大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

日野日出志(55) 「牡丹燈記」

ここ数回はホラー漫画を紹介してきたので、となればこの方、ホラー漫画界の重鎮である日野日出志作品も久々にいきましょう…「牡丹燈記」(主婦の友社刊)です。
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日野日出志先生には珍しく、あからさまに雇われ仕事。古典を原作にコミカライズに徹した1978年の作品で、TOMOコミックスで全1巻。1360年の中国を舞台にして、最初の8ページはオールカラー、その後もしばらくパートカラーで続きます。

その内容を見ると、主人公の喬生という男が亡くした妻を想って燈籠祭へ出かけた時に出会った符淑芳という美しい娘(それと侍女の金蓮)と仲良くなり、家に招いて毎夜至福の時を過ごすようになりますが、隣人によって符淑芳がこの世の者ではなく、恐ろしい髑髏の姿をしている事がわかるのです。
自分が化け物に魅入られたのだと気付いた喬生は、取り殺される前に"玄妙館"の法師さまから魔除けの護符を貼って符淑芳らが家に入れないようにしましたが、これで恨みを買って結局は殺される…という話。

何だか知っている話ですね。そう、このタイトルでもお分かりの通り日本三大怪談の一つでもある「牡丹灯籠」の元ネタでした。
中国の怪異小説集「剪灯新話」に所収されていた、この「牡丹燈記」を日本では落語の三遊亭圓朝が「牡丹灯籠」として複雑な演目に仕立てて広めたため、度重なる映像化で引き継がれて現在我々が観ているおなじみの姿になっているのですね。
この本には「首のすげかえ」「鬼石」という2編も併録していますが、こちらも同様に中国の古典怪談を原作にしています。

やはり髑髏の幽霊を描く所などは力が入っていて日野日出志先生を起用した効果があったとは思いますが、そんなシーンはほんの少ししかないし、特にグロテスクな方向に行く事なく、時にロマンチックだったりもするお話をしっかりと描いていました。
作者の一言として、日野作品も日本の民話や「今昔物語」が出発点になっているから、その元になった話も多い中国の怪談などは自身のルーツと言えるかも、と語っています。
巻末の解説は日本推理作家協会理事で自身も小説家の加納一朗氏。


考えてみれば人間の間柄というものは ふしぎなものじゃ……
あの世の者も この世の者も
人をおもう心に かわりはないというものじゃ



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  1. 2014/12/04(木) 23:00:52|
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日野日出志(54) 「GO HOME(ゴー・ホーム)」

続いての日野日出志作品は、「GO HOME(ゴー・ホーム)」(双葉社刊)です。
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もう日野日出志先生の紹介は54回目になりますか。随分続けたものですが、それでも2000年前後の作品は全然紹介してませんでした。
近年の作品にはあの狂気が消えうせてしまい、しかも新境地を開拓したというのならまだしも、自分の過去作品レベルに追いつこうと頑張りながら全然届かないような…初期のが怖すぎて親戚の子供に見せられないのでソフトにした、といった理由でもあるのでしょうかね。
とにかく、愛しすぎて何度も何度も震えながら読んでいた名作群とは似て非なるモノになっていますが、それでも私は日野先生の新刊が出れば飛びついています。今度こそはと期待もしてますが、低迷する日野先生でも応援しておいていつかの復活を待つ意味でも買わなくてはと。
1996年頃に蒼馬社から新刊なのに文庫で出ていた「老婆少女」「鱗少女」「腐乱少女」「骨少女」だとか、もちろん今うちの本棚に並んでいますが、背表紙を見ても内容を全然思い出せませんな。

やはり本人も(出版社が?)近年の作品が上手くいってるとは思っていないのでしょう、作品数も激減しています。
今回の「GO HOME(ゴー・ホーム)」月刊ホラーM(ぶんか社刊)誌上で1999年から2001年まで掲載された連作短編の作品集で、単行本はこれも文庫サイズで2002年に上梓されていますが、この後は漫画の新刊出してませんからね。つまりこれが2011年現在の、最新単行本になってしまいます。

タイトルの通り『HOME』、つまり『家』をテーマとした恐怖譚が次々と出てくる全11話なのですが、おっ、となるとかつての超傑作「赤い蛇」のように家にまつわる因習や血縁の因縁などを描いた作品かって!?
それが違うのです。一応そういうのもありましたが、ほとんどが核家族化や家族崩壊といった近代の問題に焦点を当てて…と、そう。何と日野日出志先生が時事ネタを取り入れて社会に問題提起しているのです。となると他に児童虐待、引きこもり、猫屋敷など…そのまま三面ニュースから持ってきたようなネタに、あとは過去に描いてきたようなスプラッターやファンタジー色を融合させた作風が特徴でしょうか。
社会問題を使うとそのうち風化して古くなるでしょうし、それならそこらの若いのに描かせても大差ないんじゃないかとか思ったり、そもそもこのネタはあれの焼き直しだ、それはあの映画が元ネタだ、とか申し訳ないけどマイナス面での突っ込み所ばかり目に付いてしまいます。
今回は個々の話を紹介はしていきませんが、話だけを見たら往年の名作のように悲哀と凶々しさを同居させた退廃的な作品もあります。でもコンピューターを導入し始めて以降の絵柄が好きになれないのもあるからでしょうか、心に響きません。これは私の体調・精神状態が悪いせいもあるのでしょうが。

風貌が骨法の堀辺正史師範似の和服とひげ姿になった日野先生は、剣も振るい…それも初期作品に出てくる本人のように『キチガイに刃物』みたいなのじゃなくて、本当に武道としてやっているもんだから精神が健全になっちゃって、何かもう良い人なのに狂ったふりした作品を描いている中途半端さが見えてくる作品集でした。


ママ見てよ!!
ぼくはついにインターネットの世界に入ることができたんだ!!
ぼくはもう二度と再びこの世界から外には出ないからね…
それじゃバイバイ……!!



  1. 2011/10/26(水) 23:53:15|
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日野日出志(53) 「劇画 ミイラの魔境」

今夜は日野日出志先生の作品から・・・
「劇画 ミイラの魔境」(大陸書房刊)です。
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これは1979年から翌年にかけて、『大陸謎シリーズ』と銘打ち刊行された全10巻モノの1冊。
ムー大陸、アトランチス、宇宙人、UFO…といったオカルト物をネタに様々な漫画家が劇画を描いた企画モノの4巻目に、我らが日野日出志先生が参加しているのです。
ちなみに同シリーズで他の漫画家は、桑田次郎先生、いけうち・誠一先生、一峰大二先生に村祖俊一先生…など、味のある大物が参加しています。

で、正式タイトル『大陸謎シリーズ4 劇画ミイラの魔境「世界のミイラ」より』というのでしょうか、この作品でまず特筆すべきは日野日出志先生自身が主人公として全編に渡って登場するドキュメンタリータッチである事。
それって代表作である「地獄の子守唄」「ある地獄絵師の告白 地獄変」なんかと同じじゃないかって!?
いやいや違うのです!あれらは実録を装った創作ですが、こちらで登場する日野先生は黒縁眼鏡の気弱な青年!
この頃にはもう、あのギョロ目の怖い自分である事を止めて、恐らくはより実像に近いこのキャラとなった事でリアリティを増しているのです。
しかも大陸書房からジョージス・マクハーグの「世界のミイラ」(小宮卓・訳-実在する本です!)を資料として渡され、『大陸謎シリーズ』の中の一つとしてミイラに関する話を劇画化するよう依頼を受けるシーンで始まるんだから、こりゃ少年読者はこの後起こる事も全部実話だと思うはずですね。

のっけから気持ち悪い本物のミイラ写真をふんだんに入れて、きちんと読者にミイラに関する知識を説明。
いいアイデアが浮かばず悩む日野先生は、ミイラの研究をしている日野大介というおじさんがいる事を思い出し、尋ねて行きます。
そこで久々に会った、お姫様カットのいとこ・ユリちゃんはすっかり露出が多いセクシーな大人の女になっており、日野先生は大汗赤面…ますます「地獄変」などと同一人物である事は有りえない純情さ!『日出ちゃん』なんて呼ばれてます。

それから大介おじとユリちゃん、その弟のひろしと共に日本の木乃伊(ミイラ)伝説を調べにN県の間見井村まで行く事になるのでした。間見井村ってマミイ、つまり英語でミイラを意味するMummyでして、日本国内なのにジャングルの奥のような地の崖下にあり、村の入口は…ここで本の表紙を見てもらいたいのですが、それですよ。
ちなみにこの表紙は、安易にミイラを出さずに不気味さ漂う様を表現した傑作ではないでしょうか。

いかにも怪しい村人達にノコノコ付いてって拉致された日野家の人々!
特にユリちゃんはいけにえとして"血の儀式"に参加させられるのですが、村人達は全員が"闇の一族"であり、闇の帝王・女王・王子のミイラを守ってきたのですが、それがちょうど五千年ぶり(!)に復活する…
闇の一族は人間(みんな敵対する"白一族"の子孫らしい)である日野家の前で弱点をペラペラしゃべり、しかもせっかく五千年ぶりに復活したこのベム・ベラ・ベロみたいなミイラ三人は全然強くない、というかこれではあまりにも…こんなのに何を期待してんだ…嗚呼!
魔物の正体を表した村人達もアレだし、突っ込み所も満載でやっぱり日野日出志先生だ、と嬉しくなる「劇画 ミイラの魔境」。これを読んでいれば貴方もコアな日野ファンを名乗れる事でしょう。


おいおいユリまで そんなこといいだして
これは日出志くんの怪奇マンガじゃないんだぞ
現実の世界なんだからな



  1. 2011/10/22(土) 23:11:21|
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日野日出志(52) 「私家版 今昔物語」

今夜は日野日出志先生の「私家版 今昔物語」(新潮社刊)です。
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「今昔物語」といえばもちろんあの平安時代の怪奇・幽玄な説話集なのですが、それを題材にして日野日出志先生が自分なりに『咀嚼し、まったく新たな世界を描いてみた』という作品集で、6編が収録されています。
同じく「今昔物語」を題材にした映画「アギ 鬼神の怒り」で美術デザインを担当した事もあり、元々時代劇に傾倒する日野先生ですので、この世界に違和感は全くありません。

ただスプラッター要素を最大の見物にしながらも、単にそれだけでは終わらずに人間の愚かさや醜さ、弱者の悲しみなんかを描いた日野日出志先生らしい世界ではあるのですが、これは1991年…イマイチ凄味が無くなっている時期に描かれた作品ですので、正直物足りない部分が目立ちます。
もちろん私のように、全作品を集めなくてはならない使命を勝手に持つファンには必需品ですが、まぁこれから読んでみたいという人には、あえて薦められるものではないでしょう。

「第弐話 雨の章 蛇小町鱗怪談」に見られる、娘に手を出した男の両手両足を切り落として物置小屋に放り込み、
『下郎め 日頃の恩を忘れ仇で返すとは!! 犬畜生にも劣るやつ!!
そこでじわじわと虫ケラのように死んでゆくがいい!!』

と言い放つ父親の話が好きですが…
何とこの男、自分の両手両足を食べて生き延びて、不思議な力で復讐を遂げるのですからね。

他の話もなかなかですし、絵の魅力もそれはあるのですが、やはり初期日野日出志のような鬼気迫る迫力は感じられないのです。
本書のあとがきで日野先生自らホラー漫画家としてレッテルを貼られる事を良しとしない事や、どうせ満足に食える商売ではないので本当にやりたいことだけをやっていきたい旨を書いていますのでね、その突破口になったのだとしたら日野日出志史において重要な意味を持つ作品、という事になるのですが…


人の心は こうもたやすく変わるものなのか…………
お前さま お怨み申しますぞ……!!



  1. 2009/08/06(木) 23:04:18|
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日野日出志(51) 「恐怖の招待状 日野日出志 collection」

今夜は少し変り種の日野日出志コレクションとして、「恐怖の招待状 日野日出志 collection」(太田出版刊)です。
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これは本ではなくてパソコン用のCD-ROMで、1998年に出たデジタル・ムービー・コミックスというやつです。
3045円もしましたが、内容はパソコンならではの物だし、日野日出志コレクターなら持っておく必要があるでしょう。

箱を開けると中にCD-ROMが入っています。
HINO-collection-cd-rom2.jpg

収録されている漫画作品は
「赤い花」「マネキンの部屋」「腐乱の胎児」「呪われた赤ん坊が…」
の4作で、もちろん本で持っている私にはわざわざパソコンで読む必要がないと思ったのですが…そうではありませんでした。
音声入りで効果的な見せ方をしているし、何と日野日出志先生自らの加筆部分もあるのです!

他にオリジナル・スクリーン・セイバー、カラー画集、サウンドファイルも収録されていますよ。
パソコンで漫画を読むなど全く考えられなかった時代に実験的に出た物だと思いますが、10年以上経った今ならもっとはるかに面白い事もできるのではないでしょうか。


  1. 2009/05/01(金) 23:59:59|
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プロフィール

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Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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