大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

SF漫画 (14) 松本零士 6 「ミステリー・イヴ」

今夜も松本零士先生のSF作品から、「ミステリー・イヴ」(朝日ソノラマ刊)です。
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初出の連載は漫画ゴラクdokuhon(日本文芸社刊)にて1970年から翌年までで、単行本はサンコミックスで全2巻。隔週誌だった漫画ゴラクdokuhonは「ミステリー・イヴ」の連載が終了すると共に誌名を現在も続く週刊漫画ゴラクに変更しています。
ゴラクといえば松本零士作品は「ミステリー・イヴ」以前に「セクサロイド」、以降には「聖凡人伝」「恐竜荘物語」、そして多くの傑作短編を掲載し、さらに表紙の絵もずっと描いてましたので、かなり重要な活動の場だったわけです。

「ミステリー・イヴ」の物語は、人生に行き詰まり自殺志願を持つ男・大口守が霧深い山でイヴと名乗る女と出会う事で始まります。
イヴの正体は宇宙の果ての"星雲イタス"にあるセセラセラリウム ナトリア ヘラニヤ ラスウルパニア太陽系の第20番惑星サレスから来た辺境探偵員で、人類とは比べ物にならない高い知能と何にでも変身できる能力を持っています。そう、変身能力を持っているので本当の姿は死んだ時にしか現れず、大口守の前に出てきた時は既に彼の好みに合わせたセクシーな美女の姿であり、一生そのままでいてくれるのだとか。
故郷の星に帰れなくなったイヴは大口守の傍で一生暮らすと言うのですが、そんな美女がいつでもしたい時にエッチさせてくれて、しかもその時の大口守の気分によって好きな…ヤリたい有名人の姿にも変身してくれるのです!時代が時代なので出てくる名前が辺見マリとか藤圭子とか由紀さおりなどですが。

簡単に言えばイヴは男の都合良い欲望を叶えてくれる、夢の女・憧れの女として存在します。
そんな女に星の言葉でダイ(愛する人)と呼ばれて毎度イイ思いしている大口守が、イヴと同じ星から追ってきた敵で人間を食料にするヘドという生物から地球を守る…なんて少年漫画的なSF要素も併せ持った作品ですよ、「ミステリー・イヴ」は。
しかも一般的にはただのダメ人間だった大口守の頭には、ある理由から地球上のあらゆる知識が詰め込まれた上で、タイムスリップしながら宇宙をさまよって様々な冒険やエロ経験をするのだから、松本零士先生の妄想・欲望が爆発しまくりな内容となっているのです。ついでにモテない男性読者の願望をも空想上で叶えてくれるのです。

物語は1話完結の連作で進行し、まぁいろんな話があるのですよ。
とにかく宇宙人や人間の様々な陰謀にも負けずに生き残った大口守は、後半でようやくイヴと共にイヴの故郷の星にも行って変な生物に襲われたり、やはりセックスしたり…
で、ついに迎える大団円は、なかなか味のあるハッピーエンドでした。

「ミステリー・イヴ」…後に生む事となる名作「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」等の原点でもあり、よりエロく、描く女性は松本絵が洗練される以前ならではの魅力がある初期の傑作でした。


イヴの惑星の巨大な草の葉が 夜風にゆれた
東京の灯りにも似た蛍の群れが 音もなく、しかし、みわたすかぎり飛びかっていた
ここはイヴの惑星イタス
過去か未来か……だれも知らない
……しかし、イヴはそこにいた たしかにいた



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  1. 2011/07/08(金) 23:03:42|
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SF漫画 (13) 松本零士 5 「ワダチ」

今夜も松本零士作品より、「ワダチ」(講談社刊)です。
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主人公の山本轍(ワダチ)は、表紙を見てお分かりの通りまたも大山昇太みたいなキャラ。
連載も「男おいどん」終了直後の1973年から翌年まで、同じ週刊少年マガジンでされました。
連載時のタイトルは「スペース開拓者 ワダチ」だったので、これだとSF路線だったのがすぐバレちゃいますが…スタート時はまた四畳半モノで、それが衝撃の変化をしていくのです。単行本は全2巻。

ワダチという名前は車が通った後に道に残る車輪の跡、あの轍(わだち)になぞらえて自分の生きてきた轍だからとオヤジが付けちゃったそうなのですが、ちょっと分かりにくいこれをタイトルにしたのが失敗だったのか…メジャー雑掲載かつ内容の傑作ぶりに比べて、知名度が低いですよね。
しかし既に紹介した「男おいどん」「大四畳半大物語」、あとは「聖凡人伝」なんかも同系列作品ですが、これらのようにほとんどストーリー無しの日常漫画と違って驚きの展開続きで世界も次々変化していくし、話も長すぎないので人にお薦めするならコレ、「ワダチ」がベストですよ!

さて主人公の山本轍。おいどんらと同じ風貌なので当然女達には一切モテず貧乏、"大下宿荘"の四畳半にてまたトリさんやネコ、そしてインキンタムシと暮らしている予備校生。多少設定違いはありますが、タマゴ酒が得意な大下宿荘管理人のおばさんや、バイト先の経営者のオヤジなどもそのまま「男おいどん」のあの二人です。
お金の件などでおいどん以上に暗い展開の後、最後は落ち込んで四畳半でサルマタの山に囲まれて眠る話が最初に少しあり…
そんなワダチが屋台をひくおでん売りのバイトをしていて出会った佐渡酒造は、後の人生を決定付ける人物でした。

練馬美術大学研究所で教授を務める佐渡酒造から頼まれたバイトを引き受けたワダチですが、その頃から身近に異変が起きてきます。周りの建造物が次々に壊されていくのですが、大下宿荘の周りが野原になり、下宿自体も半分消え、ついには完全に消滅します!
それから海岸で謎のサバイバル生活に突入するのですが、それは佐渡酒造によるあるテストでした。そしてこの、最初はイチ教授かと思われた酒造は、世界中で彼だけしか理解出来ない次元波動帯水平移動跳躍理論…まぁワープ航法なのですが、それを使って資源が枯渇してダメになった地球から全日本人を脱出させた上で、日本人以外の腐敗した人類が残る地球を破壊して滅ぼす"カミヨ計画"のプランを実行します!

ちなみに佐渡酒造という人物は、松本零士作品でスター・システム化しているキャラクターなので、他でも何度も目にしますが、やはりこの「ワダチ」での彼が好き。
ここでワダチと同じく若い頃から随分人にバカにされたと告白します。顔がまずくて背が低いからと、その頭脳を持っても女性には一切モテず片っ端から振られ、国際会議でも白人に黄色いサルと呼ばれた…明るい表情の内に秘めた悲しさがたまらない。積み重ねられた劣等感がカミヨ計画を生んだわけですね。

さて瀬戸内海を埋め立てて作った都市から、新国連軍の目や攻撃などを尻目についに地球から脱出し宇宙空間に飛び出した一億の日本人達!
さらに佐渡酒造の頭の中だけで密かに計画していたカミヨ計画の締めくくりは…
『わしをサルとあざわらったやつらのいる惑星
 みかけゆえにわしをバカにして去っていった美人のいる惑星
 自分たちの核実験も大工場も資源の浪費もタナにあげて
 地球の汚染を日本人だけのせいにしたやつらのいるのろわれた惑星
 わらうがいい悪口をいうがいいバカにするがいい
 おまえたちはいますぐ原子にかえるのだ
 宇宙のクズとなって永遠に暗黒の空間をさまようのだ』

というわけで、地球を破壊して残してきた外国人どもを全滅させる事。これも実は新たな惑星で生活を始める日本人にとってなくてはならない行為だったのですが、おびえた"カミヨ計画推進委員会"らの手によって阻止されてしまい、失敗。しかし一度は全人類の運命をこの手に握ったと満足して拳銃自殺。

この後はいよいよ舞台を新天地…地球の20倍の大きさを持ちながら、まだ一億人の日本人しかいない"大地球"(命名・ワダチ)に移します。
そこで再現された『東京都文京区本郷二ノ三 大下宿荘』の四畳半から、未開の弱肉強食原始の森へ。ワダチはいきなり身ぐるみはがされてボロボロになりながら、ある不思議な現象もあって生き残り…

さらにスリリングな展開が待っていて、野崎雪枝と名乗る女が登場してワダチを慕ってきますが…その正体はヒミコといい、ある衛星船のスタッフ。しかもアンドロイドでハーロックの婚約者!
女には裏切られ続けてきたワダチなのでいつもの事ですが、機械であるヒミコの『心』が最後に泣かせてくれる…あまりにも悲しいお別れ。
そうそう、一応スター・システムでハーロックまで登場するのですが、「ワダチ」におけるハーロックは何かやけに外見も気持ちも弱そうでした。

ここまでのワダチの姿から、いきなりSFになった「男おいどん」最終話の後の世界を見れるようで、想像するファンを喜ばせていたと思うのですが、ワダチはもう物語の終了目前にある方法によって消えたあの四畳半へ帰り、そこで本当に「男おいどん」とリンクし…実はパラレルワールドというより続編だったと分かるのは、読者サービスでしょうか。

どんな目に遭っても、雑草の強さを持つ主人公が図太い神経で生き抜く。これは松本零士作品で共通する部分ですが、どうも他の作品より不安さ溢れ滅び行く暗いムードが流れてもいます。
本作品の直前に連載していた、ジョージ秋山先生の「ザ・ムーン」辺りからの影響を感じないでもないのですがあそこまで絶望的ではなく、世の『背が高くて美男子』絶滅しても、決してワダチは死なずに頑張るでしょう…
松本零士先生のいろんな要素が上手く融合した世紀の名作、それが「ワダチ」でした!


サルならサルでもいい だれにも見むきもされなくてもいい
サルでないと生きていけない時代がくるのだ わしは信じていた
わしらの・・・・わしらの時代がくるのを信じていた
わかるか轍(ワダチ)よ



  1. 2011/07/04(月) 23:47:06|
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SF漫画 (12) 松本零士 4 「ヤマビコ13号 銀河鉄道の夜」

今夜の松本零士作品は、短編集「ヤマビコ13号 銀河鉄道の夜」(奇想天外社刊)。
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私は昔に集めていた松本零士先生のSF作品をほとんど売り払ってしまった事があるのですが、いくつかは手放せなかった…これもその一つで、当時の私のバイブルであり売るわけもない「男おいどん」の横に大事に保存していたのです。
というのも大山昇太がそのまま出てきて、「男おいどん」とリンクする作品があるのです。似て非なるキャラを使ったスターシステムではなく大山昇太そのものが出るスピンオフ物なので、おいどんファンはこちらもおさえておいた方が良いのではないでしょうか。
ちなみに短編集である本作のタイトルは「ヤマビコ13号 銀河鉄道の夜」となっていますが、「ヤマビコ13号」「銀河鉄道の夜」はそれぞれ別作品。

まずは1971年の希望の友(潮出版社刊)で掲載された、「銀河鉄道の夜」
タイトルの通りく宮沢賢治の童話作品を題材にしていて『原作』とクレジットもされているのですが、普通のコミカライズ作品ではなく、「銀河鉄道の夜」読者の登場人物が出る、という使われ方。
同作品から影響を受けて代表作「銀河鉄道999」をモノにした松本零士先生が、それ以前に銀河鉄道の夜を描いていた…これは当然重要すぎる意味を持つ作品でしょう。
内容も宮沢賢治への想いを込めて、ジョバンニを思わす星を見るのと空想が好きで寂しい少年が主人公。彼が大人になるその瞬間を、ファンタジー交えて描いた切ない胸キュン物の傑作!
最初の数ページは青いカラーページで描き、効果的に美しさを増しています。

続いてはこの短編集で一番古い、1969年のプレイコミック(秋田書店刊)が初出の「ネアンデルタール」
太古の昔に実在したが絶滅した…我々とは別系統の人類であるネアンデルタール人を題材に使い、原始ではなく近未来を舞台にした、ラストにどんでん返し有りのSF作品。
ネアンデルタール人の女がメーテル的な美しさなのですが、まだ松本零士先生が人気漫画家になる前の初期絵柄なのが貴重であり、この時に描いてた女性も良いのです。

次の「大魔女王第3紀」は1974年の週刊プレイボーイに掲載した作品で、お得意の四畳半ネタに、SF…というか奇想モノを交えた短編。
主人公は何も無い四畳半に住んでいる本船年郎(トチロー)で、押入れの中に突如ヤラレタという裸の美女が現れる!文字通り妄想物語。

同じ週刊プレイボーイで1977年に掲載された「大サルマタケ博物史」は、いよいよ大山昇太らしき奴が登場!
謎の茸・サルマタケが日本中で繁殖しまくって生物滅亡の危機にさらされた時、ある大学教授がその発生源を突き詰めると…そこは"あの男"が住む四畳半の押入れにあるパンツの山だった!
国中が大パニックに陥るレベルの荒唐無稽なサルマタケの山は、「男おいどん」では描けなかった世界です。密集するサルマタケが大迫力で、サルマタの怪人が酷い目に遭う事も無いので素直に笑えるギャグ漫画です。

最後は1971年の少年マガジン(講談社刊)に掲載された表題作の一つ「ヤマビコ13号」
舞台は高度な文明を持つ未来。しかし四畳半に住む男、出ました大山昇太が主人公です!
「大サルマタケ博物史」で出てきた同じ風貌の男は、名乗ってないので絶対に大山昇太であるとは言えません。松本零士先生はキャラ使いにスターシステムを用いる漫画家ですからね。
しかしこの「ヤマビコ13号」に出てくるチビでガニ股で丸眼鏡のこいつは、間違いなく大山昇太。
まぁ時代設定が違うので「男おいどん」のパラレルワールドと見れば良いのでしょうが、同じように美女にうまくだまし使われて支配庁に潜入し、ヤマビコ13号という機械を破壊する…
ブラックユーモアと風刺の効いた優れた短編でした。

そんなわけで「ヤマビコ13号 銀河鉄道の夜」…なかなかレベルの高い短編が並んでいます。


今夜がお別れかもしれないわね
もうすぐその望遠鏡が水に流れるわ
そのとき…あなたは、おとなになる…
夢ばかり追っかけないで あなたの経験で物ごとを考えるおとなになる
わたしはそれが とてもうれしいわ……



  1. 2011/06/26(日) 23:14:39|
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SF漫画 (11) 鬼頭莫宏 1 「なるたる 骸なる星珠たる子」

今夜は鬼頭莫宏先生の「なるたる」(講談社刊)です。
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まずは作者の鬼頭莫宏先生から紹介すると、1966年生まれの愛知県出身で、デビューは1987年に週刊少年サンデー(小学館刊)にて「残暑」でしているそうです(当時は鬼頭知広名義)。
しかしその後は泣かず飛ばずで会社勤めやアシスタントをしながら再起を目指し、時を経て1995年に月刊アフタヌーン「ヴァンデミエールの右手」を描き再デビューした方。

次の「なるたる」は無事にヒットしましたが、他に代表作となったのは現在も月刊IKKI(小学館刊)で連載中の「ぼくらの」でしょう。
後者はあのジョージ秋山先生の名作「ザ・ムーン」に範をとったと公言しているのだから、嬉しいものです。この2作品は共にアニメ化もされていますね。

さて今回は「なるたる」
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月刊アフタヌーンで1998年から5年と少しをかけて連載された作品で、単行本は全12巻です。

気になる変なタイトルは、小さくサブタイトルになっている『骸なる星 珠たる子』のひらがな部分を取ったもの。
そんあの訳分からないですよね…そんな所からも想像が付くでしょうが、表紙絵だけ見られると思われるであろうアニメっぽいキャラの顔や雰囲気とはイメージが合わない、意外とシリアスで大人向けの内容となっているのです。
特に物語後半の暴力描写、性描写は激しいものがあり…文字通りセックス&バイオレンスでシリアスな作品に仕上がりました。

主人公は当初小学6年生だた玉依シイナという少女で、祖父母の住む島でおぼれた時に助けてくれたのが、星の形をした異生物"ホシ丸"
この生き物が限られた少年少女だけが使える、そして持ち主の意識とリンク(チャネリング)してそれぞれの能力を発揮する竜の子竜骸等と呼ばれるモノだった…
こう言ってしまうのも何ですが、正に荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」におけるスタンドみたいなモノです。

『竜 鬼 妖怪 妖精 天使 悪魔 人魚 化物 そして神仏
これら形而上の存在として語られてきたものの依拠するところは「竜の子」に一元化される
彼らの繁殖のイメージの希薄さ その理由もここにある
彼らは繁殖などしない 生物などではない 生命を持たない』

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シイナの本名は漢字表記のなのですが、何故カタカナ表記にしているのか…それとこの名前にまつわるいい話も物語終盤で明かされます。
明るい性格でスポーツチャンバラの名手、パイロットの父親俊二と二人暮らしで料理も上手、やってみれば勉強も誰より出来る…そんな少年漫画の主人公らしい少女。

しかし出来すぎてる感じがイマイチという読者も多いでしょう。
そこで佐倉明という内向的な対人恐怖症のイジメられっ子が登場するのです。
このアキラちゃんと呼ばれる少女も竜の子"エン・ソフ"とリンクしていて、守ってあげたい的な可愛いキャラ。
しかし父親を殺害して少年院に入る…という、暗い展開を見せてきます。迎える最期も衝撃的。

さらに「なるたる」において、竜の子を用いるのはシイナ達や味方と呼べる鶴丸丈夫古賀のり夫らだけではなく、他の一派…要は敵側の者たちも登場してきてまた面白くなります。

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"黒の子供会"なる須藤直角をリーダーとした竜の子保持者たちの思想は、世界をリセットして自分たちの理想である、賢者は生きて愚者は死ぬ…差別がつくる平等な社会を造ろうと夢見ています。

『僕達はこの疲弊した社会を変えることができる
因習や慣習や社会通念や常識や そんなものに縛られない 自己の批判と改革のできる
自ら考えられる人間で構成された社会 自ら考えることのできない人間は滅び去る そんな社会
それは痛みを伴う社会だ 痛みは思考を明晰にする』
と。

彼らと対立し、また国家機関や在日米軍とその竜の子までもが登場して物語が膨らんでいくのですが、何しろ時にオムニバス形式になりながら予想が付かない衝撃的な展開が凄く、何度もシイナの危機を救う"イカツチの乙姫"や他にも謎も多い作品ですので…それぞれの顛末を書くのは止めておきましょう。

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1巻の時点からしっかり構成されたSF物語で、何と宇宙…太陽系以外の惑星も関わってくるし、これだけ言っちゃうと地球はほぼ破壊され尽くし、人類も2人だけしか生き残りません。
そこまで話の規模が大きくなるラストは付け足し、というかあらかじめ決まっていた結末でしかなくて、そこに至る過程の描写が凄いのです。

次々と死んでいく登場人物。
壮大な力への畏怖の念に襲われた時の人間達の行動とは…ってこの最終話で見える民衆の狂気は数十年前に描かれた「デビルマン」そっくりですけどね。
単純に竜の子のデザインや描写を楽しみに読むのも良いでしょう。

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それでは、物語が終焉を迎えて最後になったセリフでお別れしましょう。


大丈夫
気に入らない世界なら わたしがまた潰してあげるから
竜たちの乙姫は様々な思考の回路
それを使ってあんたはやりたいようにやればいい
命は代替がきくから 命たりえるんだから



  1. 2009/03/21(土) 23:43:14|
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SF漫画 (10) 塚本俊昭 1 「SF宇宙最終要塞」「SF第2地球誕生」

久々にSF漫画も紹介しておきましょう。

今回は1949年生まれ広島県出身の、塚本俊昭先生。
良質のSFを描いていたので好きだったものの、私が大昔に漫画作品集を二冊購入して存在を知って以降、他の作品を探し始めたのですが既に漫画は描いていないようで…
もはやカルト漫画家扱いで情報に乏しいのですが、実は現在もイラストレーターとして活躍しているようです。

そちらの仕事は、高橋克彦菊池秀行田中光二といった日本SF小説の大物作家の作品や、ジャパメタバンドConcerto Moonのアルバム「From Father To Son」のジャケットなんかでイラストを見る事ができますよ。
私もかつて早川書房やサンリオのSF文庫を集めて、海外SF小説を浅いながらも読みまくっていた時期があるのですが、そんな時にこの塚本俊昭先生の漫画にも出会ったのでした。

SF、つまり"Science Fiction"。
または科学は無知である藤子不二雄先生の言う"すこしふしぎ"(Sukoshi Fushigi)の略であるこの言葉には、科学的な物や未来世界、ロボットや宇宙ばかりでなく、ファンタジーやサイバー・パンク、スチームパンクまで全部入ると思うし、夢いっぱいなんですよね。

私が読んできたSF小説はわりとベタな部分だけなのですが、古典SF作家であるジュール・ヴェルヌH・G・ウェルズあたりはもとより、ジョージ・オーウェルアーサー・C・クラークアイザック・アジモフといった超有名所、ロバート・シルヴァーバーグシオドア・スタージョンウィリアム・ギブスン
特に好きで、今でもたまには読むのが60年代くらいのフィリップ・K・ディックレイ・ブラッドベリあたりかな。やはり病んだSFが好きなのでしょうか。かなり文学的だったりしますしね。

話を塚本俊昭先生に戻して…
その二冊の漫画単行本「SF宇宙最終要塞」「SF第2地球誕生」は共に芳文社より1978年に刊行されているもので、雑誌漫画パンチ(芳文社刊)にて"SF近未来シリーズ"として連載されていた短編作品を収録しています。
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内容はジャケで連想されるようないかにもな宇宙SFばかりではなく、シュールな奇想作品も目立ち、幅広い作品集になっています。
意外にも宇宙人なんかは一度もハッキリと姿は表しませんし、宇宙や未来の科学が舞台の作品でも奥にあるのは人間ドラマなのです。

経歴はよく分からない塚本俊昭先生ですが、絵は始めから上手くて、人物の顔が真崎守先生にそっくりで驚いていると、「SF宇宙最終要塞」の巻末推薦文を真崎守先生が書いていて、それによるとどうやら塚本先生はの真崎守先生のアシスタント出身のようです。
それなのにここまで一貫したSFの世界…つまり真崎守先生とは全く違う物を描いてるのですね…。


いくつも好きな作品はあるのですが、まず「富士噴火大作戦」
一年後の日本に壊滅的な被害を出すであろう大地震を予測した政府の中、地震の専門家である金子という男が地震そのものを防止する方法として、地震エネルギーを火山エネルギーに転換させて富士山から噴出させるアイデアと方法を提案し…見事に震度3の小地震に抑える事ができました。
それも静岡県は富士山の近くにある、育った孤児院と子供たちを守るためだったと分かり、泣いて富士山の噴火を見ながら
『富士さん あなたのおかげで 子供たちといい正月がむかえられる……
ありがとう 富士さん』

と言うラストがいいです。


「原爆ジャック」は米軍が起こした事故によって妻と子が瀕死の重傷を負わされた原子物理学者の川島博士が、入手した原爆を持って東京タワーに立てこもり、息子が死ぬ時は何十万人の命を道連れにすると言い…
そこで病院が残っていた脳だけ生かしてサイボーグ手術をして息子を生かす、という話なのですが、ここで科学の進化が絶対に正しいのかと神に問いかけるようなテーマが見られます。


「生命創世記」は木星で生物が発見され、かつて解雇されたNASAの元宇宙生物班メンバー達が再び召集する話。
ついに塚本俊昭であからさまな宇宙人が?と思いきや、この生物はかつてヘンダーソン博士が品種改良して酸素の無い世界でも生きられるようにして造り上げ、卵を木星に送り込んだ生物なのでした…
そこにある真意、それと芋虫そっくりな木星生物の造りも好きな作品です。


「空中都市大崩壊」は、才能あったのに貧乏であるためにある金持ちの同級生に利用され、虐げられ続けた風原による壮大な復讐劇がカッコいい。
『人間も都市も一緒さ 頭と手足がバラバラじゃあな
つまり自己矛盾だよ その結果自己崩壊が始まる』



「原子力空母轟沈」は、アメリカの原爆にやられた広島県出身の自衛官がある事件をきっかけに怒りの攻撃を開始する話で…一度の敗北と戦後の洗脳によって、もはやポチとなった日本を考えると痛快さもある作品ですが、これもオチがあって現実ではありませんでした。


「千年王国教」は凄い名作で、奇跡を起こす新興宗教団体の恐るべき陰謀の話。
すでにサイボーグ手術やロボトミー手術も実用化している、科学力に先んじた千年王国は理想国家の建国を目論んでいて…
『これはまぎれもない奇跡よ 科学は奇跡をつくれるのよ
三百年前の人が現代にきたら奇跡がおこなわれていると思うようにね』

との梨子様の言葉はごもっともです。ラストもいいですよ。


他には「北極点炎上」「ヒットラーの帰還」「輪廻の風」「超兵器の墓場」「巨獣世界」「月をとばせ」「神のメッセージ」「宇宙最終要塞」「SF第2地球誕生」「スペース博物館」「人間消滅」「鎖国ニッポン」といった作品が収録されています。

塚本俊昭先生はこれだけの実力で、どうしてSF漫画家としては少しだけ先輩になる諸星大二郎先生や、星野之宣先生のような市民権を得られなかったのでしょうか…
そのために他の作品を読む事が出来なかい事が残念でなりません。

  1. 2008/09/01(月) 23:16:31|
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プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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