大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(7) 蛭子能収 1

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蛭子能収(えびすよしかず)先生は1947年生まれの長崎県出身で、元ちり紙交換業やダスキン配達で…
って、この人のことは経歴から語る必要は無いでしょうか。
TVタレント、俳優としてあまりにも有名になり、あの馬鹿にされてヘラヘラしてる顔を知らない人の方が少ないですよね。

1932年には、トッド・ブラウニング監督の映画「フリークス」にもピンヘッド役で出演してましたね。
・・・冗談冗談。
いや、蛭子さんにそっくりなフリークスが出てるわけですよ、この超名作古典映画に。

しかし彼、れっきとした漫画家。
しかもかつて天才的な不条理漫画を描いていたのです。

『蛭子は漫画つまらないよね~』
『あれはヘタウマじゃなくてヘタヘタでしょ?』
とか臆面も無く発言して、蛭子先生を本当にテレビだけの人だと思っていたりする愚か者がどれだけ巷に多い事か。
それ、本当に恥ずかしい事だと思いますよ。

ただそう思われる原因は蛭子先生自身にもあります。
何故なら近年は、いや10数年前より既に初期の狂気は完全に消え去ったつまらない漫画になり、しかもそれをそこらじゅうで発表しちゃってるのが現実ですから。
それをたまたま目にした浅い読者が上記のような発言をしていると。
テレビでも選り好みせず本当にくだらないクソ番組に本人が出てますしね。

漫画家デビューは、我らがガロに持ち込みした1973年の「パチンコ」。ギャンブル好きで有名な蛭子先生は、やはり題材にギャンブルを使っている作品数も多いのです。
前述のダスキンに勤めていたのは実は漫画家デビュー後で、子育てのために一時期漫画から遠ざかっていた所を、自販機エロ雑誌であるJAMHEAVENの編集長を務めていた高杉弾氏と同誌の責任編集者にして伝説のバンド・ガセネタタコ山崎春美氏が探し出して再デビューさせた経緯もあります。

好き嫌いはあるでしょうが、とにかく'80s初頭に青林堂から出版されていた単行本、主にガロで掲載された作品群が収録されている「地獄に堕ちた教師ども」「私はバカになりたい」「私の彼は意味がない」等の初期作品を読んでみてもらいたいですね。
でも読み捨て週刊誌漫画に慣らされてる読者には、やはり
『蛭子は漫画つまらないよね~』
となってしまうのでしょうか。
(さっき読み返してて少し不安になった)

蛭子漫画はストーリーだけを説明しても、あの絵がついてこないと話にならないので(このブログでは画像は本の表紙しか使ってはならぬそうで…)、内容についての説明は避けます。

悪夢のような世界が痛快なその作品群は、本当に狂った人が描いてる世界としか思えないですよ。
エロ漫画として描いてる作品でさえも、とんでもなく不気味で不条理!
ギャグ漫画として描いてる(?)作品は本当に笑えなくて、本人の方がはるかに面白いのですけど…別の可笑しさが生まれちゃってます。

貧乏人や弱者の怒りを爆発させた作品などは特に素晴らしかったのですが、タレント業で漫画の100倍以上の収入を得るようになったら描けなくなりますよね。
やはりある程度の生活に対する不満や不安は必要なのかな。トホホ…

つげ義春「ねじ式」に最もショックを受け、影響されたと語る蛭子先生です。
なるほど、確かに「ねじ式」の雰囲気に通ずる作品も多いですね。
すると少し道が違っていたら、最もつげ義春漫画の系譜を受け継ぐ、後継者たりえたのかもしれない。
もちろん受け継ぐだけでなく、絵は全然違うし、オリジナリティも凄いわけですから、そうならなかった事が残念です。

それと、あの顔やキャラを知る前に作品を読めていればもっと良かったのですが(笑)、私の世代ではそれは難しかった。

ずっと前にテレビ番組のインタビューで語っていたのですが、本当は映画が作りたくて上京したそうですね。
映画学校にも入って、『オレも将来映画を作るようになるんだろうな~』なんて思っていたら、彼だけ友達が一人もできなくて、結局作れなかったのだとか。

そう、映画はある程度の金が無いと作れないし、そもそも一人で作れないですからね…
蛭子に協調性があるわけないんだから(彼にそんなものいらないし)、やっぱり漫画の道に進んでくれて良かったな~。

まぁ何だかんだ浅く語ってみましたが、その漫画はつまらなくなっても、蛭子能収先生のイラストが使われてるチラシなんかは見てしまいますし、やはりあの味のある絵自体が魅力的である事に変わりは無いのですよね。


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  1. 2006/06/28(水) 22:28:32|
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梶原一騎(9) 川崎のぼる 2 「男の条件」 2

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さて、前回に続いて原作・梶原一騎先生、作画・川崎のぼる先生による、「男の条件」の下巻・怒涛編の紹介です。

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月影光の、さらなる陰謀によって完全に出版社から追放される事となった、旗一太郎男谷草介のまんが天使二人…

そこで、あの上巻で一太郎らに感動させられた、大暴力団の息子だがガリ勉のモヤシっ子・風巻長五郎が、アシスタント志望のふりして自ら月影光の元へ行く。
もちろん光の嘘を暴き、一太郎らの身の潔白を証明する証拠を探しに行ったのです。
ついに証拠を見つけた長五郎と、その身が心配で張り込んでた一太郎でしたが、取っ組み合いの末、光は最後の反撃で二人を縛り、証拠を持って逃げ出します。

故郷へ逃げる光。単身追う一太郎。
(漫画家入門のための漫画かと思ったら、変な雲行きですね)

追った先は…岡山県の、絵に描いたような昔の田舎。
どこも舗装されてない道のわきには肥溜めがあって(笑)
ガキ共も継ぎはぎのズボン履いたマヌケ顔ばかりで…

そこで故郷に錦を飾ったと、得意顔で自身の漫画が掲載された雑誌を配る光は本名が山野権太で、こんなテレビも雑誌も無いような田舎ですら村八分の扱いを受けていたために、わずかばかりの絵の才能にすがって上京していたのだと分かります。
あの異常なまでの成功欲やカッコよさへの憧れの源もここにあったのですね。
しかもたった一人残した母親に対する孝行を見てしまい、もう全てを許して去る一太郎でした。

それからの一太郎は、わけあってヤクザ同士の抗争に参加した後、
(漫画家入門のための漫画かと思ったら…)

新たに大地雷助という漫画家志望の友と出会い、盗作の汚名をきた身ながらも挑戦できる"懸賞まんが"に応募する事に目標を定めます。

そして人生の敗残者たちのふきだまりであるドヤ街で、日雇い仕事をしながら、血を売ったり、何とか腹ペコをしのいで夜に漫画を描く生活。
ついに人間の冷たさを描いた氷のような作品「非情の街」を描き上げ、ついに一太郎の天才が認められて満場一致で当選!!

しかし…内容に間違いがあったと、その当選を辞退し、取り返した原稿をやぶいてしまいます!もったいない!!
つまり
『やはり 人間は美しい!
旗一太郎まんがにはかぎりなき人間信頼を高らかにうたいあげよう!』

と、決めたのです。

それから、『当選した栄冠よりも とりかえした芸術家魂にほれこんだ』という星空文庫社長・夢野天一郎から作品の依頼を受けるのです。

社長といってもこの出版社は社員が社長の夢野一人。
しかも借金の山の中から、家を売った最後の金で一太郎に賭けたいと言う。
話を聞いてそれを快諾し、『わかりましたっ!』と言う一太郎の目に炎!
まさに「巨人の星」と全く同じく、目の中に炎が燃えています!

続けて『士は己れをしるもののために死すといいます おれに才能があるかどうか……しかしこの血でえがきぬいてみせます!』と、一太郎の言葉。

いよいよ草介と雷助の協力も受けて、新作「ある無名まんが家の戦い」が完成!!
日雇い仕事を続けながら日々を過ごす一太郎の元に、作品が地道に増刷を重ねて売れている、つまり勝ったとの報せが入るのです。

それからこの作品の最後の最後に、恩師の男谷が5カ条の男の条件聞かせてくれます!
この先生は苗字からして男谷ですし、まさに男の中の男でした。

まんが家の五大条件……そして男の五大条件
その内容は、各自が本を手に入れた時に確かめ、泣いてくださいね。
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これで終わりです。
根性至上主義というか、常人ではやれない命がけの努力をして栄光を掴むという、梶原が少年向け漫画にしばらく描き続けていた思想そのままに、"漫画家への道"にまでスポ根の世界を作り上げた作品でした。

川崎のぼる先生の絵はいいですね。
自身もとんでもない貧乏だったからか、どん底生活を描くのを得意としているのに、彼が描くとさわやかなんですよ。
一太郎がいつも来ていた黒のタートルネックシャツは、常に胸筋、時に腹筋の割れ目までくっきり浮かんでますよ!
だからって、服を買えなくて肌を黒く塗って服を着てるように見せかけてるのか?
とまで深読みしなくてもいいでしょう。
ただのピッタリしすぎな服なんだと思います。

登場人物皆の個性が分かりやすくてストレート過ぎるだけに、それぞれの役割を果たしてるもけど驚きには欠けたかもしれません。
しかし私は、こういう漫画的で微笑ましいキャラクター達を愛してやまないのです。

『君は"生きる"ということにどんな目標をもっているだろうか!? 君の生きがいとは、いったいなんだろう!? そんな問いかけに、君はすぐに答えられるだろうか!?』

という、1970年初版の単行本出版時に書かれた川崎先生による"あとがき"でいきなり始まる問いかけ。
これに未だ答えられない自分は、まだまだ梶原漫画の読み込みが足りないと反省し、心機一転、また読み返していきます。押忍!

最後に大事な疑問があります。
梶原原作の持つ特別な力で、とにかく読者を文字通り漫画の世界に引き込むというのがありますよね。

梶原先生は漫画原作を書く以前に、スポーツ小説や活字の実録物を書いてた経験があるのですが、その時学んだ手法を、そのまま漫画に生かしてたようです。
つまり、大ボラをいかにも本当の事に見せる事が、当時の漫画界の誰よりも優れていた…

「あしたのジョー」を読んでボクシングを始めた人の数が、一体どれだけいるのか。
同様に、「空手バカ一代」で空手を。
「タイガーマスク」でプロレスを。
「キックの鬼」でキックボクシングを。
「柔道一直線」で柔道を(これは私もやりました)。

これらは、当時大ブームになって、相乗効果で道場はどこも満杯になった事も語られますが、さらに恐ろしい事に梶原漫画は既に数十年という時間が経っていて、その間ずっと本が売れているという事です(物にもよりますが)。
影響受けた人数をトータルで計ったら、もう天文学的数字になるって事ですね。

だがしかし、「男の条件」を読んで実際に漫画家を目指した人の話を聞いた事がありません…
そういう方も当時はいたのでしょうか?
今度漫画家デビューする人は、インタビューで漫画家になったきっかけを聞かれたら、
『藤子不二雄の「まんが道」を読んで…』って答えるより、
『梶原一騎の「男の条件」を読んで』って答えた方がずっといいですよ!(何が?)

寝る前に急いで書きましたが、また長くなりすぎました。
おやすみなさい。

  1. 2006/06/27(火) 00:23:24|
  2. 梶原一騎
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梶原一騎(8) 川崎のぼる 1 「男の条件」1

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ぼくは、梶原一騎氏に、おそらく氏の代表作となるであろうこの「男の条件」の原作をいただいた時、グサリとするどい刃物で、胸をつきさされたような思いだった。
(川崎のぼる談)

こんばんは。
久しぶりに梶原一騎原作漫画の登場です。
思えば、最初に梶原一騎先生を長々と語ったこのブログ。

あれから…誰もが知ってる大御所漫画家や、背筋の凍る怖いホラー漫画、美しいアートのような漫画や、劇画、サブカルチャーから少年ジャンプまで、少しずつですが語り進めてきました。

しかし私が過去に一番たくさん読んできたのは、やはり梶原一騎先生。
いつかこのブログを止める時にも、梶原一騎先生で〆たいものであります。

申し遅れました。
私、当ブログ名作漫画ブルースの書き手・BRUCEと申します。

さて、今回紹介する梶原漫画は、「男の条件」です。
少年ジャンプで1968年から掲載され、単行本は上・下の全2巻(集英社刊)を残すこの漫画。
連載が打ち切りになるのも早かったようですが、かなり熱い名作なのです。
私は決して"迷作"などとは言いませんとも、ええ。

原作の梶原一騎先生については以前長々と書いたのを読んでもらうとして、今回の作画担当は川崎のぼる先生。
この人の描く線は、そのキャラの眉毛と同じように太く、男らしい。
画像を見て頂いたら分かるとおり、「巨人の星」と同じ漫画家で、この先生が梶原先生と組むと、二人の元々の性質である"男臭さ"や"泥臭さ"といったものが増幅され、読者にまで匂ってくるようではないですか。

実際は冒頭に挙げた川崎先生の言葉(実は単行本に寄せたあとがきからの抜粋でした)のごとく"氏(梶原)の代表作"にもならなかったし、未だに再発もされずに激レア漫画としてマニアの間に名を残すのみです。

このお話はといえば、梶原川崎「まんが道」・・・つまり、漫画家を目指す青年の物語なのです。
しかしそこは梶原先生。
ヤクザと腕一本かけて勝負したり、親友がライバル漫画家に殺されかけたり(!)と、漫画家としてはあまりにもとんでもない…けど、私にはこれが凄く面白いので、紹介せずにはいられなかった。

もうちょっとお話を詳しく紹介しましょう。


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主人公の名は旗一太郎

中卒で工場勤務の労働者(つまり工員)である彼が、漫画家・青山の元へ行く所からスタートします。
その訪問の目的は、人気連載中の漫画「男の花道」で出てきた旋盤の形がおかしいからと、同じ工場(ちなみにこの工場の寮は、9人部屋のタコ部屋)で勤務する気の弱い漫画好きの同僚が、作品の世界の現実感が薄れたとショックを受けているので、正確な形を教えるため。

もちろん門前払いをくらうが、張り込んで尾行し、BARで青山らがヤクザに襲われた所を助け、しかしその時頭をビンで殴打されて出血。
すかさずその流れた血をインクにして床に旋盤の絵を描く・・・熱い漢・一太郎である。

その時の精密なデッサンを青山に認められてアシスタントになるが、青山の手伝いにやってきた漫画家の男谷草介が登場し、一太郎の運命も変わる。
その男・男谷草介とは、とんでもない赤貧暮らしをしても、己の信念を破る商業漫画は描かないし、まぁ雰囲気からして凄いヤツ(風貌はまさにキリスト様、もしくはチャールズ・マンソン)なのです。
そして一太郎は草介に魅かれ、彼に弟子入りします。

そのためたった一日で売れっ子漫画家の青山邸からは出てしまうのですが、ここで知り合った人物でもう一人、重要な人物がいました。
いつも心を求める一太郎に対し、見た目のカッコ良さを求めるキザなライバル・月影光。
こいつは一流漫画家になるためには手段を選びません。

この二人の特徴とライバル関係は、完全に「巨人の星」星飛雄馬と花形満なんですよ。しかも外見も含めて!
読んだ人の誰もが思う事だけど、一応書いておきます。

ともかく漫画家修行に命を賭ける事を改めて誓った一太郎と草介は、修行の一環+生活費稼ぎとして、まず紙芝居で下町の子供達と勝負し、見事に勝つ…が、その直後暴力団に潰される。
その暴力団の親分が、何と女子高校生(!!)の、薬師丸ひろ子

・・・じゃなくて、風巻美香です。美人ですね。

ここで引かない一太郎達は、美香と勝負する事になるのですが、それが紙芝居でガリ勉の弟・風巻長五郎を感動させてみよ。できなかったら右腕一本貰う…という、激しいものです。
そう、男の世界に半端はない!

で、結局長五郎は紙芝居の間中わめき、怒らせて終わるのですが、
お涙ちょうだいがなにも感動のすべてではない 人の心をしんそこゆさぶり つきうごかせば これすなわち感動!
という事で、結果一太郎達の勝利!

さらにあの、広場で子供達に見せた自作紙芝居「おれたちの旗」を漫画にしてデビューする話が舞い込む。
しかし…ここであの月影光。奴が策略をめぐらせて盗作し、一足先に発表。
しかもそれを知らずに出版社に持ち込みした一太郎達が盗作者の濡れ衣を着せられ、出版社からも追放の身に…

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ここまでが上巻・風雲編のお話でした。

あまりにも眠くてウトウトしながら書いちゃいました。
そんなわけで、この続きの下巻・怒涛編は次回です。

立ち直れ!そして這い上がるのだ!まんが天使・旗一太郎と男谷草介よ!!
(※まんが天使・・・作中で女親分・美香によって、純粋な旗一太郎と男谷草介はそう呼ばれました)

  1. 2006/06/24(土) 00:32:28|
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月刊漫画ガロ(6) 林静一 1

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今夜は、とにかく芸術性が高い漫画家…林静一先生。
アニメーターやイラストレーターとしての仕事でも知られてるわりに、漫画作品の数は少ないのが残念ですが、モノにした数編の傑作は、確実に後世に残る名作漫画であります。

前回の平田弘史先生の所にて、"読み捨てできない漫画"と書いた時に、他に真っ先に思いついたのも、やはり先生でした。

林静一先生は、1945年3月7日の満州生まれ。
最初はアニメの道を志し、10代の時から入社した東映動画では、あの高畑勲「狼少年ケン」「ホルスの大冒険」で仕事を共にした事も知られてますし、ずっと後年になって、ロッテの飴「小梅ちゃん」のイラストと、TVのアニメCMでたいていの人は先生の絵を見た事があるでしょう。

しかしこのブログで注目したいのはアニメではなく、もちろん漫画の方です。
デビューは東映動画退社後の、ガロで1967年に発表した「アグマと息子の食えない魂」になります。
デビュー作にしてこのレベルですか。

その後、「巨大な魚」 「赤とんぼ」 「山姥子守歌」 「花ちる町」等、どんどん描いていきますが、林静一先生が漫画作品を次々発表するなんて、コアな漫画好きにとって幸せな時があったのですね。

そういえば、ずっと後年に同じくガロでデビューした特殊漫画家大統領・根本敬先生はその著作にて、何故根本先生自身があんな作風になったかという話をしてました。
小学五年位の時にたまたま本屋でガロを手に取り、「花ちる町」を読んでしまったトラウマ故だと。その作品は頭の弱い女の子に親爺がイタズラしたりする内容でして、しかも絵は凄いあれをその歳で読んだらねぇ…
『絵柄も普段馴染んでた「少年サンデー」とかのヤツと全然違うし、とにかく子供心に「見てはいけないものを見た」と思って、とてもショックで晩ゴハンも喉を通らなかった。で、それから高校に入学するまで約5年間、ガロは見かけても決して手を出しませんでした。が、その間「花ちる町」のトラウマは、獣の骨が腐って遂に石油と化すようにってな変化が自分の中では確実にあったのは言うまでもないです』
と、あの天才・根本先生に言わせてるわけです。そんな所でも作品の凄さが伝わるわけです。

話を戻して1970年!!
やはりガロ誌上にて、あの名作「赤色エレジー」の連載を開始します!
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(これが青林堂版の単行本)

これは、漫画史において重要作品であるのはもちろんですが、私の中でも特にキラキラと輝き続ける、宝石のような作品であるわけであります。
何度も装丁を変えて出版されていますし、どれも全一巻なので苦労せずに読めるでしょう。
HAYASHI-sekisyoku-roman.png
(こちらは主婦の友社のロマンコミック自選全集シリーズ版)

幸子一郎という、アニメーター二人の同棲生活を描いた物語です。
まぁこれはストーリー云々よりも、"泣ける画集"といった感じでしょうか。どの場面を見ても美しいのです。
恋人と同棲、つまりいつも一緒にいても、悩んでばかりでちっとも楽しくなさそうで、もちろん貧乏な生活は決して明るいものではないですけど…ともかく当時大人気を博しました。

いつも悲観的になりがちな二人の目標や夢が何なのかは良く分からないのですが(結婚だとか、そんな事では無いでしょう)、一郎は漫画家になりたかったのかな。
一度ガロに原稿持ち込んでボツになるのですが、その後頑張ってる様子もありません。絡み合っては、直後にまた落ち込む…こんな二人はついに別れます。まだ好き同士なのに。
"言えない人"だと思われてた一郎が切り出し、路上(?)で言い合う。

『おれは違っちゃったんだ!』
『聞かない 聞こえないわ!』


その後、留守中に幸子がアパートへ来たと知った一郎は、2ページ(8コマ)かけて喜ぶのですが、私はここが大好きで、この漫画では珍しい喜びのシーンであり、私まで嬉しくなります。
しかし結局、最後の再会をしたもののどうにもならず、部屋に帰った一郎は一人でこう↓です。

でも……明日になれば
朝がくれば……
苦しい事なんか忘れられる

昨日もそう思った……


ここでガックリ肩を落とす一郎の画が白黒反転して映し出され、終わり。
思いっきり感情移入して、泣いてください。

このラストシーンは、様々な所でパロディされてますし、もしかして「あしたのジョー」の燃えつきるラストもここからヒントが?と勝手に想像してしまいます。
こう言うと、あまりにも多く存在する「あしたのジョー」ファンに怒られるかもしれませんが(もちろん、私も相当なジョー好きなんですよ!)、二つのラストを見比べると…似てるわけですよ。

それにしても一郎、二十歳にして絶望しすぎだろ…
ミニスカートの幸子も、いつも悲しい娘ではあったのに、すぐ次の男に向かってます。ここらへんは女のしたたかさを描きたかったのでしょうか。

実験的手法も使いまくる前衛漫画で、途中でいきなりイラストが挿入されたり、映画のように横長のコマ割りを多様されたりと、風変わりではあるけどストーリー物ですよね。
こういった作品に挑戦しようという精神が、現在の漫画家にはほとんど受け継がれてないのは残念ですね。
まぁ今やガロも無いし、商業主義の雑誌に押さえつけられて、発表の場が無いだけかもしれませんが。

この「赤色エレジー」に付随して、以下の事にも触れなくてはなりません。

----------------------------①----------------------------
漫画発表の翌年には、感動した歌手・あがた森魚「赤色エレジー」の世界を歌にして大ヒット。
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しかし儲けたお金で映画化もしては興行的には大失敗…という事にもなりました。

映画は失敗したと言っても、ここでしか見れない林静一アニメーションもあるし、内容もそんなに悪くないんですよ。
映画版のタイトルは「僕は天使ぢゃないよ」で、あがた森魚自ら監督しただけに、やはり音楽が素晴らしかった。

もちろん映画のサントラは一人一枚は持っていて欲しい出来ですが、'71年全日本フォークジャンボリーで演奏された「赤色エレジー」も、鬼気迫る物凄い演奏で、CD化もされているので、持ってない方は是非聴いてください。

こちらは、うた絵本「赤色エレジー」。
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----------------------------②----------------------------
こちらは同じ漫画家・絵師の上村一夫先生。

「赤色エレジー」に触発されて、同テーマの漫画「同棲時代」を上梓したのですが、より暗くドロドロな日常が描かれてます。
こちらも傑作すぎて、思い出すだけで涙が出てきます。

----------------------------------------------------------
こんな凄い二人に傑作を作らせた「赤色エレジー」の力は推して知るべしですね。

この小学館叢書版では、「マグマと息子と食えない魂」「吾が母は」「赤とんぼ」 「山姥子守歌」「花ちる町」「桜色の心」という傑作短編が併録されていて、歌人の林あまりさんが解説を書いています。
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続いてこの小学館文庫版…
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左は1976年初版ので、右は2000年初版のです。前者には「赤とんぼ」が併録で林静一自身が解説を、そして小野耕世さんが解説を書いていて、後者は叢書版と同じ併録内容で豪華、しかもあがた森魚がエッセイを書いています!

林静一先生はこのような作品の作者なので、もちろん一枚絵の作品も異常なほど凄い。特に漫画と違って、美しい色使いを堪能できる画集も観るべきですよ。私の好みは断然初期で、「紅犯花」(北冬書房刊)はお薦め。
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他に同じ北冬書房から出てた初期劇画集、「林 静一劇画作品集Ⅱ 酔蝶花」あたりも思い入れ深い!
HAYASHI-spider-flower1.jpgHAYASHI-spider-flower2.jpg

ガロでカラーの表紙を毎月書き続けた年もあり、私もその美しいガロのバックナンバーを熱心に探した事を思い出しました。
叙情的で手が大きい所など、竹久夢二の系譜を後継していたのですが、1987年にはその作風を捨てて描いた「PH4・5 グッピーは死なない」を連載開始。
この作風の変化にはビックリで、リアルな絵で中年男と愛人のセックスを描く長編でした。正直私は、こうなると全然好きではなくなりましたが。

現在は、いやここ何年も林先生の新作は軽いイラストくらいしか見かけませんので、また次の漫画作品ではどんな変化を見せてくれるのか、期待したいですね。


  1. 2006/06/23(金) 00:00:12|
  2. 月刊漫画ガロ
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劇画(5) 平田弘史 1

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昔の漫画に興味無い人にも名作漫画を読んでもらいたく、次々と傑作を紹介しているこのブログでありますが、さすがに恐れ多くて、私などが何か書くのは気が引けてしまう漫画家というのもいます。

それが平田弘史先生。

上記の理由で先延ばしにはなっていたのですが、やはり彼を無視して続けるわけにはいかないし、それに若人に是非是非読んでもらいたい漫画家ですので、今更ですが触れておきましょう。

1937年生まれの平田弘史先生は、当然幼少時に大東亜戦争を体験している世代ですね。
なので疎開の為に生まれた東京を離れて奈良県天理市に移り住んだのですが、元々両親は熱心な天理教信者であり、この地が出身だったそうですよ。
そのまま関西で配管工やらをしながら漫画家デビューしたのが1958年の「愛憎必殺剣」。配管工の方はスパッと辞めてそれ以降も関西貸本劇画シーンで活躍していたのですが、1965年上京してガロ等の雑誌連載へと活躍の場を以降しました。
これから、以前このブログでも説明した"劇画ブーム"に乗るのですね。

劇画作家の中でも、時代劇漫画だとか武士道漫画だといえば、この平田弘史先生が日本一の実力者であり、その事に異論を挟む人は少ないのではないでしょうか。とにかく時代劇の傑作を描き続けます。
武士道の美学を描きながら、同時にそのくだらなさやおかしさを問う語り口が絶品ですよ。
野太い線がカッコいい、この画力と描写力、熱い内容、内包された哲学、そして傑作作品の多さ!
傑作を2,3編モノにした人はいても、これだけ多い人はほとんどいないでしょう。

残酷な話、絵も多いので、苦手な方はご注意くださいね。
しかし人を殺し、自分も簡単に切腹してた時代を描いているのですから、残酷なモノを避けたら偽物しか生まれませんから。

漫画を、満員電車内・休憩時間・待ち合わせ…等で使う、
"時間潰しのための物"
として、捉えてる人もいるようですね。そういう人は、読み捨てされるような薄い漫画ばかり読んで、それを漫画という物だと勘違いしているのでしょう。
それは量産されて巷に溢れる漫画週刊誌の悪影響で、しょうがない事なのですが、だからこそ!
だからこそ平田弘史先生の漫画を読んでみて欲しいのです。それは決してラーメンをすすりながら読む類の本では無いと気付くはずですから。当然"読み捨て"なんてできません。

今回はあえてお勧め作品は挙げませんが、どれを取っても何かを考えさせられるでしょう。
時代劇である事で入りにくい方もいるでしょうか。
しかし簡単に一般受けする恋愛だとか、あるいは安易なバトル物ではなく、流行なんて知らないよ、とばかりに描かているが故の漢(おとこ)らしさを、貴方も感じ取ってくれる事を願います。

最後に、これを言ったらまだ平田弘史作品を未読の若い方々も、一気に親しみがわくでしょう。
あの名作アニメでも有名な、大友克洋の大人気漫画「AKIRA」。その題字は平田弘史先生の毛筆による描き文字です!世界の大友も、平田先生をリスペクトしてるのですね。

そうそう、今回の画像は平田弘史先生が、'60sに勝新太郎主演の人気映画を劇画化した「座頭市」です。
このサンコミックス(朝日ソノラマ刊)版はレアですよ!

はい、今日はここまで。


  1. 2006/06/22(木) 11:13:29|
  2. 劇画
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永井豪(3) 「スペオペ宙学」

SUPE-OPE.jpg

こんばんは。
また永井豪先生の番がやってきましたよ。
今回は「スペオペ宙学」
これは1978年から週刊少年サンデー(小学館刊)に連載された作品で、オリジナル版の単行本は全3巻。

まず、不思議なタイトルですよね。
タイトルに付くスペオペとは、“スペース・オペラ”(宇宙歌劇)の略です。

本当に物語のスケールは全宇宙!
宇宙中に散らばる惑星の子供達が集まる学園・スペオペ宙学が舞台です。
つまり、獣・怪獣・ロボ・化物…そんな同級生達以外に人間型のキャラも出ますが、全員宇宙人。

スケベで悪知恵も働く主人公・ドン宙太(見た目は人間)が、モス・モスキー(見た目は獣)とスケコンH(見た目はロボット)を引き連れ、学園で起こす騒動を描いた作品です。

関わってくるのは、まずヒロインに転校生の竜子スカイウォーカーがいます。
この娘は運動神経も抜群、成績優秀、もちろん美少女な上にセクシーと、完璧すぎてあまり憧れも共感も持てませんよ!
レズリング(レズ+レスリングの格闘技)や剣の達人でもあるのです。
普段着からして水着みたいで露出が高いので、まぁ作者の狙いは読者のエロ目がメインでしょう(笑)。

他にも、頻繁に脱がされる小蝶ちゃんも可愛いです!
髪の毛が蝶のようで、触覚みたいなのもあるのですが。

それと先生達も各種異星人なのですが、これが暴力教師、ハレンチ教師等、基本的に悪人ばかり。

映画「スターウォーズ」等のパロディが随所で取り入れられてますが、永井先生の別作品「ハレンチ学園」の未来版と言った方が分かりやすいでしょうか。
学園内での激しい抗争、ハレンチ事件、最終回はスペオペ宙学側とPTAとの戦争になりますし。

つまり普通に永井先生お得意の、ハレンチとドタバタコメディが合わさった作品なのです。

ギャグ漫画がそれほど好きではない私が、わざわざ傑作の多い永井作品の中から、今回これを選んだのは何故でしょう。
ハレンチ度も暴力描写も、"激しいのが普通"の永井作品においては凄いとは言えないし・・

その答えは!

被差別星人(民族?)である、アガゾス星人に対する差別描写が酷すぎるからなのです。
可哀想な、あまりに惨めな、アガゾス先生(アガゾス星人の姓は全員アガゾス)とクラスのアガゾス星人の子供達。

その容姿は魚類のようで、子供は意外と可愛いいのですが…。
学園内でのクラスの場所や、全ての面で公然と差別されていて、もちろん何か活躍したって、アガゾスでは誰も認めてくれません。
そして全員が貧乏。
「スペ宙大ピクニックの巻」なんて、可哀想でここではとても語れません!

文学作品「破戒」(島崎藤村著)で描かれる部落出身者の話とかも、胸が痛くなったものでしたが…
まさか大好きな永井先生の、しかもギャグ漫画を読んでてこれって、どう対応すればいいのか分からなかったものです。

初めて読んでから今まで、記憶にずっと残ってたのは確かで、いろんな面で名作指定できる作品であるのですが、心にトラウマ(という便利な言葉でしか表現できない)を残すギャグ漫画。
これは一体何だったのでしょうか??

そうそう、ここで作品のエピローグを紹介しましょう。
ここでも永井先生お得意の、仰天ラストを見れますよ。

アガゾス先生がついに悪の大ボス(校長ですが)を倒した後、PTA連中にはやはり"アガゾスだから"の理由でと約束も反故にされ、笑い者にされ、他の教師達からも裏切り者呼ばわりで終わる悲しい最終回。

最後に、ある日の登校風景が描かれるのですが、あ、あれ?
スケコンH、続いてモス・モスキーまでだんだん人間にと変化してしまいました! 
続いて小蝶の蝶型の頭も、ただ蝶リボン結んでるだけの人間の頭になるし、他の先生やクラスメート達、竜子…最後にアガゾス先生がさえないおっさんになりました。
実は登場人物全員、ただの地球人だったのですね。

ラスト1ページは、ドン宙太が授業中に窓の外をボーっと眺める描写から、学校
は宇宙船のスペオペ宙学になり、外は宇宙空間になる。

つまり、全てはドン宙太の空想の世界だったと分かって、終わりなのです。
元の人物の姿から、宇宙人版の姿を空想してたらしいドン宙太ですが、実は自分で想像して作った物語なんかより、本人も暗いキャラだったのかもしれません。

これは夢オチとか空想オチと呼ばれるやつで、「ハイスクール奇面組」「東京大学物語」の、あのラストを先取りしてたとも言えるでしょうか。

ではあのアガゾス星人達による被差別クラスも現代社会の物として描いたわけですね??
作者がどういったメッセージを込めてたのか、想像しながら読んでみるのもいいでしょう。(ここは道徳の先生調に読んでね)

永井豪作品の中ではさほど有名ではないからかしばらく絶版だったこの作品も、近年復刊されているようなので、是非読んでみてくださいね。



  1. 2006/06/20(火) 22:29:12|
  2. 永井豪
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週刊少年ジャンプ(3) 巻来功士 1 「メタルK」

MAKI-METAL-K1.jpg

こんばんは。

私が傾倒する'60s~'70あたりの漫画を中心に紹介しているこの名作漫画ブルースでありますが、今回は週刊少年ジャンプからのネタ。
やはりジャンプだけは少年時代に読んでいた物ですので、このブログにしてはわりと新しめの作品になります…とは言っても、もう20年くらい前の作品になるのですね。私も歳を取ったものです。

さて今回は巻来功士先生が1986年に描いた、「メタルK」を紹介します。

これを書こうと思ったのも、この前友人とジャンプの話をしたからで…お互いに昔は巻来功士先生が好きだった、と判明したのですよ。
さらに「メタルK」の第二話目である『危険な遊戯の巻』を小学低学年の時に読んで、しばらくトラウマになっていたという話になり。やはり他にも同じ体験した人がいたんだと安心した次第です。
当時のジャンプ売り上げ数といえば、日本出版物史上でも記録的な凄さだったわけで、この調子だと全国で似た様に嫌な気分になった人はいっぱいいるでしょう。

その作者である巻来功士は、1958年の長崎県生まれ。
漫画家デビューは1981年に村田光介のペンネームで、という事ですが、この時の作品は私も読んでません。SF・ホラー風味の暗い漫画を得意としていて、昔はジャンプで頻繁に連載をしてました。
今回紹介する「メタルK」の後にも、傑作長編「ゴッドサイダー」(この漫画のラストは、おったまげました!)、そして「ザ・グリーンアイズ」と続けて描いていたのが黄金期でしょうか。どちらも思い出深い作品ですよ。

それでは「メタルK」のストーリー紹介です。

製薬会社社長の娘・冥神慶子は、悪の組織"薔薇十字団(ローゼンクロイツ)"によって家族を焼き殺され、自分も業火に包まれる。
しかし、召使いの伊郷瑠(読み方は"イゴール"で、もちろんせむし男)によって脳を機械の体に移植されて生き残り、同じくサイボーグになった愛犬のジェイソンと共に、組織に復讐を始める。
コードネームを「K」として……

後からパレスチナゲリラのエキスパート・宇田川優も仲間になり、ちゃんと少年が感情移入できる男キャラも登場しました。
ありがちで単純な話ですが、確かに少年達が喜ぶ王道パターンではあります。けど、何で私のようなひねたガキもそんなに面白がり、忘れられなかったのか。
やはり同誌に掲載されてた他の漫画より、暗いながらも断然カッコよかった(言い方も少年っぽく)。だからでしょう。

悲しみのヒロイン・Kの美しい体は、興奮状態が続くと高熱を発して人工の皮膚が溶けて映画「ターミネーター」そっくりな機械の体を表すのですが、その時溶ける皮膚にあらかじめ硫酸が混ぜてあり、これで仇をドロドロに溶かすようにしたのですね。

さらに進化して、自身の意思でコントロールして手の皮膚だけを溶かす事ができるようになる。
それをムチ状態にして振り回し、敵に命中させる技・硫酸鞭とか、飛び散った硫酸が猛毒の霧を発生させる硫酸霧ってのも出てきます。
カッコいいでしょ!

さらに敵の組織の飼ってる殺し屋が、人間と各種動物の遺伝子細胞を組み合わせた"人間兵器"(ウエポノイド)ってやつで、それが造形も機能もカッコいいし、Kの仇や邪魔をする者の末路は、悲惨としかいいようのない姿に成り果てるのも刺激的でした。

溶かされるとか、ネズミに襲われて白骨化させられたり、チェーンソーで生きながら体を二つにされたり、黒焦げにされたり・・・
ジャンプ掲載漫画というのに、子供にとってはグロすぎの残酷描写が多いですよね!?

先ほど書いた、トラウマになった『危険な遊戯の巻』。今思えば様々なタイトルで何度も映画化されているリチャード・コネル原作の短編小説「最も危険なゲーム」(The Most Dangerous Game)が元ネタの人間狩り(マンハント)物ですね。
いきなり新婚旅行のカップルが、全裸にキツネのマスクを被らされ、例の組織の猟師に狩りの獲物として撃ち殺される所から始まるのです。
『もうだめ はしれないわ 信一さん!!』
『ガンバレ ミキちゃん!! 生きたかったらはしるしかないんだ!!』
こうして逃げるカップルも、無残に…殺される、と。

これが可哀想で、思い出しては嫌な気分で日々を過ごしていたものです。
こんな憎い奴らだからこそ、後でKが残酷に殺してもOKだったんですね。

もう一つ、当時のジャンプ読者の小学生には刺激的かなって思うのが、エロさでしょうか。色っぽいKは、毎回のように脱いでます。
Kも「危険な遊戯の巻」で冒頭に殺されたカップルと同じく、狩りの獲物にされた時はオールヌードでしたが、戦闘服が元からレオタード風でセクシーなのに、それを破られたりと・・・少年読者へのサービスですね。

そうそう、薔薇十字団の偉い人・神宮寺大佐は先の大戦中、ワ=31部隊という所で生体実験をしていたそうです。
もちろん旧・大日本帝国軍のあの部隊から取ってるのですが、7とワの形が似てるからって…
それに薔薇十字団の方も、中世ヨーロッパの錬金術師達が作った実在する集団でしょうに、ここでは神宮寺大佐がナチスの幹部と作ったそうなので・・・名前だけ借りたのですね。

これらの組織の名前からしてですが、そもそも巻来先生はネーミングセンスにちょっと痛いのが多いですよね。
いや、分かりやすいだけに、子供に雰囲気が伝わりやすいという効果があったのかな?

とにかく毎回ジャンプでは巻末に追いやられながらも、楽しみにしていたこの「メタルK」でしたが、例のジャンプシステムの犠牲となってあえなく打ち切り。単行本一冊で完結の分量のみとなり、残念だったのを覚えてます。

作者が単行本カバーに書いてる言葉で、
『ボクは、映画が大好きで、「メタルK」には、そのエッセンスを、めいっぱい、つめこんだつもりです。』とあります。
確かに大人になって読み返したら、随所に元ネタ映画が思い起こされる場面があるのですが、まず単行本の背表紙からして「女囚さそり」シリーズの梶芽衣子です。
第一話目の「復讐の華の巻」の、男に利用されて復讐を誓うヒロインという図式も、同映画と全く同じですね。

ものすごい強敵が出てくる、連載打ち切り間際に関しては触れられませんでしたが、今夜はこれで終わりです。
この漫画は、今まで私のブログで読んできた漫画の中では一番レア度が低いので、是非古本屋の105円コーナー等で探してみてください。
それでも買うのはオリジナル版のJC(ジャンプコミックス)でお願いしますよ!
背表紙が梶芽衣子ですしね。 (ノ´∀`*)

今夜の締めくくりはKの殺しの決めゼリフで、おやすみなさい。

あなたはわたしの蜘蛛の巣にとらわれた蝶・・・残るは死だけ・・・・・・


  1. 2006/06/19(月) 23:31:40|
  2. 週刊少年ジャンプ
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藤子不二雄(4) 「魔太郎がくる!!」 3

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さて前回の続きの「魔太郎がくる!!」です。

連載開始当初に比べたら、魔太郎の性格もはるかに明るくなり、そしていい人になりました。
でもイジメっ子が待ち伏せしてるのにビクビクして、女の子(もちろん由紀子)に一緒に歩いてもらう魔太郎自身の情けなさは全く変わりません。
本当はうらみ念法なんて使えて強いのに!

殴られまくって腫れあがった魔太郎の顔を見て
『あらっ!! 魔太郎ちゃん どうしたのっ その顔!?』
『う うん…… ちょっとそこで ころんだんだ……』
『まあ! 気をつけなきゃだめよ!!』
で終わる、のん気なママも、
これだけ魔太郎をイジメた奴が次々と姿を消してるのに、全く彼の正体に気付か
ない由紀子さんも変わりません。

でも後半は、いつも世界各国を巡っている清三郎おじさんがくれる変なみやげ物にまつわるエピソードが増えましたね。

魔太郎と同じようなマントをまとうドラキュラ伯爵の子孫との魔力対決では、唇を噛んで敵の催眠術から逃れるという、少年漫画では100回以上見たパターンで勝利する「吸血鬼の子孫はやっぱり吸血鬼」を経て…

嗚呼、1975年に!
いよいよ三年ばかし続いた連載の最終回「魔太郎が去る」を迎えました。

この最終回で、やっと今まで何故魔太郎にはあんな魔力があったのか、そしてその正体も明らかになるのです・・・・・・

悪魔の犯罪都市ニューヨークの描写に始まり、サタンを拝む魔族の者達の登場。
ニューヨークをそんな街に作り上げたのは彼らだったらしいのですが、その儀式を率いるリーダーが告げます。
『第二の魔都にするべくねらうのは……東京だ!!』と。

さらに、
『日本の同胞よ!! 今こそ かくしていた 邪悪なる魔力を 思うぞんぶん ふるう時がきたのだ!!』と。

そして魔族の満月万太郎(最終回で初登場)が、日本で切人と切人パパへそれを伝えるのですが、ここは注目。
切人が登場以来初めて、耳付き帽子を外した!
切人の髪の毛の両端は角のように立っていて、これを隠すためにいつも帽子を
被っていたのだと分かりました。

さらに万太郎によって、魔太郎も"同じ一族(魔族)の者"だと教えられるのです!!
(あちゃー、こういうオチにしてしまいましたか…)

つまりパパもママも本当の両親ではなかったのですね。
美人ママはともかく、パパは顔も気弱な性格も良く似ていたのですが。

それから魔族のために魔太郎を働かせるため、魔太郎の両親に対して呪いの儀式をして脅します。
家族を守るために魔太郎は命令を受ける決意をしたのですが、しかし最初の指令が、事もあろうに由紀子がみんなの見ている前で万引きをするように念力催眠をかけろ、というものでした。
(東京をニューヨーク並の魔都にしようという魔族が、なんてショボイ命令を・・・)

そして…やはり由紀子にそんな事はさせられなかった魔太郎。
その夜に魔太郎のママが呪いをかけられ、すぐさま魔太郎はワラ人形にクギを打ち込む万太郎の元へ行き、最後のうらみ念法で攻撃します!

魔太郎の念力では通用しなかったものの、何と!魔族の味方のはずの切人と切人パパが助太刀に入り、3人の念力で万太郎を倒した。

しかし魔太郎は、
『ぼくがいるとパパやママをまた危険にさらすことになる!』
というわけで自ら去っていき、この物語も終わるのです。

『さようなら…パパ……さようなら…ママ……さようなら…由紀子さん……』
 
幸せな気分になろうとすれば必ず他人に踏みにじられていた魔太郎も、人前から去ればもうイジメられなくてすむのですよね。
そういう結論のハッピーエンドですね、これは・・・・・ええ。

※そういえば、魔族である証拠に体のどこかにサタンマークがあるはずだ、と万太郎に言われて魔太郎は否定したのですが、それからこの件に関してのオチがついてないのですよ。
(例えば映画「オーメン」のダミアンのように、髪の毛の中にマークがあったというような)

やっぱり本当は魔族ではないって事なのでしょうか?

---------------------おまけ---------------------
この連載終了から6年後、何故か「ヤングマガジン」にて(講談社の雑誌じゃないですか!)、その後の魔太郎を描く「魔太郎が翔ぶ」が発表されましたが…これは何というか、読まなきゃ良かった(笑)

だってだって、逞しい青年に成長した魔太郎が海外で活躍するってな話ですよ!!
これは「愛蔵版・ブラックユーモア短編集第2巻」(中央公論社刊)に収録されております。

続編のついでに番外編も紹介しましょう。
安部切人→須麻切人と苗字が変わってるけど、明らかにあの切人が主人公で、魔太郎は出ない作品「切人がきた!!」(今度は集英社刊!)ってのもあります。
これはわりと近年の、つまり失礼ながら全ての力が衰えてからの藤子A先生作であるため、やはり「魔太郎がくる!!」を超える所はありませんでした。
こちらは単独で単行本にもなっています。
-------------------------------------------------

それでは、今夜は最終回の最後の言葉で締めくくりましょう。

またいつか魔太郎が帰ってくる日まで……さらば!!


  1. 2006/06/17(土) 16:54:09|
  2. 藤子不二雄
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藤子不二雄(3) 「魔太郎がくる!!」2

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時間が無くて、更新も滞りがちな上に、好きな作品なのに一話一話を解説していく暇なんかあるわけがありません。
このブログにも、楽しみにしてくださってる方がいるそうで…
申し訳ない気持ちでいっぱいです。

アパートの家賃を払うために、好きな読書や映画鑑賞も出来ず、くだらない仕事をせざるをえない!

くくっ、悔しい。

『コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ ク・ベ・キ・カ』

↑と、つぶやいてはみましたが、誰に恨みをはらせばいい?
私には魔太郎のように、恨みをはらす対象すらもなく、いや、いるとすれば何の才覚も無い自分くらいでした。

つまらん事はこれ以上言わずにおいて、とにかく続きを読んでいきましょう。

単行本の巻数を重ねるにつれて藤子A先生は、この「魔太郎がくる!!」でも、彼の他の短編漫画でも見られるように、自分の趣味の世界を前面に押し出してきます。
ネタ不足という理由もあったのでしょうが、好きな映画や絵画等を、魔太郎と思いっきりフィーチャリング(featuring=客演)させるんですね。
それも藤子A先生にしてはかなり写実的な絵で完全コピーされて。

例えば・・・

「燃えよ!魔太郎」の回では当時流行った(第一次ブーム時)、カンフー映画スターBRUCE LEEですよ!カッコいい!
この時のうらみ念法では、LEEばりにムキムキになった魔太郎を見れます。
その後から魔太郎の部屋にはLEEのポスターが貼ってあるし、「恐怖のTシャツ!」「クイズ イエスかノーか」の回でもLEEがネタに使われている所を見ると、藤子A先生も彼をかなりお気に入りだったようで、さすがです。

「空中に浮かぶ魔法の岩よ」の回でベルギーの画家ルネ・マグリットの絵を何枚も紹介するのですが、最終回も近くなった「ドリアン・グレイの肖像」で、マグリットの他にも、エッシャーリヒアルト・エルツェアルチンボイルドと、先生が大好きなだまし絵が次々出てきます。

「猿人対オオカミ男 満月の決闘!!」で初めて登場する
MONSTER SHOP 怪奇や
というお店は重要ですね。
ここの店主のおじさんが、常に 「オペラ座の怪人」ロン・チェイニーそのままなマスクを被っています。
この店主は魔太郎の良き理解者として度々出てくるようになるのですが、その度に、やはり先生の好きな怪奇映画がモチーフに使われます。

クリストファー・リーベラ・ルゴシボリス・カーロフ…古き良き時代の怪奇映画スター達は何度も見れますよ。
もちろん当時公開された「エクソシスト」等、他のホラー作品も良く使われてますし。

この漫画の後半は、とにかく先生の怪奇趣味博覧会となっているわけですね。

もうちょっとだけ掲載順も無視して紹介すると・・・
だいたいがワンパターンの一話完結なものだから、いつものパターンと違う回は目立ちます。

例えば、「時計の歯車 ギリギリせまる!!」では、何故か例の決めゼリフが
『ウ・ラ・ミ・カ・エ・サ・デ・オ・ ク・ベ・キ・カ』
と、微妙に変わってる。

"悪魔の赤ちゃん"切人が出てくる話では、「うらみはらされた魔太郎!!」のように切人にやられて終わったり、切人を懲らしめる時もなまぬるいやり方をして終わりますね。
(何度も出るキャラのため殺しちゃまずいからか)

そういえば、「ハゲのうらみはこわい!!」では、英語教師が実はハゲでカツラを被ってる事を知ってしまった魔太郎が、同じようにハゲにされる・・・爆笑モノな回だったのですが、確認したら復刻版ではカットされてました。
やはりハゲも身障者扱いで、"差別を助長する"の名の下に切られたのでしょうね(笑)
"ハゲ"も放送禁止用語になる日も近いのか?
"髪の毛の不自由な人"と言わなくてはならないのか?

「魔太郎ひとり旅」は、珍しく4話にもまたがって続く"旅シリーズ"なのですが、旅に出てもここまで災難を呼びまくりでイジメられるのは、さすが魔太郎です。
このシリーズ最後の回に『魔太郎自身の肉体が突然変異をとげて変身した』との事で強くなるのですが、正真正銘の化物になってしまっていて、初めて読んだ時、こればかりは作者に抗議したくなったものです。

あと、どうしても魔太郎がみんなのヒーローに成りきれないのは、普段弱すぎるキャラというだけでなく、本当に根暗で気持ち悪いからなのかもしれません。

「うらみ念法!! 悪夢旅!!」では、由紀子と仲良くした男に対する嫉妬が元で、うらみ念法を使っちゃったりしてます。
その回の最後のセリフなんてこうですよ↓
『由紀子さんはぼくの女神だ!! おまえなんかにとられてたまるか!!』
・・・・だって。

私はこういった所も含めて大好きなのですが、これでは明るい面しか認められない、大衆的なヒーローにはなれっこないですね。

今夜はここまで。
最終回を読むのは、次回に持ち越しです。


  1. 2006/06/14(水) 23:34:07|
  2. 藤子不二雄
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藤子不二雄(2) 「魔太郎がくる!!」1

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ついにこの漫画の登場です。
「魔太郎がくる!!」(秋田書店刊)。
1972年から1975年から週刊少年チャンピオンで掲載された作品で、オリジナルの単行本は全13巻。私、これがとーっても好きなんです。

お話は・・・
主人公のチビでメガネで三白眼の中学生・浦見魔太郎が、同級生・町の不良・逃亡中の犯罪者・遊びに来た親戚・果ては、たまたま通りかかった通行人からまで(笑)、いつも何かしらのきっかけでイジメられて、話の終わり近くで復讐する・・・というパターンがほとんどです。
だいたい一話完結なので、虐げに虐げられた後で復讐するカタルシスが毎回味わえるわけですね。

同じ藤子不二雄の名を使う相棒、F先生の「ドラえもん」に似てますよね。
それをA先生が描くとこうなる、という事でしょうか。

絵柄も復讐も、のび太君と違ってあくまで陰険です。

第一話目「うらみはらさでおくべきか!!」で早くも魔太郎の要素のほとんどが分かるのですが、彼はイジメられると、やられた事を黒い手帳(怨み帳)に事細かに書いております。
普段は『ぼ、ぼく・・・』といった口調の魔太郎なのに、その手帳ではこう↓なります。

『友情だの愛情だのくそくらえだ!! 蛾馬野タケシ××××××× おれのとなりの席のウスラバカでズータイばかりデカイガキだ おれのしりにビョウをさしたり、足をふんづけたりして おれをフユカイにさせた』

魔太郎の手帳は、読むと笑っちゃいます。

そして、この魔太郎をイジメで深追いしすぎるとですね、
メラメラメラ~~~と燃えて、
『コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ ク・ベ・キ・カ』
の台詞をつぶやきます。こうなると危険!

のび太ならドラえもんに助けてもらうのでしょうが、魔太郎はサタンに祈りはするものの、自分で呪いや魔術(うらみ念法)等を駆使しての復讐です。
(この時、薔薇柄のシャツとマント姿になるのですが、それがカッコいい!)

のび太がジャイアンに復讐する時なら、適度に懲らしめて終わりですよね。
しかし、魔太郎は二話目「鉄のキバがひきさいた夜」にして、二人組のイジメっ子を、、、、、

殺して、工事現場に死体遺棄しちゃいます!
しかもこの時は黒魔術も使わずに、シャベルカーで殺ってるんですけど…
(後でも他に何人も殺してますよ)

---------------------------------------------
ちなみに、これは特別愛着がある漫画なので、私はオリジナル版で持ってたのに文庫で復刻された時にも買いましたが…あれ?
この死体遺棄シーンがカットされて差し替えられてます!

復刻版はセリフも各所で変えられてるし、丸々カットされてる話も多いし!
こういう改悪のされ方は考え物ですよね。
特に注意書きや理由の説明も無いので、復刻だけ買った人にはオリジナルの姿が分からないじゃないか!

同じ藤子A先生の他漫画でも、もっともっと酷い姿に成り果てた話もあります。
普通はオリジナルを持ってれば復刻版なんて買わないわけですから、こういった事実はよほどマニアでなくては知らないのではないですかね~。
---------------------------------------------

そうそう、意外にも復讐は黒魔術使うばかりじゃなくて、バットで滅多打ちにしたり、石こうで固めた拳で殴りまくったりと、肉体で戦ってなす事も多いのです。
きっと例の薔薇柄のシャツとマント姿になると、体自体も強くなるのですね。

ただ電話で密告するだけだったり、下剤を入れるだけで復讐をする(笑)話なんかも出てきますけど。

「ニセ教師はイジメの先生だった!!」の中でやらされる、教室での自転車こぎ(両側の机に手を乗せて体を浮かせて空中で足をこぐ)は、少年時代いイジメられっこだったというA先生がやらされたイジメそのままです。
それはどこかの文章で読んだ事があるし、他の漫画でもこのイジメは使われてますよ。

毎度似たパターンで進むこの「魔太郎がくる!!」ですが、車、水、袋、ボール…毎回違う道具を題材にして、それを使ったイジメを受けた後に、魔太郎がその道具を使った復讐をするのが約束事でしょうか。
実は連載後期はパターンも変わるので、またそれは今度説明しましょう。

あと、重要キャラを二人だけ紹介しておきましょう。

魔太郎の同級生で、ヒロインの南由紀子
彼女の前で恥をかかされた事が原因で復讐する話はいくつも出てきますよ。
最初は魔太郎の事を
『ヤーだ…あの子ウジウジしていてキミがわるいわ!』
なんて言ってたくせに、何故かすぐに仲良くなって、かばってくれる女神のような存在になるのです。
そのせいで魔太郎は嫉妬され、またイジめられて(笑)
ちなみにこの由紀子さんと、驚いてンマーとばかり言う魔太郎の美人ママは髪型も同じだし似てます!
(A先生の描く美人像なのでしょう)

それと魔太郎のライバルとして登場するのが悪魔のような赤ん坊・阿部切人。3歳なのにしゃべれます。このキャラの名前は、水木しげる先生の「悪魔くん」からそのまま頂いてますよね。
一度遊びに来た魔太郎ママの同級生・安部真里亜(アベマリア…笑)さんの息子なのですが、魔太郎宅の向かいに引っ越してきてからは魔太郎とからむキャラとして定着。

はい、今日はここまで。


  1. 2006/06/09(金) 14:20:47|
  2. 藤子不二雄
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藤子不二雄(1)

UTOPIA.jpg

今回はいよいよ、みんなのアイドル「ドラえもん」「オバケのQ太郎」を生んだ偉大な漫画家・藤子不二雄先生の登場です。
彼らの創造したキャラクターを、一つも知らない日本人など存在しないでしょう。それに私が過去、熱心に捜し求め、単行本を集めた漫画家の上位BEST3には入ります。

今更と言われるのでしょうが、一応簡単に作者の紹介から。
(もしかしたらドラちゃんは知ってても、作者の事はほとんど知らない方もいるかもしれませんしね)

まず藤子不二雄とは、藤本弘安孫子素雄の二人が名前を合わせて作り、コンビで使っていたペンネームです。
二人は同学年で、藤本が1933年12月1日、安孫子が1934年3月10日生まれ。おっと、初めての単行本「UTOPIA最後の世界大戦」を出した時は足塚不二雄などという名義だったのですよ。
私の知る限りの漫画家では、彼らが最も手塚治虫先生を熱狂的に愛したのでは無いでしょうか。
少年時代に影響を受けてから、ずっと追い続け、こんなペンネームでデビューまでして、その後もずっと尊敬の念を表明し続けるのだから…

この二人が、いかに富山県高岡市で出会い、二人で漫画家として成り上がっていくかは、熱い自伝漫画の傑作「まんが道」に詳しいので、是非読んでもらいたい。さらに活字本で「二人で少年漫画ばかり描いてきた 戦後児童漫画私史」に進んで欲しいですね。それらを読むのが一番ですが、ここでも極簡単に説明しましょう。

富山県高岡市にて、小学5年の時に出会った絵が得意な二人。
手塚漫画に出会ってからは漫画を描き続けるものの、二人とも一応一度は地元・富山県で就職します。
安孫子先生は富山新聞で順調に働いていたものの、藤本先生は数日で退社。二人とも漫画を描き続け、足塚不二雄名義で初の雑誌連載、初の単行本と、プロの漫画家への道が開けてきます。そして上京。
二人で二畳(!!)で仕事と生活の部屋を兼ねた、安孫子先生の親戚の家を経て、あの伝説のトキワ荘(※)の、しかも尊敬する手塚先生が使っていた部屋に入居です。
もちろんここでも二人で一部屋。

トキワ荘とは、かつて東京都豊島区に存在したアパートで、後に大人気を博す事になる漫画らが集まってきて寝食を共にしたため、"漫画界の梁山泊"などと呼ばれた聖地です。
手塚治虫を始めとして、藤本弘安孫子素雄の両藤子不二雄寺田ヒロオ石森章太郎赤塚不二夫水野英子森安なおや…etcという、とんでもないメンバーがいたのです。
ちなみに最後に名前を出した森安なおや。こんなメンバーと一緒にいながら、彼だけは全く成功できずに土方になった、味わい深い人物なのです。

すでにペンネームも足塚不二雄から藤子不二雄に変更してますが、初期こそ共同で作品を作っていたものの、早い時期から別々に描きはじめ、そのどちらも藤子不二雄名義で作品を発表してました。

1987年のコンビ解消後は単行本もそれぞれの新名義に直されました。
つまり藤子不二雄名義の単行本は全て1987年以前のプレスであり、過去の作品を買う時は旧ペンネームを選んだほうがレアですね!

新名義というのは、こうです。

藤本弘=藤子・F・不二雄
(最初の約一年間、藤子不二雄(F)名義を使っていたので、その単行本もそのうちプレミアが付くかも!?)

安孫子素雄=藤子不二雄A

これでますます二人の得意なカラーが分かりやすくなりました。
Fは児童漫画を中心としたSF(すこし・ふしぎ)やファンタジー。
Aは大人漫画を中心としたブラックユーモアやホラー。

二人ともヒット作を続々と描き、ちょうど私の幼少時代にはおそらく人気絶頂。TVでも一週間のうちに何と5,6日とかは、藤子原作のアニメを放映してたように思います。
1984年には当時までの『藤子不二雄全集』である、藤子不二雄ランド(FFランド)の刊行開始。
これは隔週で発売され、これでしか読めない作品も多い上に、表紙を開けるとセル画が付いていて、巻末には新作漫画が発表されているという、素晴らしい物でした。
とっくに絶版になってますが、紙質が悪くて痛みやすい上に、当時の子供達の扱いの悪さのために、現在では美品で残っていたら、専門店に高く売れますよ!
FFランドのTVCMでは藤子キャラ達が勢揃いで歩いてきて(これで誰が出てくるのか、好奇心がそそられて)、『今週は僕の番だよ』みたいな事を言う、子供心にはかなりワクワクするものでした。

時は経ち、1996年に「ドラえもん」の方、藤子・F・不二雄先生が亡くなります。

・・・そういえばいつか私は、二人の藤子先生の面影を求めて、高岡市に旅行に行きました。
記念館みたいなものはなく、ゆかりの物といえば、「ドラえもん」キャラの銅像がいくつかある小さい公園くらいでしたが。
そう、北陸の片田舎・富山県としてはあまりにも大人物を輩出してるというのに、しょせん子供の漫画と思われてるのか・・・その扱いが低いためなのだとしたら残念です。
一日中、古本屋を巡って帰りました。
あれから随分経ちましたが、近年藤子・F・不二雄先生の方の"何か"が、やっと晩年を過ごした川崎市に建設予定という話は聞きましたけど、話は進んでいるのでしょうかね。

では、今度は二人の藤子作品を少しずつ読んでいきましょう。


  1. 2006/06/06(火) 20:24:40|
  2. 藤子不二雄
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月刊漫画ガロ(5) 丸尾末広 1

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丸尾末広

この人はもう、説明不要でしょう。
・・・と、言って終われればいいのですが、ガロ(あくまでマイナー誌か…)とかを全く読んだ事の無いという方には、まだまだ知られてないかもしれませんね。

1956年長崎県諫早市生まれの丸尾先生は、隠れキリシタンの末裔。
曰く『文化不毛の地』だという島原で育って中学卒業後に上京、凸版製本に勤めながら板橋の寮に入るも二年で辞めて万引き生活を送る中、秋葉原のレコード店で捕まって留置所に入れられたり、網走のパチンコ屋まで流れたりしつつも…
1980年にサン出版のポルノ雑誌で「リボンの騎士」にて漫画家デビュー。ちなみにその雑誌は本人も見てないそうで、というか誰も見てないので初出誌名が未だに不明。
ともかくそれから1980年代のサブカルチャーを代表する人物にまでなり、現在もゆっくりと新作を描いています。
もう、サブカルチャーとか言われる物を少しでも通った人々には人気者すぎて、一番好きな漫画家を聞かれて『丸尾末広です』なんて答えると超初心者っぽくて恥ずかしいくらいですよ。

でもやはり私を含めて彼を敬愛する人は多く、個人的な意見ですが、単純な絵の良さで言えば今でもこの人が世界一番好みだと思ってます。よく言われるように高畠華宵の影響を受けいているのですが、そのセンスも含めはるかにカッコいい。
あまりにもはまっていた私の学生時代は彼の著作が手に入りにくく、持ってない本を見つけると嬉しすぎて棚から本を抜く手の速度がいつもの倍以上になってました。

画風はエログロと良く言われる…というよりエログロ画といえば丸尾先生、ですね。
猟奇・幻想・怪奇・狂気、そんな言葉が似合います。この画力で、しかも寺山修司夢野久作江戸川乱歩渋澤龍彦だとか、ドイツ表現主義の映画世界なんかにもかぶるのだからもう、サブカル好き人間の趣向に触れないわけがありませんね。
ちなみに尊敬する漫画家は林静一先生と池上遼一先生だとか。

レコード、CDジャケットの仕事も多くしてて、これがまた素晴らしい物が多いのです。漫画は解りにくい作品が多いので、イラストでの活躍の方が一般受けは狙えたのかもしれません。
私自身、丸尾先生の名を知る前に、CDジャケを見てカッコいい画家だなーと思ってたんですよ。中学生当時、一番好きだった筋肉少女帯。そのCDシングル「元祖 高木ブー伝説」や、そのボーカリスト・大槻ケンヂの文庫本のカバーを描いていたので。
後に日本のバンドからザ・スターリンFUNERAL PARTYAUTO-MODセルロイド恐悪狂人団…等と、海外アーティストでもジョン・ゾーンT-レックス他、丸尾ジャケのレコード・CDも次々と集めました。
そんな素晴らしいイラストだけを観るには、「丸尾画報」(TREVILL刊)の全2巻が良いでしょうか。最近また豪華版になって復刻もされました。

その作品世界は、国外のアンダーグラウンドシーンでも高く評価されてるというのが嬉しいです。
私はフランスにいた時に現地語版を見つけましたし、他のヨーロッパ数カ国とアメリカでも単行本が出版されているそうですね。それらも集めたいなぁ。
今回の画像に使ったのはガロの1993年5月号で、最初の丸尾末広特集が組まれています。カッコいいカラー口絵に加えて、貴重な丸尾先生本人のインタビューや写真も何枚もあり、これで知ったエピソードも多かったです。

では、そのうち漫画も紹介します。お楽しみに!


  1. 2006/06/03(土) 18:30:53|
  2. 月刊漫画ガロ
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永井豪(2) 「おいら女蛮」

こんばんは、BRUCEです。

今夜は永井豪先生の傑作群から、どれか作品を一つ紹介していかなくてはなりません。
さてどれからいこうかと考えた結果、
バトル、ハレンチ、ギャグと、永井漫画の得意とする所が惜しみなく盛り込まれている名作「おいら女蛮」に決めました。これはかなり面白いのは当然ですが、重いテーマも何も無く、ただ笑って読めるかと思います。
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その「おいら女蛮」は、週刊少年サンデーで1974年から連載が開始され、単行本は少年サンデーコミックス(小学館刊)で全7巻です。

主人公・女蛮子(すけ ばんじ)は、すぐにキレて暴れ、会社をクピになってばかりいる父親・女蛮角と、この漫画全編においてケンカ最強、そして凶暴であり、やはりすぐキレるのにセクシーな母親・女蛮千代との間に生まれた一人息子。
(この両親、苗字が同じなのは当然だけど、名前まで二人とも"蛮"の字が入ってますね。)

物語の冒頭から、蛮子は暴れて"凡倉中学"を退学になるのですが、ここのクラスメートに何と!
「デビルマン」の牧村美樹っぺがいますよ!
自分の作品とリンクしてるのはいいのですが、それがあの超名作のキャラだと嬉しくなりますね~。
蛮子が街を出て行く時なんか、屋根の上で全裸を見せて送ってくれるし。
一応デビルマンこと不動明も出演するのですが、これが間抜けキャラになってるのです。

それはさておき、蛮子は蛮千代が中一で生んだ子であり、両親の影響でしょうね、乱暴者なために中学校退学を繰り返してたのです。
すぐに街にいられなくなるから、家庭ぐるみで引越しばかりしてるのですが、生活費は蛮千代が競馬で稼いでます。

『姓は女(すけ)、蛮子(ばんじ)!! 通り名を女蛮と(スケバン)発しやす!!』
と、たんかを切って暴れる主人公・蛮子ですが、この名前が元でとんでもない事になるのです。

蛮子が次なる学校・女尊(アマゾン)学園に転入する際、受付のおばちゃんが名前を(おんな ばんこ)という女子だと勘違いし、セーラー服を支給されるのです。
それからここでは女子としての学園生活を送る…そんなバカな! でもホント。
蛮子は上半身裸を見られても、"クラス一のペチャパイ"って事で笑って済まされるんですよ!

しかもクラスに男男子(だん おとこ)というカワイ子ちゃんがいたもんだから、蛮子はそのまま女子として通し、この子にセクハラの限りを尽くすわけです(笑)。

そんなハレンチ場面と、この学校にいる女番グループ達との抗争や、各部活とのスポーツ対決がメインのお話。
だけど本編と関係無さそうなお遊び話にもかなりページを使ってて、男男子に惚れた男子生徒(まぎらわしいなぁ)を退学に追いやる所なんか、一番笑えるかも。

部活対決は、当時のサンデーで掲載されてた他漫画のパロディキャラとばかり戦うのですが、バカすぎて笑えます。
私は個人的にはやはり、梶原一騎先生の「柔道賛歌」キャラのパロデイ・巴追珍太(ともえ おっちんた)が大好きでした。

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女番グループってのがまたバカらしく、こんなの↓ばっかりですよ。

パンス党(セーラー服の下はスカートじゃなくてパンスト)

ノーブラ団(もちろん全員ノーブラのおっぱい丸出し。全員巨乳で彼女らに合うサイズのブラが日本に無いんだとか)

クラパン党(クラシックパンツの略。つまりふんどしね。)

全ス党(全ストリップ…「けっこう仮面」のように覆面、そしてブーツだけ履いた全裸美少女集団)

まぁこういった素敵なおバカ達(笑)と戦ったり、仲間になったりしながら、最終的に女尊学園全体のボス・女王絵里座(エリザ)-その実態は国際犯罪組織"豹の爪(パンサークロー)"のボス-を倒すための戦いを決意する蛮子達…

うん。ここで「キューティーハニー」ともリンクする事が分かって面白くなってきましたね!

さぁどうなるのか!

…ここで終わります。
もう、尻切れのラストも、永井漫画のお約束という事で、許してやってください(~Q~;)

でも、蛮子の母・蛮千代とは女番時代からのライバルだった体育教師・天変地異子の女性専門ケンカ道場も気になるのにな~。
この先生の
『わたしがきたえれば超一流の女番になれるよ』
は、名言でした(なりたくないって!)。

・・・まとめの言葉はいらないですね。
今回読んだ漫画と全く同じく、何も訴えたい事は無く、尻切れ


  1. 2006/06/01(木) 23:42:31|
  2. 永井豪
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BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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