大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

ホラー漫画(101) 渡千枝 5 「FUTURE フューチャー」

渡千枝作品より、1998年の「FUTURE フューチャー」(講談社刊)。
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ますます実力を付けてきた渡千枝先生はついにこんな傑作をモノにしました、というのが…
「FUTURE -呪われた少女-」「FUTURE2 -救われた少女-」の連作。

最初の「FUTURE-呪われた少女-」では、お絵描きが好きな幼女・麻由が登場。
この子は幼い娘にしては残酷すぎる絵を描いていまして、それが残酷絵本みたいな感じでいい絵なのですが、ここで描かれた者がその通りに様々な死に方で本当に死ぬのです。それが身近な知り合いからついに家族まで死んでしまうに至り、ママは麻由に絵を描く事を禁じた上に気味悪がって親戚の家に預けてしまいました。
しかし、そこで従兄弟の辰彦が理解者として麻由を励まし、その絵は麻由の絵の呪いで死ぬわけではなく予知能力で未来の人の死を見ていただけだと判明。自分のせいで周りの人が死んだのではないと分かって安心する麻由でしたが、辰彦の死も予知してしまう!
変えられない未来をただ見て知ってしまい苦しむ麻由は、しかし場合によっては未来を変える事も出来ると知って希望を持つ。

続編の「FUTURE-救われた少女-」では、中学三年生に成長した麻由がいるクラスを舞台にしています。
ある殺人事件の真相を探るミステリっぽい内容に、麻由の予知能力とそれを持っているがための苦悩を描いて…これに関してはハッピーエンドなのが良かった。作中で死ぬ間際の登場人物も言ってましたが、神様は意味も無く苦しめるためにその力を授けたわけではない、自分の力に絶望するな麻由!

もう一編、「きしむ歯車」は…多重人格を描いたミステリの傑作!
このテーマを使った作品は様々な媒体で珍しくないと思いますが、けっこう良い作品になる確立が多いですよね。映画だと、私が敬愛するブライアン・デ・パルマ監督が「レイジング・ケイン」、デヴィッド・フィンチャー監督は「ファイト・クラブ」を撮ってるし、他にも「ビューティフル・マインド」「アイデンティティー」「シャッター アイランド」、そしてあのジョン・カーペンター監督の「ザ・ウォード/監禁病棟」等々。
日本映画の「ルームメイト」、近年に北川景子と深田恭子主演で映画化されたアレなんて本作を読んでるんじゃないかと思えるくらい似ている部分があります。
そんな、肝心の「きしむ歯車」の内容についてはここでは触れずにおきますか。ネタバレが多いこのブログですが、さすがにミステリのオチを割ってしまうのは遠慮しといて。ただ一つ書いておくと、今度は「FUTURE フューチャー」と違って怖いエンディングですよ!


街を歩いてたりするとね ビルから人が降ってくるの
電車の中で目の前に立ってる人が 鉄骨の下敷きになって血だらけで死んでたり
激しい頭痛と はき気といっしょに 見たくもない映像が頭に浮かぶの
そして浮かんだ映像は かならず実現するの
それが予知なのよ



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  1. 2015/11/18(水) 23:00:55|
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ホラー漫画(100) 渡千枝 4 「鈴蘭 忌まわしき侵入者」

渡千枝作品より、「鈴蘭 忌まわしき侵入者」(講談社刊)。
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前回紹介した「歪んだ騎士」の翌年・1995年に上梓された単行本「鈴蘭 忌まわしき侵入者」に行きましょう。

まず表題作の「鈴蘭 忌まわしき侵入者」
勉強もスポーツも別格に出来る上に金持ちのお嬢様な夏目美乃の家で預かる事になり、同じクラスに転入してきた戸倉すず。人懐こい笑顔で人を取り込むすずが、美乃の友達や憧れの先輩、家族まで取り込んで侵略してくる話。
何故に夏目家がすずを預かる事になったか等、最後に明らかになる決戦が別荘で行われるのですが、これは怖い…
初期の渡千枝ホラーはあからさまに現れる幽霊に頼ってしまう部分が多かったのですが、この頃には私の好みなサイコ・ホラー、つまり人間精神の恐怖を描き心理的な部分に重点を置く作風になっていて、本作はその傑作です。
評判も良かったのでしょう、後に「鈴蘭は血の匂い」「鈴蘭は眠らない」という続編も描かれていて、もちろんそちらも必読。

次は「魔を呼ぶ家 人形」。単行本「歪んだ騎士」の中にも「魔を呼ぶ家Ⅱ」という作品が収録されていましたが、本当に全く同じ家を舞台にした正統シリーズ物。
普通の家なのに不慮の事故が相次ぎ、死人まで出たこの家に引っ越してきちゃったのは独身男性で大学講師の黒木克美。人形史の専門家でアンティークドールを愛しコレクションしている男。それは別にいいのですが、こいつの場合は愛し方の度が過ぎていました。髪の綺麗な人間を殺して頭皮を剥いで人形に使うような変態だったのですね。
それがこの『魔を呼ぶ家』に来てしまった事で、犠牲になった少女達の怨念が呼び覚まされて…

最後に「通りゃんせ 通りゃんせ」
『通りゃんせ』といえば私も大好きな増村保造監督映画「この子の七つのお祝いに」で効果的すぎるテーマ曲に使用されているので無条件に怖い歌になっているのですが、実際に暗い童謡ですよね。
主人公の女学生・悠菜は夏休みを、父が再婚する事になる相手の女性・寺脇藤代が住む高い塀に囲まれた屋敷で過ごす事になりました。藤代は素敵な人で安心した悠菜でしたが、この屋敷で起こる怪奇現象から不審に思い、藤代には出生届も出してもらえなかった娘がいた事を知る。
この題材、『通りゃんせ』自体を渡千枝先生がどう使ったかは作品を読んでもらうとして、何て悲しい話でしょうか。それこそ「この子の七つのお祝いに」の斎藤澪とか、良く言えば横溝正史作品すら思い出すような血縁を描いた悲劇。これらの作家と違って超常現象を交えるのが渡千枝風ですけどね、とにかく傑作でした。


そして"通りゃんせ"は わたしにとって
一生好きになれない曲になってしまった



  1. 2015/11/14(土) 23:00:03|
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ホラー漫画(99) 渡千枝 3 「歪んだ騎士」

渡千枝作品より、「歪んだ騎士」(講談社刊)。
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渡千枝続きですが、また前回の「手 怪奇迷宮」から数年分を飛ばして、1994年の「歪んだ騎士」に行きましょう。単行本のレーベルも私には超おなじみなサスペンス&ホラーで、3作品が収録されています。

まずは表題作の「歪んだ騎士」
女子高生で演劇部所属の館林さつきは、文化祭で「ウエスト・サイド物語」のアニタ役を演じてから学校のアイドル扱いをされている美少女。
ある時から物事が思い通りに行き過ぎるようになるのですが、それが演劇のチケットが送られてくるくらいなら良いとしても、意地悪な先生に恨みを持てばそいつが階段から落ちて怪我するし、演劇でも欲しい役を取ったライバルが落ちてきた照明器具の下敷きになって消える。
常にさつきを見守り邪魔者を排除する『騎士』、それは同じクラスの宇佐見衛という陰気で気持ち悪い男子だった…
彼が何故さつきの騎士を気取るのかもすぐに明かされますが、いわゆる関係妄想か。彼はどれだけさつきを愛しているかを見せる証として自分の方耳を切り落とす、とゴッホばりに精神障害の具合をアピールしていますが、分かりやすく言えばストーカー。
さつきを裏切ったボーイフレンドを宇佐見が殺すに至って、ついにさつきにも反撃の殺意が芽生えた!自分の望みが分かりそれを実行すると言うのなら、今すぐこの世から消えてくれと願うと!?
本作は超常現象の類は表面化せずに人間の怖さを描いたサイコ・ホラーでしたが、最後にそこを飛び出て凄く後味の悪いオチが待っています。

次の「魔を呼ぶ家Ⅱ」は、渡千枝がいくつか手がけている幽霊屋敷モノ。
普通の家なのに何故か住人がいつかない家に引っ越してきた一家、特に女学生の広瀬美喜が味わう恐怖と死を描いています。家の中からお経が聞こえてくる事で恐怖を感じた美喜は、
『ボリュームいっぱいにヘヴィメタをガンガンかけて』
お経から耳を塞いでやりすごすのですが、この娘はどんなヘヴィメタ(笑)バンドのCDを持っていたのですかね。でも笑い事じゃなく、ある因縁の霊を使って理由付けもされる怖い話でした。

最後に「人喰いの島」
これが戦時中に旧日本軍のマッドサイエンティストが研究していた生命体でサツキカ体という、人間の死体に寄生するパラサイトを描いたエイリアン・モンスター系の作品と言えるのですが、もう一つのテーマとしてリンカーネーション、つまり輪廻転生を描いているのが素晴らしい傑作。

最後は巻末に『特別付録』として、「惨劇体感シミュレーション」という残酷絵巻も収録されています。
とにかく作者、渡千枝先生は初期より画力も上がって描ける話の幅も広がっているし、当時まだまだ追っていかなくてはと思ったものでした。


わしの長男は特攻隊だった
ミサイルを遠隔操作して 高みの見物が新しいか?
放射能やガスで地球を汚染させるのが新しいか?



  1. 2015/11/10(火) 23:00:22|
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ホラー漫画(98) 渡千枝 2 「手 怪奇迷宮」

渡千枝作品より、「手 怪奇迷宮」(講談社刊)。
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毎年順調に単行本を出していた渡千枝先生ですが、前回紹介の「幽霊たちの舞踏会」からぐっと時間が経った1990年の出版で、3作品が収録されています。

まずは表題作の「手 怪奇迷宮」
青森の見知らぬ差出人から送られてきたりんご箱の中に、いきなり怖い…人間の『右手』が入っていました!この手が後に女学生の入沢美都子、そしてその両親を襲うのですが、青森まで行って見つけたその手の持ち主は、そして何故襲ってくるのか!?
渡千枝作品はミステリの要素もありながら、あからさまな超常現象も描かれるのが常。今回はちぎれた手が襲ってくるなんて話ですからね。そしてこれは、モーパッサンの怪奇短篇小説でタイトルもそのまま近い「手」がモチーフになっているのかな。

次の「悪霊の絆」は、女学生の溝口春花が家庭教師のバイトで訪れた郊外の別荘を舞台に、人間の妄執から巻き起こる怪奇現象を描く。
生徒の彩子ちゃんは可愛くて明るい女子でしたが、ある秘密があった…彩子はサイコ(Psycho)、か。
彼女はウイジャ盤(西洋版コックリさん)で亡き母を降霊しているのですが、このウイジャ盤はウィリアム・フリードキン監督によるホラー映画の金字塔「エクソシスト」でリーガンが遊んでたアレですが、他にもロバート・ゼメキス監督のサスペンス「ホワット・ライズ・ビニース」なんかでも出てきたし、普通に子供の遊び道具として使われているのですかね。

最後に「4人めの乗客」
女の子にとって最大の楽しみである、海への旅行に行く途中でひき逃げに遭って死んだ少女…そしてそれを夢で幻視した女学生の朋。彼女が友達と海に旅行へ行った時にこの2つが因縁となって絡み、民宿で少女の幽霊に遭遇する!
あかずの間で泣いている少女の頭が割れて血が噴き出し、朽ちていくグロ描写も見ものながら、根底にあるのは謎解きのミステリ。幽霊がハッキリ出過ぎでミステリから離れてしまう気もしますが、これくらいのバランスが狙いだったのかな。 面白い事は確かです。


あたしきらいよ 王子さまがでてくるお話
男はきたなくて みんなきらいよ
王子さまも男でしょ!?



  1. 2015/11/07(土) 23:59:43|
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ホラー漫画(97) 渡千枝 1 「幽霊たちの舞踏会」

今夜は渡千枝作品より、「幽霊たちの舞踏会」(講談社刊)。
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渡千枝先生は少女漫画の絵柄でミステリやホラー、怪奇色の濃い作品を描き続けている方で…
高階良子先生や成毛厚子先生、菊川近子先生といった系譜の後続に当たると言えば分かりやすいでしょうか。こういう作風も今は減っていますからね。

で、今回の「幽霊たちの舞踏会」は1985年に上梓された初の単行本で、他にもう1編が収録されています。
表題作は幽霊屋敷モノ。幽霊屋敷を題材にした作品って、ホラー映画だと有名作だけでも「たたり」「ヘルハウス」「悪魔の棲む家」「家」「ポルターガイスト」…その他、昔はかなりあってそれなりにヒットするテーマの一つだったんじゃないですかね。
我らの身近な日本でもオバケ屋敷の話は定番だったし、もちろん映画でも大林宣彦監督の「ハウス」や黒沢清監督の「スウィートホーム」、かろうじて近年だと清水崇監督の「呪怨」シリーズこそあるものの、やはりあまり見かけなくなってますね。

で、この渡千枝版のそれは幽霊屋敷の本場…なのか、ロンドンが舞台。
本物の幽霊屋敷を所有するブラックモア夫人が自分の死後の幽霊達の事を考えてそれを売りに出したため、観光会社のセールスマン達が争奪戦を繰り広げると、ブラックモア夫人、そして彼らが惨殺死体に!
屋敷という閉鎖空間を舞台にしたミステリで、となると大抵はこういうオカルトスポットの知名度を利用して幽霊の仕業に見せかけた人間の悪事だったという事で解決するものですが、本作の場合は本物の幽霊屋敷だったのか…明らかな超常現象も交えて描かれる。
視覚的にグロい描写もしっかり使われて、なかなか外さない一作に仕上がっています。

そういえばブラックモア夫人ってハードロック好きには絶対なあのギタリストの名前が使われていて嬉しいですが、他の被害者らもターナー、パーマー、ベイカー、ジョーンズ…ら、すぐに有名ミュージシャンが思い浮かぶ名をしています。キャラクター名の元ネタをミュージシャンから取る手法を使っているのだとしたら、「ジョジョの奇妙な冒険」以前の事ではあります。

この表題作、そして次の「棺いっぱいに花を」も同様に、舞台は外国で登場人物は外国人。
この時代の少女漫画にはありがちな事でしたが…しかしそれはただのオシャレとかではなくて、「棺いっぱいに花を」も西洋のゾンビ伝説がモチーフに使った殺人事件が描かれているので必然だったのでしょう。


いやあ~~あれもきっとトリックだよ
そうだ!みんなドラッグでも 飲まされてラリってたんだ



  1. 2015/10/31(土) 23:59:40|
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プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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