大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(29) ちばてつや 16 「あしたのジョー」 16

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18巻は、今まで漫画に登場もしていなかった二人の東洋バンタム級ランカーの試合を、丹下拳闘クラブの面々がTVで観戦する所から始まります。

六位の吉岡満VS八位の滝川修平。何故こんな小物の対決を見せるのか。
それはすぐに分かりますが、とにかく結果は滝川の勝ち。
滝川の所属するジムの横倉会長が異常に喜んでます。

その様を、たった二位順位が上がっただけなのにくだらない、とちゃかす丹下ジム練習生ですが、そこで段平
『お・・・・おめえらに自分のそだてた選手のランクが 一つでもあがったときの うれしい気持ちが わかってたまるか・・・・』
と言って涙ぐむ、ちょっといいシーンがありますね。

そして、今回の試合の勝者・滝川を育てた横倉会長の前に、次戦の(ジョーの世界タイトル挑戦の前哨戦になる)相手選びを任されてる白木葉子の登場です。
とはいえジョーの相手をさせるのではなく、まだ東洋ランクに入っていない無名選手に滝川の胸を貸してもらいたいと、お金の力もチラつかせながら申し出る。
横倉会長は美味い話だと引き受けるのですが…

前巻で葉子は、白木ジムの幹部達を世界に飛ばし、ボクシングそのものよりもケンカに強いタイプで、しかも理論をこえた野生の男を探させてたのは覚えているでしょうか。
そのジム幹部の誰もが申し合わせたようにマレーシアのハリマオを推すのですが、このハリマオをジョーと対戦させるには東洋ランク入りさせる必要があり、そのために滝川と戦わせ、そのランクを貰おうという作戦だったのです!

一方のジョーは、もう葉子に付き合わされるのはごめんだと、単身メキシコへ渡ってホセ・メンドーサと戦うなどと言い、本当にパスポートも取ってきました。
早速空港に行ったら記者に囲まれてる葉子がいて、さらに"さしあたって"滝川と戦う事になるハリマオも登場します。
彼にはもっともらしい名があったのですが、いつの間にか現地語で"虎"を意味する"ハリマオ"と呼ばれるようになったのだとか。

実際に登場したハリマオは、『ガルルル・・・・』とかのうなり声と、わけのわからない現地語しか話せない、まさに野蛮人…というか動物みたいな男。
原住民最強の戦士だった彼を見つけたイギリス人の新聞記者がボクシングを仕込み、プロデビュー以来17戦全部KO勝ちという強者です。

そのハリマオと偶然居合わせてしまったジョーは、二人のツーショット写真を撮らせてくれと頼まれるのですが、腕をねじ曲げられて殴り飛ばされる。
当然切れて向かって行くのですが、結局止められて引き下がり…
葉子はその日和ったジョーにがっかりし、『だからこそ わたしはハリマオを呼んだ・・・・・・・・!!』と言います。

実際に次の日にその恥をでかでかと書き立てた新聞記者に向かってジョーは怒り、段平にも
『おめえもかわったなジョー・・・・
なぜ新聞社なんぞより 当面の相手である ハリマオとやらにその怒りをぶつけねえんだ
おめえのたいせつな 男としての体面そのものよりも なぜ世間体のほうばかり きにする・・・・?
なんもかんも以前のジョーとは逆ーさかさまだぜ
そもそもの発想ってやつがよ』

などと言われる始末。

さすがにハリマオの公開スパーリングの場に乗り込んで1ラウンド戦うのですが、またしてもつまらない奇襲攻撃などをまともに受ける…
それは乗り込んできたのも含め、マスコミや世間体を意識した体面だけをつくろうための怒りだからだと、葉子は見抜く。
そんなジョーはスパーリングでも、野獣の理論で戦うハリマオを仕留められずに、今度こそ葉子の筋書き通りにハリマオと戦わざるをえなくなりました。

後日のハリマオVS滝川戦。
これは言うまでもないでしょうが、ハリマオの勝利。
ロープ上から連続ジャンプしてムササビのように攻撃してますよ!
可哀想なのは横倉会長で、二十余年拳闘に関わり、やっと初めて育てた東洋ランカーの滝川をぶっ壊された上に、ハリマオに殴り飛ばされてます。

『このおれが かたきをとってやるよ すぐにな!』
と宣言したジョーの訓練方法は…
ゴロマキ権藤を覚えてますか?弟9巻でウルフ金串と喧嘩し、その後ジョーにぶちのめされたヤクザの用心棒ですが、彼やその子分達とズバリ喧嘩をして、動物的なカンと同時にケンカ乱闘のカンも磨こうと言う作戦ですね。

最後にのされた後、強くなったねというジョーの言葉に対して権藤は、
『わたしのことが強くなったと感じるんなら・・・・
ひょっとしてあんたの力が 少々おとろえたのとちがいますかね』

と言います。やはり平和に日和って弱くなったのでしょうか…心配ですね。

さあ間もなくジョーの、世界チャンピオンへ挑戦の前哨戦となる対ハリマオ戦が始まります。
ん?その会場の外に、黒人の気狂いこじきがうろついてますよ。
その正体は…!?

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最後から2巻目、19巻は早速ジョーVSハリマオ戦。
ハリマオは例のロープ渡り戦法で攻撃してきますが、ジョーはロープの方を狙ってハリマオをリング下に落とす頭脳的逆襲で撃退。
その後の追撃で、わずか1ラウンドで勝てるかと思いきや…ジョーの直感が何かを伝え、ジョーの方が逃げ腰になってゴング。

不審に思う段平に、ジョー曰く
『おれだって以前は やつに負けないくらい野獣だったんだ
ついここんとこ わすれていたが・・・・その直感が ひさびさにはたらきだしたって感じだぜ
ふふふ・・・・人間に飼いならされた野獣が なかまの野生の遠吠えを聞いてー
めざめた・・・・とでもいうのかな』

です。
これでジョーの野生を取り戻させるべく頑張った白木葉子の思惑通りに進んだ事が分かりました。
が、そんな事よりジョーが自らを『人間に飼いならされた野獣』などと認めてるのが私には意外でしたが。

そのジョーの直感を脅えさせたハリマオの技というのが、ついにベールをはいでジョーに喰らわせてみたら…アナウンサー曰く
『マット体操でいう 後方ひねり回転宙がえりーそのボクシング版ですよ!』
というのですが、もう細かい解説いりません。
これを読んだ誰もが『おいおーい!物理的にありえない動きだよ~!!』と突っ込む事必至でしょう。

さらにもう一回スローVTRで確認して、
『ハリマオの ジャングルそだちの敏捷さと あの類人猿にも似た 長いリーチがあって はじめてなしうる
い・・・・いうなれば「後方ひねり回転ダブル・アッパー」・・・・とでもいいましょうか』
とか名前も付けちゃってますが、ここらへんは名作にもある、いや名作だからこそ必ずあるプチ失敗シーンでしょうかね。

"やりすぎ"な所はさらに続き、ジョーが自らもジャンプしてのカウンターで「後方ひねり回転ダブル・アッパー」を(笑)やぶった後、ハリマオはリング上を逃げ回ります。
あげくに追いつめられ、頭突きに蹴りから、大口開けて肩への噛み付きと、めちゃくちゃ…
もちろん反則負けで勝負はついたのに、その後のリング上でレフリーも止める事なくジョーは反撃し、失神するまで殴りまくってますよ。

終わりの迫ったこの時期の「あしたのジョー」は、絵柄が"劇画"でリアルなだけに、このハリマオのエピソードはちょっと痛い。

ともかく東洋チャンピオンの座を二度防衛して、世界チャンピオンのホセ・メンドーサへ挑戦が決定したジョーです。
その眼前に、前巻からチラチラとうろついてる薄汚い黒人が姿を現しました。
誰でしょう?
かつてジョーと引き分けた、カーロス・リベラでした!

ホセに敗れてから行方不明だったカーロスは、パンチ・ドランカーになってもジョーを探し当てて来たのです。
『モウ一度 試合ヲシマショウ』
などと言って、素手でパンチをしてきたのに対して段平が
『あぶねえ・・・・素手で
やめろ~っ』

なんて言ってますが、あの閃光のようだったカーロスのジャブはヘロヘロになってて、もう完全に廃人のもの。

かつての洒落者カーロスがボロをまとったままなのを見たジョーは着替えを渡しますが、自分でボタンもはめられません。
しかも代わりにはめようとするジョーの方も、手が振るえてはめられません。

ここまできたらもう読者の誰もが分かってますが、ジョーがパンチ・ドランカーなのではないかという、葉子の心配は的中してましたね。
さらにパンチ・ドランカーの権威であるキニスキー博士からもこの事実の確認を取れた葉子は、ジョーに会ってこれを伝えたい。
しかしジョーは自分でも分かっているのです。それでもホセと戦いたいのです。
葉子に会えば世界タイトルマッチ挑戦を止られるとあって、会おうとしません。

もう一つ嫌な話があります。
不世出のチャンピオンであるホセでさえ、カーロスの挑戦は恐れて極力避けていたというのに、ジョーはそのカーロスと互角に戦い、しかもホセとの対決前に廃人にさせた…
それがジョーのホセに対する、唯一の現実的かつ心理的有利だったのに、キニスキー博士の診断で、実はホセの放ったコーク・スクリュー・パンチ(打つと同時にスクリュー状にひねってダメージを倍加させるパンチ)こそがその本当の原因だと判明したのです!

それを知っても、親友の西紀子の結婚式に出てはしゃぐジョーでしたが…
ちんまり模範青年におさまった西とは真逆の世界、死に行くような世界バンタム級タイトルマッチの日が、ついにきました。

その満員の日本武道館。
ジョーの控室にまで、いままでずっと避けていた葉子が現れました!
そしてついにジョー本人へ『あなたの全身はパンチ・ドランカー症状にむしばまれています』と、キニスキー博士の診断を伝えるのですが、ジョーは一言『だからどうした』です。
カッコイイ…(泣)

女がいくら言っても、当然冷たくあしらうジョーでしたが、ついに葉子が涙を見せ!
『すきなのよ 矢吹くん あなたが!!
すきだったのよ・・・・ 最近まで気がつかなかったけど』

などと愛の告白をして、『わたしのために リングへあがらないで!!』とまで言います。

それでもジョーは
『リングには世界一の男 ホセ・メンドーサが おれをまっているんだ
だから・・・・いかなくっちゃ』

こう言い、でも葉子の肩をつかんで…

次巻の20巻、つまり最終巻に持ち越しです。


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  1. 2006/08/25(金) 20:14:45|
  2. 梶原一騎
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古本巡り想い出、他

KINGCRIMSON.jpg

コンフュージョーン ウィルビーマイ エピターフ♪
(Confusion will be my epitaph♪)

こんばんは。
私ことBRUCE、この夏はお盆帰省で、新潟県の実家に顔出してきました。

まぁ田舎にいても昼間に行く所は同じ。もちろん古本屋です。
実家に大量に置いてある、昔に車内用の編集をしたテープを引っ張り出し、ドライブしながら大音量で聴く。その音は、免許取りたてでここに住んでた頃にいつも聴いてた物ですので、プログレッシヴ・ロックの基本曲が中心ですよ。
(冒頭の詩は、もちろんKING CRIMSONの名曲「EPITAPH」です。)

ここで古本屋巡りをすれば、自分で車を運転してどこへでも行けるようになった、若き日の嬉しい気持ちが甦ってくるのです。
本当に毎週いろいろな地へ行ってました。
近くの町や近隣の県まで走り回ってましたが、あそこではこれをゲットしたとか、そんな古本に関しての想い出でいっぱいな私。

本当はもうちょっと、あの娘さんとどこでデートしたとか、そんな想い出もあっていいんじゃないかと考えたりもしますが…ない!
やっと彼女が出来た時も、古本屋ばかり何軒も行こうとして嫌がられた事はあったなぁ。彼女は今頃どうしてるでしょうか。私は何も変わってません。
もちろんプログレ聴きながら古本屋を巡ってる時点でモテるわけないし、だからこそ今の私が形成されたのです。
別にいじけてないし、悔しくも…ない! 悔しくなんか、ないやーい!

今回は墓参りや地元の友人との酒宴ばかりで、古本屋巡りの時間が少なかったのですが、帰省中の主な収穫はこんな感じでした。

DVD…
「悪魔のいけにえ」 2300円。(これはビデオで持ってるし、もちろん何度も観てるのですが、DVDは絶版でレア。安く見つけてラッキーです。)
「なまいきシャルロット」「シャルロット・フォーエバー」のツインパック2900円。(もちろんこれもビデオでは持ってるし思い出の作品ですが、この度DVDが安かったので買い直し。大好きでした、初期シャルロット・ゲンズブール)

CD…
浅川マキとか森田童子とか、暗い歌謡曲の持ってなかったアルバムをゲット。
他に洋楽も数点ですが、これはマニアックすぎる話になるのでここでは書かなくていいでしょう。

古本…
上村一夫「一葉裏日記」 (もちろん既に持ってるけど、上村作品はいくつでも安く売ってたら買い、人にあげたり転売したりするのです)
平口広美「マッスル」
魚喃キリコ「ハルチン」
石井隆「天使のはらわた」(全3巻)
他にもありますが、本は全て全国的に有名なチェーン店(ブッ○オフ)の105円コーナーから見つけました。

他に活字本でも、既に廃刊になってる福武文庫サンリオSF文庫だとか、映画秘宝のムック本といったちょいレアなブツも見つけ、ムフフと笑顔になってる私です。
まぁ交通費でかなり出費してますけどね。

さてさて今はまた東京に帰ってきて漫画ばかり読んでますが(これ言うと頭悪そうなイメージになりますよね)、かる~く、本の扱いや保存方法について話しましょう。
いきなりですがまず大前提、買った本は家族や友人と同等に大事にしてください!
古本市場では、珍しい本はそれは重宝されますが、『状態』が重要です。新品の本はもちろん、古本も今の状態痛まないように努力をしましょうね。
では、本の扱いの心得として、今思いついた基本的な項目を挙げておきましょうか。

・本は消毒してから触れば申し分ないですが、そこまでしなくとも、せめて汚い手では触らない事。
(何か食べながら読むなんて止めてね)

は決して捨てないでください。
(私は古本チェーン店で、ゴミ箱に大量の帯が捨ててあるのを見ると、胃が痛くなります。)

・日の当たる所に置くと色あせるので、それも避けてください。特に赤・黄色はすぐに飛びます。出来れば、カバーには古本業界の強い味方・パラフィン紙(グラシン紙)を巻いて防ぎましょう。

・中ワレが出来ますので、ページは力いっぱい開かないでください。

まぁこんな事は挙げていったらまだまだありそうですね。
とにかく本は、新品で売ってた時の状態に、限りなく近い方が有難いものです。最初は付いてた帯が無くなってるなんて、ページが欠けてるのと同じで、気持ち悪くありませんか?それに本は大事に扱えば、当然人間より遥かに長生きするのですからね。私の本棚には、私より年上の本がゴロゴロしています。
自分用として一番いい状態の本を持っておきたい、それはコレクターの常でしょうが、例えば専門店に売る時なども、状態で値段が全く違ってきますからね!
もちろん古本屋の100円コーナーの超常連である、赤○次郎西○京太郎等の本、また「ダディ」「電車男」といった類の、極短い一時の話題作なんかに、状態がどうのとか言ってもしょうがないですね。
こういった本は投げられても捨てられても、私の心は痛みません。

これは状態とは別の話ですが、出来れば本は初版で買いましょう。
私などは本を買う時、別に価値のある本じゃなくても、つい初版かどうか調べているわけですが、それが"中身の確認"という行為になるわけですね。
例えば恐ろしい古本屋だと、「カバーと中身が入れ替わってる」なんて事も確認せずに出していたりしますが、そんなのは一発で発見できますよ!

そうだ、本棚はたくさん収納できて、丈夫な物を使いましょう。それにピシッと揃えて並べると、一冊ではただの本だったのが、何だか壮観になってくるのです!! (しかもカッコいい壁紙にもなるのだ!)
私は他人の家に行くと、まず本棚を見ます(笑)
それでその人の趣向やセンスのほとんどが分かるじゃないですか。

状態の話、そして初版という単語も出てきた事ですし、次はプレミアコミックと呼ばれる古本の誕生のメカニズムあたりに触れてみましょうか。
今は普通の本屋で手に入る本も、10年経ったらお宝になる場合があるのです。当時は定価300円くらいだった漫画本が、現在古本専門店では3万円で売られているなんていう場面に遭遇した人もいるでしょう。
もちろんそうなる物はほんの一部だし、なるにはいろんなパターンがありますが、代表的な例を挙げて行きましょう。

とある売れない漫画家が後にブレイクした場合
初期に書いてた作品を読みたくなる人が多数いますよね。でもそれはとっくに絶版になっている…そんな時にその初期作品の値段は古本屋で高騰します。売れてない時の作品だから、それに比例して出版された冊数も少ないわけですし。

さぁ、今からでも本の先物買いを始めましょう!
ほとんどが大した名を残せずに消えていく出版業界において、後に売れる作家を見抜くには、鋭い先見の明が必要です。
今までただ読むだけだった漫画に、ギャンブルの楽しみも加わるってものじゃないですか!
出版社によって、すぐ絶版にする会社と、いつまでも版を重ね続ける会社とがありますし、あきらかに一回一回の刷る冊数が少ない弱小出版社もありますので、そこら辺を覚えて、好きな作家ですぐに絶版になるであろう本は、必ず買っておきましょうね

分かりやすく言うと簡単な一言で済んでしまいますが、
市場に出回ってる数の少ない本が古本界では高くなるのです。
だからベストセラーになった本なんかは、まず駄目ですね。
補足すると、いくら出回っている数が少ないとか初版だとか言っても、全く人気のない、もっと言うと誰も知らない漫画家の本はその時点では絶対に高くならないのです。欲しがる人が少ない(またはいない)のですから、当然ですね。

初版が高いというのは周知の事実でしょうが、版を重ねるにつれて改定されてる内容があったりすると、ますます初版がありがたくなってくるわけですね。
例えば「デビルマン」「あしたのジョー」「ドラえもん」…そんな誰でも知ってる漫画史上の大名作でも一巻の初版を刷った数はそんなに多くないはずです。
それが何十年経っても刷り続け、ロングセラーとなってるわけですが、そこでマニアが欲しがるのは初版です。

他にもいろいろ価格高騰のパターンはありますので、『面倒な事を書き始めちゃったな』と後悔し始めた私、BRUCEでありますが、続けると…
作家の思惑とは別の力が働いて、作品が回収や即絶版、または改定される場合がありますね。
[有名な例]として、手塚先生の「ブラックジャック」4巻(秋田書店刊行)で"ロボトミー"を扱った作品「植物人間」が収録されてて、これは抗議を受けて即作品を差し替えられ、よってそれを読むことのできる初版のみがマニアの間で値段高騰しました。
原作・梶原一騎&絵・矢口高雄「おとこ道」は、あの偉大な原作者の作品にして、「釣りキチ三平」矢口先生のメジャー誌デビュー作というのに、戦後の日本で暴れまわっていたK国人達を描いたため、抗議を受けて打ち切られた(人気もイマイチだったみたいですが)。
当然単行本も絶版となり、値段高騰。
(ちょっと話がそれますが、この時に元銀行員・高橋高雄は、矢口高雄というペンネームを梶原から頂くのである!矢口の渡に住んでたからなのですが、名付け親が梶原先生だとは知らない人は多いでしょう。)

こういうのは、他にもいーっぱいあります。
あと大事なのは、冊数の長い作品においては終わりの方、特に最終巻(または最終近くの巻)が高いという事です。
単行本は、みんなが一巻から集め始めるわけですが、後半飽きたり面白くなくなってきたりで買うのを止めるわけですよね。それに1巻は連載中はずーっと刷られ続けているわけで、初版が刷られてから絶版になるまでのスパンが長いわけです。
既に絶版になっている漫画を買い始める時は、決して1巻だけ見つけても買ってはいけませんよ。最終巻を購入してから、安心して最初の方を買い始めましょう。それか少し割高でも、全巻セットになっている物を買いましょうね。
かく言う私も、最後の方だけ無い漫画はいっぱいあって、それは最初の方だけで買ってしまっていた過去の失敗の遺物であります。

さらに続けると、いくら有名な先生の初版作品でも、近年の復刻版では値段が付かなかったり、帯が付いてるかとか、焼けてないか、研磨されてないか…といった状態によっても違ってきますからね。
こんなもんで、古本道はなかなか深い事だけでも伝わりましたかね。

ところで貴方は資源ゴミの日、しかも前日の夜中に本を捨てた事はありませんか?
そんな捨てられた物が、旬の過ぎたベストセラー本とか雑誌でもないかぎり、ほぼ確実に拾われ、売られてます。
東京都内だけで物凄い数の"拾いの人"がいて、それで生活してるんですよ。いわゆるホームレスの方がほとんどですが、生活水準はちょっとだけ高く、漫画喫茶に泊まったりしてるようですね。彼らは東京や近郊の県の資源ごみの日を全て把握してて、それぞれ回ってるのです。

ただ何でもかんでも大型古本チェーン店に持って行って小銭にする人もいますが、少しでも生活を良くするするために、漫画はもちろんの事、ロック雑誌ならあの店だとか、古い文庫本はこの店と、ジャンルごとに"今、何が人気がある=高い"かという事を、ゴミの出てない昼間の時間に専門店を回ってきちんと調べ、少しでも高く売れる店を知りつくしてる、マニア顔負けのおっちゃんもいるのです。
私も呑みの帰り、酔っ払って夜中に道を歩いてると、売れる本が捨ててあるのを見かけます。コレクターのはしくれとしては、本の救出をすべく拾いたいのですが、それはその道のプロに任せておけばいいと思いなおし、基本的に譲ります。
彼らには生活がかかっていますから。

ま、そんな考えも、餌が小物だからですね。
一度藤子不二雄が数十冊捨ててあるのを見つけた時は、大口あけて飛びつきましたから。別に激レア本は無かったし、私も藤子漫画は集めているので、この時の本は全て持ってたため、全部専門店に売りました。
本の状態が悪かったにもかかわらず、一万円近くで売れたと記憶してます。

家具なら家具で、それぞれ拾いの業者もいるのでしょうが、もっと大掛かりの道具が必要になりますよね。でも古本は個人で手軽に拾える…
私もせっかく少しは古本の事を知ってるわけだし、アパート代払えなくなって追い出されたら、こっちの道に入ろうかな。生活費のために辛い会社通いはしなくて済むし。

ただ扱うものが野ざらしに捨てられた本であるため、雨が降れば台無し。その日の宿代にもなりません。
たまには数十万円とかそれ以上の価値がある大昔の本が出たなんて話も聞きますが、基本的には東京中を自転車で走り回っても小銭にしかならないみたいで…うーん、厳しい。
あとコレクターは、いい本は自分で持っておきたいわけで、店に売れない。つまり生活にならず私には向かないか。

そうそう。
古本が呼んだ因果か、あるグループは我が家の目の前にある公園で、毎日収穫した古本の、整理とクリーン作業をしています。
"あるグループ"と書きましたが、拾いのおっちゃん達にも軍団があるんですね。
仲間内での『今日はこれが出たよ』とか、『最近全然駄目だなぁ』なんて会話も聞こえてきますが、ライバルグループとの戦いも熾烈なようです。
もう、いい本が捨てられた時なんて取り合いですよ。早い者勝ちだからタイミング命だし、そうそう予測もできない仕事ですからね…
大変です。

私のなじみの古本屋は、彼らの集めてくる本を高価買い取りして、商売の中心としています。そこでよく本を買う私も、仕入れ命の古本屋も、彼らには感謝するしかないですね。何しろ毎日本を売りに来てくれるのですから。

はい、今夜は古本の無駄話をしてしまいましたが、また次回から「あしたのジョー」紹介の続きをやります。
では、おやすみなさい。
  1. 2006/08/22(火) 23:05:09|
  2. 古本 番外編
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梶原一騎(28) ちばてつや 15 「あしたのジョー」 15

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16巻は、ジョーVS金龍飛との東洋バンタム級タイトルマッチが始まったばかりの所から。

一方的すぎる展開で殴られるであろう事を初めから知っているジョーは、1ラウンドが終わっただけの時点でセコンドの丹下段平に対し、
『試合中どんなことがあっても タオルだけは投げてくれるなよ・・・・
タオルだけは投げてくれるなといってるんだ・・・・
もし そんなことをしたら その場でおっちゃんをぶっ殺すぜ
どんなことになろうと・・・・だ』

などと警告してます。

体調は無理の限界を超えた状態で、この大敵と戦うのですから、すぐにダウンの連続です。

不気味な金の目が、こう訴えてきます。
『わたしはね・・・・
ほんの ひとにぎりの食料のために・・・・
自分の父親を 石でたたき殺した男さ
父親の血で 手をまっかによごした男さ
ボクシングの世界など ままごとなんだよ』


一方のジョーは
『あいつにとっちゃ こうやってスポンジのはいったグローブで保護された程度のなぐりあいは・・・・ じつにのどかな平和な世界なんだ・・・・
いずれにせよ 少年院あたりでつまらねえ 意地や対面のためにやってきたケンカボクシングの
そんな およぶ境地じゃねえ・・・・
勝てっこねえ・・・・』

なんてつぶやき、これはもう、試合前のレストランでの会話で負けたのかと心配になりますよ。

もはやすっかり"劇画"となったちば先生の絵柄で、サンドバックのように殴られまくるジョーを見るのが…読者にも辛い。

それでも立つジョー。
ただ精神力だけで、ダウンしても立つ事だけが抵抗とでも言うかのようです。
スタミナなんか最初からない。しかし!
『あるのは・・・・どういうわけか
どういうわけか こいつには死んでも負けちゃならねえという
へんな意識だけだっ・・・・』

と言い、ボロボロの体で反撃はしています。

そこで金の必殺技・舞々(チョムチョム)が出ます。
これはロープ際で打ちまくり、倒れようとする方向の逆から突き上げ、ダウンも許さない技でした。

それでも…ジョーは立った。
かつてこれをくらって立ったボクサーなど一人もいないというのに、この体で!

ゴングが鳴り、コーナーへたどり着いたジョーの方へ、白木葉子がやってきました。
そして段平に…何故タオルを投げないのか、無理をして死んでしまった力石徹を忘れたのかと詰め寄る。
段平も棄権すると言ってる所で、ジョーがこう言います。

『へ・・・・へ 棄権なんぞしてみやがれ・・・・
おれは いますぐ この場で拳闘界から足をあらうぜ・・・・!
おっちゃんと そこにいる したり顔の 出しゃばり女をたたっ殺してな・・・・』


それから
『うせろよ・・・・
男が男なりに なにかをやろうとしているときに・・・・
そういうところへ いちいち女が しゃしゃり出てくるんじゃねえ
うせろってんだあっ』

そう言って葉子のキレイなお顔に水をぶっ掛ける。カッコいい…

ただ葉子の発言から"力石"という、この名を思い出したのが良かった。
ゴングが鳴り、第6ラウンド。
餓えのために父親を殺した、その地獄のでかさにあぜんとして劣等感を植え付けられたジョーが、でも"なにか"ひとつ金には屈服できなかったわけですが…
その"なにか"が何だったのかは、やはり奇跡の反撃を始めたジョーの口から言ってもらいましょう!

『なにか・・・・とは
あの死んだ力石徹も 餓えかわいていたという事実だっ・・・・
ひとにぎりの食料のために親を殺した金は まだしも水だけはガブのみできたろうが・・・・
力石は「水さえ」ものめなかった・・・・!
しかも金は「食えなかった」んだが
力石の場合は自分の意志で「のまなかった」「食わなかった」・・・・!
のまず食わずーそれゆえの死とひきかえに・・・・
力石徹は男の戦いをまっとうし
おれとのきみょうな友情に殉じたっ!
なんのことはねえ・・・・死の寸前の餓えが なにも絶対じゃねえ
みずから すすんで地獄を克服した男がいたんだ! 同じ条件で!
人間の尊厳を!男の紋章ってやつを!
つらぬきとおして 死んでいった男を おれは身近に死っていたんじゃねえかっ!!』


そうです。
自分だけが地獄をくぐってきたかのようにタテにとって非情な強さのよりどころにしてる金は、はっきり力石に劣ると気付いたジョーは燃え、最後は金をリング外に叩き出して見事KO勝ち。

東洋バンタム級の新チャンピオン・矢吹丈の誕生です!

後日、カップルになった西紀子がお祝いを持ってジムに来てくれますが、二人はまたかっこいい新車を入れてます。
そんなに儲かるのでしょうか、林食料品店は。

段平でさえも、最初は紀子がジョーに思いをよせていた事を知ってたようで、そんな話をした時のジョーの反応がこうです。
『世間にゃ男には女が 女には男が おたがいはいてすてるほどいるってこった
しかしな ホセ・メンドーサは世界にたったひとりっきりしかいねえ・・・・!
力石やカーロス・リベラがそうだったように・・・・・・・・な』

全くジョーを見てると、恋だとか愛だとか、そういう事ばかりもてはやして騒いでる俗世間がばからしく思えます。

さてついにチャンピオンになったジョーですが、段平はいつも通り、いやいつも以上に心配してます。
重なる過労と激戦でうけた無数のパンチに酔って、いまや廃人、つまりパンチドランカーになりかかってるのではないかと、そう思うのです。

そこで段平はジョーをテストしてみるのですが、ここでは何も異常が見られない。
これですっかり安心して、東洋タイトル初防衛のためにハワイへ行くのですが…

作品の原作者である梶原一騎(高森朝雄)先生について、その実弟の真樹日佐夫先生は、
『ジョーはもっともよく兄貴自身が投影されたキャラクターだった』
と発言しているのですが、まさに晩年の梶原先生が向かう道のように、ジョーはこれから破滅へ突っ走って行くのです。

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続いて17巻、東洋バンタム級チャンピオンという肩書きを持ったジョーは、本当にまともなボクサーとしても強くなっています。
ハワイで公開スパーリングなどやるのですが、現地の第一線選手を相手に、今までは喧嘩ボクシングばかりだったジョーらしからぬテクニックを見せた上で、相変わらずの破壊力も披露しています。

ここで何と、東京での祝賀パーティーで会って以来ですね、世界チャンピオンのホセ・メンドーサが顔を出しました。
そこでジョーは無謀にも、チャンピオンにスパーリングを申し込むのですが、ホセに
『ワタシハ礼儀シラズノ 黄色イ獣ニハ サワルノモ ゴメンダ』
などと言われて断られます。

…って、エーッ!?
この後悪者扱いされるジョーや人格者のチャンピオンといった漫画の流れを見ていると、読者も流されるかもしれませんが…
これは明らかに貴方の方が無礼ですよ、世界チャンピオン!
腹が立ったから人種差別発言をして、人格者も無いでしょう。

迫るジョーに素手のパンチを喰らわせて、ジョーは失神。
静かで無口。そして優しいマイホーム・パパのホセですが、過去最強の敵である事は間違いありません。

さて、場は東洋バンタム級タイトルマッチ。
矢吹丈VSピナン・サラワクです。
そこに激励に来たといって、ホセが姿を現しました。
リング上で握手しに来たホセに対し、
『黄色い子羊には さわるのもいやなんだろう』
と言って、ジョーが殴りかかります!

それをかわして、無理矢理握手をしたホセ。役者が一枚上のようですね。
会場の大ブーイングの中、ジョーは
『こっちはこっちなりの 理屈があって出た行動なんだ
ざんねんながら目的は はたせなかったが おめえらにいちいち文句をいわれる すじあいはねえっ』

と叫び、対戦相手のピナンに対しては第ニラウンドでぶったおすと約束し、実際にその第ニラウンドで予告通りKO勝ち。強いです。

ジョーがパンチドランカーであるという確信を持った白木葉子の心配をよそに、調子はいいですね。
しかしその後、同じハワイでやってるホセの防衛戦を観に行き、チャンピオンの圧倒的な強さを見せて…
段平『つ・・・・強い ほんものの強さだ・・・・!!』
ジョー『汗でべとついた肌に・・・・鳥肌がたってやがる・・・・』
葉子『このまま・・・・もしも このまま対戦させたらー 矢吹くんは まちがいなく殺される・・・・!!』
てなもんです。

とにかく帰国してドヤ街のみんなに取り囲まれて、久しぶりに心から楽しく笑ってます。
さらに後日、ジョーは"ボクシング界の輝ける明星"などと銘打って、チャリティーサイン会などやってますよ!
ハワイでの予告KOが中継され、今や映画スター以上の人気者になったジョーでした。

ただ、ジョーがポリ公に追われてた時代から見ていた葉子は、ブラウン管の向こうでタレントとおしゃべりしてる彼の映像を見ながら、うわついてるとしか感じない。
その後ジョーに会った時も、
『まあ・・・・練習だけはちゃんとやってるの えらいわあ』
なんて言ってますからね(笑)

そしてジョーの世界タイトル挑戦前の一試合をプロモートする事が決まり、挑戦者を求めてジム幹部達を世界に飛ばす。

その探してくる相手の条件は…
『まずボクシングそのものよりも ケンカに強いタイプの選手です
たくましく ふてぶてしく 荒けずりで 乱暴で
理論をこえた プラス・アルファーの底力を秘めた 野生の男!
いってみれば うちの力石徹と戦い そしてリング上で 死にいたらしめたころの 矢吹丈のような強烈なタイプ!!』

との事です。

もう、ここまで来たら葉子の心意気を分からないのは当のジョーだけでしょう。
葉子は、ジョーにかつての野生を取り戻さない限りはとてもホセに太刀打ちできないと知って、彼のために奔走しているのです。
何故ここまでするのかは、最後の試合の前に分かるのですが…

今夜はここまで。


  1. 2006/08/19(土) 01:00:41|
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梶原一騎(27) ちばてつや 14 「あしたのジョー」 14

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前巻では、ジョーの肩にホセ・メンドーサの手形が刻印された所でしたね。
今夜はその続きの15巻。

カーロス・リベラとの一件がまだ生々しいうちにホセとやりたいと、いらいらするジョーは、それでもドヤ街の子供達には優しいのですが、最近丹下ジムに遊びに来なくなった彼らに声をかけたら、サチ
『最近のジョー兄ぃ なんだかこわいや』
などと言われました。

それから試合のため韓国から来日している、東洋バンタム級チャンピオン・金龍飛の公開スパーリングを観に行きます。
そして、その恐ろしさを目の当たりにしながらも、その場で挑戦を申し入れる。

実はジム会長の丹下段平は、『チャンピオンがジョーの強さを恐れて挑戦を逃げている』なんて言ってジョーを抑える工作していたのですが、もう後半の段平は、ジョーの体を心配する過保護な親のようになってますよ。

実際に金はアマ戦績108戦全勝、プロ転向後も12戦全部KO勝ちで東洋王座を獲得している凄い奴なので危険なのは確かなのですが、実はそれよりも心配なのが、体重の問題。
育ちざかりのジョーは、肉だの筋だのではなく骨格からして太くなっている…

もはやバンタム級にとどまる限界を超えているジョーに対して段平は、フェザー級に転向するように言うのですが、ジョーは一言『ノー』
おおっ!ジョーが英語を使った!

何故ジョーはバンタム級でなければいけないのか。それはこう説明してくれます。
『バンタムというところは あの力石徹が命を捨ててまで
おれとの男の勝負のために フェザーからおりてきた場所なんだ
それでなくてもリミットぎりぎりだったっていうのにー
さらに一段おりてきてくれたんだぜ
いまのおれの減量苦なんぞ比じゃねえ それこそ地獄の底をのたうちまわる苦しみだったろう
ちょっとくらい つらいからってサヨナラできるかよ
生涯の敵ー生涯の友との古戦場バンタムによ』

という事だそうです。

飲まず食わずでムシぶろ、運動を繰り返すうちに"かわきの極限状態"になり、唇が乾いて腫れあがりました。
この時の醜いジョーは、もう漫画の主人公の顔じゃないですよ。

段平はその減量を失敗させてジョーの体を守ろうと、次々と飲食物を差し出します。
しかしジョーはやはり折れず、
『バンタムにとどまるってことは・・・・
いまやもう おれが生きていくうえでの必要条件なんだ
ボクシングをやっていくための不文律なんだっ・・・・!』

と言い、その後ついに段平もその地獄減量に協力する。

…と思ったら、まだ段平の策がありました。
丹下ジムの計器を2ポンド狂わせていたのです。
そうすれば体重オーバーで試合は流れるだろうと。

それを計量の場で知ったジョーは、本気で段平を殺すつもりで、素手で殴りまくってます!
外に出たジョーは下剤を飲んだ上で130度という高温サウナにまで入り、ついに減量に成功しました。

ついに計量後の食事をレストランでとるジョーでしたが、そこへ対戦相手の金が現れ、忌まわしい過去を話す…。

金は幼少の時に1950年の朝鮮戦争に遭っています。
その戦火の餓えた日々に中で母は直撃弾によって目の前で黒こげになりましたが、何とか骨と皮だけになりながらも幼い戦災孤児である金は生き残りました。

ある時野山をさまよっていると、死んでいる兵士を見つけ、食料をはぎ取りました。
しかし兵士はまだ息があり、金に向かってきました。
金は食うために、石で兵士の頭を滅多打ちにして殺したのですが…
その殺された兵士は金の父親で、家族に食わすために自分はほとんど手をつけず、取っておいた食料を持って隊を抜け出したのだと、捜索に来た兵隊によって知ったのです。

金は食料を全部吐き、それ以来現在に至るまで胃が食べ物を受け付けないので、減量も必要ないのだそうです。
金こそは本物のハングリーボクサーだったのか…。

これをわざわざ言いに来た金は、ジョーよりずっと上の地獄をくぐり抜けてきたという事を話して勝つ気力を奪うという、そういう作戦だったのでしょうか。
それならかなり成功してますね。

とにかく試合は開始され、すぐに15巻は終わります。

  1. 2006/08/18(金) 00:24:17|
  2. 梶原一騎
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梶原一騎(26) ちばてつや 13 「あしたのジョー」 13

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14巻は、もちろん前巻のジョーVSカーロスとの激闘の続きから。

その野獣を解き放ったカーロスは、何と堂々とエルボーの反則!
それを受けたジョーはバッティング、エルボー、足掛けで返す!

二人とも一匹のチンピラに戻って喧嘩を始めちゃってますが、会場はますます興奮のるつぼと化し、解説のアナウンサーさえ、
『きれいだ・・・・
ルールをまるで無視した 反則だらけの試合なのに 不思議にきたない感じをうけない・・・・
それどころか 小気味よい さわやかな感じさえする・・・・』

などと言ってますよ。

ついにはカーロス、レフリーをリング下に叩き落して、ダウンしたジョーに攻撃!
さらにさらにこれが続き…血まみれの決闘の判定は引き分け(当たり前だ)。

次は世界王者ホセ・メンドーサとの世界タイトルマッチのため日本を去るカーロスをこっそり見送る、顔面を腫らして変形しまくりのジョーはこう思う。
『あのなつかしい 力石の場合にしてもそうだったが
たがいの血と汗を たっぷりすいこんだグローブで 徹底的にぶちのめしあった仲ってもんは
百万語のべたついた友情ごっこにまさる 男と男の魂の語らいとなって
おれのからだに なにかをきざみこんでくれた・・・・
がんばれやカーロス』


それから一ヵ月後、白木ジムを訪ねたジョーは、葉子と一緒に外電を聞きます。
『わずか第一ラウンドの一分三十三秒で カーロス・リベラが・・・・
あっさりとチャンピオン ホセ・メンドーサにKO負けをきっしたのです』
と。
それもマネージャーのロバートが言うには、ジョーとの一戦で既にカーロスは壊れていたと言うのですが、ショックを受ける二人でした。

ある日バッタリ紀子と会ったジョー。
いつも誘われても邪険にしてたのに、この日は逆に紀子を玉姫公園に行くからと、誘います。
喜ぶ紀子と公園の後はカフェに入ったりして、夜まで散歩です。
そしてこれからの会話シーンはストーリー上でも重要かつ、熱いモノがありますので、長いですが書き写してみましょう。

『矢吹くんは・・・・さびしくないの?
同じ年ごろの青年が 海に山に恋人とつれだって 青春を謳歌しているというのに
矢吹くんときたら くる日もくる日も汗とワセリンと松ヤニのにおいがただよう うすぐらいジムにとじこもって
なわとびをしたり柔軟体操をしたりシャドー・ボクシングをしたりサンドバックをたたいたり
たまに明るいところに出るかと思えば そこはまぶしいほどの照明にてらされたリングという檻の中ー
たばこのけむりがたちこめた試合場でよっぱらった客にヤジられ
さぶとんを投げつけられながら 闘鶏や闘犬みたいに血だらけになって なぐりあうだけの生活・・・・
しかもからだは まだどんどん大きくのびようとしているのに
体重をおさえるために 食べたいものも食べずのみたいものものまず
みじめだわ 悲惨だわ
青春と呼ぶにはあまりにもくらすぎるわ!』


『ちょっとことばがたらなかったかもしれないな
おれ負い目や義理だけで拳闘やってるわけじゃないぜ
拳闘がすきだからやってきたんだ
紀ちゃんのいう青春を謳歌するってことと ちょっとちがうかもしれないが
燃えているような充実感はいままで なんども味わってきたよ・・・・
血だらけのリング上でな
そこいらのれんじゅうみたいに ブスブスとくすぶりながら 不完全燃焼しているんじゃない
ほんのいっしゅんかんにせよ まぶしいほどまっかに燃えあがるんだ
そして あとにはまっ白な灰だけがのこる・・・・
燃えかすなんかのこりやしない・・・・
まっ白な灰だけだ
そんな充実感は 拳闘をやるまえにはなかったよ
わかるかい紀ちゃん
負い目や義理だけで拳闘をやってるわけじゃない
拳闘が好きなんだ
死にものぐるいで かみあいっこする充実感が わりとおれ 好きなんだ』


『矢吹くんのいってること・・・・なんとなくわかるような気がするけど
わたし ついていけそうにない・・・・』


…どうですか。
かっこいい会話シーンでしたが、最後は女性である紀子に分かってもらえず、
『ついていけそうにない』
と去られる主人公。
この後、本当に紀子は真面目で堅実な西との結婚生活を選びます。
一応、去られて寂しげなジョーの描写もここで入るのですが…

つまり林紀子、「あしたのジョー」ヒロイン戦線から脱落って事ですね。
となるとあとは白木葉子しかいないわけですが、ストイックなこの主人公はさて、ちゃんと結ばれるのでしょうか!?

原作者の梶原一騎先生は、
『しょせん男の行く道。何で女に分かろうか。』とか、
『あきらめて負けるのは女の子 くらいついて負けるのが男の子』だとか、
他にもいっぱい"男たるもの"といった事を強調すべく書いているのですが、このシーンは意外にもちばてつや先生の創作だったという話ですね。

長々と書き写したこの会話シーンは、当然皆さんもご存知でしょうラストを飾る"燃えつきシーン"への布石となっているわけです。

この後のジョーは国内に敵がいなくなり、海外の東洋ランカーらと戦い、連戦連勝。
今までずっと無冠だったジョーですが、本当に強くなりましたし、やっと周りからも認められて人気も爆発の、キャリア黄金時代に突入したと言えるでしょう。

ずっとジョーとマンモス西の二人きりだった丹下拳闘クラブには入門希望者が押しかけ、後輩達と一部屋で雑魚寝してますよ。
このジムは全員が内弟子という制度だったのでしょうか?

場所を移して、ジョーの連戦連勝祝賀パーティの場です。
何故か、カーロス・リベラを倒した世界チャンピオンのホセ・メンドーサがこの場に来ていて、ジョーとの初邂逅しますよ。
一応ジョーを祝福するように肩をつかみ、ポンと叩いて帰るのですが…
この14巻でサンドバックを叩くジョーの肩に、くっきりとホセの手形がアザになって刻印されておりました!

ビックリした所で、続きはまた次回。

  1. 2006/08/17(木) 00:10:28|
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月刊漫画ガロ(11) 古屋兎丸 2 「Garden」

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今夜は古屋兎丸先生の単行本二作目「Garden」(イーストプレス刊)。
七編収録の短編集であります。

月刊漫画ガロに不定期連載されていた時は続きが読みたくてしょうがなかったのに、なかなか載らなくなり、ついには雑誌の廃刊で幻となったかに思えた「エミちゃん」が加筆・修正を加えて完結まで収録されていて、これが特に嬉しい。
単行本ではラストに載っているのですが、最重要なのでこれから語りましょう。

「Parepoli」では四コマ漫画だったのが一転、この「エミちゃん」では面白いコマ割りも見れるストーリー物です。
しかも全部フリーハンドらしく枠線も歪んでるし、下書きすらしなかったのだそうで、だからなのか異常なテンションと不安感が際立ってます。

単行本では「エミちゃん」だけが、袋とじになっておりまして、それも八つの段階を踏んで少しづつ切っていかないと全て読めない。
読みたい人だけが読めるように、逆に言えば読みたくない人は読まないでという、出版社の意図が見えます。
漫画の単行本で袋とじですよ!!

こうなった理由は、ヤバイ暴力描写のせいです。
古屋先生のこの上手い絵で描かれるこの残酷さは、不快で目をそむけてしまう人もいるかもしれません。
無抵抗な幼女へ向けた、ひどい暴力の世界がそこにあるのですから。

ここで世間で勘違いされてる事柄について言いたい。
もし誰かが猟奇や暴力等を扱った作品と似たような事件を起こしたとしたら、いつものようにマスコミによって槍玉にあげられるのは目に見えてますよね。
でも実際は逆で、こういう作品を読まない奴、または全く知らない奴こそがこういった漫画のようなマネをするのだというのが、ホラー物とか大好きでコレクト趣味もあるために何度も部屋に入れた知り合いにドン引きされている私の(笑)、10年来の持論なのです。

脱線しましたが、「エミちゃん」は絵のクオリティ、その実験性、ショック度、話の出来にいたるまで現時点での古屋兎丸先生の最高傑作と言えるでしょう。
この意見には、若干私の趣向が入ってるのは確かですけど。

最後の最後でどういうお話だったのか分かるようになってるのですが、簡単に説明すると…

保育園の園長がバスに乗った園児達を森に連れて行き、自分の欲望の限りを尽くしている。
そこでエミちゃんという、精神病院から抜け出した両親の間に生まれた女の子がたまたま通りがかり、関わる事になるのですが、この園長は最後には園児達の死体を全部バスに乗せて帰ろうとするほど、いかれてます。

そもそもエミちゃんが森を歩いていた目的は、父親であるマッドサイエンティストが母親の死体に培養したウィルスを、森の外に運んで解放する事でした。
ウィルスは地球規模にまで拡大するのですが、その被害者達の死体が鳥になっていく描写は圧巻です。

「エミちゃん」については、『ここが凄い』という所を挙げて行けばまだまだあるのですが、時間も無いので他の作品に行きましょう。

「裸体の起源」はオールカラーで幻想的な、荒俣宏先生とコラボレーションというのも貴重ですね。
オランダの幻想画家・ボッシュ(Bosch)の絵画「快楽の園」のイメージで作ったそうですが、かなりそのままです。

「天使のフェラチオ」「ユメカナ」のニ作は"エロ"をテーマに描かれています。
とは言えエロ漫画としては興奮度でもう一つですが、さすがに絵は凄いし、少女の青春漫画として見たら傑作…かな?

「海からきた機械」も、少女が大人の女になるまでの過程、性の目覚め等を描き、テーマは似てますが何とこれが吾妻ひでお先生原作。
兎丸先生が、中学校時代に読んで以来印象が残っていたこの吾妻作品を、ファン心理でリメイクしたそうです。
短い作品ですが、ラストが素晴らしい。

「月の書」は錬金術に賢者の石、ホムンクルスといった物を題材に描いた、ゴシック漫画の傑作。
8ヶ月かけて作ったというこの作品は、絵も美しいし、話のまとまりもバッチリで、私は大好きですよ。

「笑顔でさようなら」は、何と美術教師時代の1993年に描いた処女作品で、フランシス・ベーコンの世界を漫画化したのだそうですね。
なるほど漫画家よりは美術家くさい作品です。

とにかく、「エミちゃん」も収録されてる短編集「Garden」
これはとにかく自信を持ってオススメしたい作品ですので、読んでみてくださいね!


  1. 2006/08/16(水) 03:34:58|
  2. 月刊漫画ガロ
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梶原一騎(25) ちばてつや 12 「あしたのジョー」 12

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こんばんは。
つい先日、友人に「次はこういう髪型にしたい」と言って、あのジョーヘアを手振りでやったら、「井沢か」って言われた、そんな私・BRUCEです。

もちろん井沢といえば、あの古谷実先生のギャグ漫画「行け!稲中卓球部」のキャラですが、彼はついにジョーが一度も描かれなかった、正面から見た時のヘアスタイルのカットを描いてるんですよね。

---------------------------------------------
気を取り直して、今夜は「あしたのジョー」の12巻、13巻を一気にいきます。

ドサ回りの草拳闘から抜け出したジョーが向かった先は、白木葉子邸でした。
そしてそこに身をおくカーロス・リベラとスパーリングがしたいと申し出て、それを受けるカーロス陣営。

カーロスの恐ろしさを直感で感じ取り、心配して止めようとする段平に対してジョーは、
『おれは おれなりに真剣に考えたうえでのことなんだ
人が 新しい道を見つけて意気揚々 第一歩をふみ出そうってときに
その出鼻を折るようなマネはやめてほしいもんだな!』

そう言ってカーロスとの戦いに挑むのです。
スパーとはいえ真剣勝負のつもりで。

笑いながらあしらうカーロスでしたが、ジョーの必殺クロス・カウンターが炸裂!
しかも力石を殺ったテンプルへ思いっきり叩いたのに、あの嘔吐も出ない!
カーロスも笑いが消え、本気になった所でこのスパーは終了。

その後、カーロスはまた次の相手に逃げられないように力を隠して原島龍を倒し、日本での最後の試合であるタイガー尾崎には、本当の実力を見せても大丈夫と、何と一発のパンチでKO勝ち!
やられた尾崎は、もらしちゃってます。
これでカーロスは、ジョーに勝った南郷・原島・尾崎の三人全員をKOしましたよ。

そのカーロスを見て燃え、野生の本能が目覚めたジョーはどうしても彼と正式に戦いたい。
そこでランクの違いすぎる二人ですが、葉子の提案でエキビジョン(模範試合)で4ラウンドを戦える事になりました。

試合当日、いつもならどんな事があってもかけつけていたマンモス西が来ずに(うどんを食べてるのでしょうか)、いつもジョーに誘いを断られてばかりの紀子がセコンドにつき、試合開始。

ジョーのロープ際の秘策もあって世界ランカーのカーロスをダウンさせるし、凄い強打の打ち合いとなります。
落下したリングに昇る時に、段平がジョーを助ける形で押したので失格負けとはなりましたが、もう今度こそ完全に力石の亡霊を振り払い、嘔吐も無くまともに相手の顔面を強打できるようになった。

さらにこの決着を着けるため、次は正式な10ラウンドの試合を、何と四万人も収容できる後楽園球場でやる事が決まりました!
嬉しいですね~、ジョーの復活。

…しかし如何でしょうか、この結論。
あれだけ長々と苦しんだのに、カーロスを見てあっさり治ってしまうなんて。
要は強敵がいれば良かったのわけですよね?

これをきっかけにその後は雑魚をぶっ叩いても何ともなくなるし、ご都合主義な感じが…

とにかく、長らく続いたジョーの暗く辛い時期が過ぎ、ホッとしている私です。

そうそう、13巻では貴重な場面があります。
丹下拳闘クラブにて、葉子と紀子がついに対面するのです。
紀子の初登場の時、ジョーは葉子と間違えたくらいで、つまりそっくりな二人ですが、葉子はキッと紀子をにらんでます。嫉妬の目(サチ談)です。
それだけで、何の会話もないのですが。

この丹下拳闘クラブには、何とカーロスも訪ねて来ていて、後楽園の前哨戦のようなスパーリングを始めてしまいます。
ここでジョーが完全復活した証拠に、葉子のセリフがこうです。

『ああ・・・・
矢吹くんが野獣にもどっていく・・・・
野性にかえっていく・・・・
あんなに・・・・
全身けもののようになった 矢吹くんを見るのは 何年ぶりかしら』


良かった良かった。
このスパーは中断しますが、ジョーはカーロスが未だ八分目の力しか出してない事を見抜き、しかしジョー自身も奥のほうで導火線がチロチロと燃えていると言う。

次はいよいよ満員の後楽園球場での「世紀の一戦」当日。
葉子は、やっとカーロスの本当の恐ろしさを感じ、
『も・・・・もしや わたしは女の浅知恵でー
ふみこんではならない 男の世界へ深入りしすぎてしまったのではないだろうか・・・・』

なんて、おびえてます。これは珍しい!

そしてゴング。
まともな打ち合いではさすがにカーロスが強く、しかもついに本気を見せてますからね。
ジョーは『鉄のハンマーでガンガンぶっこわされたみたいだ・・・・』と、強烈にダウンさせられて。

エキビジョンの時に見せた、ロープ際の秘策は破られてダウンしますが、またそれを逆手に取ってジョーの反撃。
激しい試合展開を見せている途中で、13巻も終わりです。

  1. 2006/08/14(月) 23:48:40|
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梶原一騎(24) ちばてつや 11 「あしたのジョー」 11

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みなさまこんばんは、BRUCEです。

前回まで一日も休まずに、毎日更新してきた「あしたのジョー」紹介でしたが、何故今回は10数回も他の漫画をやり、間が空いたのか!?

それは、このジョーの辛い苦難の時期を見ていてやりきれなくなり…
そしてこの時期、約3ヶ月に渡って体調まで壊してしまって連載を中断したちばてつや先生に習っての事です。
私も、ここでしばらく間を空けるのが"正しいファンとしてのあり方"であろうと考えたわけです。

でもこれからは、読了するまでマメに更新していくつもりですからね!
それでは続きに行きましょう。今回は11巻です。

----------
矢吹ジョーは、日本チャンプのタイガー尾崎とやって駄目、1位の原島とやっても駄目だった。
そして次は2位の南郷浩ニが相手と…落ちぶれていくパターンです。

そんな試合会場に、白木ジム新会長・葉子に呼ばれて来日した世界の大物二人が来ています。
まず白人の方は敏腕マネージャーのハリー・ロバート
そして陽気な黒人は世界6位のボクサー、カーロス・リベラ
南米ベネズエラ出身のカーロスは、その強打ゆえに世界チャンピオンからも逃げられてるという"無冠の帝王"です。

みっともない試合運びのジョーは、葉子に
『いまのかれは 老いさらばえ つかれきった一匹のやせ犬にすぎないわ
あまりにもみじめったらしくて 目をそむけたくなるの

などと言われてるし、観客からは野次られまくり。

ついに反撃するジョーは顔面強打を喰らわせますが、またリング上で嘔吐…
最後は頭突きから蹴りまでと最悪の攻撃を仕掛け、当然反則負け。
これで日本上位ランカーに3連敗ですよ。
もちろんジョーは尾崎、原島、南郷なんかと戦っていたのではなく、偉大な力石の亡霊が相手なわけですが。

こんなひどい反則試合をやったジョーは、もう中央のリングには上がれません。
そして何とドサまわりの草拳闘にまで身を落とし、まだボクシングにしがみつきますよ!

こんな所では八百長試合も当たり前なのですが、それを頼んできたプロモーターにつかみかかり、
『こんなドロ沼のドサに身を落としてまでも 拳闘をすてることができない このおれに・・・・
あんたは八百長をやれっていうのかい
あまりにも残酷すぎやしねえか? あまりにもよ!』

そう言うジョーは、まだちゃんと"あした"を見ていますね。

ジョーが離れてる間の中央のリングでは、この前ジョーに勝った南郷対カーロス戦が行われています。
カーロスってのは世界ランカーという名前だおれで、南郷にも負けそうでしたが、ラストの10ラウンド目でラッキーパンチが当たって勝ちます。

・・・いや、実は違うのですが、その試合をTVで見ていたジョーはカーロスの芝居に気付きます。
つまりカーロスの本当の実力を見せてしまったら、高い金を払って来日させたのに、あとの対戦者が敬遠してカードが組めない。そう判断したプロモーター葉子の陰謀だとまで見抜きました。

この試合をTVで観て以来、ジョーは『気がたって しずまるときがない・・・・』そう思います。
そして、ついにドサまわりの草拳闘からは抜け出し東京へ戻るのです。

これで11巻が終わりですが、一つ注目の場面。
林食料品店のマンモス西です。鼻からうどん野郎の西です。
おかみさんに『昼は西どんの 好物のウドンだよ あつくしてあるからね』と言われ、またうどんを食ってます。
…それだけですが。

---------
力石の死後、丸々3巻を使ってもなおジョーに祟っている力石の呪い。
いや、劇中使われる"力石の亡霊"とか言う言葉は、実は力石に失礼ですよね。
それは力石は死んで終わってるのに、ジョー自身が引きずり、ジョー中にある物なのですから。

この期間は読者にもきつく、「長すぎる」とかいう声が聞こえる事もあります。
そう、普通のヒーローのパターンでは、ある程度苦しんだら乗り越えるわけですよ。そして何も無かったようにまた活躍するでしょう。

だからこそ、何故作者がそうせずに、ここまで執拗に苦悩の時期を描いたのかを考える必要があるでしょう。

しかも案外、力石の呪いはジョー以上に梶原&ちばの両名に祟っているのかもしれません。
これ以降も他のを次々描いていても、世間一般からはいつまでも『おーっ!「あしたのジョー」の作者だ!』とか、『力石好きです』とか、死ぬまで言われ続けるのですからね。

それではまたしばらくの間、「あしたのジョー」にお付き合いくださいね。

  1. 2006/08/12(土) 16:57:13|
  2. 梶原一騎
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月刊漫画ガロ(10) 古屋兎丸 1 「Palepoli」

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今回紹介したいのは古屋兎丸先生です。
1968年生まれと、今までこのブログで紹介してきた漫画家の中ではダントツで若い世代ですが、しかし既に漫画史に残る名作をモノにしてますよ。

その名作一つ目が、「Palepoli」
画像の左が青林堂刊行で最初に出たハードカバー版で、再発されたソフトカバー版が画像右の本です。さらに後で、太田出版から短編がもう一作追加収録されて復刻もしてますね。

Palepoliは"パレポリ"と読みまして、4コマ漫画です。でも普通の4コマ漫画じゃない!
ガロで毎回楽しみに読んでいたのですが、この古屋先生が出てきた時は本当に嬉しかったのを覚えてます。
その連載、といっても原稿料無しの持ち込み扱いだったそうですが、その時に掲載されていたのが「Palepoli」なのです。

単行本は発売日前に予約して当日本屋に走ったものでしたが、その初版発行が1996年ですので、もう十年が経っていますね。
しかし誰もこの時の古屋先生がやったテクニックは真似していないのではないでしょうか。というより手間がかかりすぎて、原稿枚数を上げなくてはならないプロの漫画家には無理なのですね。
それだけこの時は凄い事をしていて、古屋先生も実際にプロとして活動し始めてからは、簡略化した絵柄になりました。

漫画の面白さというのが、単純に絵の上手さや変わったテクニックなんかではない事は誰でも分かるでしょうが、この「Palepoli」まで行くと脱帽するしかないですよ。
一人の無名アーティストが、膨大な手間と時間をかけて面白いアイデアを紙に表していった記録として観賞し、楽しむのもいいでしょう。
もっと"美術作品"として本を楽しみたい方には、「プラスチックガール」(河出書房新社刊)もオススメです。

「Palepoli」に見られる、ペンによる繊細な描き込みや、ビックリするスクリーントーンの使い方。
それで表現されるのは、連作では…
・タカシくん物
・ドアの魚眼から見える物
・没のおばけ
他にいくつかの面白いシリーズあります。

あと特にいいのが"騙し絵"シリーズなのですが、例えば男女の絡みと「ドラえもん」キャラが組み合わさってますよ!
くだらないギャグ漫画を物凄く手の込んだ絵でやるのも好きでした。

他漫画のパロディも絶品です。
その凄さは、「Palepoli」完結後に漫画誌COMIC CUEで掲載された、有名漫画のカバーバージョンも単行本に収録されているので、一目瞭然ですね。
これは「Palepoli」でやったテクニックの集大成と言える上に、ギャグも最高でしょう!

---------そして---------

この実力ですので、古屋先生はこの後すぐにメジャー誌にも進出しました。
今現在でも精力的に作品を発表しています。

ただ、描き続けているのは嬉しいもののハッキリ言って作品の質は低迷してます。
そりゃ連載では絵に以前のような手間をかけられなくなったのでしょう、レベルダウンは顕著になってましたが、最新短編集「ハピネス」(小学館刊)など、子供向けなのかと思ってしまう浅い内容も目立ちます。これは一般受け、つまりは売り上げを意識しての狙いなのかもしれませんが…。

それでもまだ買い続けてるのは、やはり今回紹介した「Palepoli」や、これまた大名作の「Garden」イーストプレス刊。これも早く紹介しましょう)なんかの作者であるからで、いつかまたやってくれるという期待があるからです。
東京都出身だし、作風を見てもハングリー精神の無さそうな古屋先生ですが、まさかこれでいいのだとは思ってないでしょう。
私は次回作、また次回作と、期待して買い続けるのです。


  1. 2006/08/10(木) 22:14:24|
  2. 月刊漫画ガロ
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劇画(11) 池上遼一 4 平井和正 4 「スパイダーマン」 4

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今回で劇画「スパイダーマン」の紹介も最後です。
早速続きに行きますが・・・

第十話「狂魔」は、何とこれで"くるま"と読み、自動車公害等の車社会へ向けた鉄槌を含めたエンターテイメント作品。
この話で特筆すべきは、何と言っても一話目から出ていたヒロイン・白石ルミが死ぬ事でしょう。
チンピラ達に連れ込まれた車内にて"狂魔"に襲われ、そのくだらないチンピラ達共々世を去るのです。

ヒロインが最終回でもないのに普通に死ぬとは・・・いや、これがいいのでしょう。
ダラダラとヒロインが生き残ってるなんて、それではヒーローだって本当の怒りの復讐はできません。(そんなことないか)

第十一話「スパイダーマンの影」
ここでは大事故の後に血が足らず、死にかけている少年にユウが供血をして助ける所から始まります。
数の少ないAB型だったためにユウが助けてあげたのですね。

その助けられた少年・北野光夫は、スパイダーマンの異常な活力に満ちた血液のおかげでかあっさり回復し、ユウを兄貴と慕うようになる。
彼は両親がいない貧乏人で、冷たい世間を見返してやるために持ち前の男前を利用してスケコマシをしてる不良な奴でしたが…
『何と!』というよりは『やはり』でしょうか、光夫はスパイダーマンの能力を見につけてしまいました!

それを利用して今度はビル荒らしの泥棒で稼ぎ、張り込まれた警備員達に捕まりそうな時は異常に痛めつけて逃げる残酷さ。
一人の警備員は両の目玉がドロッと落ちてます!

ユウが捕まえようとしたら口八丁でごまかし、さらに今度はスパイダーマンのコスチュームをユウから盗み出し、両親を死に追いやった企業に手ひどい復讐を開始する。

ところで、光夫には姉がいるのです。
ユウが何故光夫に強気に出れなかったかと言えばその姉・雪子と恋に落ちそうだからで、ルミの次なる相手はこの人か…
そんな期待をしていたら、悪魔のような弟のせいで雪子はこのエピソードのうちに発狂してしまいます。

おいおい、超能力を手に入れた後もいい事無いし、なんて可哀想な主人公なんですか。
"スパイダー感覚"という、敵や危険を事前に察知する能力あるというのに、何か役に立ってないですし。

二人のスパイダーマンの戦いの最中、輸血の効力がきれ、スパイダー能力を使い果たした光夫が死んでこの話は終わりますが、ユウの方はくもにかまれた効力がきれる事はないのでしょうか?

第十二話「狂気の夏」では、アメリカのキ○ガイ兵士が銃を撃ちまくり、ハイジャックまでしますが、ユウは生身の体に撃たれまくり、その弾をはね返してます。
そこまで頑丈な体なのか…放射能被爆グモの力で、もっと精神も強くなれたらよかったのに。

その兵士も実は休暇中の最後の日で、明日にはベトナム戦線に追いやられるし、暴れたのは平和な日本が我慢できなかったからだと理由を付けられ、ユウの同情買って終わり。

第十三話「虎を飼う女」。最終話です。

芽が出かけていた新人歌手・尾関ミキが、グループサウンズをやってたモップスという三流グループのメンバー達に地方公演の旅館で乱暴され、あげく性病をうつされた。

モップス達は、移籍問題でもめていたミキに対して、ヤクザをかかえる芸能プロダクションの命令でやったのだそうで…
まずモップスのメンバー、続いてヤクザ、芸能プロの女社長と殺されていく。

どうやってかって??
虎の爪と牙に引き千切られてです。
それも現実の生身の虎より、もっともっとはるかに恐ろしい、見えない憎しみの虎によって。
乱暴されて以来ミキは、潜在意識で怨んでる相手を殺すための虎を出す、超能力者になってしまったのです。

ミキはヤクザに刺されて死にますが、『このまま死んだほうがいい!』と泣いて、助けようとしないユウ。
代わりに最後の怨念の虎を心から応援して叫ぶ。
『ちくしょう!
弱者はいつだって強者によって ふみにじられ しいたげられ 殺されるんだ いつの時代だって!
弱者の怨念が牙をもち 爪をもち 虎と化したところで なにがわるいんだ。
虎よ暴れろ! 非道な強者どもを咬み殺せ!
弱者をむさぼり食らって こえふとった強者に 血の支払いをせまれ。
殺して殺しまくれーっ』
と。

飛行機にまで行って復讐を果たした虎でしたが、ミキはほぼ死んでいるのに暴れて戻ってきた事から、このユウ自身の超能力で強大な力を与えた事に気付き、同時に
『すべての人間は 心に虎を飼っているのだった
そいつは人間の業そのものだったのだ』とも気付く。

この作品を締めくくる最後の最後のコマが、こっちを向いてる、口から血を垂らした虎の顔。そして…
『おれをみろ!
これが人間の真の素顔だ…
血まみれの凶獣 それはおまえ自身だ!』

こう言って終わりです。

--------
こんな文でどれだけ伝わったかは分かりませんが、平井和正先生の不遇の時代を表す叫びが満載の傑作でした。
どうも漫画史的には無視されてる所がありますが、アメコミが元だというのがマイナスになっているのでしょうかね。

もう一つ問題は、このスパイダーマンに戦う理由は無いという事でしょうか。
分かりやすい"悪の組織"みたいなのは登場しないし、むしろスパイダーマンである事を捨てれば悩みも解消されるのですから。

実際に中盤から後半の特に平井原作の回では、スパイダーマンコスチュームの必要性も存在感もほとんどありません。
いつも変身したがらないのですし、でも一度捨てたコスチュームをまた作ったり…

こういった行動を見ても、分かりにくいけど思春期特有の、あのウジウジ悩んで焦ってばかりいる感情をうまく表現できたという事ではないでしょうか。

※最後に、他にもすがやみつる先生他、数人の漫画家が「スパイダーマン」の漫画化を実現させている事を報告しておきます。
(これらは本当にどれも普通の子供向け漫画ですが)


  1. 2006/08/09(水) 23:11:39|
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劇画(10) 池上遼一 3 平井和正 3 「スパイダーマン」 3

Spider-Man5,6.jpg

昨夜の続きで、劇画「スパイダーマン」のエピソード紹介をザクザクと行きましょう。

まず第七話「強すぎた英雄」ではスパイダーマン氏、自分に激しくバッシングしてくる新聞を、街中のビルにくもの巣でぶら下がり、わざわざ空中で読んでます。
しかも座っている姿勢で。
この数コマだけでこの話は合格!

もちろん、カンガルー男という悲しい敵との掛け合いも面白いのですよ。
ただ自分の不注意から危険人物を逃がして人々から非難されたからって、東京中の人々が死んでゆくのを想像し、そしてあざ笑う所はどうかと思います(笑)

第八話「疑惑の中のユウ」では、女の子に乱暴してる集団に出くわしたユウが、助けてやったのにその犯人扱いされます。
しかもその相手が剣道部キャプテンの秀才だから、誰もユウを信じるわけないと、自供させるように仕向けるのですが…
約100ページの作品の中で、一度もスパイダーマン衣装をまとわないシリアス作品なのですが、
(いや、自室のくもの巣ハンモックの上で悩んでる時には衣装着てますけど)
これが非現実的な悪役(ヴィラン)を出して読者を冷めさせる必要なんてまるで感じさせない秀作。
こういうのこそが日本人の持ち味でもあるでしょう。

第九話「金色の目の魔女」もまた悲しく、そして暗いシリアス作品。
6巻を丸々使った長編です。
一人の新任美人教師・三輪真名児が赴任してきた事から、ユウの学園が猛獣集団の檻と化す話。
その魔女のような三輪先生の目を見た人間は本性むき出しの怪物のようになるのですが、実は狂わされる人間こそが魔女の目を鏡として己の邪悪な本性を反射させていただけだったというオチのラスト。
ここでも悪役が実は罪が無く、被害者が本当にそうなのかと問いかけるという、アメリカ的で単純な"善悪の二元論"では割り切れない傑作でした。

スーパーヒーローであるはずのユウは精神を操る三輪先生を恐れ、『まったく勝ちめはない』『学校へいく勇気がない』なんて言って完全に逃げてました。
いくらスタン・リーには認められなくても、ここがいいのです。ただ"理由もなくカッコいいし強い"なんていうくだらない主人公にしなかった所が素晴らしいのです。
あと小さい事ですが、何とユウのクラスメートとしてジョージ秋山先生のアシュラが、1コマだけ学生服着て!友情出演しています。

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今夜は時間がほとんど無く、急いで殴り書きみたいでしたが、この「スパイダーマン」紹介は次回で終わりです。


  1. 2006/08/07(月) 23:00:58|
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劇画(9) 池上遼一 2 平井和正 2 「スパイダーマン」 2

Spider-Man3,4.jpg

前回で本家のアメコミや映画版とは全く違うと言った、池上遼一先生の劇画版「スパイダーマン」のお話を追ってみましょう。

まず第一話「スパイダーマン誕生」
主人公の高校生・小森ユウは、運動神経が鈍い本の虫でした。
それが放射能制御装置の実験中に被爆グモに噛まれ、体に異変が起こります。

その異変とはー
信じられないような自分の腕力と跳躍力ー
手と足のふしぎな吸着力だ……
そのために自由自在にかべをはうことができるのだ!
まるでくも(スパイダー)のように。


それからユウは、くもについて分析研究し、くもの糸の元になるスパイダー液の合成に成功します。
さらにデザインも縫い物も自分でやり、衣装を完成させて・・・・
スパイダーマンの誕生です。

最初は何をするためにそんな事してるのかも定かでありませんが、電気人間エレクトロという、雷のような電光を発して金庫を襲う怪人が登場してから、そいつを倒すためにその超能力を使う決心をするのです。

ようやくそいつを倒したスパイダーマンでしたが、エレクトロの正体とは、ユウの最愛の友で北海道のペンフレンド・白石ルミの兄でした。
しかも不運な境遇のためやむを得ず強盗を働いていた事もわかり、自分の超能力が本当に素晴らしい物なのか、疑問に思って第一話が終了。

第二話「犬丸博士の変身」では、世にも悲しい勝利を味わいます。

第三話「おれの行く先はどこだ!?」も面白い。
実はこの話、後で出てくる話の続きの部分がありまして、つまりこのサンコミックス版の単行本は一部順番を入れ替えられていますが…まぁいいでしょう。

この話は、まず女体を想って悶々とするユウの描写から始まります。
その妄想の中では、海辺でルミを素っ裸にひんむいたりしてるのですが…何たるスーパーヒーローでしょう。
それから狂ったように、『おれを見ろ!おれは世界一強い男なのだ!』とか叫んでビルを渡るし、本家アメリカのマーベル・コミックスがこれを見たら怒るでしょう。
あちらのヒーローは、性欲など無くて当たり前のように描きますからね。

この話では同級生の半端じゃないワル・犬丸を中心に描かれますが、超能力を持ちながらも悩んでばかりのユウは、この犬丸のグループと近づくのです。
犬丸って、第二話のタイトルで分かるように同じ名前のキャラが出ますが、関係ありません。

マリファナでラリっている様を表現するために芸術的なページになる所があります。
月刊誌の連載なのに、3ページも使ってこういう描写をできるのはいいですね。

犬丸が対抗するヤクザ達に殺されかけ、それを助けに行くスパイダーマンは、
『はははは!おれはスパイダーマンだ!
おれは強い!おれはヒーローだ!おれは超人だ!
おれは神々の賞でし古代の英雄の再来だ!
おれは自由なんだ!』

・・・・この後も『いまのおれの顔は闘争のキラつくよろこびに酔ったわらいをうかべている!』とか続くのですが、こんな事を叫びながら飛んでる、最低だけどカッコイイ奴なんです。

結局その後、犬丸は死ぬのですが。

第四話「にせスパイダーマン」では、くもの巣張った上のリアルなくもが、顔だけユウに挿げ替えられて『ルミちゃ~ん!』と叫んでる見開きのページがかなり笑えます。
この話は、
『世間から賞賛されるヒーローなんて もうまっぴらだ!
善人ヒーローなんてくそくらえだ~っ』

と叫んで終わります。

第五話「冬の女」は、文学的、詩的とも言える名作でしょう。
あまりにも非力で、結局何もできなかったスパイダーマンの話でしたが、悲しさが尾を引きます。

第六話「ストレンジャース」
教訓的で、出来はもひとつですが、画力の凄さは際立ってます。

--------------
この「スパイダーマン」が本家と大きく違う点の一つは、この暗さでしょう。
原作の平井和正先生は仕事を干され、『恨みつらみが極点まで達し、沸騰していた時期』にやっと回してもらった仕事だったのだそうで、当然それは作品に反映されているのですね。意識して"青春彷徨"という行動原理を与えたのだそうですが、いくら本家のファンに怒られようと、傷つき悩み苦しむ青春物語としてはかなり成功しているでしょうね。


  1. 2006/08/06(日) 12:00:53|
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劇画(8) 池上遼一 1 平井和正 1 「スパイダーマン」 1

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今夜から、劇画版「スパイダーマン」について語りましょう。

この作品、有名小説家の平井和正先生が原作者として参加してるのですが、サンコミックス版で全8巻のうち、1,3,5巻においては全く関与していないという、ちょっとややこしい作品です。
画像を見てください。1巻の方には無い"ストーリー 平井和正"の表記が、2巻では載ってますね。

作画の池上遼一先生は、もう劇画の代名詞みたいな絵柄ですよね。
1944年生まれの福井県出身で、ひばり書房が貸本漫画屋だった時代から、初期のガロでもよく描いてました。
この時の画風を見ると、現在のようにメチャクチャ上手い絵を描く事で定評のある漫画家になるとは想像できませんが、とにかく今は写実的で力強い絵を描き、漫画家には珍しくデッサン力も凄い先生であります。

原作者付きの漫画を専門にやってる感がありますが、昔はオリジナル作品を描いてましたよ。

代表作の「Cryingフリーマン」(小池一夫原作)や「男組」(雁屋哲原作)等、ズバリ名作という作品も数あるのですが・・・
「スパイダーマン」、これも凄い!

1970年から、月刊の別冊少年マガジンにて、1年間掲載された作品です。
米国はマーベル・コミックスからの許諾を受けた、つまり正規版の「スパイダーマン」なんですよ。
しかしあんな国の、"正義の味方"みたいな代物が描かれているのなら、私が読むわけがない。そう、これは日本独特の、暗い"劇画"に仕上がっているのです。

私が幼稚園児くらいの時はTVの子供用特撮番組で、何と巨大ロボが出てくる「スパイダーマン」シリーズの再放送を観てた覚えもありますが、あれも舞台設定から登場人物や主題歌まで全部日本独自の世界で、キャラだけ借りてる物でしたね。

本家・米国版のスパイダーマンの誕生方法は、近年の映画も大ヒットしてるので、だいたいの方が知ってるでしょうか。
放射能制御装置の実験中に(おいおい、学生が!?一人で!?)、放射能に被爆したクモに噛まれて超人になるんですよね。
まったく・・・小学生が考えた設定かよ!!
おっと、少し怒りが湧いてきましたが、これは抑えてと。

『そんな安易に誕生するスパイダーマンなら、世界中にもっと増殖しないのか!』
なんてアメコミに突っ込んでもしょうがないですしね。

では、この池上劇画版はどうかと言いますと…

全く同じなんです。ガクッ。

本家とは全く別物になったこの「スパイダーマン」も、最初はなるべく忠実に作ろうとしたのでしょうか。
それにこれは、最初の方には平井和正先生が全く関わってないというのが原因でしょうね。
代わりに映画評論家の小野耕世が監修という形でやっていて、一応悲しみのヒーローとしては描かれてますけど。

その時は、まずエレクトロに始まり、リザードミステリオなどと、アメリカ版の悪役(ヴィラン)も登場しますよ。
もちろんコスチュームも米国版と同じになってしまいました。

やはり私が興味深く、そして面白いのは平井和正先生を原作者に迎えたエピソードで、全くスパイダーマン衣装が登場しない話もあるし、とにかくいつも悩んでいる登場人物達には、救いがない。
よく女性が暴漢に襲われるのですが、これを見た本家のマーベル・コミックス編集長だったスタン・リーは、『あれはスパイダーマンじゃない』と言ったとか。
もちろんアメコミの「スパイダーマン」なんかとは違って結構。むしろ歓迎なんです。

お馬鹿な理由で超人になった主人公が、現実にはありえない怪物を相手に、訳も無くタダで正義の力を振るうなんて・・・・
そんなもの日本の大人が読むには耐えられないんじゃないでしょうか。

実際には自国こそが力の強さだけを頼りに悪の限りをつくす怪物でしかないのに、「スパイダーマン」のように正義側を気取る米国の大衆が、こういう単純な勧善懲悪の話に熱狂してしまう理由は考える必要があるでしょう。

平井原作の「スパイダーマン」では実際に"正義の味方"を気取る事の矛盾を突いています。

次回からは、実際にどんな話が出てくるのかを紹介していきますね。


  1. 2006/08/05(土) 18:47:09|
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永井豪(4) 「ズバ蛮」

NAGAI-zubaban1-2.jpg

久々に永井豪先生の作品を紹介します。
これから、もっと永井作品を紹介していきたいと思うのです。

今回の作品は、戦国時代が舞台の「ズバ蛮」
これは、週刊少年サンデー(小学館刊)にて、1971年から連載されまして、私が持ってるサンコミックス版では全3巻。

冒頭から2メートルをこす長さの大太刀"戦国刀"を背中に背負って走る少年。
彼こそが主人公・ズバ蛮なのですが、初セリフが

『へっ!なにが武士らしくだ!ぐだぐだぬかすな!
生き方に理屈はいらねえ!
俺はおもしろく生きてやる!』


で、いきなり野武士が乗ってる馬の足を切り落としちゃいます。
しかも弁当をもらいたかっただけで。

とにかくこのズバ蛮、一人で百数十人の部隊を全滅させたりした凄いやつ。
『おれはうまれつき、ばけものみてえに力が強え!!
チビのころから、おとなまが恐れて近よらね~!!
親も知らねえ!!
物心ついた時にゃあ ひとりっきりで戦場を走りまわっていた!!』

のだそうです。

そんなズバ蛮が、神の意思でか一日で次々と仲間と出会います。
それがズバ蛮が赤ん坊の頃に拾って育てたのに別れていたチョンボ、あのフランスの英雄ジャンヌ・ダルク、バズーカ砲を持った中国の関張飛・隠匿、ライオンのシンゴを連れたアフリカ人・ゴロンゴ、他のギャグキャラニ人もそれぞれ世界各国から来てますよ。

そんな奴らの活躍、見たいですよね。うん。

対抗するはツノの生えた男達の集団"百鬼一族"で、それを率いるのは死臭丸なのですが、こいつは
『おれが襲った町は、死人しかのこらね~!!
生きてる人間が、ひとりもいね~!!
町に、死人のにおいがじゅうまんする!!
それで、人はおれを、死臭丸とよぶ!!』

などと言う、極悪非道の男。かっこいいですね~。
しかも、ビビッと顔を剥ぐと!・・・・織田信長でした!!

強いズバ蛮達も、一度百鬼一族に捕まり、角を植付けられた上で操られるなんてピンチもありますが、それも切り抜けて死臭丸=織田信長の首を刎ねる!

織田信長が死んだ! 天文二十年十月 十八歳の若さだった!

と、つまり歴史を変えたよ…
その後もさらにズバ蛮の力で日本の歴史をねじまげていきますが、これにはある意思が働いてました。

実はジャンヌが未来の人間で、歴史を変えられるかという賭けでズバ蛮をさらい、この時代に落としたと言います。

未来の人類はたくさんの星に移り住み、その姿は、ある星では縮小し、ある星では変形していった…
ズバ蛮はズバぬけた腕力とがんじょうな体を持つユリアス星人。
ジャンヌは小さくなって一緒に行動してましたが、その正体は巨大化したアトヌ星人だったのです。

関張飛・隠匿とゴロンゴはジャンヌがズバ蛮に付けたお守りアンドロイドで、破壊された体は機械じかけでしたよ。

チョンボが関張飛・隠匿のでかい口から体に入り込んでしまうシーンがあって、その時は人間の体内でしたが…
それは優しい私(BRUCE)、見なかった事にしてあげましょうね。

そうそう、ジャンヌの鎧はおっぱいの所がパカッと開いて、ビームが出ます。
石森章太郎先生なんかもこういうの大好きですが、何で女型キャラはおっぱいからビームなの!?
まぁこれも様式美って事でしょうか。

うーん、永井豪作品らしく、とんでもないラストの展開と、明らかなアドリブっぷりですよ。

ちゃんとハレンチシーン、というか女の子の裸を僕達に見せてくれるため、脱ぎ役の可愛い風魔忍者・雪丸ちゃんもいるし、この漫画はオススメです。

NAGAI-zubaban3.jpg
そして3巻の巻末には、かなり出来のいい怪奇短編「くずれる」が同時収録されています。

それでは今夜のラストは、未来に帰らず、自ら戦国時代に残って生きると決めたズバ蛮のセリフでお別れです。

それで いいんだ それで
遠い未来を生きてる親なんざ
赤ん坊を盗まれた親なんて関係ねえ
戦国は 戦国は
ズバ蛮の世界だあ~っ!



  1. 2006/08/04(金) 12:55:39|
  2. 永井豪
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月刊漫画ガロ(9) ねこぢる 1

GARO1998-2.jpg

1967年生まれの女性漫画家・ねこぢるを紹介しましょう。

山野一先生という、ガロでは(って言ったら随分小さい世界ですが)スターだった漫画家がいまして、私は個人的にもかなり愛着のある、その山野先生の嫁さんです。
山野先生について語ると、またこのブログ何回分も使わなくてはならないのでここでは省略しますが、そんな事もあって、早くからねこぢる作品の世界に触れる事ができたのは幸運でした。

ねこぢるは、肉体的にも精神的にも残酷な描写を多用してるのですが、あくまで無邪気に描ききります。
自身の姿を猫として描くエッセイ漫画においては、そのセンスの良さはますます光ってましたよ。
そうだ、いつも猫になってる本当の彼女の顔写真は、ガロの1992年6月号で企画された『特集ねこぢる』において見ることができます。

絵柄が可愛いので、いくらそこに殺人や狂人や差別が描かれていても"親に見られても大丈夫な漫画"です。どうせ『こんな物は読んじゃいけません』なんて言う親連中は、表面だけしか見てないわけですから。
子供達が、実は残酷で暴力なんかも丸出しのねこぢる漫画を読むという事は、馬鹿親達を出し抜いてるようで嬉しいではないですか。

作品には、子猫のにゃーこにゃっ太、工員でアル中の父猫、他の多くの動物達が言葉も話し、人間と同じ世界で生活してます。
(というより、猫等の姿はしてますが、人間です。)
そこに潜んでいるのが、学校教育の洗脳を受ける以前の子供特有の残酷さ、差別…
さらに、ねこぢる自身の夢を基にしたシュールな作品から、現実を淡々と描いた日記漫画まで、作品の幅もどんどん広がってました。

1990年のガロデビュー以降、数年で完全にその作風を確立するや、とてもガロ系とは思えない売れっぷりで、新進の漫画雑誌等から引っ張りとなり、また可愛い絵柄とキャラクターが受けてキャラクター商品も巷にあふれましたよね。
実際私も、ねこぢるが起用されてるという理由から聞いたことも無い雑誌を読んだし、グッズも手に入れたものでしたが、そんな人気絶頂の1998年5月・・・・
ねこぢるが・・・・自殺しました。

泣きました。
この当時、私が敬愛する女性漫画家といえば、このねこぢるの他にはすでに他界していた山田花子くらいだったのに、まさかねこぢるまで!

しかもTVのニュースでは、同じく一週間ちょっと前に自殺した人気ミュージシャン・hideの後追い自殺だと言う。そんなバカな。
どうも同じ方法で自殺したからだそうですが…
"hideの直後に同じ死に方=後追い"だって思う、その短絡的で思考停止状態のマスコミさん達には怒りを覚えました。

ねこぢるの死後しばらく経って、夫の山野一先生がねこぢるyとして漫画を発表しました。
それがラリって描いたような奇妙な話と、何とコンピューターを駆使した画風で、これもまた面白かったですよ。
アニメ化もされてますが、この残酷な世界をレンタルビデオででも借りて観た子供の反応を知りたい。

最後に私の自慢ですが、この文章で触れているように、若い時分にずっと追いかけていたねこぢるですので、もちろん全作品初版で持ってますよ。
もちろん、装丁を変えて再発などされた同じ本も買いました。初の単行本「ねこぢるうどん」の1巻は、初めの方の版だけ"1"の表記が無かったり、「ねこぢるだんご」は再発版の帯が違ったり、文庫版も各種出てるし…と、集めなくてはならないコレクターの精神を、笑いたくば笑ってください。

今回の画像に使ったのは、死の直前と言える時期ですね、イラストが表紙になったガロの1998年2月号です。
ねこぢる作品は、またそのうち個別に詳しく紹介する機会もあるでしょう。とにかく今夜はここまで。おやすみなさい。


  1. 2006/08/03(木) 23:53:26|
  2. 月刊漫画ガロ
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月刊漫画ガロ(8) 根本敬 1 「亀ノ頭のスープ」

NEMOTO-TAKASHI.jpg

今や特殊漫画大統領として孤高の地位にいる根本敬先生は、1958年東京都目黒区生まれ。

1981年に月刊漫画ガロでデビューした、特殊漫画家です。この肩書きだけで普通の漫画家でないのは分かりますね。
その絵は他の誰も真似できない(しない)ので、絵を見たら一発で分かりますし、見た事ある人も多いでしょう。下品、汚い、それは美徳です。死体、汚物、性器も真正面から描かれます。

それに漫画以外の活動も活発です。
活字、イラスト単体としての素晴らしい仕事も多いし、映像作品、廃盤音楽紹介、韓国やイイ顔オヤジや人々が目をそむける物のルポ…他にも説明が面倒な活動が多岐に渡ってますよ。

勝新太郎奥崎謙三赤尾敏内田裕也・・・それに街で見かけた頭がイっちゃった人々まで、有名無名のアウトサイダー達を愛し、ルポしたり、作品の題材にしたりもしてます。
頭にいろんな声が流れ込んでくるキチ○イの、電波系を追った後は一般にまでその存在と言葉を広めましたね。ゴミ屋敷とその住人も昔から取り上げてましたが、後にTVで何度も放映されるようになりました。
その他、湯浅学船橋英雄の両名と共に繰り広げる、"幻の名盤解放同盟"での活動も要注目です。

彼のセンスや活動について知るには、むしろ情報量も多い活字本であるかもしれませんが、特に半生については、名著「因果鉄道の旅」に詳しいですね。もう一冊、活字本で名作なのは「人生解毒波止場」
本当にいい本なので、せめてこの二冊は読んで根本先生の哲学に触れてみましょう!!

-------------------
それでは、そろそろ漫画作品も紹介します。

「生きる」「天然」は有名な方でしょうか。
両方とも全2冊もあるのが、根本敬作品としては珍しいですね。これまた両方とも、のちに合体されてますけどね。

私が初めて買った単行本は初期作品集の「豚小屋発犬小屋行き」なのですが、まだ十代の時にこれを読んだのは、やはり自分の人生でプラスになったと思います。いや、社会一般の目から見たらマイナスの影響を受けたのでしょうが。
だって若い、多感な時にこんな作品を読んだら、親の金で大学にでも入って一応学生らしい生活を送りながら遊んで、そのままサラリーマンらしい生活をキッチリと送る…
そんな一般的な意味合いできちんとした人物の生き方に疑問を持ってしまうでしょう。それほどの力がありますよ。

「怪人無礼講ララバイ」には、巨大化して意思を持った精子(!!)が主人公である傑作「タケオの世界」が収録されてます。
そんなとんでもない設定のこの作品が、何でこんなに泣けてくるのだろう…それはご自身で確かめてみてくださいね。

他にも「キャバレー妄想スター」「黒寿司」「心機一転 土工!」est…
いい作品が次々出てきます。
読者を遥か後ろに置いて行く、アヴァンギャルドすぎる作品も多いので、トリップして楽しむも、怒りが沸いて破り捨てるも貴方次第です。

そんな感じの根本敬作品群ですが、今回一つ少しだけピックアップして説明するのは、「亀ノ頭のスープ」(マガジンハウス刊)。これに決めました。

内容は凄くポップだし(あくまで根本先生にしてはですよ)、先生の特徴が凝縮されて詰まっているので、初心者の方にもオススメなのです。
何とSF作品!である、「ミクロの精子圏」という長編は重要でして、大河精子ロマン第2弾です。

チビ、ハゲ、近眼、どもり、愚鈍、真性包茎…そして異常なほどの不運にとりつかれた男・村田藤吉が、妄想科学者で演歌歌手の吉田佐吉によって鍛えられ(その訓練の様は、とてもここでは書けませんよ)、ミクロのレベルにまで小さくなって息子のホルモン(精子)へと旅立ちます。
目的はDNAを操作して、この不運に改善処置を施す事です。
・・・・で、この先どうなるかは、面倒なので省略します。

ただ実は、この村田と吉田というのは根本漫画の定番キャラでして、必ずいつも"虐められー虐め"の関係を持って頻繁に登場するのですが…
この漫画のラストには、珍しく救いがあるんですね~。
ついに村田が勝っちゃう(?)なんて、他の根本作品も読んでる方からしたら驚きですよ!
だって他では、弱者としての業を生まれ持った人間はやはり弱者であり、努力しても無駄!
と言う、この世の真理・不条理な現実を描いてたのですから。

他に数編の短編が収録されてますが、名作なのはカラーで12ページの「21世紀の精子ん異常者」
イイ顔の親父連続殺人事件ってのがあるのですが、ここで言う"イイ顔"とは、根本敬作品を読む上では絶対に欠かせないキーワードです。
もちろん"カッコイイ顔"なんかじゃ無いですよ!むしろ、ジャニーズよりは蛭子能収。宮崎アニメより水木しげる漫画。サラリーマンより土方のオヤジ。そんな顔を想像してくださいね。
ちなみに幼少時から水木しげるファンであった事を公言していますが、水木先生からも根本作品を指して『あれは凄いっ!!凄いと同時にグロテスクだね。ああいうもんがよく描けるもんだと感心してるんですよ。』(ガロ1991年9月号-水木しげる特集号より)との言葉が出てました。

時間も無くなったので、「21世紀の精子ん異常者」のラスト。
電気椅子の上でイイ顔の親父が言うセリフを引用して、今夜はお別れです。


地球以外どこの星 どこの宇宙にも生物なんかいない。だから円盤もない。
超能力なんて人間にはない。霊魂もないから霊界もない。
ネッシーもいない。雪男もツチノコもいない。
キリストも仏陀も架空の人間で初めからいない。どんな神様もいない。



  1. 2006/08/02(水) 23:04:03|
  2. 月刊漫画ガロ
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楳図かずお(1)

yamino-ALBUM.jpg

こんばんは。
今夜は楳図かずお先生について語りましょう。

この個性的な絵柄を見た事の無い方は少ないと思いますが、私自身も真剣に愛し著作を集めているし、もちろん漫画界としても超重要人物である楳図先生。
1936年生まれに和歌山県で生まれ、奈良県で育った・・・・つまり関西人なんですよ。20代で上京して、作品にも当時住んでた東京の高田馬場とかの土地が良く出てましたが。現在も東京は吉祥寺に住んでおり、私も見かけた事があります。ずっと集めてる作品の作者ですからね、我がアイドルを見た!って感じで興奮しました…

小学4年生で『手塚治虫「新宝島」を読んで漫画家になることを決めた』という当時の漫画好き少年達と全く同じ道からスタートしているものの、例えばトキワ荘の先生達とは全く違う道に進んでますね。その時代に「魔法のつぼ」という初の作品を藁半紙綴じて描き上げたそうです。
中学二年の時に描き上げた作品を手塚先生に送ったら、それで手塚先生も凄い天才がいると騒いで石森先生や藤子先生らに原稿を見せたらしいですらから、その早熟具合も想像出来ます。

デビュー作の「森の兄妹」も中学時代に描いた作品(出版は高校生時代)で、内容はこれが可愛らしい絵柄の少女漫画でしたし、他にも幅広いジャンルを手がけてはいます。
時代背景もあり初期は貸本漫画界で活躍して人気もあったようですが、やはり自ら"恐怖マンガ"という言葉を作り、そのジャンルの第一人者になったからこそ、手塚先生とは違う意味での漫画の神様になったのでしょう。
何しろ少女漫画誌に"恐怖マンガ"を載せまくった功績は大きいのではないでしょうか。
「ねこ目の少女」「へび少女」「ママがこわい」「赤んぼう少女」・・・
もうこの頃には個性的な、一見してすぐ楳図先生と分かる絵柄を確立してますね。

さらに時は経ち、週刊少年サンデー(小学館刊)誌上に数々の名作を発表します。

映画のパクリなネタも多いのに、それがまさに楳図世界になってて、主人公の美少女も含めて私が大好きな「おろち」

爺が若返って暴れまわるドタバタ劇ギャグの「アゲイン」

その「アゲイン」に孫として出ていたキャラ・沢田まことを主人公にした長編ギャグ漫画「まことちゃん」。グワシ!

人類絶滅後の地球にタイムスリップした小学生達のサバイバルを描いた、あの涙の大傑作「漂流教室」

そして・・・・
1982年には、サンデーと同じく小学館ですが、発表の場を青年向け雑誌のビッグコミックスピリッツに移し、「わたしは真悟」を発表。
これが、小学生のさとるとまりんを中心に描いた前半はとてつもなく面白くて、もしかして楳図先生終生の最高傑作か…と思いきや、難解な方向に走りテンションも落ちてしまったのは残念でした。それでも大好きな作品ですけどね。

1995年に連載終了していますが今の所は最新作である人類の終末モノSF「14歳」も、無駄に引き伸ばして長編にしたために駄作として終わった感があります。
この「14歳」の終了以降は漫画を休筆してて、現在もタレント活動をしてますね。

他にも、ちょうど今年映画化された妖怪漫画「猫目小僧」とか、あの「ウルトラマン」を漫画化したのも良かったし、これまた傑作「洗礼」「神の左手悪魔の右手」・・・
あと、短編にも名作がかなり多いのです。

さらにさらに!
音楽活動もしておられます。バンド活動については「まことちゃん」読者ならご存知でしょうが、それ以前の1975年にリリースされていた、楳図先生唯一のソロ・アルバム「闇のアルバム」を、今回の画像に使わせてもらいました。

これからは思い出した頃に少しずつ、楳図先生の名作漫画を詳しく紹介していきますからね!!
それでは、今夜はこれでサバラ!


  1. 2006/08/01(火) 19:34:53|
  2. 楳図かずお
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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