今夜は、
堀田あきお先生の
「アジアのディープな歩き方」(
旅行人刊)。

昨夜に続いて東南アジアの旅行モノであります。
堀田あきお先生は1956年生まれの北海道出身で、手塚プロダクションで働いて
手塚治虫先生に師事していたそうです。
アジアの旅モノ作品が多くて、他の作品は
「ネパールへ行ってみた」「インドまで行ってきた」「本多勝一のこんなもの食べてきた」・・・等。
私は活字本で他人の旅行記を読むのは好きなのですが、漫画ではそれほど人気がないジャンルだと思いますし数も少ないので、昨夜の
深谷陽先生と共に、面白い旅行モノ漫画を描く貴重な漫画家だと認識しています。
この
「アジアのディープな歩き方」は…ちょうど昨夜の
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」とは正反対に、東南アジアに行きたくなる作品だと思いますよ。
主人公の
杉田純一、二十四歳は女に振られて会社を辞めてアジア放浪の旅に出て、という話なのですが…
最初の街であるタイのバンコク初日でいきなり親切なふりして近づいてきた日本語話せる女性に全財産(現金、パスポート、トラベラーズ・チェック、クレジット・カード、帰りの航空券まで!)を盗まれる出だしなのですが、それでもあくまで愉快に描いていますので。
コミックトム(
潮出版社刊)で連載していた物に、連載が打ち切られた後のエピソードを書き下ろしてまとめた本で、全2巻。
作者の意向としてはもっとマニアックな、旅をしにくい国の紀行もやって、だからタイトルの通りディープな物になるはずだったようです。
最初のバンコクでは、何ヶ月もいるのにチャイナタウンにあるジュライホテルの汚い部屋に閉じこもって観光なんかは一切しない変な奴らと関わり、現地で出会った純粋な少女マイがパッポン通りのバーで売春していると知ってショックを受け、タイの貧しい村に金を貢ぎ続けている男とか、白人のジャンキーとか、いろんないろんな人と関わって…
まずは国によって常識が違うとか、貧しい国の現状とか、初歩的な事を学びます。
バックパッカーの聖地として有名なカオサン通りって、タイまで来てずーっとアメリカ映画のビデオばかり見てハンバーガー食ってコーラ飲んでっていう白人ばかりなんですね。
タイ人は凄い黒人嫌いで、店の人もずっと無視しているとか…私も勉強になります。
次にチェンマイでは、偶然迷い込んでしまったリス族の村人たちと交流。
タイは山奥にいろんな山岳少数民族がいるんですよね。
この日本人そっくりな顔をしつつ、あまりにもかけ離れた生活をしているリスの村で、この旅初めての充足感に浸る杉田。
やはり彼らの、幼い女の子が子供の小遣い程度の金で売られていく、あまりにも厳しい生活の現状も知って落ち込み、しかし友達になった皆と涙のお別れ。
次は国も移動して、ミャンマー(ビルマ)の首都ヤンゴン。
夢の中の世界みたいだと感激した後は、
織田という"旅の上級者"を名乗る男と行動を共にする事になりました。
歯ブラシと石鹸と金とパスポートしか持っていない彼は、自称"プロの旅人"でもありまして、それだけにずっと各地で騙され続けてきているから警戒心が強くなりすぎて現地人を信用しないのです。
『世の中アフリカにも 行ったことねえくせに 旅人面してる奴がいるが 冗談じゃねえってんだよ
アフリカの水も飲んだことねえ野郎は 旅を語る資格はねえ』
とか言ってて、私もこいつそっくりな、こういう寒い勘違いをしている日本人に何人か出会っているので、やたらとリアルなキャラだと思います。
それでも織田との行動はしばらく続けるのですが、
伊藤カオルという現地人に見える女性が旅のアイドル的な存在として加わり、共にビルマ観光します。
しかし政治的に複雑な、軍事政権のビルマですので、現地人と話す時は重い話にもなりますが…
旧・王都のパガンでかつて日本軍の雑役夫として働いていた
タンティンさんと出会い、そこへビルマ戦の生き残りである元大日本帝国軍人のじいちゃん達も加わって歴史の話になります。
ここで伊藤カオルが、左翼的な本を鵜呑みにしただけの、大日本帝国軍はただひどい事をしただけの暴徒だったような事を語り出し、それをビルマ人の美談に続けて…
この部分きついのですが、まぁ実際にこういう日本人女性も、確かに多いですからね。
はい、どうぞ日本人である事を恥じて謝罪しながら、贖罪のために金を払い続けて生きてください。
ビルマでは現在政権を握る軍隊が、貧乏人の子供を強制連行して労働をされたりしている事も知り、
『やっぱりここは まだ旅行してはいけない国だったんだ………
この国の存在を認めてはいけなかったんだ……』この思いを〆に、織田と伊藤カオルとも別れて一度バンコクへ戻りました。
次に行った先はラオス。
メコン川で見る夕日に感動し、日本人の男にたかって旅行を続ける女に利用され、
北さんいう不運を呼ぶ男と関わり…
『本当に運のない男と一緒に旅をしていると
自分の運もなくなり 死ぬこともあるのだと
後日 ある長期旅行者から 聞かされた』と、恐ろしい目にあう話もあるのですが、これも実際にありそうです。
バンコクで関わった
坂本くんと、こんな地で偶然の再会をしますが、彼は性格が変わっていて、ひょうきんな部分が無くなって
『ぼくはラオスの山奥を 一人でずっと旅してきたんだ!!
ヘラヘラなんてしてらんねーんだよ!!』とか言ってます。
さらに銃を構えて
『あんたみたいな センチメンタルな軟弱旅行をしている奴には わかんねーだろーが
こいつはラオスの山ん中で 唯一信用できるぼくの相棒なのさ
野獣や山賊 ゲリラたちが 蠢く闇の中でな』って…たくましくなりすぎです!!
最後はまたひょうきんな姿も見せますけどね。
それからカンボジアのプノンペンに移動すると、ここでは
片岡くんという、自称ジャーナリスト志望の、カンボジアの不幸な歴史マニアと行動を共にします。
私もちょうど昨夜紹介した
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」を読んで以降、正義などなく何事も金の国だと認識している国ですが、大量虐殺のポル・ポト政権と国中を死体が埋め尽くしたあたりの話を、ここでもやります。
二万人が収容されて行き残ったのはたった六人というポル・ポト時代の刑務所は"トゥールスレン博物館"となっていて、そこで気持ち悪くなる杉田。
そして案内してくれた親切なおじさんは、当時ポル・ポト側にいたために仲間達から忌み嫌われている人でした。
もちろん、命令通り殺さなければ自分が殺されていたのでしょうが…
次に何でも金の力でできると思い上がった、いやらしい日本人男性
木村に、そうと知らずに売春街に連れて行かれるのですが、そこはカンボジア名所でもある延々二キロ以上も売春屋がある東南アジア最大のセブンティー・ストリート。
女は買わない主義の杉田は怒って断り、木村が事を済ませるのを待ちますが…
帰りにバイク運転手に変な所へ連れて行かれ、金出すのを拒んだ木村は、杉田と片岡の目の前で射殺されました!
そんな、やはり日本ではあり得ない経験をしつつもアンコール・ワット、この国も人も破壊しつくされた地でたった一つ残ったクメール民族の宝に感動する杉田。
最後にベトナムへ行き…まだ自分を振った彼女にして、旅立つきっかけにもなった
美咲に対し、出すわけでもない手紙を書いてる杉田でしたが、何とこの地で美咲に会うのです。
しかし、彼女は別の男との新婚旅行でした。
これでやっとこの旅の折り返し地点かもしれないと、次は自分から逃げていくための旅ではなく、自分に戻っていくための旅に出て…終わり。
旅で出会う個性的なキャラ達に比べると、主人公が一番普通な気もしますが、だから傍観者としての立場でいろいろ観察できたのでしょうね。
杉田さん リス族の村行ったんだろ?
子どもたちが何か欲しがったか?
そんな生活してたか?
彼らは自分たちがその地で生き抜くために 何が必要で何が無意味なのかよく知っている
この子だって きっとこの外国人がくれるものが すごくうまいものだって知ってるさ
知ってるからこそ 決してたべようとしないーーー
その味を知ってしまったら また食べたくなる
心がどんどん外国に支配されていくーー そうなることを拒んでるんだ
モン族がモン族らしく生きるために
この小さな子は 小さなガム一枚を全力で拒んでるんだ!!
そんなこともわかんねーのかよ!
- 2008/09/15(月) 23:13:28|
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今夜は
深谷陽作画&
沢井鯨原作の
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」(
新潮社刊)です。

作者を簡単に紹介すると、
深谷陽先生は1967年生まれの福島県出身。
私は10年くらい前に
「アキオ紀行バリ」と
「アキオ無宿ベトナム」を読んだのが出会いだったので、やはりアジアを描く名手というイメージがあります。
他に
「レディ・プラスティック」「スパイシー・カフェ・ガール」「運び屋ケン」「スパイスビーム」…等が有名でしょうか。
作品は地味な内容の中にしっかりドラマを描いていて、かなりの実力者です。
原作の
沢井鯨先生というのは、この
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」でしか知らないのですが、この作品…実体験を元にして書いた小説がデビュー作のようです。
つまり、この
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」は漫画用に書いた原作ではなく、元々あった小説を漫画化したもの。
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」の単行本は全1巻で、
週刊コミックバンチ(
コアミックス刊)にて2004年に連載されたものに、約70枚の加筆修正を加えた一冊です。
沢井鯨先生をモデルにした中学の教師の
イザワケイゴが主人公で、謂れのない罪でカンボジアの"魔都"プノンペンで逮捕され、そこの四面楚歌で酷い生活からどうやって抜け出すか…という話で、自分を騙した奴への復讐、騙し合い、裏切り…そういった物を描いた、しかも刑務所モノですから、
深谷陽先生にしてはかなり娯楽色の強い作品に仕上がっています。
セックス&バイオレンス…そして最後の見事な行動とハッピーエンドまで、まるでハリウッド映画のよう。
平凡な教師だったイザワが二十代最後のささやかな冒険としてタイ旅行をしようと決意しますが、飛行機で出会った
譲からアンコールワット行きに誘われて、それを受けてまずカンボジアのプノンペンに到着。
それが悪夢につぐ悪夢が襲ってくるきっかけでした…。
娼婦街で出会ったのに無垢な美少女
タオに惚れ、病気の母親のためと大金を渡し、そのためアンコールワット行きも諦めてカンボジアから帰国しますが…
親友の
ヤマグチに
『一度過ぎた時間は戻らないし 自分の人生は他の誰も責任取っちゃくれないんだ
だったらウダウダ言いながら我慢するより…やりたいコトは やっとかなきゃ』と言われ、教師を辞めて再びプノンペンを訪れました。
そうそう、一度帰国した所で、イザワは日本の町並みを見て、
『俺は… …こんな色の無い国に住んでいたのか…』と驚くシーンがあるのですが、その感じは私もアジア旅行しているので分かりますね。それが悪いとは思いませんが。
二度目のカンボジアでは、帰国していた間に起きていたクーデターのためにタオはいなくなっていました。
譲が、実情は小悪党ばかりの"日本人ボランティア"に正義の気持ちが芽生えて孤児院を始めてましたので、それを手伝う事になったイザワ。
そこへベンツで現れた悪魔のネパール人、
ダマス・サーガ。
こいつの巧妙なサギ手口で譲は全てを巻き上げら、イザワは街でダマスを見つけて取り押さえると…何と逆にイザワが逮捕され、しかも誘拐犯としてでっち上げられて投獄されます!
日本大使館の
ウベも自分の地位が大事で仕事をしているふりだの公務員らしい、ひどい対応。
唯一頼れる味方の譲は…イザワを助けるため動いたら、何と殺されました!
序盤はカンボジアのプノンペンにおける少女売春の実態やらを描く、まぁ裏東南アジア旅行記といった趣なのに、ここからの展開は凄い。ここからがハリウッド映画です。
濡れ衣とはいえ、カンボジアにはまともな司法制度など存在せず、警察も裁判所も金次第の世界なので、裏金を払えば殺人犯も無罪、払えなければ重い刑が言い渡されるのです!!
ここまで旅行記っぽい作風だったからこそ、リアルで怖い。
そして拘置所の中も地獄。
ここの恐ろしい囚人達とのやり取りやルールが面白い。まぁ外から見てる分には。
そして、騙すためには凄い知恵を絞る"本当の敵"の正体とは…
実はあの少女タオも有名な日本人相手の詐欺グループのメンバーであったとも分かり、極めつけはイザワに下された懲役十二年の判決。
ヤケで脱走騒ぎを起こして拘束され、もう人生終わったと感じた時に浮かんできた、譲の言葉が
『最後まで希望を捨てるな! 考えるんだ!きっと何か方法がある!!』そして孤立無援の地獄の中で思いついたのが、カンボジアの腐った状況を逆に利用した起死回生の策。
騙され、理不尽な運命に虐げられ続けていたからこそ、これから始まる復讐劇は痛快です。
とにかく面白い、この
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」を読んだらカンボジアの近代史なんかを勉強でき、ついでに絶対に行きたくなくなる事、間違いなし。
あとがきで原作の
沢井鯨先生が200万人以上が虐殺されたポルポト政権時代と毛沢東の狙いについての推理を書いてるのですが、その話もかなり衝撃的でした。
…甘かった!!! …甘えてた!!
"平和ボケの日本人"そのものだ…!!
「日本人たる自分」が無実を訴えれば…
大使館職員が全力を挙げて徹底調査して 無実を証明してくれるものとたかを括っていた…
全部間違いだった……… 全部…考えればわかることなのに…
世の中が何でも教科書通り"善"の方に回るなら…
…とっくに戦争も犯罪も無くなってるはずじゃないか
…畜生! …畜生… …畜生!!
- 2008/09/14(日) 23:02:55|
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今回は、先日まで
ホラー漫画の所で紹介してきた
いけうち誠一の、アクション漫画作品で
「大型熱血空手漫画 虎の兄弟」(
立風書房刊)、全1巻。

このホラー要素ゼロの作品は、さすがにジャンルを
劇画にさせてもらいます。
正確にはこの時は
いけうち・誠一と、名義が少し違いますね(名字と名前の間に「・」が入ってますよ)。
-------
第一話出発(たびだち) その一 虎が尾をふるとき…まず一ページ目でいきなり少年が、酒飲んでる足の不自由な人を乗せたトロッコを引っ張って街を歩いている絵から始まります。
通行人たちは珍しそうにジロジロ見ながら
『なんだ、なんだ! こじきかよ』とか言ってまして、この素晴らしい始まりの他にも作中に現在ではヤバイ描写がいっぱいで、昔の香港映画のような危うさがあります。
この二人は兄弟で、トロッコ引っ張る少年が主人公の
虎尾次郎。
商売で極道組のヤクザにからまれている男を助けると、極道組の用心棒でゴロマキを生業にしている、かつて世界ランキング一位までいったボクサーの
ファイター湯浅でした。
ちなみにこいつは
「あしたのジョー」のゴロマキ権藤そのままなキャラなのですが…
この後も
いけうち・誠一先生が
梶原一騎先生の影響を受けていると思われる箇所があまりにも多くて、嬉しいです。
大人のケンカ技術を持ったファイター湯浅に始めは手が出ない次郎でしたが、トロッコの上の男が言います。
『みておけ ざこども! 虎が尾をふるとき!
えものをまえに虎が舌なめずりし 尾をふるとき!』すると次郎の激しい蹴りでファイター湯浅を倒すのですが…トロッコの男は『なまぬるい!』と次郎を棒で叩きつけました。
実はこのトロッコの男、かつて全日本空手道選手権チャンピオンだった次郎の兄・
虎尾鬼一で、
神埼竜五郎という男の闇討ちで必殺技の
"火焔げり"を喰らって二度と立てなくない身体になった過去があったのです。
そしてすぐに次のチャンピオンになった神埼を倒させるため、弟の次郎を鍛える武者修行の旅の最中だったわけですね。
『ふふふふ次郎……たのもしい虎になれい!
竜を食う!! きちがい虎になれい!!』そうして様々な格闘家達と戦いながら強くなっていく次郎を描いてます。
第一話 そのニ 炎の中の美少女…ここでは、木剣で猪を殺す女剣士とすれ違いざまに対決、しかも次郎が不覚を取って笑われるのですが、兄から一手しそんじれば死ぬ厳しいケンカ空手修行を受けて、次は見事に勝ちました。
しかしこの女剣士は山王家という、代々、狂人・白痴が必ず一人は生まれるという呪われた家系に生まれた可愛そうな娘だったのですが…座敷牢の前で家に火を付けた白痴の兄の描写がヤバイ!
第二話 カポエラ…次は何と、ブラジルの奴隷が生み出したカポエラの使い手である黒人の
ポリーと対決。
これも波のしぶきをよける特訓で無心の体術を身につけ、見事に勝利!
いいな〜。カポエラを出すのも、勝った次郎に辛い事を言いつつ、実は後向いて泣いている厳しい兄も、完全に
梶原一騎先生の世界ですね!
第三話 人間コンピューター…既に化物級の強い奴らと戦ってきた次郎ですが、今度は学生が相手の学園モノ風!
とある学校で"スネーク会"という組織を設立した天才の
錦は、人間コンピューターと呼ばれる頭脳の持ち主で相手の次の行動を全て読め、しかも刃が付いたムチを操る恐ろしい奴でした。
これに一度はやられた次郎でしたが、何をするか分からないきちがいと赤ん坊を参考にして、次は勝って錦の野望も壊してやりました。
第四話 ロシアの巨象…次は世界柔道会の巨象、無差別級チャンピオンの
ラズモフスキーと対決です。
彼はサンボの達人だった兄を次郎の兄(虎尾鬼一)に試合で殺された過去を持ち復讐のために来日したのでした。
代わりに戦う事になった次郎は、風鳴りの谷で何度も竜巻の中に入り、その中で舞い上がる岩を砕く修行をしてラズモフスキーの
"シベリアの雪"をも破って勝利!
第五話 世界選手権試合…いよいよ最終話で、世界のあらゆる格闘技を一堂に集めて世界で最も強い男を決める
"世界格闘技選手権"に次郎も参加します。
最愛にして偉大な師匠である兄と縁を切り、赤城山中で狂った虎となり、孤独な修行を積んで…ついに剛・柔二つに変化する必殺の
"虎尾蹴り"を完成させました!
そして試合はタイ式ボクシング、中国拳法等の達人を相手に勝ち進み、いよいよ決勝で宿敵の神崎と対決です!
そして神崎の火焔蹴りVS次郎の虎尾蹴りの激突は…予想以上の変化を見せた次郎の勝利!!
死にかけだったのに病院を抜け出した次郎の兄は、試合会場に行く前に力尽きながらも、通行人に
『世界格闘技選手権は……虎が勝ちましたね!? そうですね!!』そう訪ねて次郎の勝利を知り、
『そうでしょう………あの虎は………あの虎は………私の弟なんです………』そう言って嬉し涙を流しながら死んでしまう、感動のシーン!
そして残った一匹の若虎、次郎はさらに大きな虎になるため、また旅立つのでした。
今は誰も描かなくなった、
梶原一騎原作の遺伝子的な要素が、一冊に凝縮されていて熱い…。
荒唐無稽で、マジメにやってるのに今読むとギャグ漫画以外に見えなかったり…こんな作品が私は大好きなんです。
これぞ変化技 虎の尾!
虎が舌なめずりして笑う!!
変化をもって強敵を倒した虎がえじきに向かう!!
- 2008/09/09(火) 23:36:29|
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今夜は
滝沢解原作、
池上遼一作画の
「モッブ」(
スタジオ・シップ刊)。

単行本は全1巻の、ハードボイルドな傑作です。
タイトルのモッブとは、死神を意味するマフィアの隠語。
主人公
早瀬銀八は15歳。その兄でシャブ中の
真八は、金筋の博徒だった父・
善八を殺され、しかもその死体には男のシンボルが切り取られていた事で復讐の死神と化し…
聴く音楽は
ブラック・サバス(Black Sabbath)の名盤
「ヘヴン&ヘル」(Heaven and Hell)ですよ!
父の死の真相を知るという男に指示されるまま、渡されたリストの暴力団員を殺しまくり、銭湯での殺しで手彫りの鯉の滝登りを入れた刺青を見られ…ついには組織に見つかって蜂の巣にされて死んでしまいました。
母と妹までも巻き込まれて死に…
残された銀八は恋人の
静と行動していましたが、常に超強度の屈折率凸レンズのゴーグルをして視界を地獄のように歪曲させてる病んだ少年・
ガスマン(本名・木村光男)と知り合い、彼の持つ軍隊も含めて車で暴力の旅に出ます。
ガスマン登場以降は、この強力なキャラが主人公のように見えてきますが、彼はニーチェやオスカー・ワイルド等の名言を異常に暗記していて身の拠り所としていて、扇動もヒトラーのように上手いのですが…
暗闇に一人でパソコンを打ちながら、
『ぼく くさった女みたいだ、おちつくんだ……
こんなところを 彼に見られたら恥ずかしくって死んじゃうよ……
もっと強くなりたい………
強くして、おねがいだよPC8001!!』などと言って泣きじゃくるシーンなんかもあり、弱さも見せています。
このガスマンは女性蔑視思想を持っていますが、親父のメカケに仕込まれて女なんか小六で卒業したのだそうですが、銀八の恋人である静を犯しながら
『分かったようでも しょせん女だな、外観(ルックス)で男を見てる!
つがうんだな、男って……キミの銀サンだってそうだよ、ふふふふ………』などと言った後、さらに恐ろしい秘密を語ります。
一方の銀八は、警官に連れられて兄を操って暴力団員を殺しまくる命令をしていた男の所に行きますが、その逆光の男の正体は…ただの人形でした。
父を殺したのもヤーサンでもなんでもない、中学生でした。
その中学生が地獄の悪童、ガスマンをリ−ダーとする竹の子ちゅう連中で、しかも実は以前からガスマンを知っていたという銀八自身がその背後にいたという衝撃の事実!!
『銀八よ!おお、地獄の美少年よ!!
真八の背後にいたのは 巨大組織でも何でもない、汝だ!!』エエーッ?!てなわけで…真相が分かってからも何食わぬ顔でガスマンと去っていくラスト。ガクッ!!
今までのは何だったんだって思うような、しかも貼っていた伏線を全く無かった事にし、行き当たりバッタリな物語展開で起こる前半と後半の矛盾、読者を突き放す
滝沢解節が全開で、一部の好事家には愛される作品です。
早く行こうぜ刑事さんよ、時間がない!
おたくはんら大人(オジン)とちがってみじかいんだ、青春は!!
やろうぜ、バッチリ!!
これが青春、ハハハハハ!!
- 2008/09/05(金) 23:58:07|
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その名も
小島剛夕先生。
うっかりした事に、
"劇画"なんてジャンルも作って漫画紹介を続けておきながら、この大御所をきちんと紹介していませんでした。
今回がちょうど劇画カテゴリーの50回目でもあるので、
小島剛夕先生でいきましょう。
小島剛夕先生は1928年11月3日生まれで…って、そうです。あの
手塚治虫先生と生年月日が同じなんです。
三重県生まれで紙芝居→貸し本漫画→青年漫画誌と、
水木しげる先生と同じように漫画繁栄までの歴史を歩んできた方で、劇画家としてのデビューは1957年の
「隠密黒妖伝」。
一般に名が知れてる代表作は、今や世界的な人気作の
「子連れ狼」(
小池一夫原作)でしょうが、他に
「斬殺者」(
梶原一騎原作)を始め、他にも名作を数多く手がけていましたが…2000年に亡くなってしまいました。
ペンではなく筆で描くという信条を持っていて、日本画のようとも言えるタッチの絵ですね。
以前このブログでも他の所で、
白土三平先生の
赤目プロダクションに参加していたと書きましたが、あの超名作
「カムイ伝」で物語中盤までの作画を担当してますし、その
白土三平先生の画風を劇画調のリアル志向に転向させるきっかけも
小島剛夕先生が作ったのだそうです。
アシスタントしていたとはいえ、
白土三平先生よりも先輩ですよ。
あの
月刊漫画ガロで創刊号から5回に渡って、
諏訪栄のペンネームを使って
「海原の剣」を掲載した事も既に書きましたね。
--------
さて今回紹介するのは、
「愚れ者」(
八曜社刊)で、これは
滝沢解原作。

単行本は、この八曜社版だと全2巻。
滝沢解先生については
「狂犬トロッキー」(
赤塚不二夫作画)の所でも触れましたが、内容が滅茶苦茶なのが逆にいい、という位のぶっ壊れ方が革命的な漫画原作者です。
名手
小島剛夕先生が、その
滝沢解先生と組んだ名作
「愚れ者」。
天保時代を舞台にした時代劇で、主人公の
力造が無宿渡世に生きる話です。
貧しい農村の貧しい家で、誕生した赤児をいきなり間引く所から話は始まります。
父親がその死体を力造の妹・
梅に埋めに行かせた事に腹を立て、大喧嘩して家を捨て旅立った十九歳の力造。
とはいえ追いはぎしかできない力造でしたが、通りがかった上州の賭場で初めて博打を見て、
板鼻の伊三郎の元に入って侠道の世界に足を踏み入れます。
そこで男を磨く途中でしたが、汚い
平治兄貴がやる事にはどうしても納得がいかない。
しかも力造が惚れた親分の娘・結花とできている事も分かり、兄貴を殺して出て行ってしまいました…
それから伝染病で死に絶えた小作人達の死体を集めて焼く仕事にありつき、栄養失調で何度も気絶しながら、血へどを吐いて自分が半ば死人となりながらも仕事を捨てずに二ヶ月かけてやり遂げ、約束の十文を稼ぎました!!
その金を持って帰郷して、家族を喜ばせてやろうと走る力造でしたが…
そこで見たのは首吊って死んでいる両親と、地に転がって蛆虫にたかられている弟達。
妹の梅の死体が無い事に希望を持ちつつも、故郷を失くした力造は無宿渡世の道に戻ります。
次はある田舎町で、庄屋に雇われて謀叛を企む百姓を殺す仕事を請け負っている力造でしたが、その庄屋の悪さに気付いて、逆に百姓側の味方に付くと…
『野良犬だよ……野良犬にも三分の魂ありでな 死んでもらうぜ!
てめえなど!てめえなんかに百姓の気持ちがわかってたまるかッ!
食いつめてガキぶっ殺し てめえも首を吊って死んだ
おれの親爺とおふくろの気持ちがわかるかよッ! どうなんだよクソ爺ッ!
死ね死ねッ!もっと死にやがれッ!
おいらが六文で殺った あのドン百姓のぶんも死にやがれーーッ!』と叫びながら刺しまくって庄屋を殺しました。
ちょっと正義の味方みたいになって、百姓に感謝されて去った力造。
力造は、極貧の農民育ちなので知識は無いながらも決して頭が悪いわけではなく、一喜一憂する姿が可愛くて…
小島剛夕先生が描いてきた魅力あるキャラクターの中でも個人的には一番好きかもしれません。
さらに旅を続ける力造は、初めて見る大都会の上州高崎で食い逃げし、逃げて入った家が強盗されてる真っ最中で…
その強盗犯人・
壁安が家の主人のふりして親切に対応し、力造は初めて他人から受けるあたたかい心に感激するのですが、すぐにお縄にかかった壁安と対面してショックを受けて笑う、いいシーンの後…また賭場へ。
高崎宿の顔役・
大利根清五郎の身内に転がり込むようになると、そこで意気投合した若い衆
三吉との悲しい別れ。
伊香保では世話になった神主の娘の敵を取るために侍と戦い、ひどい手段で勝つものの、みっともなく泣きわめいて。
そんなエピソードをはさみつつ、次に世話になる羽斗一家では、親分の汚いマネによって殺された者を力造が埋める途中で、その死体の首を犬に持っていかれて…
その首をネタに乗り込んできた男に惚れて付いていくのですが、その男こそ有名な
国定忠治!
力造は二歳年上で、あまりにもカッコいい男の中の男である忠治を兄貴として行動を共にし、場末の女郎屋で初体験になる女も抱かせてもらうのですが…
そこで忠治の相手をしたのは、何と力造が一日も忘れた事のなかった妹の梅!
しかし訳あって梅を身請けする事は叶わず、忠治の弱い所も知るようになりながら、また旅に出るのです。
力造も忠治の下で耐えることを学んでゆく…………
任侠とは耐えること!
それしかないのだ………………
- 2008/08/17(日) 23:18:40|
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