大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

トキワ荘(7) 石森章太郎 2 「章太郎のファンタジーワールド ジュン」

石森章太郎先生が得意としたジャンルの一つにヒーローSF漫画があり、それが一般的には一番知られているでしょうが、全く違う位置にあるもう一つの代表作「章太郎のファンタジーワールド ジュン」を紹介しましょう。
ISHIMORI-fantasy-world-jun.jpg

これは作者自身も言っていた通り"萬画"による"詩"であり、ペンで出来る表現の挑戦が成功した、前衛的な作品であり、そのもの悲しさと美しさから、胸キュンが抑えられないファンタジックな連作です。
そう、連作でなのですが、しかしそれぞれが独立しているので短編集と見てもいいかもしれません。

その質の高さは、手塚治虫先生が目指したものの到達できなかったレベルであり、石森先生の才能に対する嫉妬から批判し、ショックを受けた石森先生はCOM(虫プロ商事刊)での連載を降板し、二人が一時期絶縁状態になったという事実は有名ですね。
(その後手塚先生の方から詫びを入れて収まったそうですが…。)

基本的にストーリーは無くて、それどころかセリフもナレーションもめったに無い中をイメージで展開していくのです。
1960年代後半くらいからでしょうか、もう"漫画"が一般市民への浸透も果たして商売になるものだと知らしめた後、さらにまだ表現の可能性を追い求め、実験的で邪道な作品を次々発表していた時代があったのです。
そんな中で真っ先に、新人よりも熱心に違う表現を模索していたのが石森先生なんですね。
そしてその象徴的な作品が「ジュン」の連作なんです。

例えば戦後の漫画史に革命を起こした手塚治虫先生の「新宝島」等の初期作品だって、ある時代の人達は口を揃えてぶっ飛んだとか語りますが、今の漫画読者には何の衝撃も無いじゃないですか。
それはそうです。後に漫画を描く人達はそれから約60年、こぞってその手塚手法をパクり、さらに発展させてきたのですから。

でもこの石森章太郎先生の「ジュン」は約40年前の作品というのに、今読んでもそのテクニックやデザイン力、もちろんストーリーも革新的で、驚かされるのです。
それだけ誰も追従しようと思わなかった世界なのかもしれませんが。
何しろセリフはほとんど無いし、説明も無いし、コマ割りから展開から、斬新だらけ…

単行本は何種類か出ているのですが、1975年に朝日ソノラマより発行された、大きいB5判の本がお薦めです(画像参照)。
現在でも文庫サイズでは現行されていて、当然容易に入手できるのですが、しかしこの本は画集としても楽しめるので、是非大きいサイズで観て、読んでもらいたいのですよ。
いや、石森章太郎先生も文庫版「ジュン」を、昔に読んだヴェルレーヌボードレール島崎藤村中原中也…そんな文庫本の詩集のように読んでもらいたくて、この"小さな詩集"の発行を許可したのだから、もちろん文庫サイズでもちゃんと楽しめるのですけど。

そんなわけで「章太郎のファンタジーワールド ジュン」
ISHIMORI-jun.jpg
(こちらは小学館文庫版)

ストーリーだけをここで紹介しても意味がないので省きますが、主人公は女の子みたいにきゃしゃな少年・ジュン
彼は漫画家を目指してる事だけは作中で分かります、
いつも時に夢と現実の違いを知ったり、理解してくれない親に対して嘆き、苦しみ、悲しんでます。
涙が似合うジュンなのです。

良く出る女性キャラもいますが、彼女はその時々で幼児だったり成人女性だったりする不思議な存在で、いつもジュンを見守り、声もかけてくれます。
彼女のコートもとても可愛い。

漫画での実験方法もその回によって違って、あのルネ・マグリットへのオマージュ回があったり、コミカルな回なんかもあります。
文章だけで説明するのが難しい作品ですが、石森章太郎自身の言葉を読んだら分かりやすいかもしれません。いわく、
『ストーリーらしいストーリーもなく、絵とコマの流れからのイマジネーションだけで"読んで"いただくしかけの作品、それが「ジュン」』
だそうです。

既に書いた、手塚治虫先生とのトラブルでCOMの連載中止した「ジュン」でしたが、後にリリカ(サンリオ刊)で「魔法世界のジュン」として再びジュンが登場してます。
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しかし、これは続編ではなく別作品で、実験色は薄いストーリー漫画です。セリフも普通にありますが、これもまたいい作品なのでいつか紹介するとして…今夜はこれでお別れです。


 むかし
 ジュンという
 少年がいた



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  1. 2007/02/25(日) 23:22:14|
  2. トキワ荘
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山谷へ

sanya.jpg

私ことBRUCE、先週末に友人と二人で山谷へ行きました!

山谷ですよ山谷。
東京のある所にある寄せ場、つまりドヤ街ですね。私は多分少年時代に読んだ、川崎のぼる先生あたりの得意とする日雇い労働者達を描いた漫画なんかで存在を知ったのかな。
だんだん私の中でその山谷の存在が輝きだしたのは、やはりフォークの神様・岡林信康氏の歌う「山谷ブルース」を聴いてからですね。滋賀県生まれの岡林氏も、上京して実際に山谷で生活し、這い上がってきた方で…
というイメージを持ってましたが、実際には一週間程度しか住んでいなかったのだとか。ガックリ(そんな事聞きたくなかった)。いや、それでも「山谷ブルース」が悲哀に満ちた名曲だというのは何も変わりません。

♪今日の仕事はつらかった
あとは焼酎をあおるだけ
どうせどうせ山谷のドヤ住まい
他にやることありゃしねえ♪


"いい顔オヤジ"ファンでもある私が、しかも東京に住んでいて何故か行ってなかった場所が山谷。
大阪や台湾の似たような所は既に訪ねているのですが、山谷だけは川崎のぼる先生の漫画だ、岡林信康氏の歌だと、勝手に『素敵なアウトロー』的なイメージを大事にしている私だから、実際はただの無気力な乞食の集落であろう現実を見たくなかったからかもしれません。

おっと、まだ触れていませんでしたが、山谷に対する輝かしいイメージというのは、一般的にも、もちろん私にも「あしたのジョー」で決定付けられたのではないでしょうか。
この名作漫画ブルースでも長々と紹介した「あしたのジョー」では、泪橋の下に丹下拳闘クラブを設立した丹下段平矢吹丈(ジョー)に言う、

『人生にやぶれ生活につかれはてて このドヤ街に流れてきた人間たちが
なみだでわたる 悲しい橋だからよ
三年ほどまえのわしもそうだった おめえもそのひとりだったはずだ・・・・
だが こんどはわしとおまえとで この橋を逆にわたり あしたの栄光をめざして第一歩をふみだしたいと思う
ふたりで苦しみ ふたりで歯をくいしばって このなみだ橋を逆にわたっていこう』


この名セリフが印象深いですよね。
作画を担当したちばてつや先生は、実際に熱心な山谷取材をしたようですし。

ついに私も、憧れの泪橋を渡れるのか…
…いや、本当は泪橋ってのは名前だけ残っているものの、今や橋自体は存在しない事は知ってます。
しかも私が生まれるずっと前に住居表示制度によって"山谷"という地名すら消滅、現在は通称として残っているだけらしいですよ。

ただ、山谷地域の中心に泪橋交差点ってのが、確かに存在します!
ここで写真を参照して頂ければ良いはずだったのですが、現像できた写真を見たら、信号の隣にある"泪橋"の看板名は光で見えにくくなってますね(泣)
これまた見えにくいけど、後姿の私が来ているT-シャツは、もちろん「あしたのジョー」の物。
画像は"丹下拳闘クラブ"の文字が入ったシンプルなものですが、実はもう一枚のバックプリントにジョーと彼が戦ってきた男達(ウルフ金串、力石徹、金龍飛、カーロス・リベラ、ホセ・メンドーサ)がプリントされている物も持って行き、実際に写真も撮ったのですが…出来が良くなかったので、今回は使いませんでした。
やはりその場で確認できるデジカメが必要なんですかね。

泪橋交差点を後にした我々は公園に入ると、地面に寝そべってる親父をふんずけてしまいました。
あきらかにアル中のその親父は、片目が潰れているために海賊眼帯をしています。
そいつの風貌はは出っ歯で猫背の醜い奴で…
おっと、ここは妄想です。
ついつい「あしたのジョー」の世界に入り込んでしまいました!

でも実際にいたる所で寝てる人や、ブツブツ一人しゃべりの人はいるし、さびれた商店街の入口にあるビールの自販機は壊されたまま放置されてる。
そのすぐ近くが"山谷労働者福祉会館"なるキリスト教団の建物で、いい感じのオヤジ達がたむろしてました。ここで炊き出し(昔で言う配給)が出されるのでしょうかね。

あとは簡易宿泊施設だらけの印象。
素泊専門の個室ばかりで、とにかく料金が安くて私が見た感じでは平均の1泊料金は2200円くらいですね。
ここで長期生活すると考えても、私のアパートよりずっと安くすむではないですか!うん、安い!
「あしたのジョー」では"泊り百二十円"とかって看板が見えてましたから、それに比べたら随分値上がりしたものですけどね。
いや、40年近く前の漫画と比べてどうする。

こういう街ですから、決してホテル街として有名になる所では無いのでしょうが、従来の労働者に代わって、貧乏旅行している多くの外国人達が格安ホテルとして利用しているそうで、今回一緒に行った友人はその様子をNHKのドキュメンタリー番組で見て興味を持ったのだとか。
他に特筆すべきは、反天皇制の左寄り看板やチラシが幅を利かせていたくらいでしょうか。

道を挟んで向こう側には、高級ソープランド街といてしられる吉原がありまして、そこにも生まれて初めて足を踏み入れました。フリッツ・ラング監督による1927年の超名作映画「メトロポリス」でも登場する吉原(YOSHIWARA)です!
しかし天国と地獄というか…すぐそこで生活している労働者達は到底利用できないであろうこういう施設がすぐ近くにあるなんて、残酷なものです。風俗通りを抜けると、すぐに性病科と産婦人科の病院が見えてきたのは印象深いですね。

何というか、サラ金地獄から逃げてる人達や、他で生活できない人達が集まる山谷に、私のような上品でお洒落でカッコよくてモテモテで大金持ちの者(嘘です)が、観光(兼取材)に行くのは何だか罪悪感もありましたが…熱心な「あしたのジョー」ファンだと言う事で、ご理解頂きたい。
それでは今夜は、そんな山谷を舞台にスタートした名作「あしたのジョー」の冒頭文を引用してお別れにしましょう。


東京・・・
東洋の大都会といわれるマンモス都市東京
そのはなやかな東京のかたすみに
ある・・・・・・ほんのかたすみに
ふきすさぶ こがらしのためにできた
道ばたのほこりっぽいふきだまりのような
あるいは川の流れがよどんで岸のくぼみに群れあつまる色あせた流木やごみくずのような
そんな街があるのをみなさんはごぞんじだろうか?
この物語は そんな街の一角からはじまる・・・・

  1. 2007/02/18(日) 12:39:19|
  2. 古本 番外編
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劇画(20) 「劇画ブルース・リー」

GEKIGA-BRUCE-LEE.jpg

以前このブログのどこかでも、私がブルース・リー関連グッズを集めてて、ブルース・リーという名が付けばもうあらゆる物を買っている、と書いた事がありましたね。

そのブルース・リー関連グッズの中には、当然漫画作品もいくつかあります。
今回紹介するのはその中から、「劇画ブルース・リー」(ケイブンシャ刊)です。

1974年初版発行のこの本は、ケイブンシャのエコーコミックで、4人の漫画家がブルース・リー映画を劇画化するという、企画物なのです。
まずは4人の漫画家名と、劇画化された映画名のラインナップを並べてみましょう。

中城健先生が「ドラゴン怒りの鉄拳」
鳴島生先生が「ドラゴン危機一発」
北野英明先生が「燃えよドラゴン」
林ひさお先生が「ブルース・リー物語 死亡遊戯」

です。
あ・・・あれ?
ブルース・リー映画を知ってる方は、ブルース・リー自身が監督した唯一の作品である「ドラゴンへの道」が入って無い事に、いささか不満を感じるでしょうか。
私も「ドラゴンへの道」が大好きですが、何故この時外したのかは分かりません。

逆に「燃えよドラゴン」はブルース・リーの死後公開されたとはいえ完成していたのだからいいとしても、「死亡遊戯」なんかはいくら内容が漫画的だとはいえ、この時代にはまだ10数分の"塔のシーン"でだけしか本物のブルース・リーを観れなくて、後はそっくりさんや過去の作品をつなぎ合わせてでっちあげた作品だというのに、何故選ばれたのか不思議でしょう。
でもこの「死亡遊戯」は、タイトルだけこうですけど、完全にブルース・リーの伝記漫画として描かれていて、映画「死亡遊戯」など全く特別扱いされてません。

仮にこの企画が大ヒットでもしていたら。
主役の名前がブルース・ワンブルース・ツーブルース・スリーである「クローン人間 ブルース・リー 怒りのスリー・ドラゴン」だとか、「帰って来たドラゴン」「ドラゴンの逆襲」「荒野のドラゴン」「黒帯ドラゴン」「ドラゴンを消せ!」「怒れタイガー」
そんなブルース・リーが巻き起こしたカンフーブームに便乗し、ブルース・リー人気にあやかっただけの作品まで劇画化されたりして面白かったかもしれません。
主演俳優もブルース・リブルース・リィブルース・ライブルース・リャンドラゴン・リー…いろいろ出てきてましたね。

おっと、今回は「劇画ブルース・リー」の話をしなくてはなりませんので、個々の作品を読んでみましょうか。

トップに登場するのは中城健先生。
この中では確実にこの方が一番のビックネームですし、梶原一騎先生とのコンビでいくつも作品を描いているので、個人的にも大好きな漫画家です。
「キックの鬼」「紅の挑戦者」「四角いジャングル」梶原先生と組んで何度も何度も描いてだけでも珍しいのですが、さらにこの中城健先生は体もでかく、個人的にも怖い梶原先生と対等に付き合っていたという、数少ない漫画家でもありました。
しかし「カラテ地獄変」シリーズで、"狂気の時代"の梶原原作によるエログロ描写を毎日描かされて、ついに逃げ出す事になり、確か後に天理教に走ったのでしたか。あの中城健先生です。
そんな凄い方なのですが、今回の「ドラゴン怒りの鉄拳」に関しては、何とか忠実にストーリーを追うだけで精一杯という感じです。

次は鳴島生先生による「ドラゴン危機一発」ですね。
これで特筆すべきは、何とボスの息子をぶっ飛ばして後ろの壁が"人型"にくりぬかれて穴が開く失笑の名シーンまで映画と同じ!
さすがは横山光輝先生のアシスタント出身者。分かってます!

北野英明先生の「燃えよドラゴン」は、これもやっぱりストーリーを追って精一杯な感じです。
この北野先生は他の作品、例えば「カレルギー伯」などでは、地味ながらなかなかいい漫画を描いてるのですが、この絵はアクションには向かないでしょう。動きの描写が駄目なんですよ。

最後の林ひさお先生による「ブルース・リー物語 死亡遊戯」は、既に書いた通りブルース・リーの伝記漫画。
情報量が少なくなってしまう漫画で、しかも少ないページ数ですから無理も無いのですが、マニアには情報としての価値は無いし、似顔絵が下手で笑えるのがいい所でしょうか。
手塚治虫先生のアシスタント出身らしいのですが、私はこの方の他作品は未読です。

今回改めて「劇画ブルース・リー」を読んでみて、ブルース・リーのあの動きはもちろん、魅力的な表情、声、他のほとんどの要素を漫画では表現できないのだと確認するだけの結果になりました。
それでも、またいつか他の漫画化されたブルース・リーを紹介する機会がくるでしょう。


  1. 2007/02/14(水) 23:53:53|
  2. 劇画
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月刊漫画ガロ(29) 魚喃キリコ 1 「blue」

NANANAN-KIRIKO.jpg

今回は若いお洒落女子から絶大な人気を持つ魚喃キリコ先生の漫画を紹介しましょう。

1972年生まれの新潟県出身である魚喃キリコ先生は、まずペンネームが読めない人が多くて困るでしょうから今回は読み方も教えますが、"魚喃=なななん"と読みます。

さて。
普段は"男気"だ"男魂"だと語っている私が、このような漫画家を好きだとカミングアウトしちゃうのはどうかと思いますが…
いや、ガロでデビューしてるのが私にとってはポイント高いものの、デビュー当初の作品は本当に苦手だったのです。
わざと分かりにくくして気取った感じのするお話も、いかにもデザイン学校で勉強しました的でお洒落系狙いのイラストみたいな絵柄も駄目でした。

なのでガロで載ってた短編は読んでいたし、初の単行本「Water.」(青林堂刊)を買って再読してみた上で、やっぱり駄目だと諦めていたのですが…
初の長編作品「blue」(マガジンハウス刊)を妹が持っていたために、発売から一年以上も経ってから読み、何とも悔しいけれど泣かされそうになった過去がありまして、はい。

それで結局その後の「痛々しいラヴ」「ハルチン」「南瓜とマヨネーズ」「短編集」といった作品も読み、今は魚喃キリコ先生は"せつない漫画"を描く名人だと認識してます。
もちろん今でも苦手な青臭すぎる描写や、私には全く分からないシーンもありますが、それは読者ターゲットが若い女性だからと思えば納得できます。

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それでは今回は、既に書いたような次第で魚喃キリコ評価のきっかけになった「blue」を紹介しましょう。
1996年に雑誌コミック アレ!で10回に渡って連載された作品です。

女子校を舞台に、主人公・桐島カヤ子と同級生・遠藤雅美の二人が紡ぐ友情と、レズ的な感情を描いた作品…というと、すぐに映画化もされて有名な吉田秋生「櫻の園」を思い出すでしょうか。
まぁあれの90年代版ですかね。
同じくこの「blue」も後に映画化されて、高い評価を得ました。

この時の魚喃キリコ先生の絵柄は、描き込みの無い白っぽい絵で、人の顔なんかはモロに紡木たくの影響っぽいです。

作品で描かれる時期は高校三年生の1年間。
普通の高校生なりに進路の事で悩んでいた桐島は、ダブリのため一つだけ年上の、だけどはるかに大人っぽい同級生の遠藤と仲良くなります。
音楽や本に詳しい彼女の影響で自分の世界を広げていくのですが、若い憧れなどの心情描写がまず上手い。

セリフ一つでも女子高生のリアリティが出ているように感じますし、それは成功してるでしょう。
ただ、考えてみたら私は現役の学生時代はもちろん、今も本物の女子高生と話した事などなく(あ、妹は別にしてね)、本物に読ませたら『ちょっと美化しすぎ』とか言われるような気はしますけどね、そこは私がDT精神溢れるガイなので、リアルなんだと思うわけです。

あと明らかに舞台が新潟なので、同じく新潟出身の私には見覚えのある街の風景がいくつか見られるのも、少し嬉しい所でした。

ちょっと考えたのですが、この作品は細かいストーリーは紹介しない事にして…

とにかく最後に桐島は卒業後上京して専門学校へ進学して自分は絵の道に進む事に決め、遠藤は地元に残る…
つまりお別れです。
新潟と東京なんて近いものですが(※)、お互いが別の新しい生活を始めたら、もう高校時代と同じように仲良くなんてできない。
別れ際『ずっと忘れない』と誓い合う二人ですが、彼女達自身がそれは無理な事を知っています。
(※いや、作中はっきりと地名は出てないから、もしかしたら新潟をモデルにしただけで遠い所かもしれませんけどね)

最後に二人が海岸で語り合うシーンの良さなんて、きっと同世代の学生じゃ分からないでしょう。
大人になってこれを読むから胸キュンの名作だと思うのです。

遠藤はこう言います。
『あたし思ったんだ
あたしがなんかしてあげるには 親になんかしてあげるには結婚がいちばんだって
ありがちな答えだけど
でもダキョウしたわけじゃないんだよ?
それが夢なの
普通に生活していくことが 夢って思うようになったの』

と。
いくら大人っぽいキャラとはいえ、普通高校生でこういう事は分かりませんよね。

もう一度言いますが、ともかく『ずっと忘れない』と言って分かれた二人が、恐らくはやはり忘れて、別々の生活を歩むようになる…それを知ってるから泣ける。
つまり実は読者ターゲットは高校生(ガキ)ではなく、社会に出て何年も経った大人なんですよね。
つまり私が大手を振って読んでも大丈夫な作品のはず…


-----
いかんいかん、真の漢(おとこ)を目指して修行している私が、また切なくなって乙女チックに涙なんか浮かんできました。
ここでパソコン閉じて、「北斗の拳」でも読むとします。


  1. 2007/02/12(月) 23:54:36|
  2. 月刊漫画ガロ
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月刊漫画ガロ(28) 逆柱いみり 1 「象魚」

SAKABASHIRA-zogyo.jpg

パソコン直ったと思ったらまだまだ問題がありましたが、とにかく今回久々にアップして紹介するのは逆柱いみり先生。

1964年生まれの静岡県出身で、1991年にガロでデビューした当初は望月勝広名義で作品を発表してました。そのうちに使い始めた逆柱いみりというペンネームの由来は、"逆木の柱"と"いみり"(方言でひびという意味)からきてるそうですよ。
社会人になってから、つげ義春先生の「ねじ式」に感銘を受けて、突如漫画家を目指したそうなのですが、そういえば作品に共通する悪夢のような光景とシュールさは共通しますね。
盛り上がる所だとか、いやストーリーすらも何もない世界がほとんどですし。凄い描き込み量の背景に力を入れ、人物はオマケくらいの印象だったりもします。

誰もが短編だから成功した(長編にはなりえない)と思うであろう「ねじ式」の世界を、あえて単行本一冊の長編にしたかのような二作目の「馬馬虎虎」(青林堂刊)には驚きました。
この絵で表現された悪夢の旅行記を読んでる(観てる)と変な気分になってくるのですね。

その「馬馬虎虎」が独自の世界を確立しつつあり、企みも画期的だったのは分かるのですが、私が好きなのはその前の1994年に出た処女短編集「象魚」(青林堂刊)です。
今回の画像がそれですが、いい味出してますでしょう。逆柱先生の絵は"変なアジア"といった趣が溢れてます。この時はまだ絵は未熟だし、後年の作品と違ってストーリーや意味を付けようとしていた跡も見えるのですが、やっぱり脈絡無しの変すぎな世界のバランスがちょうどよくて気に入ってます。


「象魚」の作品を個々に見ていくと…

まずは雰囲気がシュールな方のつげ義春的な「骨」に始まります。

旅行記とか描いてた頃のリアルな方 のつげ義春的なのが「天気よかった日」

「金魚」という、"病院へ行くため早退"という正当な理由で自由を得た少年が、おかしな一つ目兎の仮面を付けてる奴について来られてデパートの屋上遊園地に行く話はノスタルジックな夢のよう。

「動物園」逆柱世界の動物園なので、グロテスクで変な生物ばかり。こんな所があったら行ってみたい。

表題作「象魚」は、少年時代の思い出にひたりながら象魚という象の様な魚の丼を食う話。

「血痰処理」も凄くて、異世界のようで汚い工場の風景を絵として描きたかったのでしょう。生理的に気持ち悪い…

「ごはん食べられない アバラ骨浮く」は、読者も変な風景をただただ追っていかされる、逆柱先生らしい作品。
他にもいくつかと、逆柱いみり先生には珍しい四コマ漫画も収録されてますよ。
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今回既に名前を出した単行本、「象魚」「馬馬虎虎」の後は、もう完全に自分の世界を確立して、思いついた風景を描きたいように描いてるだけですね。
それが支離滅裂でも面白いのですが、万人受けはしないのが分かるし(狙ってもいないでしょうけど)、ちょっと勿体無いな~。

私は他には「ケキャール社顛末記」「赤タイツの男」を買って読んだのですが、その後(間にもあったかも)の単行本は買ってません。
いや…作品がどうのじゃなくてお金が無い時期だったりして…
多分他も同じような世界だとは思いますが(それでいいし)、持ってる方はどんな感じなのか教えてくださいね。

良く出るキャラとして、一つ目のウサギ男、ウナギイヌ…じゃなくてネコカッパ(猫と河童を組み合わせた生物)ら、おかしい奴らが歩き、またはバイクや自転車で、気持ち悪くて恐ろしい風景の中を移動するだけの作品が、不思議にいいのです。
読んでみたらこの感覚は分かると思うので、味読の方は是非逆柱いみり作品にトライしてみてくださいね!


  1. 2007/02/10(土) 23:24:42|
  2. 月刊漫画ガロ
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プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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