・シュタインとして哀れにも父同様にピエロ的な悪役レスラーにおちぶれる。これはむごい…不憫すぎる結末でした。だからこそ、悲劇の傑作。

KAJIWARA-YAMASAKI-hero-disqualification3-4.jpg

第3話は、『壁』。
野球選手が題材です。家は貧乏な百姓で勉強もダメだったが、野球だけでは英雄になれた岩瀬勇三は甲子園で活躍してドラフト一位でプロ野球入りするも、ヒザを壊して5年間も壁(決して試合に出場したりする事はなく黙々と投手の調整の相手をつとめるだけの捕手)となっていました。
彼の登場シーンも凄いなぁ…で、その壁にもブライドや野球選手としての夢があり、ある卑怯な手段でまさかの一軍登録、試合出場を続ける事になるのです。その手段とは、5年の壁生活で自分のチームの投手陣の長所や短所を精密に記したノートを敵対チームに売り渡すぞと監督を脅迫する事!
それで足は完治していないのにまんまとレギュラーになり、また盲目の妹のために頑張っている事をマスコミに書き立てられ、岩瀬ブームまで巻き起こりますが、黒い手段でのし上がっても必ず悲劇は訪れる!
野球を愛し、野球だけしか出来ない男の野球に対する執念を描いた点でも傑作エピソードでした。

第4話は、『邪道拳』。
空手家が題材です。所かまわずケンカを売って強さを誇示する若き空手の天才は、豊島区目白に本部を置く最強の実戦空手道場"徹心会"の指導員・芦川栄光
その師匠は、かつて世界のあらゆる格闘技と戦って全勝してのけ、ついにはクマまで倒したという超人・大東徹源。おお、この人物は同じ梶原一騎原作で中城健先生が作画を担当した傑作『カラテ地獄変』シリーズからのスピン・オフですよ!もちろん大山倍達をモデルとしたキャラですが、本作ではその大山倍達本人が別エピソード(『怒れるネッシー』)で登場しているのに起用されているから驚きです。

その芦川栄光が偉大すぎる師を越えようと徹心会を飛び出し、『ケンカ十五段』を自称して自分の流派、地上最強の新格闘技"ザ・ケンカ"を立ち上げる!
しかしケンカ十五段って…ええ、するとこちら芦川栄光の方は同じ梶原一騎原作が生んだ名作「空手バカ一代」で有名になった実在の人物、芦原英幸をモデルにしている事が分かりますね。芦の字が共通しているし、しかも『ケンカ十段』を名乗った芦原英幸より五段も上乗せしている。
芦川栄光はキックボクシングやボクシングのリングにも乱入して相手を倒すケンカ狂ぶりを見せますが、ついに絶対的な強さのカリスマであった大東徹源とも決闘して勝ってしまうのです。これは、師の深い思惑があったのですが…

それでも芦川栄光は止まらなかった。これもある理由から、今まで相手してきた敵とはわけが違うマーシャル・アーツの全米ライト級チャンピオンにして45戦を全てKO勝ちしている天才、ホセ・ロザリオへ挑戦する!
マーシャル・アーツ…今度も同じ梶原一騎原作から「四角いジャングル」が思い出され、ホセ・ロザリオというキャラクターはベニー・ジェット・ユキーデがモデルになっている事が容易に予想出来るでしょう。しかし、「四角いジャングル」に関してはほぼ同時期ながら発表が本作より後の作品!エピソード『邪道拳』は「四角いジャングル」が始まった1978年の発表ですが、「英雄失格」の方で微妙に早くマーシャル・アーツ(軍隊格闘技、この解釈については梶原一騎先生の創作)について一通り説明していたのかも。
とにかく芦川栄光は最後にホセ・ロザリオと刺し違え、そして消えていったのです。

第5話は、『鬼と仏』。
柔道家が題材です。今度の主人公はダルマの異名を取る巨漢柔道家・大元辰麿。梶原先生は「柔道一直線」を始めとして柔道漫画もいくつか手がけていますが、巨体のキャラが敵じゃなくて主人公側というのは全作品を通しても珍しい。まぁ、この前に同じ少年サンデーで描いた「天下一大物伝」も、主人公は巨漢ですが…
熊本県の柔道大会であっさり優勝した彼の天才ぶりに目を付けたのが、オリンピック柔道チームの天坊周平監督。当然スカウトされ、幼い弟や妹達を養わなければいけない貧しい家庭の生活費を保証してもらう事で上京し、オリンピックに向けた強化合宿入りするのでした。
この境遇と巨体、熊本出身という所まで同じ梶原一騎原作の「巨人の星」の左門豊作と共通しますが、梶原先生は熊本県に対して貧しい農村ばかりだというイメージを持っていますよね。いや、他にも熊本出身キャラは創作していますが九州男児の姿として好意的に描いているし、祖父が熊本県出身であるのみならず自身も熊本県出身と詐称したりしていましたから、憧れもあったのでしょうが。

大元はダルマの異名通り決して転ばず、凄まじい一本背負いを持つ男。しかし仏の心を持っている、つまり優しすぎる男でした。
それがヘーシングやルスカにやられて柔道世界一の座を外国に取られていた日本チームを率いる天坊監督には許せず、鬼の心を植えつけられようとしています。
何しろ柔道発祥の国でありながら重量級で外人にやられ続けているのがトラウマになっている天坊監督、
『外人柔道家ちゅうのは、どでかいだけでのうて 肉食人種だけに性格が残忍じゃ。
 日本柔道家の"強いだけが能でない"とかちゅうバカげた精神主義が、その残忍な勝負欲に負けたのも敗因よ。』

と持論を持っています。
そこで柔道の特訓以外にも大好きな犬を今夜のうちに三匹殺してこいとか、熊本に残している家族の生活をたてにして命令するのだからひどい…私も同じ犬好きとして、そのシーンは見たくない!

ともかく迎えたメキシコオリンピック!
…って、これは1968年の話だったのか。ここで心優しい大元は、天坊監督によるある陰謀で心を鬼に仕込まれてヘーシングやルスカの後輩にあたる憎きオランダ代表・ガウストンに対しては別人のように荒っぽい柔道で戦い、相手を脳天から叩きつける形でぶっ倒して見事に重量級で金メダルを獲得しました!!
そして、そのまま翌日の無差別級にも出場した大元ですが、ここでまた仏心を出してしまってまさかの小兵に負けてしまいました。体重100キロを越える大元が70キロ程度のザコに負けたとあって、前日の金メダルのありがたみも無くなり、むしろ日本中からの笑われ者に落ちて天坊監督からも追い出されました。

でも、捨てる神あれば拾う神あり。大元は日本が生んだ世界のプロレス王、グレート・海竜に多額の契約金と共にスカウトされて、プロレス生活に入る事になりました。
そこで一度は成功を収めるのですが、グレート・海竜と戦う事となり、これが現実の世界で伝説となっている木村政彦VS力道山のいわゆる『昭和の巌流島』をトレースした結果になりました。
でも、これでいいのです。天才すぎる柔道の素質は活かせなくなるかもしれませんが、大元は熊本に帰って百姓に戻り、そこで幸せを見つけるのでしょう。

KAJIWARA-YAMASAKI-hero-disqualification5-6.jpg

第6話は、『キック地獄変』。
キックボクサーが題材です。オールスポーツ新聞社の宇井無策は屋台のコップ酒が専門かと思いきや、年に二度の密かな楽しみとしてボーナスが出たタイミングで一流のサパークラブで音楽、そして高価な料理とワインを楽しんでいます。一人で、なのが淋しい所ですが…で、ここでたまたま呑んでた空手界の実力派、一閃館の海道修作館長がタイ式キック・ボクシングの王者スクーム・チャイワットに蹴り殺される場面に遭遇します。
それから海道館長の一番弟子であり全日本大会で二年連続優勝している本郷光昭が、キックの本場タイに乗り込んでチャイワットへの復讐を果たすのがこのエピソードの主題。

空手の天才がキックボクサーに転向し、日本チャンピオンの座を獲得するとタイへ飛び…
と、このエピソードは過去の梶原一騎原作作品でいうと「紅の挑戦者」に近い。タイの首都バンコクの描写や、賭けで成立しているムエタイ興行について一通りの説明があり、それを利用した本郷光昭の策なども描かれるのですが、このエピソードでは何と!不通に師を殺した相手に対して復讐が成り、ある恋愛も上手くいって終わるんですよ!
いや、普通の物語なら問題なのですが本作は『英雄失格』と銘打っていますからね…まぁキックの世界で英雄になったのに自ら英雄失格して空手界に戻った、という事ではあるのですが、何だかね。

1つ前のエピソードでもある意味平和な終わり方をしましたが、ここではもうハッピーエンドですから。
主人公が破滅する事に耐えられなくなったのか?この作品においては、悲劇の度合いが無くなるとやはり凡作になっています。

でも最後、第7話は『不滅の挑戦者』。
ボクサーを題材としたこのエピソードは、本作のタイトルにふさわしい悲劇を描いてます。
オールスポーツ新聞社の創刊20周年を記念した連載記事を書くために宇井無策がどっさりと資料を渡され、調べるうちに筆者である宇井が泣きながら書き上げたのは…カール・シュミット一代記。
ヒットラーのナチスが勢力をつけた時代のドイツ、そこでケンカ屋カールと呼ばれていた浮浪児の少年がボクシングと出会って大成していくのですが、彼はヒットラーを嫌い、いかなる強大なチャンピオンよりも恐ろしい独裁者に挑戦し続けたのでした。

これまでわざわざ書いてきたように、「英雄失格」にはこれまで梶原一騎先生が生んできた様々な作品の要素が少しずつ入っているのですが、このカール・シュミットの人物設定はまさに「あしたのジョー」の主人公・矢吹丈ではないですか。
そして途中で、
『「英雄失格」は本編、「不滅の挑戦者」にかぎり実話にもとづいている!
 そして、最大の怪物ヒットラーに挑戦した浮浪児あがりの天才ボクサーは…』
と原作者の言葉が入ります。するとカールがジョーのモデルとなった人物なのか!?いやそれは梶原先生らしい所で、調べてみたらカール・シュミットなんてボクサーは実在しませんでした。

その後カールは国民のヒーローとなっていくにつれ、何度もナチスの宣伝に利用されそうになりますが、常に拒否。
しかしゲシュタポに捕まったマネージャーのクレーマーを助けるため、ついにヒットラーの演説会の壇上には上がりますが、
『クワッ………ヘドの………ヘドのでるツラだぜ…自由の敵のツラは…………』
と花束をヒットラーの目の前で落とす。
さらにユダヤ人のボクサーをブチのめすように命じられたリングで片八百長をしてわざと負ける。
かくして、ヒットラー総統に敬礼を拒否したただ一人のドイツ人、カール・シュミットはゲシュタポに逮捕されるのでした。ゲシュタポの拷問にも音をあげず抵抗し、強制収容所まで送られても反抗を続けたカールは射殺され、ようやく求め続けた自由を手に入れた。

梶原先生がずっと描いてきた、そしてまだ描きたかった格闘技・スポーツ物を、英雄失格した敗者たちに焦点を当てて描いた本作。
オムニバス形式なため1話1話が他の傑作長編のように深くはないのかもしれませんが、梶原一騎&やまさき拓未というビッグネームが残した作品であり、地味ながら名作なのに1970年代後半の少年サンデーコミックス以来、一度も復刻されていないのはどうしたわけでしょう。
現在では不適切とされる表現も、そこまでヤバそうなのは見付からないのですが。『キック地獄変』の中で、タイに乗り込んだ本郷光昭が現地のキックボクサーに『カタワになって日本へ帰るがいいッ!』と言われていますが、これはよくある事でセリフを改変すれば(私は好きではありませんが)、普通に出版出来るでしょうに。
そんなわけでもう30年何年間か絶版なままの作品なので巡り会える方は限られていると思いますが、もっと多くの方々に読んでもらいたい!
余談ですが、昔の少年サンデーコミックスってカバー紙にコーティングされてなかったじゃないですか。そのコーティングされていないとカバー紙って、すぐ痛むんですよね。そしてこの作品が順次出版されていった1978年こそがコーティングされ始めた時のようで、7月までに出ている1~3巻は無し、8月から出ている4~6巻は有り。だから私も含め、大抵の初版揃いセットで所持しているコレクターのは1~3巻の状態の悪さに悩まされているのではないでしょうか。


英雄(ヒーロー)とは一種の人食い人種、
なにしろ多くのイケニエをパクパクむさぼり食って
大きくなるんだからな。



  1. 2016/07/31(日) 23:00:08|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

梶原一騎(67) 大島やすいち 1 「天下一大物伝」

今夜は梶原一騎原作、大島やすいち作画による「天下一大物伝」(小学館刊)。
KAJIWARA-OSHIMA-tenkaichi1-2.jpg

1975年から1977年の週刊少年サンデーで連載していた作品で、オリジナル単行本は少年サンデーコミックスで全8巻。
実写でテレビドラマ化もされた作品なのですが、現在ではよほどの梶原ファン及び大島ファンでないと知らない、忘れられた作品の部類でしょうか…

そうだ大島やすいち先生は私にとって少年時代からなじみの深い漫画家ではあるのですが、このブログで紹介するのは初めてでした。1954年生れの京都府出身で、17歳でデビューして以来ずっと第一線で活躍している方ですね。
個人的には将棋好きなので初期の将棋漫画「駒が舞う」は外せませんが、一般的な代表作としては1970年代の「おやこ刑事」(林律雄原作)、1980年代の「一撃伝」「一撃拳」、そして「バツ&テリー」の名が挙がるでしょう。
私も1980年代後半からのアクション物をよく読んでいまして、月刊少年マガジンでやってた「K・O」とか名作だったと思うし大好きでしたが、周りに誰も知っている人がいないのは淋しい限り。
1990年代には既に活躍の場が青年漫画誌に移っていた印象で、しばらくリアルタイムではあまり読んでなかったのですが…2000年代に池波正太郎の「剣客商売」の漫画版を描き始めてこれが未だに続いているので、現在は「剣客商売」の人、として知られているのでしょうか。

で、この「天下一大物伝」
連載開始の1975年は大島やすいち先生が最初のヒット作「おやこ刑事」を描く直前期なのでまだこれからの時期に当たり、梶原一騎先生にとっては漫画における目立ったヒット作は書き終えて経歴の後期に差し掛かり、代わりにあの三協映画を設立して映画制作、芸能界への進出を始めた年に当たります。

物語の主人公は無双大介
九州は小倉の玄海高校で相撲部・柔道部の主将を兼任し、そして大番長で『二代目無法松』と異名を取る豪傑。体型も梶原漫画ではあまり主人公にならない巨漢タイプで、初登場時に祇園祭りで大暴れしてメチャクチャにしたのですが、2回目は…
その数日後、当代随一の人気アイドル歌手・明日香ルミのコンサート。大介も彼女の熱狂的ファンだったのですが、そのルミちゃんが小倉に来たので応援にかけつけて無理矢理に握手を求めると、これはルミちゃん怖がるしかないシチュエーションで恋人と噂される花村ヒロシが登場して大介を蹴りつける!
大介はここでヒロシをぶちのめしたところで割られた男一匹の眉間にはとうていひきあわん、として暴れず冷静に、そして宣言したのが『三年以内に明日香ルミを嫁さんにする』という事。

この時に蹴られて発奮した事が、
『日本のゴッドファーザー!日本のオナシス!!
 大物のなかの超大物・無双大介が、のちに出現するきっかけとなった』

というわけです。
よって大介がタイトル通り大物街道を突き進んで行くのであろう事はプロローグとも言える冒頭部分でもう分かっているのですね。しかし、どうやって?読者が知りたいのはそこであり、出来るなら自分もそんな大物になりたい所でしょう。

あとは無双大介が、どでかい大物、日本のオナシスと呼ばれるまでになる過程を描くのがこの「天下一大物伝」
両親は既に死別していて、祖母と二人暮らしだった小倉の生活は捨て、もちろん高校も中退して上京した大介。まずは明日香ルミのコンサートでの出来事が『世紀の珍ファン出現す』だの『精神異常者か!?』などと書かれていた事を知り、男の純情をもてあそんだ週刊芸能に乗り込んで編集長、副編集長の男女二人に対して出ました梶原作品の定番、足首掴んで窓の外に逆さ吊りです。
そのまま逮捕されて築地警察署のブタバコでは、暴力団の幹部どもを全員シメて手下にする怪物ぶり。腕力の強さだけでなく底知れぬ包容力もある男なので、1ヶ月のブタバコ暮らしが終わって出てくると暴力団たちがズラッとお出迎え。
それからルミちゃんの婚約者になった花村ヒロシが、実は財閥の令嬢と二股かけていた事を知り、ある方法で思い知らせてやるのですが…

大介は、ルミちゃんに渦巻く黒い霧を知ってしまいます。
かつて貧乏長屋のおてんば娘だったルミちゃんですが、芸能界入りした結果として母親が金に狂ってステージママとなり 家庭崩壊しています。その母親が次はその野心ゆえ"旭東興行"という芸能プロへと移籍させたのですが、この旭東興行は関東一円を支配する大暴力団の朱紋組が付いていました。そして手がけたタレントは骨までしゃぶられてみじめな末路を辿る事になる…
それを知った大介は朱紋組相手にも一歩も引かずに大暴れしますが、ついに世間に朱紋組との黒い関係がスキャンダルとして広まるようになると没落。キャバレー廻りで酔っ払いに絡まれながら歌う所まで落ちぶれましたが、大介は自分が金も力もある大物になってルミちゃんを返り咲きさせる事を誓う!

KAJIWARA-OSHIMA-tenkaichi3-4.jpg

1年ほどの時が経ち、ルミちゃんはドサ回りを続けてギャラ5,000円の村祭りで歌っていますが…歌手としてはただのアイドルを脱皮して魂を歌える本格派に成長しています。
そして無双大介。本当に事業家として成功してテレビの歌番組のスポンサーになり、最高級キャデラックでルミちゃんを迎えに来ます!
大介は小学校の時に死んだ酒飲みで船乗りだった父が残した海図から、日本海に眠る海底大油田を見つけたという事である会社の社長に就任したのですね。これで花の東京に乗り込んだ目的通り、歌手の明日香ルミを妻にする事で話が進んで…しかし、その後の調査で油田は北朝鮮の領海である事が分かって海図は紙切れに。
大介は社長の地位も失ってしまうのですが、それでもルミちゃんは恩は恩だからと無双大介と結婚する宣言をします!そこは泣いて喜びながらも、しかし力を失い役にも立てなくなった今の自分ではカムバックしたルミちゃんの将来にとって明らかに足手まとい。再び会う事もなく、黙って去ってルミちゃんの前から姿を消すのでした。
男の中の男の姿を見たルミちゃんの弟は、その背中に向かってシェーン!!カムバック!!…じゃない、無双さぁ~ん!!と声をかけて泣くのでした。

作品のエンディングみたいになりましたが、まだ無双大介はちゃんとした大物になっていない。まだまだ続いて次の挑戦、次の恋へと続きます。
気力の失った大介のアパートへ故郷から祖母がきてやり直すようにハッパをかけ、大介はまず職を探すも彼のどでかい素質・スケールに納まる仕事はそうそうない。夜の街をブラついていると、ある学生のアルバイト易者に声をかけられるのですが、そこで
『万人にひとり、いや、一億人にひとりの天下をとる相!!』
と視て大介についてくる男…デコッパチのチビな彼は孔明一郎、通称ナポレオン。IQ180の天才ですが、自分の運命は大介のような男と出会って大仕事をやる事だったそうで、自分の大将となる男・大介と出会ったからには易者も廃業し、大介と事業を始める事になります。

大介の方もパートナーに続いて、作中第二のヒロインで女医の卵・水の江洋子との出会いがありました。
ある事で大介の命の恩人にもなった彼女に惚れて、彼女を女医にするサポートをするため肉体労働に勤しみ、それから1台のダンプカーをレンタルしてそれを元手に資金を増やし、ついに自分持ちの車を買えるまで軍資金が貯まると、"有限会社 無双運輸"を立ち上げます。
大介が社長でナポレオンが専務、この2人と1台のトラックで始めたこの会社は頑張って順調に業績を伸ばし、トラックの保有台数も大介を慕う社員達も増えていくのでした…

洋子は看護婦としての激務をこなしながらも、ついに女子医大の試験に合格。入学金や寄付金が最低1千万円かかるという馬鹿げた制度も大介の資金援助でクリアしました。
しかし大介はここまで尽くしたために、逆に彼女を遠い世界にやってしまったのです。世間的にはトラック運転手と女医のカップルなどありえませんからね。で、特に美人な洋子にはこれまた女子医大の中でも生徒達の憧れの的となっている知的でハンサムな、しかも大ブルジョアの御曹司である葉山助教授が近づいていき、恩人ながら無知で粗野な大介は嫉妬に狂う…

KAJIWARA-OSHIMA-tenkaichi5-6.jpg

それでも無双大介、そんな助教授よりどでかい財産ばきずけばよか、というわけで無双運輸を踏み台にバリバリ新事業をおっぱじめる事を鎌倉の大仏の前で誓います。
新たに"株式会社 無双商事"を設立して始めた事業は、飲食業。9階建てのビルを丸々借り切って全部食堂、それも世界中の料理を大量仕入れのコスト削減でボリューム満点に出しまくる、『くいまくり会館』というアイデアを実現して大成功させるのです!

葉山助教授とはその後、水の江洋子を巡る恋争いだけでなく彼のバック、葉山財閥が商売の方でもくいまくり会館を潰すために動き出しました!
特に葉山助教授の妹・カオリというのが世界一周してユダヤ人の大富豪や実業家たちのもとで勉強してきた女。ユダヤ人という『おカネを命よりだいじにする民族』に学んだ信念で資本力を武器にぶつかってくる。
なにしろ大介のくいまくり会館の目の前に倍のスケールを持ってより安い"のみくいスーパー天国"をぶっ建てるのだから凄い。もちろん大介の方もまたある秘策で対抗し、またカオリも。
盛り上がってきたこの料理戦争の決着は、やはり飲食業の最大の命である『味』で決まる事になるのですが、ある大名人を味方につけて味を制した大介側に軍配があがりました。ちなみにこの名人が作った、ただのソーメンを称える美味さの表現が素晴らしいし、この時代には珍しい美食漫画としても楽しめるのでした。
しかし恋の争いの方は…ついに大介に惚れた洋子ですが、大介はまた洋子の将来を考えた末に自分が悪役になって身を引くのです。嗚呼、真の男の姿よ!

今回は恋には破れた(というか自ら引いた)ものの、事業では勝っています。若き食堂王と世間にも認知される存在になった無双大介の、次なる勝負の場は…!?

KAJIWARA-OSHIMA-tenkaichi7-8.jpg

ある日、無双大介が大成功させたくいまくり会館内で、プロレスラーの一行と大相撲の一行が大喧嘩をやらかします。
格闘技の王者はプロレス、天下無敵は相撲だと、どちらも譲らずに乱闘になったのですが、どの格闘技が一番強いのかは確かに誰もが気になる所。ここからヒントを得た大介が次に手がける新事業は、格闘技大会のプロモーター。
今度は"無双興行"を設立するのですが、無双が主催してやる事なので当然スケールがでかい。何と世界中の強い格闘技、それも一流どころの格闘家を集めて本当の世界一を決める『格闘技オリンピック』の開催です!!

この手の大会には共通するルールが無いため、寝技有り無しからあれが反則でなければ等々と出てきて結局はどっちが本当に強かったのかは分からず仕舞いの結果になるものです。ルールを作れば、『そのルールでは』強い者が勝つだけだし…
しかし!大介が構想するこの格闘技オリンピックは、何と『時間無制限 どちらかが完全にノビるまでのデス・マッチ』だといいます。
こんな夢の大会に乗り込んできた参加者を見ると、アメリカのプロレス、同じくボクシング、タイ国のキック、香港のカンフー、韓国のテツコンドー、アフリカのカポエラ、ソ連のサンボ、全ヨーロッパのプロ空手、トルコ相撲、イランの拳法、日本の大相撲、プロレス、講道館柔道、徹心会のケンカ空手と、怪物達を一同に集めてしまいました。
この中で当時まだ梶原漫画読者以外には無名だったのは、カポエラくらいかな。黒人ドレイ達の間で密かに発達した呪われし格闘技、云々と歴史的には事実無根ながら梶原一騎得意の例の説明が入ります。

会場は後楽園球場。
しかしすんなりチケット完売とはいかず、大介は莫大な借金を背負う事になるかという時に、あるトラブルを逆に利用してこの興行を成功させます。一世一代の大勝負に勝ったぞ大介!
でも読者はもう大介の成功より、格闘技漫画としての興味が強くなっているかな。実際のところ、どの格闘家が世界一になるのかと。しかも専門的な格闘技漫画ではない分、選手一人一人に対する掘り下げとか感情移入は全くないから、それが誰が勝つのか分からなくする効果を与えてもいますね。
そして繰り広げられる試合は壮絶。男の夢あふれる凄い光景で盛り上がるものの、ガチンコなので選手達は1試合でボロボロになっていき、総当りリーグ戦なのにリタイアして初日移行は闘えない選手が続出。

そこで助け舟とばかりに新参加の選手も来てくれますが、それが女子プロレス全米チャンピオンのマリリン・グレース。ええ、女子なのですが…これが一流の男子プロレスラーもフォールしてのけた実績を持つ実力派という事で特別に参加。
このマリリンと闘うのは、何とプロモーターである大介が覆面かぶって出てきた姿…へのへのもへじ仮面!
確かに二代目無法松と呼ばれた小倉の大番長であり、柔道と相撲も高校レベルでは敵無しだった大介ですが、どうにもみっともない試合で惨敗。
格闘技オリンピックは3日間興行のはずが2日目の試合を消化した時点でいよいよ参加選手がほとんど重傷のため中断し、優勝者も決まらないまま終わった!!(これはひどい)
それでも大儲けした無双興行、そして大介はマリリンに惚れる、と。また出ました恋の病、といわけで第三のヒロインはマリリン・グレースでした。

その後、マリリンをアメリカに帰さないために日本の女子プロレスで闘わせる興行を打ちますが、それから女子プロレス世界タイトルマッチの興行まで日本の地で実現させます。しかし、世界チャンピオンのワイルドキャット・キャロンにはマフィア系ギャングが付いていた…
この試合は真剣勝負でやらせたい大介はマフィアと交渉するも返事はノー。仕方なくマリリンに八百長破りさせて真剣勝負を実現して世界チャンピオンの座に着きましたが、試合後はすぐさま大介・ナポレオン・マリリンはマフィアに拉致されました。
大介はセメント漬けにされて海に沈められる準備が整いましたが、マリリンは痛い生き恥をかかせられる事となり、マフィアの手でムチ打ち。この金髪美女のブラがはじけ飛んでヌードになるサービスショットが続きますが…こういった拷問シーンも後期の梶原作品ではやたらと増えて行くのです。

詳細は省略しますが、マフィアに殺されかけて危機一髪の所も何とか脱した大介たち。マリリンにも愛の告白をされて両想いになったのに、やはりそれは恩や義理からの無理があるとか相手にとって足かせになるように感じて別れてしまうのでした。

はい、どんどん行って次。
大きく成長した無双関連会社ですが、さすがに大介が社員の顔も知らない規模になり、また仕事はやまとあるので悪質な者も雇ってしまい…そいつらが飲酒運転の上に12歳の少年をひき逃げする事件を起こしてしまいました。
その少年・一彦は両親も交通事故で亡くしていて小学校教師の姉・清田由美子と2人暮らしの境遇。そこへきてこの事故の影響で余命1年以内になったという。社員が犯したこの重罪を償うべく、大介は事業を全てナポレオンに任せて全てを少年の余生のため尽くすのです。

それでもやがて一彦は死にますが、臨終のベッドへ駆けつけた医者の2人のうち1人が明らかに手塚治虫先生の「ブラック・ジャック」似なのですが、同時期に連載していた他誌(少年 チャンピオン)のパロディをやっているわけですね。こういう小ネタは、さすがに梶原原作じゃなくて大島やすいち先生が独自に挿入しているのかな。
本作最後となったこの章はヒューマンドラマ仕立てで感動的な作りになっていて、第四のヒロインも既に登場していました。それは死んだ一彦の姉、由美子。一彦が残した日記でついに大介に心を許した由美子は、メガネを取ると凄い美人で、という恥ずかしめのお約束ネタですが、『かッわいかあ~~!!』と惚れた大介はこの人とはついに結ばれ、のちに結婚。

一彦の死のショックから一度は事業を捨ててもう立ち上がれないかもしれないほどに落ちた大介でしたが、慕ってくれていた一彦が日記に
『どうか、ぼくのぶんの命も生きて、でっかり事業をやりとげて………天下一の大物になってほしい!』
と書いてあった事で再び立ち上がり、無双タクシー、無双観光と新設しても業界の他者とは違うサービスで目覚しい成功を収めます。

そして由美子とアメリカ、ヨーロッパとまわった新婚旅行の帰路、間違えて覗いたエコノミークラスの乗客たちの窮屈な席で寝ている姿を見て、唖然としながら『まるでドレイ船につめこまれた、ひん死のドレイ集団ちゅうムードばい』とまで言うのですが、これがまた新しいビジネスにつながります。
無双汽船で楽しいレジャーをどっさり乗せた海外旅行を用意し、到着地では無双ホテルが待ち構えているし、海外ではおおっぴらに出来るカジノ場も作る。もう儲かってしょうがないし、すっかりカンロクも付いた無双大介は日本版ゴッド・ファーザー、日本版オナシスとして世界にその名をとどろかせた…つまり、タイトル通り天下一の大物が誕生して、物語は幕を閉じました。

冒頭で高校辞めて学生じゃなくなっているのにしばらく学ランを着ていた大介も、さすがに後半はスーツになってちょっと淋しかったな。
KAJIWARA-OSHIMA-tenkaichi-daisuke.jpg

大きく四章に分かれる「天下一大物伝」、それぞれヒロインと内容を記してみると、
第一部 明日香ルミ 芸能界
第二部 水の江洋子 グルメ
第三部 マリリン・グレース 格闘技
第四部 清田由美子 人間ドラマ
となっています。さらに全体をまとめて一人の男のサクセスストーリーになっているのだから、バラエティに富んでいますね。

梶原一騎原作には合う漫画家・合わない漫画家の差が激しい所がありますが、大島やすいち先生は梶原マンガを描くには画風が明るすぎるのかな。ちょっと違和感を感じる部分もあり、本作でプチ・ヒットしていながらこれっきりとなりました。
普通にハッピーエンドで終わる毒の少ない梶原作品が読みたいという方、そして無双大介のような大物になりたいという男にはお薦めです。


敵のでかさこわさなんぞ 眼中になかけん!! わしの異名は二代目無法松ばい!!
やるときめたらだれの力もかりず、忠告も無用、おのれの命かけてやりぬくまでたい!!



  1. 2016/07/14(木) 23:00:30|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する