大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(77) 「切人がきた!!」

藤子不二雄作品から、今夜は「切人がきた!!」(集英社刊)です。
FUZIKO-kirito.jpg

二人の藤子不二雄のうち、今でいうでいう藤子不二雄Ⓐ先生側の作品。
前回の「ココ」で予告した通り、今回は「魔太郎がくる!!」の登場人物である『切人』を主人公にしたスピンオフ作品です。タイトルも「魔太郎がくる!!」に対して「切人がきた!!」なので期待できるのですが、実は表と裏の顔を持つ幼児・切人が出てくる以外に関連はないかな...
初出は1994年から1996年までのスーパージャンプ、とはいえ不定期連載だったので数は7話しかなくて単行本はジャンプ・コミックス デラックスで全1巻。

偉大なる藤子不二雄Ⓐ先生が描いてきた偉大なる魔太郎の歴史を見てみると、
・「魔太郎がくる!!」、1972年~1975年の週刊少年チャンピオン(秋田書店刊)
・「魔太郎が翔ぶ」、1981年のヤングマガジン(講談社刊)
・「切人がきた!!」、1994年~1996年のスーパージャンプ(集英社刊)
ですから、時代は1970年代~1990年代、しかも少年誌の主要3出版社で描いている事が分かりますね。あとは是非いつか4社目・小学館の雑誌でも続編とかスピンオフを…

で、今回の「切人がきた!!」では切人が出ていながら魔太郎と関連がない事を書きましたが、しかも苗字も阿部から須麻に変わっているんですよ。つまり今回主人公に抜擢された切人は、須麻切人。
母親の名前は出てきませんが、阿部姓でなければ阿部真理亜、つまりアベマリアにならないじゃないですかね。それでもキリストと聖母マリアの関係は変わらないか。切人のパパも本作では単身赴任しているとの事で登場は無し。しかし、その友人で切人の正体も知ってるらしい『足長おじさん』というのが出てきて、その権力・財力でサポートする事があります。
あと「魔太郎がくる!!」時代に3歳だったのが、今回は1歳3ヶ月という設定になっているので、もしかしてこの後に何らかの事情で姓が変わり、魔太郎に会う...つまり本作は前日譚となっている事も考えられますか。
それか、ただ単にスターシステムで使用されたキャラというだけなのか…

背景の説明はこれくらいにして、本作「切人がきた!!」です。まず魔太郎時代から20年も経ってからの藤子Ⓐ作品なので、あの時代の禍々しさは消え失せておりまして、90'sの藤子Ⓐ絵になっています。って、我々ファンは一瞬で違いが分かるのですが、イメージ出来ない方もいるかと思います。
まぁ「笑ゥせぇるすまん」における週刊漫画サンデー版と中央公論版の絵を比較してもらうと時代的にも「魔太郎がくる!!」、と「切人がきた!!」の関係に近いかな。

オープニングで切人の家を訪ねてきた青年は、切人のいとこに当たる甘井一雄。24歳の平凡な新人サラリーマンですが、おばさんの団地に下宿させてもらうため来たわけです。ちなみに切人らが住むその部屋番号は『666』なのだから、いいですな~。ここで切人ママの旧姓が甘井だという事が判明しましたね。
この甘井一雄が、名前の通りアマちゃんなので社会の荒波、クズの洗礼でやられている所を、切人の魔力で助けてもらうのが通常パターン。ええ、切人の陰湿な性格は一応そのままなのですが、親戚だからか甘井一雄に対しては守護神のようにふるまっています。
藤子不二雄Ⓐ先生の持論というか人間観というか、大抵の社会的地位のある人々が裏では卑怯なカス人間じゃないですか。それを分からずに貶められる甘井一雄、それを見抜いて助ける切人。これだと魔族の能力を正義に使うアンチヒーロー物ですね。

あと切人といえば「魔太郎がくる!!」におけるヒロイン・南由紀子の妹である由津子に恋してメロメロだったじゃないですか。それが本作でも南家のユッコ、という風貌も同じ幼稚園児が出てきて…のエピソードがあります。
魔太郎でにおける『こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・ お・く・べ・き・か』的な決めセリフは、毎回同じじゃない上に話数が少ないのもあり定着してませんが、『インガオーホー オモイシレー ウーラー』とか出しています。
悪い偽善者はハッキリとぶち殺していますが、これは魔太郎の殺人エピソードのように改編されないかな。まぁ、元より青年向け雑誌に描いているのだから大丈夫かな。


ヒ・ト・ニ・ア・ダ・ナ・ス・ウ・ツ・ケ・モ・ノ
ウ・ラ・ミ・ツ・ラミ・ノ オ・モ・イ・シ・レ!!
ウーラー



スポンサーサイト
  1. 2017/06/15(木) 23:59:47|
  2. 藤子不二雄
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

藤子不二雄(76) 「魔太郎がくる!!」 4

藤子不二雄作品から、今夜は「魔太郎がくる!!」です。
かつて...ああ、日付を見ると驚くべき事に11年も前ですが「ココ」「ココ」「ココ」で、既に紹介していますね。でもこれは私のバイブルみたいな作品なので、設定や絵の良さはもちろんの事、大好き過ぎてどこもかしこも語りたい、1話ずつ解説していくかとも思う所ではあります。
こんなに好きになると、この回は手を抜いているとか話のオチがイマイチだとか、そういう事は関係無しに魔太郎が出て動くだけでもうOK。思い入れがあればキャラと雰囲気だけで漫画はこんなに楽しいんだと分からせてくれる作品でもあるのです。
描き直されている箇所も目立つ作品なので初出時と改編時の比較とかもしてデータベースなんか作りたい気持ちもありますが、でもやっぱりまだ、そこまで細かい事はしません。ただ、前の紹介時には小さくちょっと載せるだけだった単行本の画像をちゃんと載せておこう、というだけです。

まず背表紙で見せると、重要な所でこの4種類だけアップしましょう。
FUZIKO-mataro1.jpg

最初はこれですね…1973年から刊行された秋田書店のチャンピオンコミックス、全13巻。
FUZIKO-mataro3.jpg

これがほぼ初出時のままのオリジナル版なので、最重要の最強コミックス。少年向けのマンガとしては殺害の手口や凄惨さがヤバかったのでしょう、これ以降の再発版では描き直されたり欠番となったりしている話があまりにも多いですからね。
FUZIKO-mataro1-2.jpg
FUZIKO-mataro3-4.jpg
FUZIKO-mataro5-6.jpg
FUZIKO-mataro7-8.jpg
FUZIKO-mataro9-10.jpg
FUZIKO-mataro11-12.jpg
FUZIKO-mataro13.jpg

次に1987年から出た、おなじみ中央公論社の藤子不二雄ランド(FFランド)版。
FUZIKO-mataro2.jpg

ここから『新編集 魔太郎がくる!!』として、そうです新編集で内容を改変しまくっちゃったんですね…比べると修正や、丸々削除されたエピソードもあまりにも多い。
でもFFランドなので巻末の新作連載漫画などがあるし、同時収録の作品も入れて全14巻と増えています。基本的に改悪といえる新編集ですが、わずかながらチャンピオンコミックスに入らずこちらに入っているエピソードもあるのが憎い所。完全版等が出ていない現在、少なくともこの2種類は持っておく必要があるでしょう。
FUZIKO-mataro-ffland1-2.jpg
FUZIKO-mataro-ffland3-4.jpg
FUZIKO-mataro-ffland5-6.jpg
FUZIKO-mataro-ffland7-8.jpg
FUZIKO-mataro-ffland9-10.jpg
FUZIKO-mataro-ffland9-10.jpg
FUZIKO-mataro-ffland11-12.jpg
FUZIKO-mataro-ffland13-14.jpg

その次が1997年に中央公論社より出た中公文庫コミック版で、全8巻。
FUZIKO-mataro5.jpg

ついに出ちゃいましたよ文庫で…という以上に、ここからは私も刊行時にリアルタイムで買っていたのでよく覚えているのですが、上記の2種類はとっくの昔に絶版になっていて、この時代には「魔太郎がくる!!」自体が激レア作品だったのですね。
古本屋巡りが趣味の私はそれなりに金かけて入手していたものの、普通は私の世代以降だと読めなかった作品が名作マンガの文庫ブームがあったおかげで普通の人にも読めるようになったのです。
小さい版型になった不満はともかく、内容はFFランド版に準じていて、しかも数々のエピソードが削られたFFランド版よりもさらにちょっと削られての全8巻でしたけどね...私はこれも毎度新刊で買いましたよ。
FUZIKO-mataro-bunko1-2.jpg
FUZIKO-mataro-bunko3-4.jpg
FUZIKO-mataro-bunko5-6.jpg
FUZIKO-mataro-bunko7-8.jpg

それから4度目の単行本化が、1999年。オリジナルの秋田書店・チャンピオンコミックスからなのに、『新装版 魔太郎がくる!!』として改悪されて出た全12巻。
FUZIKO-mataro4.jpg

FFランド版だけで読めたエピソードすらも削除されていて、オリジナルのチャンピオンコミックス版を持っている人には特に価値がないといえばないのですが、一応はチャンピオンコミックス版をいじったデザインの表紙になっていて、コレクター気質がある方ならば買う気になるでしょうね。
FUZIKO-mataro-shinso1-2.jpg
FUZIKO-mataro-shinso3-4.jpg
FUZIKO-mataro-shinso5-6.jpg
FUZIKO-mataro-shinso7-8.jpg
FUZIKO-mataro-shinso9-10.jpg
FUZIKO-mataro-shinso11-12.jpg

で、その後…5度目の単行本化は2002年に嶋中書店のアイランドコミックスPRIMOで全12巻。これが廉価版で、いわゆるコンビニコミックになっちゃったんですね。
FUZIKO-mataro-convenience1.jpg
それほど魔太郎が身近になったというわけで嬉しい事ですが、すぐに痛む読み捨て本のイメージが強いペーパーバック本なので、悲しさもあります。しかも私みたいなファンは当然それも買い直すわけですが、メジャーなタイトルじゃないのでそのうち近所のコンビニにも入らなかったりで入手出来なかった巻もあります。まぁ、内容は全部知っているので焦ってもいなかったのですが、こうしてブログでまとめるとなると今さらながら欲しくなってきました。

次の2004年にブッキングから出た藤子不二雄Ⓐランドの全14巻なんて、FFランドと表紙デザインも同じだしいわば改悪のみの本で買う気がしなかった...
それからも秋田書店の秋田トップコミックスW、小学館のMy First Big SPECIALと、コンビニコミックの形で何度も再発されて、ますます容易に入手出来るようになりました。
FUZIKO-mataro-convenience2.jpg

でもまだ、上記のどれにも収録されていない『魔太郎の生い立ち』という番外編エピソードが存在していて、読むには今の所初出誌である少年チャンピオン1975年46号を手に入れるしかありません。なのでそれを含めて全作品を収録し、改変された箇所も両バージョン共に入れた完全版の出版を、私はず~っと待ってますよ!
あと1981年になって何とヤングマガジン(講談社刊)で描かれたのに、たった2回での打ち切られた続編「魔太郎が翔ぶ」。これは1990年に「愛蔵版 藤子不二雄ブラックユーモア短編集 第2巻 ぶきみな5週間」(中央公論社刊)に収録されていますが、これもまとめて欲しいですね。
そして「魔太郎がくる!!」の登場人物である切人を主人公にした1994年のスピンオフ作品「切人がきた!!」ですが、これは単独で単行本化もしているので、次回にでも紹介しましょう。


メラメラメラ
こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・ お・く・べ・き・か……



  1. 2017/06/10(土) 23:00:25|
  2. 藤子不二雄
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

藤子不二雄(75) 「ブラック商会変奇郎」

藤子不二雄作品から、今夜は「ブラック商会変奇郎」(秋田書店刊)です。
FUZIKO-black-shokai-henkiro-champion.jpg

二人の藤子不二雄のうち、今でいうでいう藤子不二雄Ⓐ先生側の作品。
初出は1976年から翌年までの週刊少年チャンピオンで、記念すべき連載開始号は↑の物で私も入手しています。単行本には入らなかった巻頭の2ページを含む5ページがカラーページだし、他のページも昔の漫画雑誌でよく見られた赤黒の2色カラーページ。また単行本で23ページ目に当たる、サクラテレビの所が1コマ描き直されていますね。こんな所を比べて発見するのも、初出誌を見る楽しみであります。

エピソードの数えは『商の○○』という形で進んで全23話が存在し、単行本は少年チャンピオンコミックスで全5巻。
FUZIKO-black-shokai-henkiro1-2.jpg

いやー、これも大好きな作品です。何しろ私のバイブルでもある「魔太郎がくる!!」に続いて同じチャンピオンで連載開始しており、また同様にホラー、怪奇路線の作品ですから!
内容はといえば、東京都の新宿副都心で高層ビルの間にポツリとある古びた骨董店"変奇堂"の主人であるじいさんの変奇左エ門...ではなく、その孫の変奇郎です。"明友中学校"に通う中学生で、普段は魔太郎ほどじゃないにしてもおとなしくて弱いのですが、彼には裏の顔があった...仮面とマントを身にまとい、「笑ゥせぇるすまん」(「黒ィせぇるすまん」)の喪黒福造と同じく相手に人差し指を突きつけて『ドーン!』と叫ぶと魔力を発揮する。仮面とマントより、首にかけているペンダントが魔力の基みたいですね。
FUZIKO-black-shokai-henkiro-pendant.jpg

主人公は骨董品店の子であり、祖父が珍奇な骨董品を買う癖がある事を活かして毎回変な骨董・道具などが登場するのですが、これで今度はどんなのが出てくるか楽しみもあって飽きさせません。プライベートで変コレクターである藤子不二雄Ⓐ先生が満を持して描いた作品ともいえるでしょう。
変奇郎も正義の味方というわけではなく、たまたま目撃したり自分や知り合い等に害を成す悪人に対し、証拠物品の買取りだとか口止め料とか言って高額な経費の請求書を出し、支払わせる黒い部分も持っています。その支払いを無視したり踏み倒したりすると、変奇郎の魔力が使われる事になる、というのがお決まり。

実は本作は1996年に実写でテレビドラマ化もされている作品なのですが、その時のタイトルはブラックをシャドウに変えて「シャドウ商会変奇郎」。これはドラマ版が勝手に変えたというより、その2年前に秋田文庫した時に何故かそのタイトルになっちゃったので、そこを基にしたのでしょうね。その頃はちょっとでも黒人が出ようものなら差別だとか言われたり、言葉狩りも酷くなった時代だったので『ブラック』が黒人を想起させると判断したのでしょうか!?
ちなみにテレビにうとい私はこのドラマ化に気付かず見逃しているのですが、あとでデータを見たら変奇郎役が森田剛なんですよね。でもって、エンディングテーマはその森田がメンバーでV6の年少3人組によるカミセンだったそうなので、出来栄えもどう考えても期待出来ないし、見なくて良かったのでしょう。
あと気になったのは、単発ドラマだったという事でどのエピソードが実写化したのか。答えは原作の第2話に当たる『万引き』だったそうです。変奇郎のパパ・一郎の上司である伊達専務が変奇堂を三億円で地上げしようとして嫌がらせをしてきたりするものの、窃盗病だったために本屋での万引きシーンを変奇郎が目撃して逆に脅す請求書を出す話か。それなら、変奇郎が目撃する時の万引き本は『Stupid '01 Snoopy』でしたが、あとで窃盗病の説明をする時の本は「魔太郎がくる!!」のチャンピオンコミックス第3巻でした。そこら辺も再現してたら嬉しいのですが、さてどうだったのか。

FUZIKO-black-shokai-henkiro3-4.jpg

話の展開パターンは基本的に魔太郎から踏襲していて、同じようなネタもあるし登場する人気者やスターや社会的地位のある人々が裏ではだいたい卑怯者、そのクズっぷりが凄くて良いですね。これが藤子不二雄Ⓐ先生の人間観でもあるのかもしれません。
それと変奇郎の方には親友の同級生が存在するのですが、それが漫画家志望の子で...その名も...満賀道夫!そうです、藤子A先生の代表作にして自身がモデルである「まんが道」の主人公と同名の同キャラなのです。しかも発表年は、「ブラック商会変奇郎」の方が先ですよ。つまり「まんが道」の方がスピンオフ作なんだとか、変奇郎で登場させたキャラに愛着があって再登場させたのだとか、考えられます。ああ、細かい方は「まんが道」のは満賀道『夫』じゃなくて『雄』だろ、と言うかもしれませんが、それは本作でも実は両方の表記が出てくるのです。藤子A先生も漢字を間違えただけなのかな…まぁあまり気にせず、名前と風貌が同じ漫画家志望の同一キャラとして良いでしょう。
でも、本作には魔太郎の南由紀子に当たるヒロインが居ないのがネックか。

満賀道夫の登場以降は、道夫が被害に遭って変奇郎が加害者に請求・復讐する話が増えてきました。その満賀の部屋には何と、藤子・F・不二雄側の作品である「ドラえもん」の絵だとか、共著の「オバケのQ太郎」からP子のぬいぐるみ、さらに藤子不二雄のサインまで飾ってあったりするのですが、特に手塚治虫先生の激レア初期作品なども所持する漫画コレクター。
そういえば変奇郎の部屋の描写は多くありませんが、本棚には呪術の本が並んでいたりして、ルネ・マグリット画集はページをくり貫いて恐喝で稼いだ大金を隠していました。
あと変奇郎や満賀の担任教師が綾野先生というのですが、『花の係長』とあだ名が付いているのは園山俊二先生の作品ネタですね。うーん、古い!と思いますが本作と同時期の作品。きっと当時大流行していたのでしょう。

FUZIKO-black-shokai-henkiro5.jpg

やはりパターン化してしまうので変えていったのもあるのでしょう、後半は変奇郎があまり請求書を出さなくなって、普通に復讐だけしたりとか、ファンタジー色の強いエピソードなんか、もう魔太郎と同じですね。変奇郎は中学生にしてそんな大金を貯めてどうするつもりなのかとか、いくら貯まったとかも曖昧なままになって…
そして迎えた最終話が『商の23 水晶球の中の運命』で、とある魔力合戦をして物語の幕を閉じるのでした。

そして最初に出た少年チャンピオンコミックスだけの特典!
最終巻である5巻の巻末に『変奇郎スペシャルフロク』のページがあって、藤子不二雄Ⓐ先生の変コレクションは作中に登場した実在の骨董品なのだと写真で証拠を見せてくれて、あと藤子スタジオの皆さんも一人一人『我が愛蔵品』を自慢しているのです。そして最後のコマで、藤子・F・不二雄先生が鏡の通信機を紹介していますね。地味ながらこういったネタも、コンビ解消以降の本には入らなくなったわけです。

そして次に出た変奇郎がこちら、おなじみ私の大好きな藤子不二雄ランド(FFランド)版の「ブラック商会変奇郎」(中央公論社刊)。本編以外のページも多いFFランドなので、こちらは全6巻と1冊増やして商の23まで全話を収録しています。
FUZIKO-black-shokai-henkiro-ffland1-2.jpg
FUZIKO-black-shokai-henkiro-ffland3-4.jpg
FUZIKO-black-shokai-henkiro-ffland5-6.jpg

この作品で有難かったのは、FFランドだとお決まりの巻頭付録にカラーセル画に続いて、『週刊F.F.ランド』として要は作品の解説記事があるじゃないですか。連載当時の西新宿を知らない私がそこで分かったのが、作品舞台、つまり超高層ビルの谷間にあいた変奇堂がある所の特定ですね。何のことはない、今の東京都庁がある位置だったみたいです。FFランド刊行時にはまだ都庁が今の場所になく、まだ昭和が続くと思われていたので完成は昭和66年度と書かれていますけどね。
あと最終6巻では、本編で触れられなかったブラック商会の決算報告が金額でちゃんと出ていました!まぁ、1話目からちゃんと計算していけばよかったのでしょうが、そんな暇な事やる読者は少ないでしょうから有難いですね。収入の部、支出の部とちゃんと明細付きで載せていて、結果五百五十六万六千円のプラスで作品は終了したみたいです。
それから読者コーナーである『読者のひろば』はまぁいいとして、巻末の新作連載漫画。これは犬好きの読者(はーい!私です!)にはたまらない「タカモリが走る」が、1巻で連載スタートしています。この良質な藤子不二雄作品の連鎖、精力的に作品が描かれていて人気も絶頂だった頃が懐かしいですね...


商売にはなりそうもないわい
だがわしは こういう変奇な骨董品を見ると
矢もたてもたまらず ほしくなるんでな



  1. 2017/06/06(火) 23:59:06|
  2. 藤子不二雄
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

藤子不二雄(74) 「T・Pぼん」

藤子不二雄作品から、今夜は「T・Pぼん」(潮出版社刊)です。
FUZIKO-time-patrol-bon1-2.jpg

二人の藤子不二雄のうち今でいう藤子・F・不二雄先生側の手によるもので、個人的には藤子F作品の中でも有数の傑作SF作品だと目している大好きな作品。
初出連載のスタートは1978年から翌年までの月刊少年ワールド(潮出版社刊)で、雑誌名を月刊コミックトムに変更した所で連載再開したのが1980年から1986年まで。こうして見ると長期間に渡っていますが、最後の方は不定期掲載になっていた上に完結編は描かれず中断したままで終わった未完の作品でもあります。単行本は、希望コミックスで全5巻。

そしてこれ、知らない方が見たらまず気になるのがタイトルでしょう。T・Pぼん、これは『タイムパトロールぼん』と読みまして、パッと見で読めないタイトルを付けたのは作者の失敗ではないでしょうか...それと本作は初出掲載誌がマニアックで、オリジナル単行本も希望コミックスですよ。幼年向けの内容とは言いがたいからもあるのでしょうが、他の多くの藤子作品のようにてんとう虫コミックスから出ていれば...ね。テレビの方でも扱いが悪く、1980年年代にあれだけアニメ化されまくった藤子作品の中にあってすらも本作は1989年にテレビスペシャルとして1度製作・放映されたのみ。こうしてみると内容は傑作なのに、知名度の低さの原因がどんどん出てきます。

主人公は、並平凡。平凡である事をアピールしたかったのでしょうか、それにしてもこのネーミングはなかなかひどい。『並』で平凡の『平』と『凡』ですからね。ただし下の名前、凡は作品タイトルもそうですが『ぼん』とひらがな標記される事が多いです。
年齢設定は中学生で、まぁ対象とする読者層もそこに向けているのでしょう。1話目で同級生の白石鉄男の家に遊びに行くとデレク・アンド・ザ・ドミノスの『リトル・ウィング』を一緒に聴いたりしているのですが、自分の趣味をあまり前面に出さない藤子F先生には珍しい音楽ネタ。中学生以上向けと思えばこういうネタもはさんだのでしょうが、当時は藤子マンガでロックに目覚めるきっかけが生まれた、なんて読者もいるのかもしれませんね。
デレクはエリック・クラプトンが在籍した事で有名なバンドなので興味を持った読者はクラプトン関連の他の音源も聴いただろうし、この曲はザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのカバー曲です。ここから掘り下げてジミヘンを聴き始めた中学生は、ロックにはまる事間違いなしでしょう。ちなみにLPでかけている描写があるので、間違いなくアルバム「いとしのレイラ」をかけているのですが、この作品は1970年にリリースされているので「T・Pぼん」連載時にしても古い作品。既にロックの定番として聴かれていたのでしょうね。
そんなロック好きの鉄男も坊主頭にタンクトップ姿で、決してロック少年には見えないのですが…こいつとぼんが部屋でもみ合っているうちに、何と鉄男が4階の部屋から落下してズシャ、と血しぶきを上げて死亡!と、思ったら時間が巻き戻されて鉄男は生きている。その前にも昼夜がメチャクチャに移り変わる現象が起こったりしてたし、ぼんの頭がおかしくなったのか!?

すぐに答えは分かるのですが、T・P(タイムパトロール)隊員の少女、リーム・ストリームがたまたまT・M(タイムマシン)でぼんの時代・家の近くに来ていた時に故障を起こした影響のためだったのです。
それからタイムトラベルの秘密を守るためにぼんは消されかけるのですが、ぼんは将来何らかの形で歴史に関わる事が分かって命拾いし、ついでに秘密を守るために仕方なくという形でT・Pの一員として入れられる事となったのでした。ここ、ぼんが助かった理由でもあり重要ポイントなのですが、T・Pも歴史の流れに影響する者には決して手を出してはいけません。それを守った上で行なうT・P隊員の活動は、歴史上で不幸な死に方をした者を救助する事。対象人物が歴史の流れに影響するかしないか、つまり救っても良い人かそうでないかは、『チェックカード』で反応を見れば分かります。
あと単行本の表紙を見ると、ぼん&リームの他にスライムみたいなゼリー状の生物もいますが、こいつはブヨヨン。超空間を通ると勝手に付いてくる生物との事ですが、高い知能を持ち人間の言葉も話すし、ぼんらのピンチを助けたりもしました。

FUZIKO-time-patrol-bon1.jpgFUZIKO-time-patrol-bon2.jpg

こうして新人タイムパトロール隊員となった並平凡(ぼん)は、まずは見習いなのでリーム・ストリームと行動を共にします。そうそう、リームは2016年の未来に住むミドルスクールの3年生、との事でしたが...ご存知の通り現在は2017年。今年で彼女の世界よりも先に来てしまいました。
ぼんが受け取ったタイムパトロールの装備一式。制服やヘルメット等々は特殊な能力があって、ひみつ道具的で楽しい。自分専用のタイムボートを支給されるとぼんの部屋天井裏の隠れ家から出現するようになり、これはますます「ドラえもん」のタイムマシンっぽい。
初仕事は1947年の東京江東地区で洪水に飲まれて死んだ婆さんを助けに行くのですが、次は4500年前...つまり紀元前2600年という桁外れの昔に飛んである者を救い、次は紀元前1600年。そもそも歴史は想像の世界でしかないわけですが、ここまで昔の事もきちんと形にしていて説得力があるような気にさせるのはさすが藤子F先生です。

タイムパトロール隊員はその時代の人に見られない秘密行動で救助し、当然ながら対象者に物理的な力を加えてはならないので、未来道具の使い方やら救助方法の工夫が毎度の見ものにもなります。
あと素晴らしいのは時空間はデリケートであるため同じ時を複数回タイムマシンで往復すると時空の破壊につながるという設定。そう、タイムマシンがあるなら何度でもやり直せば良いとなると緊張感が全然生まれませんからね…『紙に消しゴムを何度もかけると破れる』という例えで説明する時空の在り方が見事。

1664年の南フランスで魔女狩り騒動に巻き込まれて殺された少女、そして紀元前1341年のエーゲ海クレタ島でミノス王に捧げられた生贄を救う…こ後者は藤子F先生自身が初の大人向け短編として描いた傑作「ミノタウロスの皿」に通じますね。あそこで救えなかった生贄を助けた、とも読めます。
こうして歴史的に無名な人々を救う活動をしているのですが、次は628年の天山山脈。ここではあの『西遊記』に絡む事になるのでした。そうだ、この時に登場したエイシャ錠という薬は凄い。どこかの時空で長期間とどまる事もあるタイムパトロール隊員の老化を防ぐのですが、つまりもう不老の妙薬が完成してるって事ですか。
次は何と1945年と太平洋戦争末期の沖縄!ある人物を救うために、ぼんとリームは沖縄がこの先アメリカに占領される未来を話してしまうのですが、戦争が8月15日に日本の無条件降伏で終わると言っています。藤子F先生は先の大戦におけるポツダム宣言について無条件降伏論者だったのか...ってめんどくさい話はいいか。
それから1113年と平安朝末期の京都である出来事を解決して…

次、夢のある話ですがタイムパトロール隊員は1年に1度の休暇旅行がもらえるそうです。仕事を離れて好きな時代・好きな場所にバカンスで行くためにタイムボートを使えるというのですね。これは羨ましい!
リームのお薦めで恐竜時代の南アフリカに一緒に行ったぼん。彼はちょうど恐竜好きだったようで、プロントサウルスに触れて感激の涙を流しています。

平凡なぼんもガンマンとしての才能だけはあったようで、1881年の西部の町に行ってその時代の人になりきって密着捜査をした時は大喜び。
紀元前490年のギリシアでマラトンの戦いに行きますが、この時は首を切られてドバーッと血しぶきを上げていたり、残酷描写が目立ちます。この話だけに限らず、本作は大人向けを意識しているのかグロ描写なんかも散見されています。
864年のバグダードで藤子F先生自身が大好きなシンドバットの冒険に関わり、次は過去に行くよりはるかに難しいという未来の世界に初めて行く話になるのですが、未来行きは結局この1回『超空間の漂流者』のエピソードだけでした。この話の最終ページで唐突にぼんが今度から正隊員に昇格する事が告げられ、リームの助手としてコンビで一緒に仕事するのは最後だったそうです。で、本作のヒロインで準主役扱いだったリームがその後は2度と登場しなくなってしまいました!同じくリームが連れていたブヨヨンも、ここでフェイドアウト。

FUZIKO-time-patrol-bon3-4.jpg

T・Pの見習い隊員から正隊員になったぼん、初仕事はたった数時間過去の日本でした。ここで通り魔に殺された女子中学生の安川ユミ子を救うのですが、助けられたユミ子はT・Pの存在を知ってしまったた...この場合ぼんは正体を知った者を歴史から抹消しなくてはならないのですが、ユミ子を見習い隊員にしてコンビを組む事で救うのでした。
よってその後はリームの代わりにユミ子とコンビを組む事になって、可愛いヒロインも健在ってわけです。
ぼんは自分も正隊員になりたての新人ですが、ユミ子に指導するのが嬉しくて別室で制服に着替えさせた時に『着方がわからなかったら教えに行こうか』なんて軽くセクハラしているのが受けます。
そして最初の実習は1978年...たった2年前のメキシコで、ピラミッドから転落死した日本人観光客でマンガ家のタラ子タラ夫(もちろんモデルは藤子・F・不二雄先生自身!)を助けるのですが、これはあっさり終わってそのまま900年ほど前の同地でマヤ文明当時のある人を救います。

FUZIKO-time-patrol-bon3.jpgFUZIKO-time-patrol-bon5-.jpg

本当はぼんの友人として他にしずかちゃん的なキャラで白木陽子という娘がいたのですが、同時代・同国のユミ子が登場してからすっかり出る回数は減ってしまいました。属性が近いヒロインは2人といらない、という事でしょうか。
ちなみにその名前、『しらきようこ』といえば『ようこ』の漢字違いとはいえ誰だって「あしたのジョー」のヒロイン・白木葉子を思い出すじゃないですか。この名前を使った事にどういう意図があったのか、まぁただの偶然かな?真相は藪の中。

続いて1185年の関門海峡で壇ノ浦の戦いからある人を救い…おっと、この話にはユミ子のヌードシーン有り。しかも斬首されて首が飛んでます!すぐに行なった時間巻き戻しでどうにか助かりましたが緊張感の高いエピソード。
1476年のワラキア(今のルーマニアの1部)ではドラキュラ伝説に関わり、紀元前3319年のシュメール(今のイラク)ではシュメール文明の誕生から彼らの2大発明である車輪と文字の誕生を見たり。
35106年前という目がくらむくらい昔の氷河期で最初のアメリカ人の誕生を見る時は、人類の血のつながりについてもお勉強。
T・P隊員の同僚はあまり出てこないのですが、1667年のイギリス・サザンプトンという港町で犯罪者となったT・P隊員と対決、逮捕する話もありました。
ぼんやユミ子が住んでいるのは今の首都圏ですが、1600年前の我が町・未開の地だった武蔵野台地にタイムトラベルして古代人になりきる話…ああ、ユミ子がその時代の衣装に着替えるシーンでヌードが拝めるし、また『一人で着られる?手伝おうか』とセクハラ発言するぼん。でも農耕が伝わってきた辺りの日本の歴史も学べる良い話でした。
20931年前の南フランスでクロマニョン人の少年を救出する話では...ああ、またユミ子は原始の大自然の中で湖に入って全裸で泳ぐシーン...この時のヌードが最強でしょうか。13歳にしてはわりと発育が良いのが分かります。あとぼんが突然マンガを描いていて、しかもどうやら不思議なギャグのセンスを持っているとかで同人誌の会長にスカウトされました。ガンマンの他にマンガの才能もあるのでは、決して並平凡ではありませんね。
古代から19世紀のアメリカに飛んで『奴隷制度』をテーマにした話は社会派要素もあって素晴らしかった。

FUZIKO-time-patrol-bon4.jpg

そしていよいよ最終の5巻...ここで安川ユミ子はT・P正隊員になり、ついでに並平凡(ぼん)も含めて制服とタイムボートがモデルチェンジされています。
それで紀元前1229年の北部トルコにて起こったトロイ戦争の現場から1人の少女を救出。
次は待ってました、1年に1度だけタイムパトロール隊に与えられる休暇旅行、前回はリーム・ストリームとでしたが、今回はぼんとユミ子のコンビになってどこへ行くか...タイムボートのタイマーを連動にしてでたらめに着陸してみる遊びを行なうのですが、場所は日本にしていますね。で、着いた時代は481年と古墳時代の中期。、目的は誰も居ない海での海水浴。
ぼんはユミ子に『だーれもいないんだから まっ裸で泳いだっていいんだよ』とか言ってみたり、T・Pが水中活動するための便利なチューブ(塗り薬式)を塗ってあげようとして断られたりのセクハラをしています。それからこの時は、浦島太郎の伝説に立ち会うのでした。

FUZIKO-time-patrol-bon5.jpg

それから14世紀のヨーロッパ全土を巻き込んだ黒死病の大流行、1853年のトルコにおける鉄の普及についての歴史を見てきたり、紀元前5000年ばかり昔のノアの箱舟騒動、1192年の血なまぐさい十字軍の事…
少年マンガの主人公らしい正義感も盛り込みながらこれらを描いた所で、作品は終了しました。いや、本当は連載はまだ続いているのですが、希望コミックスの単行本に収録されたのはここまでだったのです。

その次に出た単行本は、私の大好きな中央公論社藤子不二雄ランド(FFランド)版ですよ。
FUZIKO-time-patrol-bon-ffland1-2.jpg

FFランドは『藤子不二雄漫画全集』なんであるからして、これで未収録作品も読めたら嬉しいじゃないですか。でも希望コミックスと同じく全5巻で、しかもFFランドは表題作のカラーセル画はともかく、作品の解説記事やニュースに読者のひろば、さらに巻末の新作連載漫画まで収録しているじゃないですか。ということはやはり…ええ、未収録作品どころか希望コミックスよりも収録作品が減った形になってしまいました。
FUZIKO-time-patrol-bon-ff-land3-4.jpg

それでもFFランド好きの私はこれも入手しているわけで、ついでに巻末マンガを見ていくと1,2巻が再録のパターンですね。『名作まんが』として藤子不二雄Ⓕとしのだひでお名義による1968年から翌年に描かれた作品「ベラボー」。2巻の方はオバケのQ太郎も登場しています。3~5巻は、新作連載の「チンプイ」でした。
FUZIKO-time-patrol-bon-ffland5.jpg

それから愛蔵版だの文庫版だので本作が再発される度にチェックしていたのですが、全然ダメ。こうしてずーっと収録されないままでいた作品は5話あったのです。もう、初出時のリアルタイム読者以外は読みたければその時の掲載誌であるコミックトムを古本屋で探すしかなかったのですが、これがどうしたって見つからなかったわけですよ。
そんな情況の中で連載時から30年ほども経った2008年、オリジナル単行本を出していた潮出版社が『スペシャル版 T・Pぼん』という形で再度単行本化して、全3巻ながら厚い本で単行本初収録だった3話が含まれたのです。これは事件でしたね。しかし、何で残りの2話を入れないの…という疑問もわきながら当然購入したわけですが、T・Pぼん年表があったり太田光とかが本作や藤子漫画について語る巻末企画があったりもしました。
FUZIKO-time-patrol-bon-special3.jpg

さらに待つ事4年…2012年に発売の『藤子・F・不二雄大全集』、これも全3巻ですが今まで読めなかった『王妃ネフェルティティ』と実質的な最終話『ひすい珠の謎』までが収録され、これにより全話を単行本で読める事になりました。
FUZIKO-time-patrol-bon-zensyu3.jpg

昔から好きな作品だったので、ようやく全話読破出来た時は嬉しかったなぁ…でも分かっていた事ではありますが作者永眠のため最終回となるエピソードは描かれなかった未完の作品。
内容が藤子・F・不二雄先生の趣味や興味の集大成である事や、背景の絵まで見せる力の入れようなどを見ても本作は完成させたかったはずであり、実際に続きを描く意思を持っていたと言いますから、こうなると作者の晩年の残り時間をほとんど奪った「ドラえもん」が恨めしい。だいたい後期ドラなんて、藤子F先生が自らペンを取らなくても大丈夫だったんじゃないですかね。もちろん世間一般の要求はドラえもん、ドラえもんで、少し無名な「T・Pぼん」なんて描かせてもらえなかったのでしょうね。

一応、冒頭に書いたように本作はテレビスペシャルとして1度アニメ化されていて、その時にはようやくてんとう虫コミックスから『アニメ版 T・P・ぼん』というフィルムコミックも上下巻の全2巻で刊行されました。これはナレーションが藤子・F・不二雄先生の大ファンでも知られる富田靖子さま、しかも靖子さまのインタビューまで載っていたのもあってT・P・ぼん&靖子さまどちらも好きな私は当然ながら購入しました。そういえばインタビューなんかでもいつも大体マンガの話をしていた富田靖子さまは、元祖マンガ好きアイドルといった観点からもっと再評価してもよいのではないでしょうか。
FUZIKO-time-patrol-bon-anime1.jpgFUZIKO-time-patrol-bon-anime2.jpg


これでいいのかもしれないな
もともとT・Pなんて 陰の世界の存在なんだ
肉親にも友人たちにも知られることなく……
孤独の勇者 ひとり行く
かっこいいなあ



  1. 2017/05/30(火) 23:59:16|
  2. 藤子不二雄
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

藤子不二雄(73) 「宙犬トッピ」「きゃぷてんボン」

藤子不二雄作品から犬モノを三作品連続紹介する事にしまして、今夜は「宙犬トッピ」(中央公論社刊)です。この藤子不二雄ランド(FFランド)版のコミックスでは、「きゃぷてんボン」も併録した全1巻。
FUZIKO-space-dog-toppi.jpg

二人の藤子不二雄のうち今でいう藤子・F・不二雄先生側の作品で、表題作の「宙犬トッピ」は1984年に別冊コロコロコミック(小学館刊)で連載されました。
犬モノと言っても主人公は"宇宙の犬"、つまり宙犬で、名前はトッピ。表紙を見て分かるように何かモジャモジャしたヤツで、犬と言われてもピンとこない風貌でもありますが。
文明がはるかに進んだ星でも、親が犬を飼う事を許してくれない家庭の事情とかは同じと見えて、ある宇宙人の少年が『かなり原始的』な星・地球までトッピを捨てに来て、トッピはこの地球で卓見コー作という少年と出会う…この出会いのシーンが良いですね。一人と一匹の目が合い、お互いに感じあうのですね。
あとは、はいこれも平凡な町の日常の中に非日常的な存在が、の定番SF生活ギャグ漫画です。

やはり登場人物は「ドラえもん」と全く同じ編成なのでそれぞれを見て行くと本作におけるドラえもん=トッピ、のび太=コー作、しずか=青山みどり(1話目ではカスミとなっていますが...ヒロインの名前を間違えないで欲しい!)、ジャイアン=カバ口、スネ夫=ネズミ。性格も同じようなものですが、彼らは中学生の設定なので多くの藤子F作品より多少高年齢を意識して物語を作っている部分も見受けられます。

トッピは言葉を話せるし、尻尾を掴ませてイメージを伝える能力があります。さらに故郷の星の科学が発展していて理科知識が凄く、いわばひみつ道具みたいな物の作り方をコー作に示唆してくれるのです。地球の食べ物だとドッグフードは嫌いですが、マツタケとタケノコが好物。卓見家は裕福ではないのでさすがにマツタケを食べる描写はありませんが、山盛りのタケノコを出してもらって嬉しそうに尻尾振りながらガツガツと食べるトッピの姿は可愛すぎます!
キャラクターが一番離れているのはコー作で、のび太と違って天才タイプ。最初から設計も自分でやって作ったラジコン機を飛ばしたりしていたし、トッピとの出会い以降はその知識に習って凄い道具を作っていくのです。となるとまぁ、秀才の主人公は藤子作品では少ないとはいえ「キテレツ大百科」という前例が思い出されますね。しかも容姿まで木手英一に似ているので、今度はそこで悩んだのでしょうか…
別冊コロコロコミックでこの前に連載していた「宙ポコ」は結局ドラえもんになってしまい連載もたった3回で終了した事を「ココ」で書いたばかりでしたが、次回作の「宙犬トッピ」はキテレツになってしまい全6話(つまり半年)で終わってしまいました。いずれも面白い作品ではあったのですが、既に同内容で有名な傑作を描いている事が逆に足かせとなったのです。
それでも嬉しいのは、最終回をちゃんと完結編として描いてくれている事。トッピを地球に捨てた宇宙人の少年が、迎えに来るのです。今はコー作がいるのに、トッピは一度は捨てた飼い主の所に戻るのか...!?

同時収録された「きゃぷてんボン」も藤子F先生側の作品で、1976年のてれびくん(小学館刊)で連載された作品。掲載誌で分かる通り、こちらはぐっと低年齢の読者を対象としています。「宙犬トッピ」との共通点はヒロインの名前が同じで、みどりちゃんである事。
幼児でも楽しめる内容ながら、今おじさんになった自分が読んでもクスクス笑えるヒーロー物のギャグ漫画である事が凄い。さすがのセンスを楽しめるし、あと絵がひたすら可愛いです。
主人公の少年・きゃぷてんボンは子供ながらにしっかり物で、逆に全然しっかりしてない、というか白痴としか思えない性格の父・丸山博士を助けて大活躍します。そう、幼い子供が親、大人を助ける物語。でも子供に助けられてばかりいる丸山博士は発明家で、きゃぷてんボンがかぶる夢あふれるヘルメットも丸山博士の発明なんですよね。
藤子F作品でヒロインのヌードシーンが挿入される事は珍しくありませんが、本作におけるボンのガールフレンド・みどりちゃんもけっこう脱いでくれます。『ゆうれい船のなぞをとけ!!』でボン+丸山博士と海に行った時は屋外で2人と一緒にパッパと裸になって水着に着替えるし、『怪獣のすむ山』では同じくボン+丸山博士と風呂の前で裸になって並び、一緒にお風呂にも入っています。恐らく小学校低学年の設定なので、いいのですが。
最終話の『千面相V.S.きゃぷてんボン』では、そうですあの「パーマン」で主人公達のライバルだった千面相が出てくるんですよ。となるとパーマン好きにとってもおさえておきたいスピンオフ作品の1つでしょう。話はもちろん、きゃぷてんボンが勝利して千面相は捕まり、全5話が終了しました。


かんたんに作れるよ
トリネンコにヘロハリとベッソンとバフをまぜ
加熱したものにベケンヤをぬればいいんだよ



  1. 2017/04/25(火) 23:59:55|
  2. 藤子不二雄
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する