大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(23) 水島新司 1 「ゴキブリ旋風」

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今夜紹介する水島新司先生といえば、それはそれはとても有名なわけですが、しかし、ほぼ全員が野球漫画の第一人者としての認識をしているでしょう。
もちろんそれで正しいのですが、ただ野球漫画以外にも名作があるのは事実。
野球大嫌いな私が書くこの"名作漫画ブルース"では、当然野球漫画ではない作品を紹介しましょう。

本当はこのように野球嫌いを公言する私が、あそこまで本気で野球を愛する水島先生の作品について語るのは気が引けるのですが…
まぁ"野球"は嫌いだけど"野球漫画"ならいっぱい持ってますしね、許してもらいましょう。

水島新司先生は、1939年生まれで新潟県出身。
えっ、1939年生まれって…そう。
もう凄いお歳で、今年(2007年)は漫画家生活50周年記念の年でもあります。
この歳で現在も週刊誌に連載しているのだから、まさに驚愕の事実でしょう。

1958年に「深夜の客」でデビューするのですが、これはサスペンス漫画だったそうです。
最初の大ヒットは、「男どアホウ甲子園」。タイトルからして最高ですよね。
「野球狂の詩」「ドカベン」「あぶさん」「一球さん」(これは「男どアホウ甲子園」の続編)あたりは誰でも知ってる作品ではないでしょうか。
やはり有名なのは野球漫画ばかりですが…

あれだけ人情味溢れるいい話が得意で、絵も上手いのだから野球漫画だけでは勿体無い。
野球漫画以外で一番ヒットしたのは原作に花登筐先生を迎えた「銭っ子」でしょうか。私も大好きな作品です。
スリ連合の戦いを描いた「いただきヤスベエ」も名作ですし、近年の将棋漫画「父ちゃんの王将」等、いくつかの候補から迷った末…
今回紹介する作品は「ゴキブリ旋風」に決めました。

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この「ゴキブリ旋風」
1970年に冒険王で描かれた作品なのですが、単行本が何とホラー漫画の量産で知られるひばり書房から出版されてるだけで異色!な全二巻です。
ひばり書房といえば、日野日出志先生、森由岐子先生、古賀新一先生、好美のぼる先生、白川まり奈先生、さがみゆき先生、杉戸光史先生…
他にもいっぱい思いつきますが、とにかく普通はあの黒い背表紙のホラー漫画しか思いつきませんよね。
さらに実は水島先生、他にもひばり書房から、これは野球漫画で「青春の牙」「エースの条件」が上梓されてますが、あまり知られてませんね。

今回紹介する「ゴキブリ旋風」は三話構成になっていて、最初の話は
★ゴキブリ・バナナの巻★
です。バナナの巻ったって意味が分からないでしょうが、主人公のゴキブリこと中西寅は、長屋でバナナの叩き売りをしている父親と暮らしている学生なのです。

ゴキブリというあだ名の原因は、汚いから…ではなく(それもあるかもしれませんが)、生命力が異常に強いから。
その氷河時代からいたとも言われる強い生物から名前をもらったゴキブリは、夜市で父親がやるバナナの叩き売りでサクラをやったり、暴れん坊だったりするので、風紀委員のカマキリこと座間俊二に狙われ、学園追放を画策されます。

ゴキブリと、下町の長屋で見世物小屋などをやったりしてる他の住人達との関係は素晴らしいのですが、とにかく正義面で敵対してくるカマキリの執拗で悪質な脅しと戦います。
見世物小屋に嫌がらせをするチンピラ達(カマキリの建築会社で雇われていた)と戦って父親が刺され、見世物小屋も崩壊して、ついに堪忍袋の緒が切れてゴキブリVSカマキリの一騎打ち。
これにゴキブリが勝利して、カマキリの顔に傷をつけてやりました!

『その顔の傷はワルをしようとする おまえをとどめさす らく印だ
そしてその傷の何十倍も大きい傷をつけられた人のいることを忘れるな』

そう言い残して去ったゴキブリは、またバナナの叩き売りをする日常に戻りました。

次は
★ゴキブリ・パンチの巻★
として、ボクシング編です。
ゴキブリの父親が事故にあい、昔ゴキブリの命を助けてくれた医院に担ぎ込むのですが、そこには看護婦の娘しかいない…
名医だった元ボクサーの医者は、かつて自分のチャンピオンへの夢を息子に託したのですが、その息子までチ○バの、どめ○ら(自主規制しましたが、意味わかりますよね?)にさせてしまい、今は酒に浸りながらあちこちのジムで嫌われながら、また夢を託せる若者を捜していたのです。

泥酔してる医者をゴキブリは何とか連れ帰り、酔いを醒ませて手術させると…メスを握ると震えは止まり成功しました!
その恩を返すために、ゴキブリが医者の夢をかなえる決意をするのです。
つまり、その異常に丈夫な体を使ってボクシングを始める。

チ○バでめ○らになったという医者の息子と盲導犬のジェットをコーチに特訓したゴキブリは、大恩のできた医者を馬鹿にしたボクシングジムが抱えるチャンピオンへ、決闘を受けさせる事に成功します。
自らの身体に鉄骨をぶち当てる特訓までしたゴキブリにとっては、いかにチャンピオンとはいえグローブのパンチなんて綿です。
いくら喰らっても倒れず、また常識外れの攻撃も相手に決まり、素人なのにチャンピオンと相打ち!
しかし…右指をそっくりやってしまい、プロ入りもしないまま"幻のチャンピオン"で終わってしまいました。

最後は
★ゴキブリ シュートの巻★
で、何とバレーボール編。
それも女子バレーのコーチをする話なのです。
絶対に諦めない持ち前の根性を伝え、見事女子バレー部は大会に優勝して終わり。

ここまで読むと皆、ゴキブリを大好きになるのです。

この三話で「ゴキブリ旋風」も終わりですが、単行本にはボクシング漫画「闘魂」も収録されています。
こちらは構成の面では「ゴキブリ旋風」よりも良く出来ていて、水島新司先生得意の浪花節が良く出た短編でした。
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ところで水島新司先生の出身地である新潟市、その古町通には、"水島新司漫画ストリート"というのがありまして、これは地元の誇りである水島先生功績を顕彰し、漫画の登場人物7人の銅像を並べた物です。
これは同じ新潟県出身である私も、完成後すぐに観に行ったのを思い出しました。

それでは今夜は「ゴキブリ旋風」より、ゴキブリの同級生・コガネ虫が、ゴキブリの生命力を見て驚いた時の言葉で締めくくりましょう。


ぼ……ぼくがみた ゴキブリといっしょだ
ふ ふみつぶして死んだとおもって近づくと
いきなりうごきだす あ…あれといっしょだ
あのくそ根性くそ生命力 まさしくゴキブリだ



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  1. 2007/03/29(木) 00:42:54|
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SF漫画 (7) 吾妻ひでお 1 「海から来た機械」

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今回は吾妻ひでお先生。

1950年に北海道で生まれた吾妻先生は、1969年に漫画家デビュー。
その後の作風から1980年代オタク文化の中心人物といったイメージがあるし、可愛いロリコン漫画を数多く描いている人です。
しかし、2005年の「失踪日記」出版と、それによる数々のでかい賞の受賞によって一般的にも人気者になりましたね。

約8年間、漫画界から離れていた時期があるのですが、その時に二度家族の下から失踪していてホームレスになっていたそうです。
それとアル中により強制入院させられ、治療した様を描いたのが「失踪日記」でした。

そんな奇行も目立つ吾妻先生は、丸っこくてエロ可愛いくてポップな絵のギャグ漫画家と認知されてるのでしょうが、シュールな不条理漫画でも傑作が多いです。
それに「やけくそ天使」「パラレル狂室」「不条理日記」といった代表作がSF漫画ですし、簡単にギャグ漫画家とは言えないのは確かでしょう。

週刊少年チャンピオン等のメジャー誌で活躍していたのに、突如自動販売機本のエロ本に作品を発表したり、ロリコン同人誌を描いてみたり…
その作品自体も実験的な漫画が多くてビックリしますよ。

詳しい経歴とかは私も勉強不足なので書けませんが、私があのポップすぎる絵(中には劇画みたいなのもありますが)を好きではないのと、昔初めて読んだ吾妻作品がちょうど創作意欲が無い時期(楽な印税暮らしをしてた)のダメな作品だったようで、本当に全く面白くなかった。

そんなわけであまりハマる事なくスルーしていた吾妻ひでお先生なのですが、何故今回これを描いてるかと言えば…
1982年に出版されたシュールな短編集「海から来た機械」(奇想天外社刊)。
これが大傑作だったからに他なりません。

これを読んだ理由も、当時大好きだった古屋兎丸先生が短編集「Garden」(イーストプレス刊)にて表題作をリメイクしていて、それが面白かったから後追いで買ったという、にわか吾妻読者な私です。

この数年前くらいからSF不条理ギャグ漫画を描き始めていたようですが、この「海から来た機械」は特に凄い。
おっと、先ほど書いた事のようなわけで全作品は読んでないから、『特に』とか言ったらマズいかな。他にもっと傑作があるのかもしれませんしね。

短編集「海から来た機械」は6部に分かれて、極短いのも含めて16編が収録されています。
エロティックな美少女物を得意とする吾妻先生の本領も発揮されていますね。
1978年~1982年までに描かれた作品を、ジャンルもバラバラに寄せ集めて収録しただけの単行本なので、当然それぞれのつながりはありません。
だから似たジャンルごとに分けて6部構成にしたのでしょうが、それでも統一感ゼロな感じが逆にいい。

ほとんどが可愛らしい絵柄で描かれたシュールなギャグ漫画の中で、やはり光るのは表題作「海から来た機械」
1981年に少女アリスで掲載されたこのたった8ページの作品は、純文学シリーズと銘打たれているだけあって、能天気な他の作品と違って少し暗いし、芸術性も意識してそうです。

ストーリーを見てみましょう。
一人の少女・史羽が海で貝を拾ってると変な機械が歩いてきたので、それを家に連れ帰りました。
そいつはラーメンに、続いてラジカセに変身します。
どうやら史羽が心で欲する物になるようです。
そして今度は人間の男女になり、性交を始める…
そんな事まで見透かされたら怖くなって機械を壊し、大好きな先生を思って泣きました。
まだ機械は壊れてなかったようで、次は何と史羽自身の姿になってナイフも出し、先生を襲いに行くのです。
そして先生にナイフを落とされ、押さえ込まれていい感じになるのですが、本物の史羽は自室のベッドで
『やめて……』と泣くだけ。
終わり。

ラストにいい余韻を残しているので、あの機械は何だったのかも、心理的な何かをあらわした現象であって本当は自分自身だとか、性に目覚める時期の思い込みからきた幻だとか…そんな説明をする人もいるかもしれませんね。

次は、古屋兎丸先生の手による「海から来た機械」のリメイク版を見てみましょう。
こちらは絵柄とキャラの頭身がリアルなのがまず違いますが、長さも12ページあって、もう少しだけ分かりやすくなってまいます。
こちらでは大好きな先生が『結婚する』という話を聞いて、機械があの最後の行動に出るようになってるのです。
あとラジカセに変身する所が、現代っぽくパソコンに変更されているし、セリフも微妙に違うのですが、重要なラストのセリフが『やめて……』ではなく、『私なんて 大きらい…』です。
でも基本的には完コピを目指したと思われる、吾妻ひでお先生へのオマージュ(敬意を表した)作品ですね。こちらも名作。

私(BRUCE)も吾妻ひでお先生の作品は、エロポップなのはまぁいいとして、純文学シリーズくらいは全部読みたいものです。
それでは今夜はここまで。おやすみなさい。


  1. 2007/03/27(火) 00:46:59|
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劇画(22) 能條純一 1 「翔丸」

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今回は能條純一先生。1951年生まれで東京都出身です。
この方は意外にも手塚治虫先生の作った漫画雑誌COMでのデビューを狙っていて、ここに作品を次々送り続けました。
いい評価はされていて、やっと入選…と思ったらCOMが休刊でオクラになるという、不幸な出だしだったようです。

代表作は何といっても1985年から始まった麻雀漫画の金字塔「哭きの竜」でしょうが、これ以降どの作品も、カッコいい男の美学や孤独を描き続けてます。
時代がかった様式美的な展開で表現される世界は美しく、また写真を絵にしたような独特なタッチの作風なので、絵柄を見てもらえば『見覚えがある』という方も多いでしょう。

デビュー当初はあそこまで特徴的ではない絵で、しかも一文字違いの農條純一というペンネームでエロ漫画を描いていたのですけどね。
どの作品も登場人物が分かりやすい性格をしてて、あまりにも個性が強い事も特徴の一つです。

「ゴッドハンド」(マス大山とは関係無し)、「Dr.汞」「無力の王」
それに小学館漫画賞も受賞した将棋漫画「月下の棋士」能條純一先生の美学も満載の名作であり、私も大好きなのですが、今回はそれ以前の「翔丸」を紹介しましょう。

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「翔丸」は、まだ月刊誌だった時代のコミックモーニング(現在の週刊モーニングですね)で掲載された作品で、単行本は全三巻(講談社刊)。

驚異的に頭が良いがおとなしくて良い子だった竹田翔丸が、14歳の時…
学校でボコボコに殴られて顔を腫らして帰宅し、その夜自分の部屋でカッターを使って己の頬を切り付けた!

この行為が生まれ変わるための儀式。目覚めです。
これからの翔丸は、カッターで人を切りつけるようになります。
そこまでは普通の話なのですが、その切られた人間が何故か必ず翔丸に服従し、子分になるのです。
そうして翔丸に傾倒する、カッター傷のある仲間達の名は…翔丸組

その第一号が、学校で翔丸を殴ってた張本人の渡辺清。彼はこの後も翔丸組親衛隊長として重要な位置を占めますよ。
渡辺の決めセリフは『翔丸組はヤワじゃねえ』で、それと翔丸が言う『翔丸組に入るんだ』のセリフは、いい所で頻繁に使われているので、どうしても耳に残る事になります。
現実世界での私(BRUCE)も、カッターの刃をジコジコジコと出して使う度に、いつの間にか『翔丸組に入るんだ』のセリフを口ずさんでいるのです。

作中、全編を通して翔丸に関わった人が彼を語るのナレーションが入り、翔丸自身の語録も入るのですが、それが
『"ようするに ぼくにとって すべてが ゲームなんですよ
人を支配すること
女を愛すること…… もちろん 金をもうけること"
二十代における彼の語録である』

といった感じです。

翔丸が進学した高校は曙高校。
ここには関東最大の暴力団組長の息子・佐伯明男が生徒として在籍し、君臨しています。
問題はこの佐伯の登場シーンですが、生徒なのに校長室らしき所で立派な椅子に座り、その前で教師が正座して翔丸についての報告をしている。
そして…机の下には女教師がいて、フェ○の奉仕をしています!!
佐伯明男!何て羨まし…いや、悪い奴なんだ!

しかし翔丸は佐伯明男、そしてついには彼の家、佐伯組五千人をも翔丸組に入れてしまうのです!!
高校生にして関東最大の暴力団を支配する、器の大きすぎる天才翔丸。
そのやり方もスケールがでかく、つねに相手の予想をはるかに超える発想で戦争(これゲームなり)します。
数台のヘリから部下がマシンガン持って現れたり、日本の警察署長や米軍の幹部をも動かして戦車を調達し、公道を遮断させたりもしますから!

『翔丸組に入るんだ』

もちろんこれだけで終わる器ではない翔丸の、次のターゲットはさらに大物。
正に日本国を動かす財政界の黒幕・神堂一
彼がまたとんでもなくビックな奴なのですが、翔丸と力の見せ合いで激しく戦い…ついに翔丸が勝った。

ありとあらゆる職業や年齢の者達が翔丸組に入るわけですが、彼らは全員『異例の出世をする』とナレーションが入ります。
それから日本の要職に付いてる人間はほとんど顔にカッター傷がある…つまり翔丸組だという事になります。
ただ、その前編通して入るナレーションの主が語っている、時間軸が結局最後までハッキリしないんです。
この作品「翔丸」自体、翔丸が日本の、いや世界の黒幕的な存在になった後の回想なのかと思いきや、ラストでまだ学生服姿の彼が一瞬出てきて、ぶらっと新宿を歩き、ゲームセンターに入って物語が終わります。
意外と能條純一先生は何も考えてないのかもしれませんが、単行本のカバーにある作者の言葉で
『カッターを持った天才は、一般的な時間を越えた地平に立って、物語を見おろしているのです』
とありました。
うーん…何だそりゃ(笑)

いろんな謎がありましたが、何も説明されないんです。ただ
『翔丸組に入るんだ』
『翔丸組はヤワじゃねえ!』
のセリフだけが耳に残る。

これも作者の言葉ですが、
『神に最も近い"悪としての存在"それが翔丸なのです。』
という事でした。
文句無しに能條節が全開の「翔丸」、お薦めです。


生きること……ゲーム
死ぬこと……またゲーム
人生すなわち これゲーム



  1. 2007/03/25(日) 03:20:27|
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月刊漫画ガロ(31) 本秀康 1 「たのしい人生」

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今夜紹介する本秀康先生は、1969年生まれで京都府出身。
今月中野でやってたサイン会でご本人を見てきたのもあり、もちろん大好きな漫画家なので早く登場させたかった。

彼がガロに出てきた時、私はすぐにそのセンスの虜になりました。
けっこうコンスタンスに短編を発表していたので、いつかちゃんと単行本にまとめて欲しいと強く願ったものです。
というのも当時のガロでは、いい短編作品を発表しても数作で消えていき、当然単行本にもならない漫画家が多くいたのです。
しかしその心配は稀有に終わり、今や何冊も出版されてますね。
それなりに売れてるようだし、良かった~。

私も買ってた(今でも特集によって買ってる)音楽雑誌レコード・コレクターズ「レコスケくん」を描き出し、本秀康先生の作品をメジャー誌でも目にするようになった時は本当に嬉しかった。
自身もコレクターという事で、「レコスケくん」はマニア心を良く分かったいい作品ですしね。

イラストレーターでもある本秀康先生の"いい"絵は、小さく描いた絵を拡大コピーして作っているので、線が不明瞭でギザギザ。
フリークスみたいなキャラクターも個性的で可愛いのに、内容は大抵が残酷でブラックすぎるギャグ漫画。そんなバランスも見事です。

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さてさて。
今夜一冊だけお薦めするならば、やはり本秀康先生がデビュー後随分経ってから出版した、初の単行本「たのしい人生」(青林工藝社刊)にします。

うん、1996年~1997年頃のガロで毎回楽しみにし、読んでは感激していた傑作が並んでいて嬉しい!
これは自薦短編集でして、当然選にもれた作品もあるため『あれが入ってないのか~』と思ったりもしますが。
他にもアックスクイック・ジャパン等で描かれた作品を収録してますが、やはり特ににガロ掲載作品はレベルが高いように思えます。

この「たのしい人生」収録の短編群の中でも、特に「ヒコの旅立ち」「岡田幸介と50人の息子たち」は、まともに"感動"を意識した作品で、漫画史上でもそう滅多には出てこない"名作"として殿堂入り指定したい。

他のもおバカなオチが付いて最高なのですが、読んで笑い、ビックリして欲しいので、個々のお話を紹介するのは止めておきます。
これは自信を持って誰にでもお薦めできますよ。本当にもっとたくさんの方々に読んでもらいたい!
何故これがベストセラーにならないのかと不思議に思ってしまうのですが…やはり"ガロ出身"というレッテルが、一般読者をつかむ邪魔になるのかもしれませんね(笑)


  1. 2007/03/23(金) 22:06:55|
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劇画(21) 大山倍達 1 沖一 1 「強くなる東洋食のすすめ」

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たまには異色の劇画紹介で、今夜は…
「強くなる東洋食のすすめ」(講談社刊)です。

単行本で全一巻の今作は何と、原作者として偉大なる大山倍達総裁がクレジットされております。
大山倍達原作漫画は他にも少しありますが、これは料理漫画という事でますます異色でしょう。料理漫画なんて、この名作漫画ブルースでも初めてですね!

実は私が子供時代に、ある意味では一番親しんでた漫画が料理漫画だったりします。理由は父親が大の料理漫画好きなために、大人買いされた大量の漫画が家にあったから。
逆に言うと自分がお年玉貰うまで待たなくても、いつでも心配なく新作が読めるのは料理漫画だけでした。

「美味しんぼ」「味いちもんめ」「道連れ弁当」「クッキングパパ」「ザ・シェフ」「将太の寿司 」「スーパーくいしん坊」 「ミスター味っ子」 「鉄火の巻平 」「包丁無宿」「セイシュンの食卓」…等々。
実家に大量にあった料理漫画は、娯楽に乏しかった子供の時分の話でもあるので何度も読んだし、次々思い出せます。
上記の料理漫画からは特に「スーパーくいしん坊」牛次郎先生&ビック錠先生との出会いが重要で、「包丁人味平」「一本包丁満太郎」(こちらはビック錠先生の単独作品)は自分で買いました。

料理漫画についてなんて語りだしたらまた別の話で長くなってしまうので、話を「強くなる東洋食のすすめ」に戻しましょう。
実はこれも父親の蔵書から拝借してきた本なのですが…
もちろん大山倍達原作であり、ジャケにも本人がデーンと出てる素敵本ですからね。
作画は沖一なる方。画力は稚拙で個性もそれほど無いのですが、何とこの方、作中に弟子入りしたハジメ君として登場し、大山総裁と絡みまくってるのだから羨ましすぎる!!

おっと、私が勝手にありがたがっているこの大山倍達(通称・マス大山)という人物。もしかしたらまだご存じ無い方もいるかもしれませんので、簡単に説明しましょう。
本当は梶原一騎先生原作の漫画「空手バカ一代」を読んでもらえば一番いいのですけどね。
そう、この面白すぎる「空手バカ一代」という漫画の実在する主人公が、空手家の大山倍達国際空手道連盟総裁・極真会館創始者。他にも大山総裁を主人公、あるいはモデルにした漫画はたくさんあるのですが、まず「空手バカ一代」でしょう。

素手で猛牛を何十頭も殺し、熊やゴリラ(!)とも戦っている大山総裁は、世界中を旅してそれぞれの国の格闘技と戦ってきていますが、当然人間ごときが相手では全勝(中国拳法の爺さんに一度"負けた"と言ってますが、あれはお情け要素あり)。
10円玉を三本の指だけで折り曲げ、ビール瓶を手刀で切り、アメリカでゴッドハンドと称えられ、プロレス王の力道山さえ彼との戦いを避けて逃げ回った…
すぐに『あんなの嘘だ』とか言い出す方もいるかもしれませんが、人の夢は壊さないでね!!

国際空手道連盟極真会館を設立し、世界各国に道場を建てて空手を広めました。この極真空手からは多くの名選手を輩出し、もちろん現在の格闘技界に大きな影響を与えています。
さらに作家としても多くの名著を出していますね。有名なのは「世界ケンカ旅行」「地上最強への道 大山カラテもし戦わば」「マス大山の正拳一撃」あたりで、もちろん私も何度も読み、"超人追求の夢"に胸を躍らせたものです。

あと、ずっと隠していた事に、在日朝鮮人だったという事実があります。
「空手バカ一代」の時代には少年読者は誰も知らなかったのですが、今では誰でも知ってますか。戦後日本国籍を再取得したのですが、あちらの籍は抜かずに二重国籍者となったのだそうで、朝鮮名は崔永宜(チェ・ヨンウィ)と言うのだとか。
三代目山口組の時代に京阪神殺しの軍団を率いた"殺しの柳川"こと柳川次郎氏と五分の兄弟分で、裏社会にも顔がきいたようですね。実録漫画「男の星座」によると、そのつてで梶原一騎先生の命を救ってます。
(梶原一騎先生と大山倍達総裁の愛憎入り乱れた関係を語りだすと、とんでもなく長くなります。よってここでは省略)

とにかく偉大なる大山総裁も、1994年4月に肺癌で永眠されました。

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他にも大山総裁に関するいいエピソードはたくさんありますが、ここまでにしておいてと。
いい加減に「強くなる東洋食のすすめ」紹介に移ります。

いわく『強さの秘訣は"食"に在り!!』との事で、いろいろ教えてくれます。
これは最強の男の言葉だからこそ、信頼できますね。
栄養士や有名料理人が言ったって私のような者からしたらどうでもいいのに、山総裁が言っているというだけで真似しちゃいますよ。
もう栄養学とか、そんなつまらない事で間違った意見があったとしても、それであの超人・大山総裁が出来上がったという生きた証拠があるのですから信頼に足りるし、役に立つ一冊に仕上がってるのです。

抹茶好きの大山総裁は、『ビタミンの補給ができるうえに口の中がさっぱりして爽やかな気分になれる』という、このおいしい抹茶を『日常生活から遠ざけた茶道の罪は小さくないと思うね……』などと言って茶道を切り、別の章ではニンニクを大量に使う韓国料理を大絶賛。
野菜に付いてる"色"の説明もためになりました。

他にも自分達の食べる物を外国に頼っている日本の「食」の現状を憂いたり、ゴルフのような右から左へのかたよった筋肉が付くスポーツを批判したり、科学的に操作された食品を切り、天然の味、素朴な食材の魅力なんかを語ってくれます。

特に全編を通して印象に残るのは、"精が付く"食材や料理の紹介。
クルミを食べては『クルミはいいぞ……なんといっても精力がつくらしい』と言い、『東洋的木の実がいいと 私は思ってるよ なにせ……精がつくからな!!』とも言います。
さらにレバ刺しを食べては『私はね このレバ刺しが大好きなんだよ……なにせ 精がつくからね』と言い、『生育成長させた生命的要素を食べるという意味で…… 内臓肉などどんどん食べるべきだぞ しかもなるべく「ナマ」に近いほうがいい そのほうがより精がつくと教えられた……』とも。
骨肉料理の話では、血漿やゼラチン質がいいと言います。そしてその説明として『血漿とは要するに血の成分だ スッポンやマムシの血を好む人も多いが これはもっと食べやすいし…… 精力がつく!!』などと、今度はでかい樹氷を肘で叩き折りながら教えてくれました!

「ヌルヌルはパワーの源」の章では、ヤマイモ、サトイモ、ウナギ、ドジョウ、コイ、カキ、オクラ、ナメコといったヌルヌルネバネバする食材について語り…
『しかし あのヌルヌル ネバネバの感覚…… 何かに似てないか?』
と問いかけ、ページをめくると…

『人間の精液だよ…… まさにヌルヌル ネバネバは 精力のそのものなのだ!』

と答えるのです!
絵柄も頑張って描いた風な劇画タッチになっていますよ!
なんじゃそりゃ-、と思わせておいて、ちゃんとその後
『精液は冗談だがヌルヌル ネバネバには ムチンという物質があり それが精力をつけてくれるんだ』
とオチも付けています。

あとはですね、この本には真ん中あたりに四ページのカラー写真を使った漫画(カラーフォトコミック)があって、まず『私は強い!』と叫ぶ大山総裁自身の写真で始まります。
それから漫画で紹介していた食べ物を実際に食してる写真と、貴重な家族(女房と娘二人)との写真も数点ありますよ!
『これが私の家族だ 女房も娘たちも どうだ 美人だろ!』
と仰るのですが、実際は…いや、私からは何も言えません。

大山倍達総裁。「食」ついての教え、ありがとうございました。押忍!!

私がずっと健康を保ち 空手家として強健な肉体を維持してこられたのも……
他の何をさしおいても「食」を第一に考えてきたからだと思う



  1. 2007/03/21(水) 09:12:13|
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トキワ荘(10) つのだじろう 3 「その他くん」 2

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こんばんは。
つのだじろう先生の作品紹介の続きは、「その他くん」の二回目になりますね。
今回は単行本の3,4巻分。終わりまで読んでしまいます。

前回出会った元マンガ家の絵師・上神四駒(ガミガミ先生)から無理矢理、勝手に厳しい指導を受けるその他くんこと君輪園太は、とにかく四コマ漫画を描けと命令されます。
南条ひかるちゃんを始めとして、出会った流行を追うマンガ家志望のグループ達は『そんなの古い』と言われ、野球漫画とかSF,長編を描きたがり、四コマ漫画に偏見を持って見下してますが…
勉強期間中にやる四コマ漫画がいかに大事かをガミガミ先生に教え込まれ、さらに一日一漫(一日に一つ四コマ漫画を描く)約束をさせられました。

その他くんはその気になって、
『一日一漫 一日一漫か!!
よっしゃやってやるぞ~っ!!一日一漫っ!!』

なんて叫びながら走っていると…
警官に止められ、
『こらあそこの子どもっ いかんじゃないかっ!! 子どものくせにっ!!
そんなワイセツなことを大声でどなってあるくと逮捕するぞっ!!』
などと言われました。
さらにこうです。
『おまえはたしかにいった!!
オチンチンとか・・・・マン・・・・とかなんとか』

…小粋なギャグですね(笑)

そんな中、講談社主催のマンガまつりというのがある事を知り、それに間に合うようにその他くんやひかるちゃん達の若手グループで原稿を集めて、肉筆回覧誌を作る事を決めます。
何故ならその「マンガまつり」には、赤塚不二夫先生、ちばてつや先生、つのだじろう先生、手塚治虫先生、水島新司先生、矢口高雄先生…
そんな凄すぎるメンバーが出演するので、そこで漫画を読んでもらおうというわけです。

その中から矢口先生を強引に捕まえ、肉筆回覧誌を読んでもらう事に成功しました。
ここで描かれる矢口先生は、つのだ先生の注意書きで『「釣りキチ三平」に出てくる美青年の作者はインチキ 実際はこのていど!』と、本当に変な顔で描かれてるのだから笑ってしまいます。

『プロになるつもりなら批評なんかうけても クソの役にもたたないかもいれないよ!
マンガ家ってのはしょせん自分一人で勉強するもんだからね!
ひとの批評をあてにしたり たよったりしているようじゃ・・・・だめだ!』

という前置きの後で、ついに読んでもらった結果を言われるのですが…
みんな続きものを描いてるので案の批評は出来ないし、うまぶってるだけできたない絵を批判されたりもしますが、何と四コマを書いたその他くんだけが『いちおう合格』とされました!

しかしその結果仲間割れしてグループは早くも解散しました。
でもひかるちゃんだけ偶然会った漫画編集者にスカウトされ、とんとん拍子にデビューが決まりそうです。
焦るその他くんでしたが、しかしたまたま歩いてたガミガミ先生(いつもこんな風に偶然会うのです!)によって"木と根っこ"のいい話を聞かされ、表面だけでなくもっと勉強を積み重ねる事を決意します。

その他くんは大胆にも藤子不二雄先生の所に話を聞きに行き、一流の先生達は漫画の練習の他にも映画、落語、SF小説…それぞれの得意ジャンルを激しく極めている事を知ります。
その帰り道に偶然出会った男、天満十三によって"ペンだこ党梁山泊"へと導かれます。
この"ペンだこ党梁山泊"は、あきらかにトキワ荘の連中と、もちろんつのだ先生も含めて結成していた"新漫画党"がモデルですね。

"ペンだこ党梁山泊"の基地は…ただのボロアパートの四畳半。
そこに既にいた四人は各地からマンガ家目指して上京してきた者達で、そこへ半人前のその他くんが入ってちょうど四畳半、つまり4,5になるではないですか。
今度出会った彼らは本気の本気でマンガ家を目指している実力者達なので、トキワ荘の例のように良き友、そしてライバルになるでしょう。

そんなわけでついに家を出たその他くんは"ペンだこ党梁山泊"入りし、ユニークな彼らに大いに学ぶのです。
仕事の新聞配達にもさすがに慣れてドジは少なくなったし、マンガ家専用の道具も揃えました!

おっと、そこで高校へ進学した中学時代のクラスメートとバッタリ出会いました。
ガリ勉で有名な石島くんは、チンプンカンプンで世の中へ出たときなんの役にたつのか分からない数学を歩きながらも勉強してます。
三人でタバコ吸いながらカッコつけて歩いてる彼らは『こんどの土曜ナナハンぶっとばそうぜ!』とか言ってます。
さらにかつてのマンガ仲間だった一人は、三流誌で女のはだかや血だらけの漫画を描いてる人のアシスタントになったと自慢してますね。
う~ん…誰がどういい道に進んでいるのでしょうか。

暇があると問答で案を作る練習して頭を鍛えてる"ペンだこ党梁山泊"の連中といると、その他くんは何もかも勉強になります。
しかし、その彼らでさえ原稿を持ち込めば軽くあしらわれる事がほとんどな現実…
天満十三も悩みます。
『ええマンガええマンガいうたかて どんなんがええマンガかわからん!
人気があるいうことがええマンガなら ハダカも血だらけもええマンガや・・・・いうことになる
わいははよう一人前のマンガ家になりたいんや・・・・!
あんなこといわれても ハダカや血だらけかいても・・・・』
と。

それにしてもつのだ先生は、一貫して"ハダカや血だらけ"の漫画は認めてませんね。それらを扱っても凄い漫画はいっぱいあると思うのですが。
当時だと佐藤まさあき先生とかいたでしょうし、すぐに丸尾末広先生クラスのとんでもない人達も出てきますが…まぁトキワ荘出身の大御所達には認めてもらえないのでしょうね。

そうこうしているうちに、ついに同い年でかつての漫画仲間である南条ひかるちゃんが、新人なのにカラーページも貰ってデビューしてます!
しかしそれにもつのだ先生は、ある理由を"ペンだこ党梁山泊"連中の口から語らせてます。
少女雑誌の場合そのマンガ家自身の顔がかわいいとかスタイルがいいって事でデビューできちゃうとか、内容も愛だの恋だのレズだのホモだの恋愛ものしかのってないとか…
少女漫画を評して『かわい子ちゃんのスター合戦』とまで言わせてまとめてますから、厳しいです。

さて"ペンだこ党梁山泊"の五人でうさばらしの呑みに繰り出しました。
場所は"BAR たまき"で、ここは一流マンガ家達が集まるお店。
そこで初めてお酒を呑むその他くんが悪酔いしてからみ、さいとうたかを先生、石森章太郎先生を追い出し…
また出ました!
このマンガの作者・つのだじろう先生の登場です!!
本人がその他くんに説教して、その他くんもマンガの道を少しだけ知ったのでしょうか。
『いちばんたいせつなのは「愛」だと思うよ
作者が自分を愛し自分の作品を愛し・・・・そして読者を愛していれば
必然的にくだらん作品はかけないはずでね』

とか、いろいろ聞かされるのですが、酔いのため次の日は記憶が飛んでるその他くんでした。

ちなみにここ、"BAR たまき"のホステス達には、
『マンガ家の中で女性にモテる人っていえば やっぱりつのだ先生がいちばんじゃない?
あの人やさしいしロマンチストだし・・・・
なんていっても心がきれいだから・・・男なんて顔じゃないわ心だわ!』

なんて語らせてるのですから、さすがはつのだ先生ではないですか!!

もうこのマンガも大詰めです。
"ペンだこ党梁山泊"の五人は揃って少年マガジン新人まんが賞に応募する事に決めました。
先輩達は練りに練った自信作を描き始めますが、その他くんはどうするのか。
悩みながら歩いてると、偶然ガミガミ先生に出くわしました(またか!)。そして
『描き溜めた百八十枚の四コマの中から十六点だけ面白い作品をえらんで・・・・
一ページに二点ずつ 八ページの四コママンガにまとめるんだ!』

と指導されました。
まだ長いマンガを描くのは許されなかったわけですが、迷わずにそれを送れと言われます。

そしていよいよ結果発表。
佳作はその他くん以外の四人が揃って取ったのですが、一番いい章である入選は…
一番一太という、聞いた事のない名前の人でした。
それを知って、泣き叫びながら狂ったように飛び出していったその他くん。
みんなは警察まで呼んでその他くんが自殺したんじゃないかと心配したのですが、真相はこうです。
その他くんが泣いて飛び出した理由を自ら語ってくれました。

『君輪園太なんて名まえ まえからバカにされてきらいだったし・・・・
だいいちその他・・・・じゃ応募するにもえんぎがわるいと思ったから・・・・
せめて名まえだけでも景気つけて・・・・と一番一太にしたんだあ!』


ですって。良かったですね、可愛いその他くんが認められて。
とはいえまだスタートラインに立ったばかりのその他くん。
最後はこの後彼がどのようになるのか、考えられる三つのパターンをページも三段に割って進んで見せていきます。それも九ページに渡って。
天狗になって駄目になるパターン、ハダカマンガ描いて商売漫画家になるパターン、地道な努力で実力を認められるパターンとを描き、もちろんこの後の努力と目指す方向が大事だという教訓を含ませてますね。

それでは、これで私の「その他くん」紹介を終わります。いやー、本当にいいマンガでした。
また大好きなつのだじろう作品は順次紹介していきますので、お楽しみに!


きれいに晴れた 隅田川にカモメではなく ハトが舞っていきます
川岸を歩いていた その他くんがフ・・・・と顔をあげ こっちを見ました
ほらごらんなさい あんなに明るい顔で・・・・ 手をふっています!



  1. 2007/03/19(月) 23:38:18|
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トキワ荘(9) つのだじろう 2 「その他くん」 1

SONOTA-KUN1,2.jpg

こんばんは。
前回はつのだじろう先生その人を紹介してみたわけですが、次は作品ずつの紹介に移りましょう。
最初に紹介したいつのだ漫画は、「その他くん」です。

これは漫画家を目指す少年のお話で、つのだ「まんが道」(つまり漫画家漫画)なのですが、これは悩める青春の物語であり、決して漫画家を目指す人だけに向けてるわけではありません。
この手の漫画ではもちろん藤子不二雄先生の「まんが道」が名実共に金字塔なわけですが、他にもこのブログで既に紹介した梶原一騎原作&川崎のぼる作画の「男の条件」福満しげゆき先生の「僕の小規模な失敗」がありますし、他にも吉田忠先生の「藤子不二雄物語 ハムサラダくん」等、いくつかの名作が存在します。
立場が違うものの、やはり"漫画家漫画"として見るならば石森章太郎先生の「マンガ家入門」島本和彦先生の「燃えよペン」…なんかも入るでしょうか。

私は若き日にこの「その他くん」という漫画と出会えた時、ヴィンテージ漫画好きで良かったと感動したものです。
ずっと絶版となっているので、現行されてる漫画しか読まない方では読めないわけですからね。
単行本は講談社のマガジンコミックス(KC)で全4巻です。

この漫画の見所の一つに、実在の漫画家が多く登場してくる所があるのですが(つのだじろう先生ご本人もつのだじろう役で登場します!)、まず冒頭から手塚治虫先生、ちばてつや先生、赤塚不二夫先生、石森章太郎先生…
その写真と代表作が出てきますからね。
そして、それに憧れる主人公の少年の登場です。
その名も君輪園太
中学生の彼は学校で落ちこぼれですので、その読み方そのままに意味を変えて、 きみはその他くん などと呼ばれてます。

その他くんの家は深川にあるたいやき屋・「君輪」で、子供の成績の悪さに両親は心配ばかり。
読者から見ても『知恵遅れなのか?』と心配してしまうほどドジで、勉強もスポーツも本当に駄目…それでいて漫画家を目指すのに絵も下手なその他くんが抱える"将来の不安"と、それに対する向き合い方を描く青春漫画の傑作が「その他くん」

作中に何度かつのだじろうマンガ専科として、作者の言葉、アドバイスが入ります。
先に見出しの言葉だけ挙げてしまうと、
その1・・・・目標は大きく持とう!!
その2・・・・マンガ家は実力の世界
その3・・・・マンガ家志望の学生諸君へ
その4・・・・マンガ家はもうかるか?
その5・・・・自分のマンガをプロに批評してもらうには…
その6・・・・マンガは何歳から勉強すればいいか
その7~13・・・・マンガの歴史①~⑦
その14・・・・案のトレーニング法
その15・・・・努力は自分との戦い
その16・・・・絵のトレーニング法
その17・・・・資料をつかって描こう
その18・・・・アイディアノートを持とう
といった感じで続くのです。
もちろんそれぞれに具体的な例や説明があっていい感じですし、漫画家を目指すなら読んでおくべきでしょう。。

『世の中って学校で成績が優秀だった人だけがえらくなってるんだろうか?
ぼくにはどうしてもそうは思えないんだけど・・・・』


ドジなその他くんながらも、そう素朴な疑問を持つ学生時代。
漫画家になる宣言をしたその他くんは、何とあっさり作品を次々に描き、その自信作を持って三階に藤子不二雄、四階につのだじろうがいるスタジオ・ゼロのビルに乗り込もうとしますが…
自分より遥かに絵が上手いお兄さんが、つのだプロで『アシスタントにもなれない』と断られて帰ってきた所にでくわし、持ち込みは断念。
あのビルまでの距離の遠さを認識しました。

自分の駄目さなんかとっくに知ってるけど、でも親に説教されると、親が正しいのなんか承知の上で"寝たふり"や"死んだふり"をしてしまうその他くん。
分かる…分かるぞその他くん!
彼は一人っきりでこうつぶやきます。
『おきてちゃんときいてると・・・・なんだか
ふみつぶされそうな気がしてくるんだ!
虫とおんなじなのかもな・・・・おれ・・・・
ほらちっちゃな虫やよわい虫をつっついていじめてると・・・・
手足ちぢめて死んだふりするだろう!?
・・・・あれとおんなじなんだ・・・・きっと
かわいそうだよなあ・・・・ああいう虫・・・・!!
それしきゃ自分をまもる方法がないんだもんなあ!』

と。
そしてかわいそうだなどと言いながら、それがまさに自分の事だと認識している。
これは泣くしかないでしょう。これは私も同じようなものだからでしょうか。

誰が何をしようと時は経ちます。
中学を卒業したら漫画家になる、なんていうその他くんには当然父親の猛反対が待ってます。
しかし意外な所で、学校の先生が『彼の才能のあるなしは専門家に見てもらおう』とアドバイスしてくれました。
という事は当然、才能があると言われたら漫画家になる事を認めるけど、無いと言われたらキッパリ諦めて父親の言うとおりにするという条件になりますね。

その他くんも神頼みまでして、本当に一流の漫画家に批評してもらえる様にねがいます。
『もしかして・・・・水島新司か赤塚不二夫・・・・そんな有名な人は無理かなあ・・・・!?
チンポコやオッパイまるだしの・・・・ポルノマンガなんかかいてる三流の先生だったら・・・・おれやだなあ!』

と願いますが、さて誰がその他くんの漫画を見てくれるのでしょう。

それは…
手塚治虫先生でした!つまり一流も一流、というより最高峰であり、神様。
こんな幸運に恵まれたその他くんでしたが、何しろそりゃ肝心の実力の方がありません。
当然評価は『子供のラクガキていど』となります。
それでも諦めきれないその他くんを見て、ついに両親は強硬手段に出ます。
チリ紙交換屋を呼んで勝手にその他くんのコレクションを引き取らせたのです!!

そこでその他くん、大事な大事な漫画コレクションを親に捨てられた事を知って、生まれて初めて親に向かって声を荒げその怒りをあらわに反発するのですが…ここは私も泣けてきてしょうがないのです。
実は私も、同じように大事な漫画本やファミコンソフト、その他宝物だった物を全て親の横暴によって(私が悪い事をしたとかの理由があったのでしょうが)、目の前で火の中にくべられた事があってですね…
ああ…思い出すだけで胸が痛く、悔しい。
その他くんも泣きながら言ってますよ。
『自分がたいせつにしている宝ものを・・・・
いくら親だってかってに処分する権利なんてないよなっ!!ぜったい・・・・ぜったいっ!』
と。

結局手塚先生の「ジャングル大帝」(学童社刊)、馬場のぼる「まんが太閤記」つのだじろう「ルミちゃん教室」藤子不二雄「海の王子」石森章太郎「竜神沼」
全てがもう手に入らないまぼろしの名作なのに親の尺度だけで捨てられたのですから、その他くんならずとも私も怒り心頭です。

この後その他くんは泣きながら自殺場所を求めてさまよったりする(でも自殺すら出来ない自分にまた落ち込む)、その姿に私はまたも涙が流れてくるのですが、それはさておき。
その他くんは一度家に帰ってこっそり布団を持ち出し、家出して石森章太郎先生の自宅に押しかけました!
しかも押し売り的なアシスタント希望を断られると、石森先生宅のプールに飛び込んで『死んでやる』と抗議…
いくらなんでも迷惑すぎの醜態をさらしてしまいました。

当然助けられましたが、それから石森プロの仕事場を見学させてもらいます。
漫画家の大変な生活を説明する編集者は、
『つのだじろうの最高記録は三日間 つまり七十二時間のあいだに三十分しかねずに仕事をつづけた例がある!』
と言ってるのですが…このセリフを書いてるのはつのだ先生自身ですからね、この自慢精神がいいですね。

それから迎えに来た父親と、無理やり連れて行かれるその他くんとの、帰り道の問答も泣けます。
とにかく家に帰り、さすがに諦めた父親はその他くんに高校に行かせるつもりだった分三年の猶予と、大切な本を売ってしまったお詫びにスケッチブックをプレゼントします。

マンガ家らしく見せなきゃってので貰ったスケッチブックに写生なんかしてるその他くんは、質屋から出てきた怖い顔の男の似顔絵を描いてみました。
すると…
実はそのモデルになってしまった不幸な男は本物の強盗で、その他くんの似顔絵が基で逮捕されたのです!

それが話題になり、その他くんはテレビ番組に出演する事になるのですが、その番組の共演者は藤子不二雄先生、赤塚不二夫先生、つのだじろう先生!
まさに漫画のような展開と言うべきですが、ここでその他くんは偉大な先達たちに貴重な漫画の話を聞きます。

その中につのだ先生が随所で言う事に、『絵の基本であるデッサンや写生をやれ』と言うのがあります。
そう言われているわりにつのだ先生自身はあれですが…
ほとんどアシスタントに描かせてたりするし…
この漫画「その他くん」において、セリフの中も含めたらかなりの回数、自分自身もつのだじろう役として出演するのですが、悩む自分のキャラクターと、その漫画の中で話すなんて、いいですね。

ともかく貴重な体験をしたその他くんでしたが、肝心のテレビ番組本番は緊張のあまりおしっこを漏らしてしまう大失敗で幕を閉じました。

さて、絵の基礎を勉強しなきゃと思い立ったその他くんは、以前スタジオ・ゼロの前で会ったお兄さんによって、同い年で漫画家志望の南条ひかるちゃんという女の子を紹介されます。
この子が可愛くて、まぁこの漫画ではヒロインの役どころでしょう。
でも連れてってもらったクロッキー教室ではヌードモデルを見て興奮して騒ぎ、ついに始めたアルバイトの新聞配達でも失敗ばかり。

そんな中で偶然にも出会った怖いおじさんが上神四駒。通称ガミガミ先生という絵師で、彼がこれからのその他くんに影響を与えてくるわけですが…
そろそろ二巻も終わりなので、今夜はここまで。

しかしその他くんが可愛い。
いつも漫画的にオーバーアクションなのですが、何かを決意する時に取るポーズ(一巻のジャケ画参照)とか、可愛いです。
そう、オカルト漫画で大ヒットしたつのだじろう先生ですが、実は絵が可愛いのですよ!


  1. 2007/03/13(火) 23:57:42|
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トキワ荘(8) つのだじろう 1

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今夜はつのだじろう先生。この方も漫画界において重要人物です。
本名はそのままなのですが、漢字で角田次朗と書くのです。イメージの違いに驚きますよね。

1936年の東京都生まれで、高校在学中に漫画家の島田啓三先生を訪ねて…というより"押しかけ弟子"になって漫画修行を積みます。
ちなみにこの島田先生というのは、「冒険ダン吉」を描いた児童漫画の生みの親とも言える存在の方です。

そして1955年、漫画少年に「新桃太郎」という3ページ漫画を載せ、本名の角田次朗での名義デビューとなりました。
この短い作品も、師匠の島田先生から投稿の許可を得るまでに何と半年も描き直しさせられたという伝説があるくらいですが、そのエピソードは、藤子不二雄先生の「まんが道」を読まれた方もご存知でしょう。

それから、以前このブログでも説明した新漫画党に入党し、トキワ荘の連中と関わる事になるのですね。

1958年にUFOを目撃し、オカルト研究を開始するのですが、この年には初のヒット作「ルミちゃん教室」が生まれています。これはりぼんに掲載された少女漫画ですよ。

代表作がある漫画家というのは、いつまでもそのイメージで語られる事が多いのですが、このつのだじろう先生はその代表でしょう。
先に挙げた少女漫画から児童漫画、幅広いジャンルの少年漫画、青年漫画も手がけてるというのに、共に1973年から描きだした「うしろの百太郎」「恐怖新聞」の大ヒットによって、今や誰に聞いても"オカルト漫画家"と言われますからね。
オカルト漫画なんて、デビューから20年近く経ってから手がけているのですし、それだけで語られるにはあまりに惜しいのです。

例を挙げれば、可愛いギャグ漫画「ブラック団」、将棋漫画の「5五の龍」、競馬漫画「おれの太陽」、他にも時代漫画からスポーツ漫画まで、本当にいろいろあります。
名作「泣くな!十円」は、『俺って駄目だな~』と思う全ての少年達に読んでもらいたい青春モノの傑作ですよ。

それに1963年から石森章太郎先生、藤子不二雄先生らが作った事で知られるアニメ製作会社スタジオ・ゼロのメンバーでもありましたね。
(これは1971年に解散してます。)

もっとも、つのだ先生自身が心霊研究の話ばかりして、そういった漫画ばかり描いてる時期が長いのだから、ご本人としても"オカルト漫画家"の称号でいいのでしょうか。
オカルト系の漫画だと、既に挙げた「うしろの百太郎」「恐怖新聞」の他には、1976年の「メギドの火」が狂っててオススメです。
1980年代に入ってから始めた「新うしろの百太郎」…はともかく、1990年代になると「恐怖新聞II」「うしろの百太郎 平成版 」「恐怖新聞 平成版」といった、過去の栄光にすがった痛すぎる続編もありますよ。生活が苦しかったのですかね。

そして何より私のような梶原一騎ファンには、梶原先生と組んだ「虹をよぶ拳」「空手バカ一代」という空手漫画の名作は忘れられません。
それからそのために起きた事件も…

つのだ先生が「空手バカ一代」を描いていた際に、原作者の梶原先生、そして同じく漫画原作者で実弟の真樹日佐夫先生と対立し、「空手バカ一代」も降板してしまったのですね。
それから梶原先生抜きで大山倍達総裁と組んで「ゴッドハンド」を描きます。
当然激怒した梶原先生はつのだ先生を脅し、連載を止めさせたのですが…
つのだ先生は懲りずにあの恐怖の兄弟に逆らい、1978年にはビッグコミックで連載していた「魔子」の作中において、
『カラワジ・イキツ・キマト・ワヒオサ・ハノクキョウ・ミツオ・レシモオイ…呪われよ!』
という呪文を使ってしまい、怒った梶原兄弟に監禁された上に各方面へ詫び状を書かさた事は有名です。

呪文の解読は必要でしょうか?一応しておきましょう。文字の順番を少し変えると、
『カジワラ・イツキ・トマキ・ヒサオワ・キョウハノク・ツミオ・オモイシレ…呪われよ!』
となり、つまり
『梶原一騎と真樹日佐夫は脅迫の罪を思い知れ…呪われよ!』
ですね。何とも単純な暗号…。

ちなみにこの時期、いくらオカルト漫画以外の作品を描こうとしてもこういった妨害が入って中断を繰り返していた事を、つのだ先生は
『霊とは関係のない仕事をしようとすると
霊界が許さず、裏切られたり横槍を入れられたりで、ことごとく失敗してしまう』

と語ってました。
霊界が許さずって、そりゃふざけてるのかと思うなかれ。つのだ先生は本気だったはずです。

そうそう、「恐怖新聞」でも「笑う骸骨」という話で、乱暴で評判の良くない侍・名を仮に梶川市之進とされたキャラが登場して、暴れ回っていた事も憶えておいてください。
町民達は逃げながら『かかわりあいになるな! うかつにさわると首がとぶぞ!!』と叫んでます(笑)

あとこれも大事なのかな。
つのだじろう先生は秦の始皇帝の末裔なんですよ。自己申告では。
そのため個人事務所の名前は秦企画です。

さらに最後に一つだけ!
つのだ先生は浮世絵春画蒐集家でもありまして、ついこの前「浮世絵春画ばなし」(ソフトバンク クリエイティブ刊)という本も出してます。つのだ先生が集めた春画を公開し、独自の解説を付けた本ですね。
せっかくの新刊ですので今回はその画像を使わせていただきまして、次回は素敵なつのだじろう先生の作品を一つ紹介してみましょう。
あっと最後に、あのミュージシャンつのだ☆ひろ氏は、つのだ先生の実弟ですよ。(誰でも知ってるかな?)

それでは、おやすみなさい。


  1. 2007/03/09(金) 23:48:23|
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月刊漫画ガロ(30) 山野一 1 「貧困魔境伝ヒヤパカ」

YAMANO-HAJIME.jpg

今回は山野一先生。

先に故・ねこぢる先生を紹介してしまいましたが、そのねこぢる先生と元夫婦であり、ずっと先にデビューしてた特殊漫画家なのです。
ただその作品世界は違い、大ヒットしたねこぢる先生を想像して本を買っちゃうと、すぐにとんでもない間違いと後悔を覚えるでしょう。
何と言いますか…
山野一先生を好きだって公言するだけで鬼畜だと思われるんじゃないかと危惧してしまう程、キ○ガイで変態で差別的で不条理な、いや~な気持ちになる世界です。私も含めて、ある種の人にはそれが心地よいのですが。

1961年の福岡県生まれである山野一先生は、三重県や千葉県の団地でしょうもないヤンキーとかに揉まれて過ごし(多分)、立教大学文学部に入学して(この方がそんなまともな大学に行ってるのが信じられません)、美術クラブで漫画を描き始めたのだそうです。

デビュー作は1983年、もちろんガロで発表した「ハピネスインビニール」です。

私は10年前くらいには絶版で再発もされていなかったために激レアで、市場価格一万円以上まで行った処女単行本「夢の島で会いましょう」や二作目の「四丁目の夕日」からその時の最新作まで、どれも基本的にレアだった本をコンプリートしていたので、漫画コレクション自慢する時にも山野一先生には一役買ってもらってました。
マイナーすぎたのか、誰も驚いたり拝んだりはしてくれませんでしたけどね(笑)

それが現在は、数年前に装丁を変えて再発されたのが出回っているので、山野一作品を手軽に読める、いい時代になりました。(おかげで私のコレクションの価格は暴落しましたが)
とはいえ、それも単行本の出版社青林堂倒産によって品切れ状態ですから、興味があってまだ持ってない方は、今のうちに買うべきですよ!

少し話がそれましたが、規出の単行本を流し紹介してみましょうか。
先にかつて激レアだったと述べた「夢の島で会いましょう」は、最初からいかに山野一先生が凄かったか分かる短編集で、SFアクションも入ってます。

私自身も高校時代に衝撃を受けた初の長編「四丁目の夕日」は、不幸すぎる貧乏を描き、最後は精神崩壊…と、救いのない展開が悲しすぎます。一応主人公は生き残るし、老人になってから少しだけ救いがありますが。

続いて、「貧困魔境伝ヒヤパカ」「混沌大陸パンゲア」(以上四冊全部青林堂刊)という凄まじい名作短編集を上梓してます。

コミックスコラで掲載された長編「どぶさらい劇場」も、金持ちのお嬢様が奴隷並に堕ちて行き、新興宗教の教祖になったりするものの結局地獄のような結末を迎える毒まみれの大河ロマンでした。

「ウオの目君」はメジャー誌に編集者のいいなりになって描いた作品で、ちょっとつまらないのですが…

この後、妻であるねこぢる先生の大ブレイクです。
そこで山野一ねこぢる先生のアシスタントとしてサポートするようになり、自身の作品はめっきり発表しなくなってしまったのです。

もともと山野一作品の中に、ねこぢるキャラであるにゃーこにゃっ太がデザインされている所もあったのを後で気づきましたが。
ねこぢる先生の旅行漫画作品「ぢるぢる旅行記」や絵日記「ぢるぢる日記」では、山野一先生本人キャラとして作品に登場してます。
原作・山野一と明記されてるねこぢる作品もありますしね。

そしてねこぢる先生の死後、山野一ねこぢるyと名義変更して執筆するようになります。
かつてのねこぢるキャラを模倣しながらも、作画にコンピュータを使いまくり、ポップさも減少した独自の世界になりました。
そのねこぢるy名義でも全3巻の「ねこぢるyうどん」(青林堂刊)と、活字と漫画のインド旅行記「インドぢる」を上梓してます。

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そんな中から、今夜私が特にピックアップするのは山野一名義だった時代の持ち味を全開で本領発揮した、三作目の単行本になる「貧困魔境伝ヒヤパカ」にしましょう。
今回の画像の左側が1989年に出版されたオリジナル版で、右側が1999年の再発版です。
とにかく山野一節満載で、キチ○イもほどほどにしておきなさい!と言いたくなる短編集なのです。

いきなり貧乏部落差別満載の酷い話「人間ポンプ」は、安部公房の名作「砂の女」山野流にアレンジしたもので、貧民街に調査にやってきた大学教授と良家のお嬢様がドブ穴に落とされ、生きるためにポンプこぎをさせられる話。
ポンプをこがないと浸みだしてくる海水によって溺れ死んでしまうので、上流階級の二人が交代でこぎ続け、さらには貧民街の住人の前で交わらされたり慰み者にされたりして一生を終える…
ちゃんと(?)貧民街の子供は障害者だし、山野先生らしい作品ですね。

次の「在日特殊小児伝 きよしちゃん 紙しばいの巻」なんて、紙しばい業の爺ちゃんが子供達に『残飯じじい』といじめられまくり、可愛がってた小鳥をイジメられっ子のキヨシに無理矢理食わせる場面を見せられて絶望して終わりだし、
続いて気持ち悪い(父親なのに顔を思い出すだけで吐いてしまうほど!)知恵遅れの子供と病気のばばぁ(妻)を抱えて、定年後も働かなければならない五味ため吉(なんて名前!)の虐められる様を描いた「GOGOやくたたず」
またも貧乏→酷い死に方を描いた話だけど、山野先生的なセンスが光りまくる「ビーバーになった男」と続き…

「荒野のガイガー探知機」も凄いですね。こりゃ傑作です。
核戦争後に最後の生き残りとなったのは極悪人だったのですが、死の間際に拾ったガイガー探知器の音を聴きながら大霊界へ行きます。
すると極楽浄土からやってきた大日如来が、ゴータマとの約束でゴータマが死んでから三千年目に地上にいる者を救済しにくるのですが、そこにいるのは女学生を犯して殺してた極悪人の男一人。
大日如来は何食わぬ顔で彼に美しい肉体を与え、涅槃に迎えるのです。
極悪人自身が
『へぇー このオレを? 極楽に?
でも オレは 悪人ですぜ』
なんて言ってるのに、生前に善人であったらなど全然問題ではなく、ただそのゴータマとの"約束の日"を守るだけ。
『そんなもんなんです』
と言う大日如来の輝かしい姿に、何かが分かったような気がします。
うん、それが山野先生の思想、神学、宗教観。

次に悲惨ギャグ漫画「ハネムーン」「パチンコのある部屋」「旅情」と続き、これまた傑作の「荒野のハリガネ虫」
資産家の孫が夏休みの自由研究のため"貧乏人の観察"に出る話で、本当に貧乏人の分析・観察をした後に、連れてった下男と女中の死体(貧乏な住人に殺された)を、
『食うなり 犯すなり 好きにしてください
いいから気にしないで たかが使用人だから』

と言い残してヘリコプターで帰る…
中に平然とカニバリズム(人肉食)ネタが描かれていたり、凄い作品です。
ちなみに私、BRUCEは先日、目黒寄生虫館でハリガネ虫のホルマリン漬けを見てきました。

「星の博士」はキ○ガイに娘母が犯された上で殺される話だし(またかよ!)、「押し入れの女」なんてクソな浪人生が何故か押入れから出てきた女(死体)と楽しむ話。

ここまで短編ごとに紹介してきて、もういい!
おう思った方には次の「侏袢の家」です。
一人の少女・さえ子が夢の中で(親のSEXの声を聞きながら)"おばけ"と呼ぶ、エロい造形をした侏袢(こびと)達にの陵辱されまくるのですが、それを乗り越えて誰でも女の子は大人になる…らしいです。
『その日さえちゃん家の夕食には お赤飯が出ました』という、いい終わり方。

「太陽とダリヤ」と、続く「のうしんぼう」が、またこれが夢漫画だとか、シュール漫画系の名作なんです。
これの内容については触れません。

--------
まぁ結局の所、今夜少しだけ掘り下げて紹介した短編集「貧困魔境伝ヒヤパカ」は、ほとんどが嫌な貧乏ネタで不条理な話ばかり。
松本零士先生の貧乏漫画はあんなに夢いっぱいなのに…でも厳しい現実を見せる山野一漫画の方がリアルかもしれませんけどね。

でも、これもあくまでギャグ漫画ですからね。
嫌な気分になるのはいいですが、あまり本気でとらえないように…いや、実際マジメな人に読まれて反感買うんじゃないかと心配ですわ。
山野一先生は鬼畜で特殊な漫画家だと、ちゃんと納得した上で本を手にとって下さいね。
まだまだ山野作品はマイナーの部類であり、よほど意識しなくては読めないんだから、読みたい人だけが読めばいいし、そこまでの配慮は必要無いでしょうか。

そんなわけでついにこの名作漫画ブルースでも紹介してしまった山野一先生。
その物の考え方には、出会った当時(デストロイな学生時代)の私が持つ、つまらない既成概念を変えられるくらい強烈な衝撃を受け、もちろん今でも尊敬しています。
よし、いくら変態とか異常とか病気とか思われようとも、これからも山野一先生が好きだと表明していきますよ!

あ、最後の言葉は今回紹介した短編集「貧困魔境伝ヒヤパカ」よりの名作、「荒野のハリガネ虫」に出てくる貧乏人の言葉から。
それでは、おやすみなさい。


人間の尊厳とか良識とかね ビタ一文にもならないものは
クソといっしょに便ツボに ひり出しちゃいましたよ
以後は畜生のごとく もっぱら 欲望に忠実に
生きていると こういうわけなのです




  1. 2007/03/07(水) 01:35:47|
  2. 月刊漫画ガロ
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maido!DOMO!

maido!DOMO!.jpg

こんばんは。

最近は仕事が忙しく、思うようにブログもアップできないでいます。
夜中に帰宅してシャワー浴びたら、楽しみのビールもちょっぴりで少し寝て、また早くから出勤するだけというの平日になってしまい…こんな仕事以外の時間が少ない生活、最低。
まぁこんなのは一年間でもほんの数週間くらいのものだし、ちょっと頑張ればいいだけなのですけど、漫画紹介はもうちょっと待ってくださいね。

中野ブロードウェイだとか、毎週何度も通ってる所にも週一回になってしまうのは悔しいですね。
今日は日曜なので当然行ったのですが、タコシェ本秀康先生のサイン会をやってて、御本人様を初めて拝見しましたよ!

ところで街を歩いてると、最近になって目に付くようになったのが「maido!DOMO!」(マイド!ドーモ!)なる無料アルバイト情報誌。今年の初めあたりに新装刊されたのですが、表紙には毎週違う漫画家の1コマ漫画が使われていて、しかもそのラインナップが凄い!!
たまたま楳図かずお先生が使われていたのを見かけて即刻持ち帰った「maido!DOMO!」でしたが、おっと土田世紀先生だ、何!福満しげゆき先生、わわっ!古泉智浩先生も!といった感じで、いいセレクトがされてますね。
他にも青山景先生だとか岩岡ヒサエ先生だとか使われてますが、毎週木曜には誰が使われているかチェックするのが楽しみになりました。
毎回その漫画家が見開き2ページで紹介され、アルバイトについてのインタビューなどにも答えてますよ!
あ、首都圏版って書いてあるから、もしかしたら地方では配られてないかもしれません。(そりゃそうか、この通好みなラインナップじゃ…)

この名作漫画ブルースでは福満しげゆき先生の時の表紙を使わせてもらいますが、どうですこの太い足の可愛い女の子!
  1. 2007/03/04(日) 23:30:22|
  2. 古本 番外編
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プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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