大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

週刊少年ジャンプ(60) 望月三起也 3 「突撃ラーメン」

先日、4月3日に望月三起也先生が逝去されました。偉大な漫画家がどんどん亡くなっていくのが寂しくてなりません。でも77歳没でしたか…最後までワイルド7な望月先生でした。

漫画史上に残る数々の名作をモノにしてきた方ですが、自分にとって思い出の作品は、「突撃ラーメン」(若木書房刊)。
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初出は1970年の週刊少年ジャンプ(集英社刊)で、単行本はコミックメイトで全2巻。
望月三起也先生はまだ月2回刊誌だった1968年の『少年ジャンプ』創刊号から参加している漫画家であり、週刊になってからもまだまだ黎明期といえるこの時代のジャンプで掲載されていた作品を、私は幼い頃から何度も読んでいました。
実家にあったからというだけの理由ですが、これは料理本を買うのが好きだった父親(漫画好きではない)がタイトルから料理漫画だと思って間違えて買ったのだと思われます。いや、間違えてと言ってはいけないか。確かに同じジャンプで描かれた牛次郎原作・ビッグ錠漫画の名作「包丁人味平」よりも3年も前に描かれた作品であり、これこそが今では巷にあふれかえっている料理漫画の原点と見る事も出来るのかもしれません。
熱血漢、しかし望月作品なのでセンスの良さが光るカッコいい主人公が暴れ、泣き、最後に勝利を収める…スカッとする少年漫画でした。

そんな主人公は活劇俳優、鮎沢錦
主演している連続テレビドラマ『突撃刑事』が大ヒット中のスターである彼ですが、父親は汚い屋台を引くラーメン屋でした。カッコいい活劇スターである錦は、その事を内心うしろめたく思いながらも父親の事を『男』だと思って尊敬しています。
ちなみにそのさらに父親、つまり祖父が『一代めの鮎沢』だったのですが、父が子に彼の日露戦争でのエピソードを聞かせる回想シーン…これが長々とページを取り、緻密でリキの入った絵で戦線を描いているのですが、ここで出る軍装や武器は恐らくかなり正確なのだろうし、望月三起也先生はこういうの描くのが大好きなのは存じております。
戦時下においても異常といえるほど味を追求していた祖父は、そのおかげである攻防を日本軍の勝利に導く手柄を立てているのですが、その際にあの乃木閣下が直々に勲章を渡そうとした時も鍋に夢中で大将など眼中に無し。

で、その祖父はともかく現在も生きていてラーメン屋台を引いている父の方。
彼のラーメンは多くのファンもいて、自他共に日本一と認める味を出している事が錦にも分かってくるのですが…
黄金の舌を持つ世界一の料理人・竜玉師が審査員になっているという理由で、横浜港にて行なわれた『ラーメン極東コンクール』に参加します。各国5人ずつの代表が参加したこの大会で父は優勝するのですが、その後に竜玉師によってある辱めを受け、自殺に近い形で死んでしまいました。

そこから鮎沢錦は竜玉師への復讐を誓い、スターの立場も捨てて俳優からラーメン職人へと転身するのです。
主人公がラーメン作りに入る時点で既に2巻、作品の半分まで行ってますが…

竜玉師を殺しに行った錦でしたが、前からの知り合いだった中国人の張さんに味で仇を取るようにたしなめられ、張さんの店で修行を開始します。でもすぐに暴れて飛び出し、色々と中華料理屋を渡り歩いた末に神戸市へ流れると、ある縁から神戸一の"九龍城飯店"で茶ぼうずから修行し直します。
従業員の数も多いここでの上下関係描写が本作でも衝撃的なのですが、何しろ魔女鍋みたいなので食材を混ぜている先輩達の料理研究会を目撃するシーン。鍋の中に人間の手が入っているのを見てしまうのですね。ええ、
『先輩にたてつくと あのナベにほうりこまれ……
 料理の材料にされるんだぜっ!!』

という事でした。

竜玉師に復讐したい一心で耐えてこんな所で修行している錦でしたが、ここで唯一親身になってくれた先輩の川本さんも、どうやら喰われてしまったらしい…ついに爆発して大暴れ。子供の時に出て行った実の母親にも会えるのですが、激情は止まらない。そして時は流れ。錦の復讐は成るのか!?
使わなかった伏線、唐突な感じのラスト、短命に終わった作品なので色々と惜しい要素もありながらも、絵や持ち前のセンスで惹きつけられるこの魅力!読まなきゃ損でしょう。

単行本では1巻の巻末に「ザ・サムライ」「続・ザ・サムライ」という2編で西部開拓時代のアメリカ、そして帰国して江戸時代終結辺りの日本を舞台に滝鉄馬の活躍を描く短篇、2巻の巻末には「大追跡」というブラジルを舞台にした浪花節有りの追跡劇が収録されています。
後者の主人公も姓は滝、しかし名は三郎だし顔は違うので関連はないと思いますが…この追跡に関わってきて一緒に手伝ってくれた男がデビュー作「ムサシ」の主人公だった事が、ラストページで明かされますね。これまた、いずれも傑作。

…最後に望月三起也先生の、ご冥福をお祈りいたします。


やってみるかい
たぶん かたくて歯ごたえがありすぎるんじゃないかね
だれからくってみる?



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  1. 2016/04/08(金) 23:59:49|
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週刊少年ジャンプ(59) なにわ小吉 1 「王様はロバ~はったり帝国の逆襲~」

なにわ小吉先生の「王様はロバ~はったり帝国の逆襲~」(集英社刊)。
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1994年から1996年までの週刊少年ジャンプで連載された作品で、単行本は全7巻。通常のJC(ジャンプコミックス)サイズではなく、ジャンプコミックスデラックスよりA5サイズにて刊行されました。1巻の巻末には、なにわ小吉先生のデビュー作であり1993年の少年ジャンプに掲載された「まるまった亀」も収録されていますよ!

まだ私も少年ジャンプを毎週読んでいた時代に連載していた作品であり、ほぼ毎回最後尾に7ページだけ掲載されていたのもあり(後の「ピューと吹く!ジャガー」的な扱い)、どうでもいい作品だけど『オマケ』という感覚で読んでました。当時は単行本を買っていなかったので学生時代だったリアルタイム以来に読み直したのですが、内容はけっこう覚えているものですねぇ。思い出の音楽を聴き直した時のごとく、一気に時をかけてその時の環境なども浮かんできました。
つい近年にもコンビニコミックで発売され、この作品にも根強いファンがいるのかと嬉しくなりましたよ。

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初期はほとんどが1ページ漫画で一発ギャグみたいなのが続くオムニバス形式だったのですが、段々と1回分のページを全て使って1編のショートギャグ漫画にしたり、さらに次週へまたがる続き物の話も出てくるようになりました。
テーマごとのシリーズネタが目立つようにもなってくるのですが、おとぎ話や時代劇などからある人物を集団で登場させる『集団シリーズ』や、男達がハッ!ハッ!言いながら組体操で凄い物を作る『組体操シリーズ』、ケンカが強くて逆うと怖い中井出によって冒険に連れ出される『中井出シリーズ』、他に『日本ちょっと沈没シリーズ』など…そして原始人の生活を想像して人類初の○○はこうして生まれたと予想する『はぢめてシリーズ』等等。こうして文章で書いても面白さは全く分からないでしょうが。

オチ拡大漫画やセリフの順番が一個ずつずれてる漫画などの実験的な試みをしてみたり(面白くはないのですが)、水着やセミヌードの女性も多めで(絵がアレなんでエロさはイマイチですが)。私にとってはネタも連載後半の方が好きだったし、単行本に付く『おまけのページ』もなにわ小吉先生本人ネタが良いのですが…残念ながら終わってしまうのです。

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こちら最終巻となる第7巻では「王様はロバ」は7回分で50ページ弱しか掲載されていません。単行本を発行出来るまでの分量が無いまま連載終了してしまっただけの話だと思いますが、そのページ不足分をほぼ同時期にジャンプで掲載された読切を収録しまくる事で埋められています。なので、ほとんど『なにわ小吉短編集』といった本になりました。さらに足りない分を描き下ろしの「僕たちのお見合い'97 夏」で埋めて…と、当時は最新作にしてちょっと長めのこの作品、なかなか名作といえるシュール系のギャグ漫画になっています。

「王ロバ」自体も面白くなってきてた所で連載終了していたので、当時の私はなにわ小吉先生のこの後の作品も期待して週刊少年ジャンプを読んでいたのですが、何故か再び姿を現す事もなかったため、いつの間にか忘れ去っていました。(ただジャンプには描かなくなっても、現在も現役プロ漫画家として活躍はしているそうです)
あまり爆発力は無いものの、意外と計算されたゆるい笑いを得られる…当時は貴重な作品でした。


おまえが顔隠さないといけないが
私はおまえの性格に惚れてるから問題ない



  1. 2012/02/22(水) 22:22:22|
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週刊少年ジャンプ(58) 本宮ひろ志 8 「サラリーマン金太郎 マネーウォーズ編」

前回は本宮ひろ志先生の「サラリーマン金太郎」でしたが、今夜は続編の「サラリーマン金太郎 マネーウォーズ編」(集英社刊)で続けましょう。
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現在ではシリーズ物だと認識されている「サラリーマン金太郎」ですが、2002年に連載終了して全30巻が終わった時点ではそれで完結なのだと思ってました。
それが突如…3年後の2005年に続編が始まったのです。それも掲載の場は、週刊ヤングジャンプではなくインターネット総合サービス会社の楽天でした!
ネット上でお金払ってダウンロードしなくてはならないインターネット公開形式にて、パソコン画面で読む『デジタルコミック』という次世代形式。これについて行けず読めなかった私ですが、結局普通に紙媒体の単行本として上梓されたのが↑画像の物。

この楽天掲載分はプロローグとして0巻のような扱いになっていて、すぐにヤングジャンプでも連載されるのですが、そちら4巻までの単行本でまとめています。つまり少しややこしいけど、マネーウォーズ編は全5巻。
作風などは変わらない純粋な続編ですが、金太郎の活躍する舞台が建設業界から金融業界に移ったため、このタイトルですね。

今や伝説のサラリーマン・矢島金太郎は、前作で世界有数の成功者でありモーガングループ総帥のグレート・モーガン(フランクリン・モーガン)と親戚になりましたが、ここではまずモーガンの所有する外資系投資銀行"インターナショナルバンク(INB)"の日本支社に転職します。また『偶然』面接に来たらモーガンの会社だったというのですが。
ありとあらゆる仕事をしてみたいと、どんな仕事をするのかも知らないまま金太郎は、未経験の為替ディーラーとして再出発するのです。

会社ではいきなり大物扱いなのか、ニューヨーク本社の大トレーダーで美女のジャネット・テイラーが指導員として付き、後に仕事のパートナーのようになります。
それに、また金太郎がかつて伝説の頭として束ねていた暴走族"八州連合"のメンバーが集まってきて、INBの玄関先まで集団バイクで乗り付けてバンザイするのですが、彼らももう30代半ば…このお約束はいつまでやるのでしょうか。

新シリーズ・マネーウォーズ編は前作の登場人物も出てきますが、鷹司誠士がすっかり味方になるし、その弟・圭吾なる野心家のキャラも出てきます。
話は同じレベルの事をやっていては盛り上がらないからか、金太郎の活躍のスケールはさらにエスカレート。相変わらずすごい確立の偶然が続いて本宮ひろ志先生の願望・妄想を叶えまくるわけですが、プロローグでのメインは前作で行って苦い思いをしているサハラ砂漠のナビリアで行われた、負け知らずの伝説の投資家ジョー・ロスとのギラ売り合戦。

『今まで どんな人間に対しても怖いと思った事はなかった 一度もです…
 しかしあのジョー・ロスって男…生まれて初めて恐怖を感じました』

とは、金太郎のジョー・ロスに初めて会った時の感想。そこまで言わせる最強のライバルの登場です。
他にも散々ジョー・ロスの凄さを聞かされますが、素人の金太郎が投資初勝負で勝っちゃうんですけどね。このナビリアでの勝負だけで、金太郎が挙げた収益は1兆3千億円。世界中のディーラー達にその名を響かせる事になる…
この後も続くマネーウォーズ編では、金太郎は有名人にもなるし動かす金の額も桁外れになり、全く親しみを持てないスーパーマンへと成長していきます。

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続いて連載の舞台をホームグラウンドのヤングジャンプに移して開始された、プロローグに続く本編では疑問を感じる事もあってINBへ出社しなくなり、無気力になりながらも競馬に行けば7千万円の勝ち…とか、もういい加減に『強運』もエスカレートしすぎなわけです。
有名人の大金持ちサラリーマンとなった金太郎はヤマト建設時代懐かしみ、またあの頃に戻りたいなどと考えますが、それは不可能でありまだジョー・ロスとの戦いの続きも残っていると気付いてINBに復帰し、独自に"金太郎ファンド"を立ち上げます。

ところで為替ディーラーだのファンドだのというマネーウォーズというかマネーゲームというか、このジャンルの仕事には金太郎自身が
『なんなんだこの仕事は 物を創り出す訳でもねぇっ…何かを残す訳でもねぇっ
 儲けりゃいいだとォ…本当にこれでいいのか』

などと悩んでますし、大金持ちの協力者であるおなじみ中村加代ばあさんには
『何がファンドマネージャーだ 貴様らはハゲタカだっ 己の金は一銭も使わず…人の金にたかって死肉を食らう…
 自分は一円の損もせず人の金でバクチを打つ身じゃろうが』

なんて言われてます。
読者である私も全然知識は無いし興味の無すぎる仕事ですが、それらの説明もあるので人によっては勉強するのに良い本になるのかもしれません。株とかFXとかやる人には超基本的な事しか書いてないのかな。私にはそのお勉強が難しいし読んでも興味を持てず、ちょっと辛い感じでしたが。

さて金太郎ファンドはまずデビュー戦として、テレビ局買収に向けて動きます。
これは時事ネタで、ライブドアの堀江貴文(ホリエモン)氏による騒動を反映してますね。同じようにテレビ局は様々な手で妨害するわけです。
この時の「サラリーマン金太郎」はテレビ局やマスコミに対する批判が強烈で、面白いです。

続くエピソードではジョー・ロスが出てきて、何と日本国に対するマネーでの攻撃を仕掛けてきます。つまり日本国債が狙われて国の存続の危機に陥るのですが、そこで立ち上がったのは矢島金太郎…
とある作戦で1兆ドルなんて金を動かして、あとはなんだかんだで勝利するのですが、これはもう一人で国を救った英雄ですよ。もちろんとんでもない金額の利益も挙げますが、元々は暴走族の頭が大企業に中途入社して頑張るって話だったのがこういうスケールになっています。

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この規模のマネーウォーズをやってしまった後では、漫画としては同じやり方で続けられなかったのでしょう。
儲けまくった金太郎ファンドをあっさり解散して、『マネーウォーズ編』後半での金太郎は前妻である明美の故郷、四国の大北町へ戻って漁師をやる。
…のかと思ったら、今度は事実上財政破綻した地方自治体を再建する事に取り組みます。今度は北海道の夕張市問題がネタ元になっていますね。

集中すれば3時間でやれる仕事をチンタラと引き伸ばして1週間かけたりしてる役所職員の仕事や、国から下りてくる金だけを当てにして無ければとっくの昔に赤字倒産な地方自治体への批判から始まり、それをどう立て直すのか、金太郎のアイデアと行動力が見物です。
またもヤクザの事務所に殴りこむ定番の見せ場を経て、大北町が面白い事になるとまた金太郎は次なる活躍の場に…
『マネーウォーズ編』はここまでで完結しますが、前作より内容は濃くなり、人間はどこへ行こうとしているのか考える哲学的なシーンも出てくるし、終わり方がなかなかクールでしびれたものでした。


経済とは一体何だ?人間の生き方を複雑にしているだけじゃないのか?人間の知恵やみせかけの道徳は自然に抱かれて生きる事と相違している!!
世界中の人間はどこまで数が増えていくんだ 逆に日本の人口の減少はどうやったって止めようがない 若い世代は子供を欲しがっていないからな 自分だけの短い人生の為に!!
地球の環境はいつまで人間のわがままを許してくれるんだ!!
今は何とかなっている…しかし近い将来 人間の限りない欲望をエネルギーとする成長は 必ず大規模な破綻を導く!!
それでもその中から またやり直し 人間は生き延びて行くだろう…しかしはっきり予測できる破綻への道を
人間は変える事ができないのか?人間は人間が過った道をなぜ変えられない?人間は絶対に間違いを犯す生き物なのに!!
人間の美徳は話して他と協調できるという点に尽きるはずだ!!



  1. 2010/11/29(月) 23:48:02|
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週刊少年ジャンプ(57) 本宮ひろ志 7 「サラリーマン金太郎」

今夜は本宮ひろ志先生の「サラリーマン金太郎」(集英社刊)。
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連載は1994年からの週刊ヤングジャンプですが、本宮ひろ志先生は我がブログのカテゴリでは常に週刊少年ジャンプでまとめます。

有名な代表作は多数ある偉大な本宮ひろ志先生ですが、ここ10…いや20年での代表作といえばこれしかないでしょう、「サラリーマン金太郎」。ついに見つけたライフワークでもあると思います。
この作品に関してはストーリーを細かく書くような無駄な事はしたいと思いません。それも別にバカにしてるわけじゃないし、それどころかこんな私でもメチャクチャ面白い作品だと思ってはいるんですよ。特に初期のパワーは凄い。

当たり前のあらすじを書くと、主人公の矢島金太郎はメンバー数一万人とも言われた暴走族"八州連合"を二年間束ねた伝説の頭で、彼が海の船上事故で漂流していた大和守之助を七時間泳ぎ続けて命を救ったら、その大和は偶然にも天下の"ヤマト建設"の会長で、そのきっかけで金太郎はヤマト建設に見習い社員として入社し、成長していく…そんな所です。

暴走族のヘッドで工業高校中退少年院出身の金太郎が、たまたま会長の命を救ったからといって日本有数の建築会社に入れちゃうのは、会長が
『サラリーマンとは何ぞ……?
いつから大学出でなくてはならなくなった?いつから背広姿と決められたのだ
いつから減点法によってしか勤務の評価をしないようになった
なぜこんなにも周りを気にして不自由になった なぜつまらん規則で自分達の首をしめ続けるのだ』

そう疑問に思っている人だったからよしとしましょうか。
しかしこの後もず~っと、度胸と腕力もあるけど驚くべき『偶然』の力が主でまず活躍していきます。手始めにヤクザと喧嘩して会社に乗り込まれても、その組長が元八州連合の特攻隊長・椎名忠志だったために助かったり…
ヤマト建設は天下りした元官僚の大島社長が実権を握ろうとしていた時期でしたが、創業時からの叩き上げ組の会長や黒川専務を一介の平社員である金太郎が退陣から救う形になって社長を叩き出し、まずは正社員になりました。そして問題をかかえる浅沼ダムの工事現場へ。

ちなみにちょっと過去を振り返れば、不良が大好きな『伝説』も出てくるのですが、輪姦された盲目の恋人・明美をバイクに乗せて東京中の大爆走した話。
金太郎と八州連合の熱さに他の族もやられて関東全域の族が次々と合流し、警察の妨害も物ともせずに2万台に膨れ上がった大爆走…ついには目的地の多摩川に到着。さらに名乗り出た、明美を犯した奴らに取った態度でますます矢島金太郎の名は伝説になる。

少年院から出て明美と結婚した金太郎ですが、明美は長男の竜太を出産して死亡。
その後は『俺は喪中だ』と言い、それは10年か20年か分からないとまで言っていたわりには、後に銀座の高級クラブ"ジャルダン"のママにして政財界の大物達の憧れでもある末永美鈴に何故か一目惚れされてその日にやっちゃって、夢の中に出てきた明美が笑って去って行く…そんな羨ましい、己に都合のいい精神構造も持っています。
さらに後で、美鈴は金太郎の後妻となりました。

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金太郎は『運が良い』、とは作中何度も言われていますが…とにかくその運の良さは異常すぎます。
線路に落ちた赤ん坊を命がけで助けるとか、川に落ちて溺れてる子犬を飛び込んで助ける、そういった普通の人は一生に一度も遭遇しない出来事に日常的に関わり、英雄的な行動をしては何かが好転し続けるのです。

ある時は偶然で関わった関東の総会屋を束ねる大物政治フィクサー三田善吉だとか、政界財界等に影響力を持ち日本の裏金を一手に引き受けているド級の大金持ちばあさん・中村加代といった人々が金太郎を気に入って理解者になるし、妻は政財界の人気者で、父親の照男は元ヤクザですが刑務所で日本最大の暴力団の総帥・本城勝の命の恩人になったため、このヤクザのドンまで金太郎の協力者になり、果ては一時は内閣総理大臣になった山金幸四郎まで…
その他、とんでもなく膨れ上がっていく金太郎のコネの力!

それでも喧嘩は何度か負けてるし、その他のピンチはいくつもあります。
ヤマト建設東北支社へ転勤になった時はある事件で爆弾仕掛けられて竜太まで怪我させられ、切れて旧八州連合の今やおっさんなメンバーを6千人動かしちゃって捕まるし、北アフリカはサハラ砂漠のど真ん中にあるナビリアでのプロジェクトに長々と行った時は、結果的に仕事はボロ負けで会社に57億円の大赤字を負わせたりもしたのですが…その時は美鈴が砂漠の真ん中まで訪ねてきて、その姿を見るなりボロボロの金太郎は飛び掛って砂漠でセックス!
ここのシーンは「サラリーマン金太郎」屈指の名シーンだと思っていますが、とにかく当時は大爆笑したものです。作者は真面目に感動させるシーンとして描いているっぽい所が、またいい。

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帰国した金太郎は営業第二課第三係の主任を命じられて、ついに部下が4人できたのですが、これがどいつもクセのありすぎる奴ら。
この新メンバーで日本全国のパチンコ屋を大きなビルに再開発する画期的なプロジェクトを進めますが、するとパチンコ業界には付き物の暴力団問題で揉めて襲われて大怪我もするし、敵対する会社の二代目社長として松平一平という、同じ本宮ひろ志先生が「俺の空」で生んだ名キャラ…安田一平を思わす奴が出てくるのも見もの。
スカッとするシーンが必ず各巻にあり、長編ですが物語の展開も凡百のサラリーマン漫画と違ってセックス&バイオレンス要素たっぷりで飽きさせずに進みますよ、「サラリーマン金太郎」

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サラリーマンとしての手腕はとっくに認められるようになり、次は結婚したのにモテすぎる金太郎の女関係のトラブルだったりまた暴力団が関わってきたり…
会社内でも最低な上司とはいえ守之助会長の孫・有希と結婚した大場光司を会議中に殴り飛ばしたり、いやもう結局暴力に訴える癖は直らないのですが、それがいつも結果的に良い方に転ぶんだから都合の良すぎるし、パターンも読めてきてます。
ザ・ご都合主義の展開だから取って付けたようなピンチも当然乗り越えるのですが、サラリーマン読者は特に破天荒で熱血な金太郎の活躍にスカッとして読み続けているんでしょうね。

次は金太郎、やる気のない子会社の"YMTランド"に転属します。当然そこを盛り上げていくという展開になるのですが…
それはともかく、唯一の女子社員である篠塚洋子を他の社員が紹介する時に、ふざけて『スーザン・アントン子』と言うのですね。おおっ!それは本宮ひろ志先生が影響を与えた漫画家でもある宮下あきら先生の「激!!極虎一家」に出るキャラの名前(漢字では枢斬暗屯子)じゃないですか。懐かしいなぁ。
後で彼女はアラビア王国の王子にプロポーズされるのですが、もう…いくらでもスケール大きくして好きにやってください。

順風満帆になってきた金太郎は、美鈴の間には長女の美香が生まれ、本社に戻って新人社員の研修班長をやります。
『会社に入ったから 会社があんたらを守ってくれるって事じゃない あんたらが会社を守ってやるんだ
 守ってもらうのか 守ってやるのか この考え方の違いひとつでやるべき行動は正反対になる
 守ってもらうってのは 生活を人質に取られて 我慢して仕事をやるって事だ
 つまらねえぞ こいつは…仕事がつまらなかったら生きてる時間の無駄使いだ……』

そう演説をする立場になったわけですが、常識外れのようでいて金太郎はいつもいい事を言います。私も耳が痛い。

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しかし、次は労働組合の委員長になった事で会社に疑問を持ち、葛藤する。
今度ばかりは味方を失くして孤立する自体に発展しますが、リストラされた組合員で新しい会社を作る作戦で逆転勝利。
その件が元でヤマト建設社長は黒川優作から伊郷龍蔵へと交代し、金太郎は社長室長となって女だらけの職場で似合わない仕事に転向。

次の大きな問題は美鈴が前夫との間に生んだ、金太郎にとっての義理の娘でアイドルタレントの末永美々。彼女が伊能修二というウソ付きのクソ男にひっかかり、本人が本気で好きだと思い込んでるのにその二人をどうやって別れさせるのか!?
プレイボーイの男の狡猾さや常套手段の勉強にもなるので、女性は特に読んでおいた方がいいかもしれません!
いや本当、ありえない展開続きでビジネス漫画としては真面目に読むには無理がありすぎる「サラリーマン金太郎」ですが、ここは妙にリアリティがあるように感じるのです。だいたい作中で一番の可愛さを持つ美々ちゃんがいいようにやられちゃって、悔しい~!
連載中も、久々に次週はどうなるかドキドキしながら読んでたものでした。
(後に美々はアメリカに渡り、大財閥の御曹司ジャック・モーガンと結婚)

血生臭くなりながらもその問題が解決したら、ヤマト建設鹿児島支社に転属となった金太郎は指宿温泉で美鈴と夫婦団欒を過ごし、美鈴が東京に帰った三日後…
一人で適当に入った"小料理 たか"のママ・石積貴子とあっさり浮気してやっちゃう金太郎。しかも『初めてSEXに心を失ったよ…』とか言っちゃってます。
愛人となった貴子の所に通いつめ、仕事もスランプの金太郎でしたが、凶暴な野犬の群れに向かって『二度とここへ入るな 次に見たら殺すぞ!!』と命じて(!)、とにかく当地での仕事を終えてまた東京へ帰るのです。

しかもヤマト建設の筆頭株主にもなってしまいましたが、モテまくってきた金太郎も初めて迎える家庭内の問題は揉めに揉めた上で解決しました。
で、次はとある選挙戦のお手伝い。この選挙編もなかなかバカらしくて面白いのですが…

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新人研修で新入社員を『クソ女』と呼んだ事でセクハラとして訴えられたりもしましたが、サラリーマンとして安定が見えた金太郎は次のステージに前進するためか、ヤマトを辞めて一人でアメリカの大学に入るため旅立ってしまいました!

アメリカ編はまず、大学入りの前にシアトルからニューヨークまで一年半歩いて自然と勉強して英語もマスターした後、美々が嫁入りした大金持ちのモーガン家が建てた一流大学でビジネスを学ぶ事となります。
家賃の安いハーレムで住みながら地元の黒人達と仲良く暮らしながら大学生として勉強を始めるのですが…美々とジャック・モーガンを祝うアメリカのVIP揃いのパーティー中に、元大統領の愛人で人種差別しているアメリカ女・コニィ・ケイジを叩き返して訴えられて逮捕され、その裁判を自分で弁護士もやって法廷で争う金太郎。

レディーファーストの国においてあまりにも不利なこの争いは、都合良い時だけ肉体的弱者の地位を利用する自分勝手な女性との戦い…日本でも痴漢冤罪問題などが話題になりましたが、狡猾に今や性的強者になった女性への挑戦…というほど大げさにもなりませんでしたが、しばらく『裁判漫画』になりました。
アメリカ編全般ですが、ちょっと金太郎はスーパーマンになりすぎてて、いやいつもそうでしたが特にそうで、親しみを持てなすぎますな。

偉大なモーガン家の一員として将来を託したいという申し出を断って帰国した金太郎がまたヤマトに戻ると、現在は会長の伊郷の元で会社は激変していました。
そこでまた金太郎はどでかい未来都市を作る考案をし、強力なコネも総動員してプロジェクト始動しますが、かつてヤマト建設にいて金太郎を敵視していた超エリートの鷹司誠士が汚い手で邪魔をしてきます。
彼との争いがメインとも言えますが、同じく敵対していた大島元社長に続いて、ついに鷹司とも和解するのはなかなか感動的です。

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金太郎、次は北海道支社長になったと思ったらいきなり半年間の有給を取ってある美談絡みでアマゾンへ遊びに行き、帰国すると肝心のヤマトが他社と合併して"ヤマト中央建設"となりっちゃいました。そこでまた本社の社長室長になって新社長の丸山登や様々な陰謀と関わって建築業界がどうのとか小難しくなってくるのですが、金太郎は会社を辞めて一度は土木作業員になりますが、何と次はヤマト中央建設社長…になりそうな所を蹴って総務部長へ。
何度も何度も地位が変わって弘兼憲史先生の『島耕作シリーズ』みたいな出世していくサラリーマン漫画を目指した部分も見受けられる「サラリーマン金太郎」ですが、この第一シリーズではこれが金太郎の最終地位。

総会屋との抗争と、大和守之助の妾の子で新社長になる龍平の登場などで波乱は続きます。
それは何と守之助の暗殺という事態にまで発展し、ついに金太郎は力が抜けてサラリーマン放棄。家族を連れて田舎で真黒になりながら漁師として生活をしていきます。
やはり漁師としての才能や人望も集めた金太郎は、相変わらずモテて美女から処女奪ってと頼まれながらもカッコよく断ったり…
で、気の緩みから船が大破したのがきっかけで、なかなか長かった漁師編も終わって再び背広を着て東京へ!

ヤマト以外の会社でサラリーマンを最初からやり直してみたいと思った金太郎は、まずはコンドームの訪問販売の会社で営業、それから"東紅株式会社"という商社へ入社して前野久美という不思議な女性との出会い。
そしてどこからも必要とされる男・矢島金太郎はさらなる新天地へ。

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多少マンネリも目立つ展開の末、全30巻の「サラリーマン金太郎」は次なる金太郎の挑戦を匂わせて終わりました。
キャリアだとか関係なく運と強力で人望を集めて出世していく彼は、グレてた過去に輝かしい伝説を持ち、喧嘩に強くて、女にモテまくり、取り巻きは異常なほど大物ばかり…普通の男が一般に憧れる要素の寄せ集めキャラ。
男像を描いて大ヒットした今作は、まさにサラリーマンの夢、希望。
確かにいわゆる社会的な成功を得るには不利に思えるけど、本当は学歴無しの叩き上げの方がカッコいいですしね。

初期代表作「男一匹ガキ大将」の昔から、ただのガキ大将だった戸川万吉が株に手を出して大成功するエピソードもあるし、実は本宮ひろ志先生自身が経済とか政治にも昔から興味を持っているんですよね。
ただ、「サラリーマン金太郎」を本当に大人に読ませるビジネス漫画として描かれてる部分で真に受けちゃう人もいるんじゃないかと心配しちゃいますが、あくまでこれはギャグ漫画、とかSF漫画として気楽に読まないと・・・

さらに、「サラリーマン金太郎」全30巻は終わっても、物語の完結ではありません。
休載期間を挟みながら、続いて「サラリーマン金太郎 マネーウォーズ編」「新サラリーマン金太郎」、そして今年始まって現在も連載中の「新サラリーマン金太郎 順不同」へと続いていきます。


今、日本中のサラリーマンに元気がない
お前は…………日本の元気だ 元気だ!!



  1. 2010/11/26(金) 23:23:50|
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週刊少年ジャンプ(56) ゆでたまご 2 「蹴撃手マモル」

続いてのゆでたまご作品は、「蹴撃手マモル」(集英社刊)です。
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週刊少年ジャンプにてデビュー作であり空前のヒット作となった「キン肉マン」連載終了後、前回紹介した「ゆうれい小僧がやってきた!」を描いたゆでたまご先生は、次に「SCRAP三太夫」を始めるも全く人気が出ずに短期打ち切りとなり、そろそろ「キン肉マン」の実績による威光も無くなっていた1990年…
起死回生の気持ちで挑んだのが、この「蹴撃手マモル」。『キックボクサーマモル』と読みます。キックボクサーを『蹴撃手』って、カッコいいですよね。
三太夫の失敗で懲りたのか主人公は普通の人間、それも三枚目ではなくわりとイケメンにしてみたのですが、これも最後まで大した人気を得る事が出来ずに翌年の早々に連載打ち切りとなり、ついにゆでたまご先生はその後少年ジャンプでの連載を持つ事がなくなった…

その後は他誌に移って「トータルファイターK」「ライオンハート」「グルマンくん」等を描いていたのですが、これらの作品を知っている人はほとんどいないでしょう。
一般的には消えた漫画家扱いとなっていましたが、もはや開き直ったのか自分たちには「キン肉マン」しかないと気付いたのか、前者の連載終了から10年以上が経って週刊プレイボーイで始めた続編「キン肉マンII世」で再び脚光を浴びて現在に至るわけで、かつての大ファンとしてはやっと安心しましたよ。

「蹴撃手マモル」に話を戻すと、こちらは単行本がJC(ジャンプ・コミックス)で全4巻。
私は連載当時中学1年生だったので、まだ全員がジャンプ読んでる時代でしたし周りの男子の間ではそれなりに流行っていたんですよ。チャランボ、チャランボ、とかやってましたねぇ。
ゆでたまご先生は高森朝雄(梶原一騎)原作、中城健画の同じキックボクシング漫画の名作「紅の挑戦者」を勉強のため読んだのでしょう。とても良く似た内容に仕上がってます。いや、好きな物をそのままパクるのが得意なゆでたまご先生にしては多少設定を変えている方ですが…
もちろん「紅の挑戦者」以外にも、多々他作品からの影響がうかがえる場面があります。

ストーリーなどを説明すると、主人公の蹴田マモルは走り高跳びの天才中学生で、陸上競技大会に出場するためタイに渡っていました。ちなみに日本で彼が通う学校名は"寺安府(じやんぷ)中学"という名前でした。
オフの日にガイド(可愛い女の子)のプーアンに連れられて日本選手団と共にバンコク市内を観光していると、たまたまムエタイの偉大なライト級チャンピオンであるキング・パイソンが、脱走した門下生達に制裁を加えている場面に遭遇します。

このキング・パイソン(ニシキ蛇王の意を持つリングネーム)は、プーアンの説明によると
『1歳の頃よりムエタイ道場に通い 中学生の頃には道場で彼の相手になる選手はいなくなってしまい そして20歳の現在バンコク ライト級チャンピオンとして無敗の快進撃を続けているのです…』
との事で、胸にはニシキヘビの頭の刺青をしている"ニシキ蛇会"の総帥。

彼の強さに衝撃を受けたマモルはムエタイを忘れられなくなっている所に、たまたまキング・パイソンが出るラジャダムナンスタジアムに駆け込んだら、対戦相手は3年前にムエタイ打倒を決めて格闘技修行のため家を出た兄のイサオでした!
結果はイサオの攻撃を一撃も受ける事無くキング・パイソンの圧勝。しかも圧倒的な力の差がありながら必殺技の『パイソン・ブラッシキック』まで使って兄を残忍に痛めつけた事にキレたマモルは、リング上のキング・パイソンに向けて走り高跳び仕込みのジャンプを生かした蹴り『ベリーロール・ソバット』を放つ!!

これが当たりはしなかったものの、風圧でキング・パイソンを吹っ飛ばすのです。
しかし、続けての攻撃はまるで威力の無い素人キック。ここでキング・パイソン、
『このガキ 一撃目のロープ越しのソバットは プロのリングでも通用する蹴りであったというのに…その後の蹴りはまったくの素人…』
とあきれるのですが、このセリフはお分かりですね。
そう、「あしたのジョー」でジョーこと矢吹丈が、力石徹に初挑戦した時の
『さいしょのジャブだけがプロなみの本格で あとのパンチは まるっきりの子どもだましだとはな』
と言われるシーンそっくりですよ。
この後、他にも「あしたのジョー」から頂いたと思われるアイデアなどもどんどん出てきます。

とにかく、これによりキング・パイソンは素人である蹴田マモルの挑戦を受け、しかし条件として三ヶ月以内に挑戦してくる事と、その前にニシキ蛇会の弟子四人全員に勝ち抜く事を言い渡すのです。
さらにマモルが逃げ出さないように、兄のイサオに『九十日殺し蛇刻印』なる秘技をかけます。これはイサオの足の甲の骨を折り取り、その骨片が体内にを巡ってちょうど九十日後に心臓に突き刺さって死ぬ、という物。
本当にわずか三ヶ月(九十日)でムエタイの特訓をし、さらにキング・パイソンを含め五人を倒さなくてはならなくなったマモル…当然走り高跳びの選手としての自分も三日後に控えた大会も捨てて頑張るのですが、打倒キング・パイソンは果たせるのか!?

マモルの小学校時代からの仲間にしてデブなのに日本陸上選手団の1人である部田丸男、そしてガイド女子のプーアンも協力してくれて、マモルはバンコク中のムエタイ道場に入門を断られながらも最後に訪ねたチェンマイ西部のストープ山に住むゼペット・チャンガーという幻の達人に惚れ込んで追い掛け回し、ついには入門を認められて修行を始めます。
しかしチャンガー家が代々伝承してきたのは、ムエタイと起源は同じで、よく似ていながらも非なる格闘技・バツヤリ(うちのパソコンでは漢字出せない…)なのです。
つまりマモルはバツヤリを習うのであって、ムエタイ(=タイ式キックボクシング)ではないのです。そうするとこのタイトルではおかしい事にもなりますが、それは突っ込んだら酷というものでしょう。

マモルは人並外れたジャンプ力以外にも格闘技の天才的センスを持っているし、名前まで『タイでは強さと勇気の象徴』であるマモォール鳥と似ているのでゼペット・チャンガーを驚かせ、唯一のバツヤリ道場練習生仲間である10歳の少年、タノン・ムアスリンとも親しくなり…
厳しく、しかしそこは漫画なりのユニークな修行によって防御(ディフェンス)、蹴り(テツ)、ヒジ打ち(ティー・ソーク)、そして首相撲からのヒザ蹴り(チャランボ)までを苦労しながら次々とマスターしていったマモルは、何故か関西弁で喋るでしゃべるバナナ好きの大巨人・ヒガンテをニシキ蛇会前の特訓として倒し、『悪魔の舌震い道』の難関をもクリアして、マモォール鳥の頭飾りとバツヤリ道場のライセンスを取得しました!

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となるといよいよ、ニシキ蛇会の五人を倒して兄の命を救わなくてはなりませんね。
ちなみに敵の五人は全員横並びになると胸の刺青がつながって一匹のニシキヘビになるのですが、これは子供心にもどうかと思ったものです。頭の刺青であるキング・パイソン以外は胴体とか尻尾で酷い、メンバーの誰か抜けたらどうするのかと…

いよいよ決まった試合の前日までルンピニー公園で特訓したマモルは、まずニシキ蛇会の1番目の相手…
マモルと同じ13歳でもある、チンタオ・スコルピオンとの対決です。
彼は「あしたのジョー」の金龍飛が使うダウンを許さない必殺技・舞々(チョムチョム)から頂いたアイデアであろう『ティムティム人形の舞』を必殺技に持つ強敵。
その技を使う時のスコルピオンはどう考えても空に浮いてますが、マモルはマモルでリングに両足をめりこませて身体を竹のようにしならせてかわす離れ技を開発して勝利しました。

内容には全く関係無いのですが、3巻に収録されているこの戦いの決着が着く話「ACT.22 ニシキ蛇会 死の掟!!」の扉絵で、マモルがブルース・リー映画「死亡遊戯」のトラックスーツを着ています!
その上から短パンだけ履いちゃってますが、これはブルース・リー好きでもあるゆでたまご先生の遊びでしょう。デザイン者もブルース・リーだと言われるトラックスーツをこんな所でも見れて、私も嬉しい。

マモルの態度を受けて改心し、友情まで築いたスコルピオンでしたが、ニシキ蛇会死の掟によってボロボロにされ右手も折られる制裁を加えられてしまいました。
それを実行したマンティス・ボーイがマモルの2番目の相手で、自分もやられた上でその光景を見ていたマモルは『オ…オレは今まで これほど怒りを感じたことはない~~』と涙まで流しますが、これも「あしたのジョー」でジョーが力石に…って、もうイチイチ突っ込まなくていいですよね。

マンティス・ボーイとの対戦前は車イスに乗った兄・イサオが弟・マモルに特訓指導しているのですが、この様は正にいけうち誠一の、アクション漫画作品で「大型熱血空手漫画 虎の兄弟」そのものじゃないですか。
ゆでたまご先生は他作品から流用しているアイデア多すぎて、それを全部書いてるとイジワルな読者みたいで嫌だから、ばらすのはこんなもんにしておきます…

ところで、せっかくゆでたまご作品にしては類を見ないくらいリアル路線で攻めた格闘技漫画の「蹴撃手マモル」でしたが、マンティス・ボーイは人間離れしすぎていて、ほとんどいつもの超人、または妖怪。他のニシキ蛇会員もそうですが、ヘッドギアやグローブもおかしすぎるし。
荒唐無稽なのが持ち味な作者でもあるので、それでこそ面白いとは思うのですが…既に書いた通り、このマンティス・ボーイに勝利した話までで打ち切り。今度はラスボスまで遠すぎる時点で終わったからか、単行本に描き下ろしで物語に結末を付けてくれるような事もありませんでした。
(連載決定前に同年のジャンプで掲載した、前身となる読切作品「KickBoxer マモル」は4巻巻末に収録されています)

ただし本来ならニシキ蛇会の3番目、4番目の相手だったダニエルクロコダイルが一気に出てきましたよ。
彼らもまた異様で、ダニエルはムエタイ選手なのに逆立ちしているカポエイラの使い手だし(最初からダウンになるのでは?)、クロコダイルは必殺技も出なかったけどヘッドギア、いや、かぶり物のインパクトが強すぎます。
タイのムエタイ界でランキング上位を独占している選手達なのに、何でここまでニシキ蛇会はキワモノ揃いなんでしょうか!?
タノンとヒガンテもそれぞれウサギさんとゾウさんのかぶり物…いや、ヘッドギアをしてマモルのためにリングに上がり、ってバトルロワイヤルでもするつもりでしょうか。
この場面で、イサオの命とニシキ蛇会打倒の猶予期間残り三十三日という時点での連載終了でしたが、これは続いたらもっと路線変更やらあってメチャクチャやってくれて面白くなっただろうになぁ。
アシスタントが描いてるにしても最後の方は特に観客の絵が酷すぎたり、投げやりになってきてたし。

キング・パイソンとゼペット・チャンガーが実は顔なじみで、それどころか過去に因縁があったようで、それは
『おまえがこのままニシキ蛇会に順調に勝ち抜いていけばいずれわかる時がくる…』
との事でしたが、勝ち抜く所まで描かれなかったために永遠の謎となりましたよ。いつか作者にお会い出来たら、聞かなくちゃなりませんね。

また、日本は回想シーンでしか登場しない、ずっとタイが舞台の作品でもあるので、タイ好きでもある私にはポイントアップ。20年前の少年ジャンプ連載である事を考えても結構凄い事ですよね。
タイ旅行に行く予定がある皆さんには是非、読んでから行ってもらいたい。そして『ここに四十八裸闘人がいる鍛練館がある』とか、そんなのを見つけたら教えて欲しい。

最後に…もう大人になってから、というよりわずか数年前ですが、ある衝撃の事実が発覚した事があります。いや、未だ謎なんだったかな。
ちょうど私が率いる秘密結社内での会議の合間にですね、当時世間で盛り上がってきた「キン肉マンII世」の話題から、ならば「蹴撃手マモル」の再評価を望む、いや続編を描いて欲しいなどと意見を出してみた所、ある結社員が
『マモルといえばチャランボ、というほどあの技の名前は普及したけど、あれってゆでたまご先生の造語らしいですね
などとポロッと言ったのです。
ええーっ!!本当!?とその時は驚いて、でもそんな話題は他のどこでも出ないからそのまま忘れていましたが、今思い出しました。どうなんでしょうね、実際は。あと、蹴りを全て『テツ』とルビふってましたよね。
『スネ蹴り(テツ)、ロー蹴り(テツ)、ミドル蹴り(テツ)、蹴り(テツ)連打ー!!』といった具合に。

それでは今夜は、出番が少なかったけど好きだった、ラァン・ティン巻き一筋何十年の大名人!"心のドクター"ことバカンボの言葉でお別れです。


パンチや蹴り(テツ)を喰らうことは それほど悪いことでもないんじゃぞ
考えてみろ カマドで陶器を強い火で焼きあげれば 色あせることのない丈夫で立派な器ができる
それと同じように困難や苦しみの烈火にさらされた人間は 絶対の強さをほこるようになる!



  1. 2010/11/15(月) 23:36:00|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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