大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(149) 古泉智浩 7 「ところでここどこ?」

今夜も古泉智浩作品で、「ところでここどこ?」(ジョイフルタウン刊)です。
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古泉智浩作品として相当に異色作であるこれは、初出誌がパスマガジン(Pas magazine)という何と新潟県内向けの情報誌。
実は現在も連載中だから連載期間では古泉先生の最長記録になっているのですが、何しろ2ページマンガなので分量が少ない。この単行本も2001年から2006年までの5年分をまとめたもので、ようやく1冊ですよ。でもこの本が出てからもう10年が経とうとしているのに、なかなか2冊目は出てくれませんね。新潟県人以外はなかなか読めない作品なのだから、他のよりずっと単行本化が望まれるというのに。

セリフにも新潟弁が満載で嬉しい、この2ページマンガの内容は…毎度違うので説明し難いのですが、基本的にギャグ漫画。人から聞いた話とか、ちょっと思い付いた面白い話とか一発ギャグみたいなのとか。
あと本当にコレは何だろうという意味なし漫画もあって、これこそがストーリーや起承転結がないとダメだと思い込んでいてナンセンス物が苦手な日本人を目覚めさせる、というと大げさですがそういった物を読む時のセンスも磨かれるかも。
全てがわずか2ページの独立した短篇ですが、いくつかはシリーズ物になっていて、ローテーションでたまに登場するゾンビくんや
ホームレスのおじさんやロック兄弟など、定番キャラも生まれています。

それから古泉ファンに嬉しいのは、傑作「四番目の男」(「これが未来だぜ!」収録)の元ネタとなった話があったり、ニートのキャラで有名な竹夫が実は本作で初登場していたり、さらには「チェリーボーイズ」その他、過去作品からの登場人物がいたりして古泉智浩作品の集大成みたいな感じもあるのです。
そうだ、かあちゃんとばあちゃんが勝手にオレのTシャツを着てる…という話では、かあちゃんがスレイヤー(SLAYER)の「シーズンズ・イン・ジ・アビス」(Seasons in the Abyss)のを、そしてばあちゃんがセパルトゥラ(Sepultura)の「アライズ」(Arise)のを着てまして、古泉先生もスラッシュメタルが好きなのかなと嬉しく思ったものでした。

単行本化にあたって一話ごとに活字で『この話の解説 というか言い訳と言うか…』が付いていて、お笑いコンビのダイノジ、銀杏BOYZの峯田和伸、古泉漫画「青春☆金属バット」を映画化した熊切和嘉監督と、それぞれ長々と語っている対談ページも有り。
お楽しみのあとがきは、『私の好きな新潟』と題して故郷愛みたいなものを語っています。


この女 ぱっと見 顔はかわいらしいが
心はドブのくさった水のにおいがプンプンするぞ
酒がまずくなる お兄さんよこりゃ厳しいわい



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  1. 2015/09/10(木) 23:59:34|
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月刊漫画ガロ(148) 古泉智浩 6 「ワイルド・ナイツ」

前回からの流れだと当然、古泉智浩先生の「ワイルド・ナイツ」(双葉社刊)になりますね。
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2008年に漫画アクションで1年近い連載をしてた作品で、単行本は全2巻、同時発売でした。
月刊漫画ガロで再デビューしてから数えても10年を越える漫画家キャリアを持ち、単行本も何冊も出してるしメジャー誌でも連載を持ってそれなりに売れていたと思われる古泉智浩先生でしたが、1冊で完結しなかった作品は本作が初めてです。こちら、帯も付けて。
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舞台はとある田舎…って作者が住む新潟県なのですが、方言も使いまくってるし実在の地名も出てきます。地方色を出すための効果として使用している方言ですが、私も新潟県出身なので全部分かるのが嬉しい。懐かしい。
ここで確認しておくと新潟県は漫画家を輩出している数が多い事で知られているのですが、トキワ荘関連の寺田ヒロオ先生と赤塚不二夫先生(生誕は旧満州)は別格すぎる偉大さだとしても、他にいつも挙げられるのは大抵が高橋留美子先生と水島新司先生で、他に大御所だと叶精作先生、魔夜峰央先生、小林まこと先生、聖悠紀先生、柳沢きみお先生、八神ひろき先生、しげの秀一先生、山田芳裕先生、木葉功一先生、高野文子先生、高橋亮子先生…って、有名所だけ見てもやっぱり新潟県は凄いな。
他にガロ系で近藤ようこ先生や魚喃キリコ先生、エロ系で氏賀Y太先生やSABE先生、少年ジャンプ系でえんどコイチ先生や新沢基栄先生や和月伸宏先生や小畑健(土方茂)先生…等々と続きますしね。
で、それら全てを見ても一番地元に貢献している、最大限に新潟色を出した作風を保っているのが古泉智浩先生ではないでしょうか。新潟のみで発売されている情報誌でも連載しているし。

本作の主人公・国森則彦は、そんな新潟県という田舎でパチスロ屋の店員をしながらつまらない日々を悶々と、実家で親と共に暮らしている…30過ぎのいい歳した大人。今回は得意の童貞ではないどころか婚約解消歴があり、その相手との間に見た事も無い子供までいます。そのために婚約不履行で起訴されて何と1300万円の賠償金を求められて人生詰みかけ、冒頭でそんな説明がされています。
見た事のない実子は男子だという事でいつか復讐に来るのではと怯えながらも安い手取りの半分以上かかる毎月の養育費に追われて生きているし、人格的にも小心者のくせに友達とのくだらない会話の中でいちいちキレたりするダメな奴。
でも22歳の可愛い恋人・朋恵がいてセックスしまくってる羨ましい奴でもあって、マンガ的な徹底したダメ人間ではないんですね。そこが中途半端だからこそリアルな部分であり、本作で描くセックスの部分で必要な設定。ご丁寧に女体を喜ばせるコツを教えてくれたり、生々しすぎる描写もあったります。
さらにたまに合コンで会ったブスだとか、テレクラを利用してもセックス、さらに後半でデリヘルに出会ってこの世の幸せを感じたりしています。若い時にモテな過ぎた男にありがちな事でしょうか、異常なほどのセックス欲に支配された男でこちらも面白い展開になるのですが、あとは『セックス&バイオレンス』のバイオレンス部分。

国森が思い立って通りがかりの空手教室"越道會"に通い始めるのですね。道場のビデオ棚にはブルース・リーの「燃えよドラゴン」だとか、千葉真一や志穂美悦子主演の東映カラテ映画なんかが並んでますが、練習はマス大山の極真空手だとかああいった厳しい世界とは全く違ったぬるい内容。
それでも習い始めて4ヶ月くらいもすると、パチスロ屋でヤンキーに絡まれたり同僚に脅されてもビビらなくなっている自分を見つけます。本業のパチスロ屋は適当に働いてますが、空手の方は人生でかつてないレベルの運動を自らして、ブラジリアンキックを研究したりとかしているのだから、いい趣味に出会ったのでしょう。
そして考え事をしながらドライブして新潟市から白根市を越え、夜の長岡市まで…住居から離れたそこの場末のコンビニで、一人で来たヤンキーを狙って空手による辻斬りを決行する痛快な展開に!
何しろ空手を始めて強くなる男、つまり空手マンガのお決まり要素が描かれているのに空手で日本一を目指すとかではなく、近所のヤンキーでしかも一人でいる奴を狙って叩くのだからスケールは小さい。しかし我々が実際にやっつけて欲しいと思うのは屈強な格闘家なんかではなく、田舎ででかい顔している迷惑なヤンキー連中であろう。

その後も国森はヤンキー襲撃を繰り返します。
空手で習った技の実験台にしてやり…と、これはかなりデンジャラスな行為であり、だからこそ格闘モノだったら武勇伝として描かれる所ですが、空手学んでちょっと強くなっても元々の性格上ビビりながらなのでそんなに勇ましい感じがしませんね。ヤンキーは実際闘ってみたら弱かったからというのもあるか。でも実戦だから危ない事もあるし、ヤバい時は逃げて車からエアガン撃って撃退なんてカッコ悪い事態にも陥ったり。
こんな事をするのはただの練習ではなくてメンタル面の安定を得るためでもあり、この戦いで不安を解消して眠れるようになるのです。

それから空手の初心者大会に出場して闘ったりして、最終回ではまさかの事態へと流れるのですが、これで全てがまとまる素晴らしいオチが用意されています。
ちなみに1巻の表紙で「死亡遊戯」風の服を来てヌンチャクまで構えていますが、これは単行本用に描き下ろしたイラストであって本編でヌンチャクは使われません。まぁ私は連載時から読んでたから分かっていたけど、単行本で初めて読む人はガッカリするかも!?
で、古泉智浩作品できっと多くの方が楽しみにしているのは『あとがき』じゃないでしょうか。これがあるから常に初出誌を読んでいてもファンは単行本を買うのが絶対に必要となるのです。
さらに本作では『古泉智浩ロングインタビュー』も収録されていて、例えばどれが実体験でどれほど自伝的な話だったのかとか、聞きたい話を聞かせてもらえる感じでした。
とにかく全ての男達…いやせめて、文科系の男達必読の名作です!(今作ばかりは女性には薦めません)


オレは闘争心がないことはないですが
絶対に負けたくないというような なにクソ根性みたいなのが全然ないです
オレはあれですよ 自分よりものすごく弱い相手しか勝てない気がします



  1. 2015/09/06(日) 23:59:48|
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月刊漫画ガロ(147) 古泉智浩 5 「死んだ目をした少年」

今夜は古泉智浩作品から、まだ紹介してなかった名作を…「死んだ目をした少年」(青林工藝舎刊)です。
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2003年から翌年のアックスで連載され、最終回を描き下した単行本が2005年に全1巻で上梓されていたのですが、あれから10年…何と今年に入って、実写映画化した同作品が公開されたので、その記念です。
古泉智浩作品が映画化されたのは「青春☆金属バット」「ライフ・イズ・デッド」に続いて3本目でしょうか。
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それに合わせて出版界も動き、初出誌のアックスで特集され、
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新装版も出版されてと、ちょっとした古泉智浩ブームになっていました。
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今回の舞台は中学校、もちろん主人公は中学生。ヤンキーがヒエラルキーの上位にいて、くだらない話題でさわいでいるクソ田舎のクラスの光景。そこで影を潜めて時が経つのを待つ暮らしと帰宅すれば怒鳴り散らす親が待っていて…あぁ、自分の思い出とかぶりすぎる。思い出すだけで辛くダサい過去だ。
クラスで威張ってるヤンキーも最初から気が強いからリーダー格の地位にいるけど、実際に誰かと闘っているわけではなく無抵抗な弱者をいじめているだけで強ぶっているザコで、ってこれも本当うちの田舎と同じでリアルすぎる。古泉智浩先生は私と同じ新潟県育ちではありますが、でもどこの地方もこんな感じだったんですかね。

主人公の『死んだ目をした少年』は犬田文治。クラスの弱者という共通点から付き合っているデブが数宮光
二人がいじめられた時の対策に公園で殴り合ってみる実験をしていると、イジメ場面かと思って止めに入ったお姉さんが釈笛子!事情を話した二人は笛子に公園でボクシングを習う事となり…
と、そんな話。笛子が習っているのは実はボディシェイプボクシングだし、少年達は笛子の揺れる巨乳に気を取られたりしますが、真面目な二人はちゃんと鍛錬を重ね、ヤンキーグループ最弱のロン毛・田中聡より強い事を見せる機会に恵まれました。それが元でクラスのラスボス・魔裟死と闘う事になるのですが!?

犬田に対して歪んだ好意を持つ五十嵐強美を中心とした女子のグループ内のあれこれも面白いし、死んだ目で生きる中学生男子だからこその妄想が作り出したブラックデスパイダーマンというアクセント、そして素晴らしく気持ちの良いハッピーエンド。
後の傑作「ワイルド・ナイツ」にも通じる古泉智浩史の重要作品でした。もちろん、いつも通り赤裸々すぎる文章のあとがきも力が入っていますよ!


はー
みんなが大好きなこの世界
さっさと終ってしまえばいい



  1. 2015/08/30(日) 23:59:39|
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月刊漫画ガロ(146) 水木しげる 10 「復刻版 妖奇伝」

今夜は水木しげる作品から、「復刻版 妖奇伝」(青林堂刊)です。
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1960年に水木しげる先生自身が編集して兎月書房から貸本屋向けに怪奇漫画専門の単行本として出版した伝説の雑誌、「妖奇伝」からタイトルを取って月刊漫画ガロの青林堂から、↑の函入り仕様で全2巻にて復刻された作品。
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オリジナルの「妖奇伝」はテレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」で150万円の鑑定額が付いたレア本ですが、当時は全く人気が出ずに2号で廃刊になっています。そう、妖奇伝といえば2号までしか出せなかった水木本として有名なのですが、ただし打ち切り後に読者から連載再開を要望されたため『妖奇伝』→『墓場鬼太郎』と誌名を変えて実質的な続きの3号~5号までが出ているのですね。よって全5冊となったこの水木しげる編集の貸本雑誌(形式の単行本)ですが、それから水木しげる先生以外の作家の短編は除いて、水木作品のみを集めて復刻してくれたのが本書です。
ちなみにその後の「墓場鬼太郎」は、現実の世界でも興味深い展開を見せます。兎月書房がまるで原稿料を払ってくれなかったために水木先生は憤慨して青林堂の前身である三洋社で続きを描き、兎月書房側も竹内寛行という代役を立てて4巻~19巻までと、水木先生より長いニセ鬼太郎が描かれる事となるのですが…このあたりのエピソードも水木しげるファン周辺では有名な話。

繰り返すと、本書に収録されているのは兎月書房時代の鬼太郎モノ5編。
まず『妖奇伝』の1号で描いたのは鬼太郎が漫画では初めて登場した作品(紙芝居作家時代には既に描いているし、そもそも元ネタは伊藤正美原作の紙芝居「ハカバキタロー」)として有名な「幽霊一家」、2号で「幽霊一家・墓場の鬼太郎」
『墓場鬼太郎』と誌名を変えてからは、墓場鬼太郎夜話の第1話~3話として、「地獄の片道切符」「下宿屋」「あう時はいつも死人」

初出から32年後の1992年についに青林堂が復刻したこれらのエピソードは、リアルタイムで貸本世代のおじいちゃんしか読めていなかったオリジナル版の復刻…特に重要なのは『幽霊一家』の連続2作、つまり鬼太郎誕生(同時に目玉おやじも)の話でしょう。
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掲載する出版社を渡り歩きつつ描かれ続けた鬼太郎なので誕生編もいくつかのリライト版があり、これまでも1966年に描かれたガロ版の「鬼太郎の誕生」が最も知られていて用意に読めるバージョンでした。私が少年時代に揃えてた単行本にも収録されていたし、ずっと前に「ココ」で紹介したコダマプレス版の「墓場の鬼太郎」にもそれが収録されていました。
それが文句無しの名作だし広く読まれる文には申し分ないのですが、ここでついに読めた元ネタの兎月書房版がですね…素晴らしいんですよ!当然話は知っていても、この時代にしてこの着想、ストーリー、絵がかもし出す作品の怪奇な雰囲気!感動を覚えます。
この時はここに収録されている幽霊一家も墓場鬼太郎モノも、とんでもないプレミアが付いたオリジナル本を入手する以外には青林堂の復刻版…つまり本書でしか読めなかったのですが、後に角川書店から「貸本まんが復刻版 墓場鬼太郎」として復刻されて、さらに後には文庫化までされたし、小学館クリエイティブから「貸本版墓場鬼太郎 限定版BOX」なんて凄いのが出たり…つい昨年にも講談社から「水木しげる漫画大全集 貸本版墓場鬼太郎」が出たりして、かつて幻の作品だったのはもう忘れた感じになってしまいましたが、この時代に生きててラッキーなのだと言えます。水木先生自身も原稿料を貰えなかった兎月書房用の原稿で、何十年も後に印税がガッポリ入るとは当時思いもしなかったでしょう。
どの出版社から出ている版も収録内容の違いなどで一長一短ありますが、コレクターなら全部揃えて欲しい所。でもそれよりとにかく、まだ読んだ事のない方にどれでもいいから読んで欲しい。

幽霊族最後の生き残りで醜い主人公…それが「ゲゲゲの鬼太郎」として最初のアニメ化がされる頃にはポップな人気者になっていた鬼太郎。近年でもまだ新しいアニメが作られたりしてるし、妖怪好きとか関係なく日本人で鬼太郎を知らない人なんていない、それほどメジャーな存在ですよね。
にもかかわらずアニメで可愛く、正義の味方になった鬼太郎しか知らない人、原作なんてどうでもいい人は目玉おやじが鬼太郎の髪で隠れた片目の所から生まれたとか勘違いしていたり、遍歴等々何も知らないみたいですからね、鬼太郎がどういう存在であったのかくらいは読んで知って欲しいと思います。

もちろん国民的キャラクターも黎明期の事、『墓場鬼太郎』の2話目である「下宿屋」の途中から潰れている目が左目から右目に移っていたり、これは同じエピソード内ではないけど当初は鬼太郎を育てていた日本血液銀行の秋山がいつの間にか水木へと名前が変わっていたり、ささいなミスなのか設定変更なのかといった場面もあります。
そんな不安定さも面白くて、妖怪仲間…というか当初は鬼太郎の敵でありドラキュラの下男で、まだ本当にねずみっぽい顔をしていたねずみ男が登場し、あれやこれやと楽しいエピソードにシュールな地獄の光景、何処も彼処も面白すぎる初期の鬼太郎!


まったく こんな下等なやつとはくらせない
ふんどしはしめてないし 風呂には入らないしガマは食べるし!!
こんなきたない いやらしい人間ってあるだろうか



  1. 2015/08/25(火) 23:00:38|
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月刊漫画ガロ(145) 丸尾末広 23 江戸川乱歩 4 「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」

今夜は丸尾末広作品、「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」(エンターブレイン刊)です。
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今まで丸尾末広先生の画集は、
花輪和一先生と江戸時代の絵師二名(月岡芳年、落合芳幾)とのコラボレート画集ですが…「江戸昭和競作 無惨絵 英名二十八衆句」(後に江戸の絵師を除いてポスター・ブック仕様で「無惨絵 新英名二十八衆句」として復刻)、
全2巻の「丸尾画報」(後に「丸尾画報EX」「丸尾画報DX」と改訂しながら復刻)、
「新世紀SM画報」(後に「新世紀SM画報 新装版」)を紹介してきましたが、
2010年に上梓されたこれ、「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」を忘れてました!

ほぼ全部カラーページの大型本で、大きく分けて3部に分かれた構成になっています。

まずは『乱歩美術館』
乱歩小説のコミカライズ時にこれまでに描いた表紙その他のイラスト、乱歩作品の映画化や舞台化などの時に描いたポスター、乱歩作品にインスパイアされたイメージ画、乱歩が創作した有名キャラクターに捧げたのは写真をコラージュした描き下ろし作品の数々…
丸尾末広×江戸川乱歩のコラボ作品をまとめて見る事で、これがいかに合うかを再確認しましょう。

続いて『丸尾画廊』
これは乱歩と関係なく舞台のポスターにCDや本のジャケ等、凄まじい画力で描いた仕事を集めた物。とはいえ、いきなり乱歩のペンネーム由来元である、エドガー・アラン・ポーの絵で始まりますけどね。
やはり得意のエログロ作品が多いのですが、「少女椿」「トミノの地獄」「アリス」の展覧会出品作品といった可愛い絵も有り。
それにグロいイラストでも確実に美しさがあるので、やっぱり一枚残らず全部良い、良すぎる…
最新画集であり新し目の作品ばかり収録しているので、初期限定の丸尾ファンとかには物足りないかもしれない、いや私も丸尾作品はどうしても初期の方が好きだったはずですが、新しい絵でも全く変わらず惹かれる事が分かりました。

3部構成のこの本で最後に重要な、新作の漫画作品。江戸川乱歩原作の『踊る一寸法師』が出てきます。
乱歩原作のコミカライズとしては既に「パノラマ島綺譚」「芋虫」を紹介していますが、それに続く第3弾となりましたね。
初出は2010年のコミックビームで、画集に併録した事で大型版のサイズで読めるのも嬉しいですね。また「踊る一寸法師」は私にとって乱歩の短編小説でも有数の好きな作品なので、この選択にも喜ばせて頂きました。
サーカス団でいつもいじめられている一寸法師の緑さんが、ある方法で起こす復讐劇とラストの猟奇的な踊りへとつながる物語…かなり原作に忠実ですが、ある部分でやっぱり丸尾先生らしい脚色を加えているので、是非確認してみてください。もちろん乱歩小説の雰囲気を再現しつつも、天才漫画家の個性を加えた名作に仕上がっています。


「これらは挿絵ではない。意識するにせよ、無意識にせよ、少年時代からつきあった乱歩小説に蝕まれた感覚が自然にたどりついた世界である。」
 丸尾記す



  1. 2015/08/20(木) 23:36:50|
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プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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