大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

日野日出志(36) 「鬼ジャリ」

今夜の日野日出志作品は、短編集「鬼ジャリ」(松文館刊)。
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順に見ていくと、まずは表題作「鬼ジャリ」

悪臭、地鳴りのような騒音、狂気じみた暑さで、世紀末の地獄のような工業地帯の風景…
まさに日野日出志作品の定番となっている光景の中で、ある芸術家が醜い地獄の鬼の子のようなジャリ、つまり鬼ジャリ
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に体内に入られました。
すると偉大なる芸術作りに取り掛かるのですが、ついに完成したその芸術作品"世紀末ユートピア"は、殺した人間達の死体を使ったオブジェでした。
これがまた、とんでもなくグロテスクなのですが…

その直後にあっさり芸術家が死んでしまいます。
体内から出てきた鬼ジャリが言うには、こんなグロテスクな人間の心の闇のエキスを吸わなければ生きていけないから、そんなおぞましい人間に寄生しているようです。
そして記憶も一切持っていないようで、自分が一体誰なのかと悩んでいますが、そこでオブジェにされた妊婦の死体の腹から出てきた魔胎児
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人間の退治に寄生しなければ生きてゆけない彼が、全てを語ってくれました。

鬼ジャリの本当の名は鬼母児で、"魔界一族"黒魔王によって記憶を消されているのだとか。
その魔界一族の妖怪たちが営む"黒魔団大サーカス一座"で鬼母児は鬼死母の子供として生まれたのですが、この鬼死母の子というのは手のひらで生まれて手にくっついたまま育ちます。
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そして鬼死母と鬼母児の母子は黒魔団大サーカスの大スターになったものの、鬼母児は母の左手にくっついて生きるのを嫌って独立したくなり、母を捨てて外の世界へ飛び出したものの、記憶は消されていたと。
記憶が戻ったでしたが、改めて人間の心の闇のエキスを吸いながら一人で生きていく事を決めて去っていく…

これでお分かりの方もいますでしょうか。
次回あたりこのブログでも紹介する予定である「サーカス奇譚」(集英社刊)の一話目に収録されていた「鬼死母と鬼母児」という話の後日譚になっているのです。


次は「怪奇君」
蓮華町小学校の6年1組に転校してきた黒田海紀くんは、蓮華寺の新しい住職の息子で、既に僧侶のような風貌のマルコメ。
彼が地縛霊に取り付かれた同級生を、"地蔵三方陣"という悪霊退散の法で救うという「エクソシスト」系の話ですが、ここで退治される地縛霊というのが強くしつこく、18ページに渡って死闘を繰り広げます。
これは、いつも通り日野日出志先生がモンスターや虫の大群を描きたくて完成させた作品でしょうね。


次は…「妖怪うんげろ」
うんげろですよ、うんげろ!!
もちろん排泄物の"うん"と"げろ"で…日野日出志先生には珍しいそっち系のネタですね。
扉絵がぷーんと匂ってきそうな和式便所の図。

『昭和30年 ぼくがまだ少年だった頃
都内でもほとんどの家の便所が汲み取り式で
近所にはたくさんの畑があり いくつもの肥溜めが残っていた
この不思議で恐ろしい物語は そんな時代の
ぼくの糞尿譚である』

としてノスタルジックに始まるのですが…『ぼくの糞尿譚である』って、ねえ!
(同じ怪奇漫画家である水木しげる先生なら大好きなネタですけどね)

肥溜めに全身がずっぽり落ちた少年は、何とか自力で登って出て口に入った糞尿も(!)吐き出しますが、その後祖父が言うには"妖怪うんげろ"というのに取りつかれて、ひどい便秘になって薬を飲んでも浣腸をしても米粒ほどの便も出なかったのです。
二十日も便が出なず、さらに高熱が続いて体中に斑点ができた状態になってさらに三日後、祖父がある薬草からうんげろ退治の秘薬を作って飲ませると、ついに少年の口から気持ち悪いうんげろが飛び出して逃げて行きました。

そんなエピソードを三十五年後の現在に回想する青年の話だったのです。
とにかく妖怪うんげろなんてのが相手では恐くないどころか笑ってしまうばかり。
恐ろしい漫画のイメージばかりで語られる日野先生が、こういった微妙で絶妙なギャグセンスを持つ事を、数は少ないながらいくつかの作品で立証されている事を伝えたいですね。


次の「怪人どくろ博士」は、妖怪学博士で妖怪ハンター・土黒虫太郎こと怪人どくろ博士の話。
世界中の妖怪を集めて飼うのが趣味という奇人にして謎の男が、藤田家に生まれたサタン・エッグという妖怪を退治して持ち帰る話。
助手のめめ小僧は妖怪探しの名人ですが、自身も一つ目の妖怪で、かなり可愛い。


「おどろ牌」は、日野日出志作品には珍しすぎる麻雀をテーマに使っています。
ある雀荘に現れた謎の男と卓を囲んだ男達は、その手であがると死期が近いと言われる不吉な上がり手・九蓮宝燈を三連続で出したりして、とにかく大勝ちします。
欲深な男達はゲームの勝ちだけでは飽き足らず、謎の男を闇討ちして残りの金も全部巻き上げますが…
口から麻雀牌を吐いて全身溶けてしまい、残された骨を謎の男が拾い集めて去って行く。
謎の男は、大金持っているのを見せて愚かな男達を引っ掛け、骨集めをしている妖怪みたいな者だったのでしょうか。


最後は「魔ジャリ」
いくら食べても満腹にならずに、夜中に家の冷蔵庫から生肉や生魚をそのまま盗み食いするようになった少年・たけしは、飼ってる金魚や猫まで食べてしまいました。
何かにとりつかれたと見た祖父と祖母は、子どもの姿をした魔よけの神様・魔ジャリを呼ぶと、たけしにとりついていた餓鬼魔を退治してもらう…
という、これも妖怪ハンター話でした。


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  1. 2008/04/30(水) 23:59:34|
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日野日出志(35) 「魔鬼子」

今夜の日野日出志作品は、「魔鬼子」(東京三世社刊)。
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単行本の帯を外すと表紙はこうで…ワンパターンな連載物ですが、この一冊に5話収録されています。
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普段はこんな、"ちょいブス"くらいの女の子マキ
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実は彼女の正体は…
『ぐわあああ~~っ
わたしは地獄の悪魔の中でも最も醜い女……!
"魔鬼子"!』

という事で、ジャケの醜悪な化物なのです。

毎回人間としてターゲットの女の近くで見守り、そいつの魂を地獄に落とすために幻覚を見せたりして脅し続けます。
いよいよ自殺しようとするまでに追い込んだ時に
『さあ!地獄の底へ落ちろ!!』
と魔鬼子が念を送ると、そのターゲットが最後の告白をして、実は家族思いだったりする事実が判明して…
魔鬼子は土壇場で考えを改め、むしろ元気づけてやったりします(自分で追い込んでおいて)。

『うらぎったな』と攻める小鬼達をやっつけ、"地獄の悪魔の中でも最も醜い姿"でずるる ベタッという足音で体を引きずり、地獄の大魔王に言い訳しながら去って行く…
それがターゲットにされる女のパターンをほんの少し変えただけで、あとはまるまる同じ展開で続くのです。

同じ絵のコピー使用もあまりに多いし、セリフもほとんど同じ。
少しグロいシーンをサービスで入れておけばいいだろうと、ページ稼ぎしていっただけのような…
かつての名作群に見えるような鬼気迫る力はこれっぽっちも再現されておらずに、ただ上辺だけの不気味な雰囲気とおざなりなグロ絵とを撒き散らしているだけというか。

日野日出志先生らしいのは、魔鬼子の"醜い女の悲しみ"を描いてる所でしょうが、唐突で簡単に心変わりしちゃう魔鬼子なので、まるで共感できないし同情心も持てないのです。

これで一話だけの短編ならいいのでしょうが、全部同じ展開の話を5話並べて単行本を出しちゃうってのは退屈すぎると批判せざるをえません。

そんなわけで日野日出志作品としては確実に失敗作の部類に入る「魔鬼子」ですが、カバー内側に素敵なポートレイトがあり、
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巻末にはQ&Aとか『日野日出志全調書』なんてのが収録されているから、嬉しいのですが。

ちなみに、そのポートレイトで日野先生が描きかけているのは「妖女ダーラ」ですね。


ああ……! わからない自分で自分の心がわからない……!!
このおぞましい醜さから開放されて 美しくなりたいと
心の底から願っているというのに…!!

でもきっとこんどこそは…! 人間どもよ見ているがいい!!
おまえらの魂を地獄へ落として わたしは必ず
悪魔界一の美女になってやる…………!!



  1. 2008/04/29(火) 22:29:21|
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日野日出志(34) 「妖女ダーラ」

 人間たちよ 見てはいけない! 人間たちよ 見てはいけない!
 わたしのもう一つの顔を……!!
 わたしのもう一つの顔を見た瞬間から
 あなたは恐ろしい地獄を見ることになるだろう……!
 血みどろの この世の地獄を………………!!

 そう……わたしの名は"妖女ダーラ"


はい、今夜の日野日出志作品は、「妖女ダーラ」(大陸書房刊)。
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来ましたよ~。
この「妖女ダーラ」も、私が愛する短編集。

前に紹介した「餓鬼地獄」と同じく、出版社が大陸書房だからなのか、どうしても知名度が低くて悔しいのですが…

大御所日野日出志先生の作品ならほとんど復刻されていると思っているのが、普通の漫画ファンかもしれませんが…
あの再販されるラインナップというのは、私からしたら明らかに偏りがあるのが分かってですね、名作なのに現在普通には読めない作品がまだまだ数多くあるのですよ。
現に、この「妖女ダーラ」に収録されている…例えば「Oh!ナイスバーディ」あたりの話をするとですね、自称日野日出志ファンの若者あたり、口をつぐんでしまうのが現状です。

これは古本屋回ってコンプリートしようとしない読者側の不勉強を嘆くより、同じ作品ばかり何度も装丁変えて復刻しておきながら、隠れた名作を絶版状態にしておく出版する側の責任の方が大きいでしょう。
せめて私が、こういった名作を広めるために1%でも力になれれば…と意気込んでここでお薦め文を書きたいのですが、もう酒飲み始めて数時間経ってる酔っ払いですのでね、また明日読み直すと恥ずかしい事になるかな、はい。

まぁ頑張りすぎずに、さっと作品紹介だけしちゃいましょう。


表題作の「妖女ダーラ」の他に4話収録されていますが、まずはその「妖女ダーラ」から。
これだけ3話の連作になっていて、ジャケを見たら分かる通り顔の右半分は美しいのに、左半分に醜い顔を持つ女・ダーラが…
その醜い方の顔を見てしまった人間を地獄に落とす、というのが基本設定。

1話目でダーラの醜い方の顔を見てしまったのは、鳥を愛する少年吉田くん
彼は愛する鳥を近所の猫に殺されたと思い込んで、捕まえた猫を縛って生き埋めにする…
ダーラは、その吉田くんの罪悪感を利用して恐い幻を見せて脅し続け、最後は少年も埋められる。

2話目で、またいきなりダーラの醜い方の顔を見てしまったのは女子高生のマキ
親友のサチが屋上から、見た事もない醜い生徒に突き落とされて殺されました。
それを誰かにしゃべったら身の破滅だぞと脅されたマキは、その後もその醜い生徒にに何度も警告を受けます。
いや醜い生徒じゃなく、完全にモンスターですね。
体がどろどろに溶けて砂のような液体のような物になって窓から出て行くそいつは不気味で、そしてカッコいいです。
もう気が狂いそうになったマキは、また見かけたダーラに教えてくれと詰め寄り、真実を写す鏡を渡されます。
そしてサチを殺した犯人は、自分自身だったと知るのです。あの醜い顔はもう一人のマキ自身だったと…
あれ?今回のダーラは、マキの事は殺さずに去って行きましたよ。

3話目でダーラの醜い方の顔を見たのは、デザイナーの卵の女。
この話に到っては、彼女が自信を失くして自殺しようとしていた所、本当の地獄を見せて自殺を思い止まらせ、
『あなたは人生の最終電車に乗るには早すぎる……
まだ始発電車に乗ったばかりよ……』

なんて言って、いい人になっているのですよ。

だんだん甘くなっていく妖女ダーラ…謎でした。
(1番罪も軽いし幼いのに惨殺された吉田くんの立場はどうなるのでしょうか)


次は短編が4つ続きますが、はっきりいってどれも「妖女ダーラ」以上に傑作。

まず 「血ぬられた小包」
ゆきが学校から家に帰ると、差出人の名前が書いてない小包が届いていました。
開けてみると中には小指が入っていて、母親の小指が一本なくなっています。
次の日も、同じように小包が届いていて、次は耳が入っていて父親の耳が片方なくなっている。
三日目は同パターンで目玉が入っていて、妹が目をなくしている…

三流高校にしか行けない私が、家のやっかい者だからいやがらせして追い出そうとしているのかと詰め寄ると…
開き直った家族は、
『おまえはわが家の恥だ おなたは生きていてもしょうがない人なのよ 死ね!死んでしまえ!!』
言ってきます。
しかし本当は狂ってるのは自分の方で、小指、耳、目玉をなくしているのも自分だったというどんでん返しがありました。

さらにさらに、恐いオチがあるのですが…
それはこの本を手に入れた時に確かめてみてください。
ダークで不気味な雰囲気が流れる、傑作でした。


次の 「首」は、私立花園高校美術部の金子サチ子の作った粘土の顔が行方不明の親友・藤田まゆみに変わっていて…
その顔が『金子サチ子ニ殺サレテ 学校ノ角ノマンホールニ投ゲコマレタ』と、行方不明の真実を語る恐い話。

自白した金子サチ子の言う通り、マンホールの中から藤田まゆみの死体が出てきたのですが、その首から上が粘土製に挿げ変わっていて…粘土で作った作品の方から、外壁がはがれて死体の首が出てきました!
その口からは大量の蛆虫があふれ出して、笑っている死体の顔。これは強烈です!!


そして 「Oh!ナイスバーディ」
日野日出志作品でこのタイトルはどういう事だと思いますが、本当にゴルフ漫画なんですよ。
藤子不二雄A先生の漫画に影響受けた、というよりまんま同じシーンとかもありますが、とにかくけっこう真面目にゴルフを描く日野先生。

田島重典は、いつものようにK氏との賭けゴルフをするのですが、一万円のはずが0を後から三つ書き足されて一千万円の勝負をでっち上げられてしまいました。
立会人のA氏も、キャディもグルで、今までしてた安い勝負も含めて全てが罠だったのです。

勝負はついに最終ホールに持ち越されますが、惜しい所で最後のパットが入らずに負け。
『ああ…あの最後のパットさえ入っていれば バーディをとっていれば……!!
あのパットが入ってれば バーディ バーディ バーディ……』

こんな事を考えてふらふら歩いていたらトラックにはねられ、首がちぎれて飛んでいきました。
飛びながらも、脳細胞の片隅にあの悪夢のパットの記憶が強烈に残っていまして、いつの間にか自分の頭をゴルフボールに見立てています。
そして…コロコロ転がっていった田島重典の頭はマンホールの中にボチャンと入って、最後の思考で『は……はいった!! バーディだっ!!』と喜ぶ。

『あわれな男の人生最後のパット……
それはOh!ナイスバーディ……!!』
というナレーションで幕を閉じたこの作品ですが、ホラーなのかギャグなのか分からない(多分後者でしょうが)、不思議な作品ですよ。
田島重典がインチキしたシーンを見ていた、カラスと草刈りの老人は何だったのだろうか。


最後が 「肉の怪物」で、一ヶ月前に女房に逃げられた男が腐った肉から生まれた怪物に襲われて、包丁で応戦して肉片まで細かくバラバラにしたり焼いたりする。
この腐った肉の怪物の造詣が良くて、「はじめ人間ギャートルズ」みたいなあの漫画っぽい骨付き肉に溶けかけの顔が付いているんですよ。

様子がおかしいからと大家が警官連れて男の部屋に入ると、ぶつぶつ言いながらヨダレをたらす男の傍には、バラバラのミンチ状態になった嫁の死体が散乱していたと。
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つまり肉の怪物はただの男の妄想で、ずっと死体を相手に一人で戦っていたのでしょう。

まぁ日野日出志作品ではありがちな話なのですが、やっぱり人間の狂気と、独特な怪物の造詣が絡み合って描かれたこのインモラルで禍々しい世界は日野日出志作品以外の何者でもないですよ。


 わたしのせいじゃない…… あなたが悪いのよ…………
 わたしのもう一つの顔を 見てしまったあなたが…………
 人間たちよ 見てはいけない!
 わたしのもう一つの顔を………!!
 


  1. 2008/04/28(月) 23:58:14|
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日野日出志(33) 「地獄虫を食う! 鬼んぼ」「地獄虫を食う! 鬼んぼ PART2」

おーちろよ おーちろよ 地獄の底へおちてこいー
血の池 火の海 針の山
人間どもよ おちてこいー


今夜の日野日出志作品は、「地獄虫を食う! 鬼んぼ」「地獄虫を食う! 鬼んぼ PART2」(立風書房刊)の二冊。
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日野日出志先生がレモンコミックスに残した作品としては、最後の単行本になります。

私はもう個人的に大好きな作品でして、珍しい帯付きでも買いなおして持ってます。
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もちろん両方初版です。

執筆時期は1987年から翌年なので、ちょうど私の大好きな「ザ・ホラーヒーローズ」(シンコー・ミュージック刊)が出た頃か。
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見ての通り日野日出志先生が手がけた素晴らしい表紙のホラー映画紹介本で、日野先生はもちろん他のディープな漫画家や、大槻ケンヂ、石井聰互、原マスミ、あがた森魚、中島らも、町山智浩…等々もフェイバリット作品を語っています!

さて本作、鬼んぼがどんな話かと言うと…
人の心に寄生してその人間を地獄へ落としていく"地獄虫"って奴がいまして、その地獄虫が成長するのを待って(つまり寄生されてる人間はその間どんどん不幸になっていくのですが)、そいつを食べるのが趣味の鬼んぼが主人公。

日野作品で舌がカメレオンのように伸びて虫とかを食べるキャラはよく出ますが、この鬼んぼは目玉が舌の代わりに飛び出して獲物を捕らえます!ちゃんと口もあるのに…
地獄虫に取り付かれてる人間を見つけると、そいつの部屋の天井裏に忍び込んで、いつも下げてるポーチ
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から取り出した寝袋(蓑虫の蓑ですね)を吊り下げて地獄虫の成長を待つのです。

日常生活で自分のトラウマに起因する恐ろしい幻覚ばかり見るようになる被害者ですが、地獄虫が大きくなってくると、鬼んぼは小さくなってそいつの体内に入り込み、心の中のトラウマを覗いてくる。
最後に暴れだした地獄虫を、鬼んぼが体内から出して退治して食べる…というのが毎回のパターンで、読みきり話の連載形式で進みます。

地獄虫を被害者の体内から出す時に、毎回鬼んぼが唱える呪文が傑作でして、
『シデヒノヒ ラナムヨ ガンマ! シデヒノヒ ラナムヨ ガンマ~~ッ!』
なのですね。
すぐ分かるでしょう、逆から読むと
『漫画読むなら日野日出志』
になるんです。
あの名作「地獄小僧」‏で、シリアスなシーンなのに近くの電柱に『漫画見るなら日野日出志!!』なんて張り紙がしてあったのを彷彿とさせますが、やっぱり日野日出志先生ってお茶目です。

どの話も人間なんて異常なもので、簡単に狂ってしまうと認識させられる作品ばかりで、その人間の見る幻想の中に日野先生が書きたいのであろうグロ描写や、畸形怪物達が出てきます。
(相変わらず怪物のデザインが秀逸すぎ!)
ほとんどの話が、美味しい地獄虫を食べて去って行く鬼んぼが歌うシーンで終わるのですが…
去りながら歌う歌が
『おーちろよ おーちろよ 地獄の闇は果てしない
血の池 火の海 針の山
亡者のうめき 聞こえぬかー』

とか
『おーちろよ おーちろよ 地獄の底へおちてこいー
血の池 火の海 針の山
地獄の底の子守唄』

とかね、素敵という他ありません。

「孤独に住むばけものの巻」
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は受験戦争にまつわるトラウマから地獄虫にとりつかれた女子の話なのですが、過去に失敗した"東都女子医科大学"受験の合格者発表者の中に日野日出代なんて名前がまぎれていますし、もっとよく見ると富田靖子もいます!
別に当時のアイドルの名前を羅列しているわけではなく、富田靖子だけいるのですよ。
まさか日野先生も私と同じく富田靖子ファン…!?

ま、それは話の内容には関係ありませんね。
この時の地獄虫はけっこう手ごわくて、いつもと違う呪文も唱えてました。
『イワコリ キメシ~~ッ! イワコリ キメシ~~ッ!』
と!!
今度も逆から読むと、『締め切り恐し』という漫画家としての本音ですね。

そのうち魔虫んぼというライバルが登場してきて、地獄虫の取り合いで戦って…
もっと進むと姫んぼという、一応少女キャラなのでヒロイン!?とも思える娘が登場します。

好物の地獄虫を取るために争うライバル同士ですが、「怪物がすむ学園の巻」では母娘のそれぞれに憑いてる地獄虫が合体して強力になって手に負えないため、鬼んぼ・魔虫んぼ・姫んぼの方も合体し、そのすさまじいパワーで敵を倒しました。
うん、少年漫画的な展開で微笑ましいではないですか。
「孤独の部屋の恐怖の巻」とか「マムシの守り神の巻」とか、あくまで恐すぎ暗すぎで少年漫画として失格な話もありますが(それが日野ファンには嬉しい)。
ちなみに彼らは"んぼ族"といって、一応一族の仲間ではあるようですね。

最後の話「まだまだいるぜ地獄虫の巻」では、新たに蠍んぼが登場。
鬼んぼがこいつにしてやられてしまうのですが、そこでライバルである魔虫んぼが来て、蠍んぼを倒して鬼んぼを助ける…複雑な関係です。
ちなみにこの時の獲物は、闘いに参加していなかった姫んぼが取るというオチでした。

ちなみに、鬼んぼ・魔虫んぼ・姫んぼ・蠍んぼ…この四人は「畸書 全身に鱗が生えてくる本」"地獄虫小図鑑"を紹介してくれていたメンバーです。
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(左上・姫んぼ、右上・鬼んぼ、左下・魔虫んぼ、右下・蠍んぼ、バックにいるのが地獄虫)

彼らの活躍はもうちょっと見たかったのですけどね、きっちり完結するでもなく、また次の地獄虫を求めて去って行って終わりました。
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この単行本が発売されて20年経ちましたが…世の中は相変わらず地獄虫に取り付かれた人間ばかりです。また好物の地獄虫を食べに帰ってきてよ、鬼んぼ!!


あれはまちがいなく「鬼んぼ」だ………!
おれは子供の頃におじいさんに聞いたことがある……
人間の心の中に棲んでる地獄虫を食べて生きている妖怪でな……
地獄虫を食べてもらった人間は
それまでの地獄の苦しみからぬけられるんだが……
なにしろ気まぐれでいたずらな妖怪でな…
ひとたび関わりかたをまちがえると……
ほんとうの地獄に突き落とされることもあるという……
それは恐ろしい妖怪さ!



  1. 2008/04/26(土) 23:59:14|
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日野日出志(32) 「幻想恐怖劇場 怪奇曼陀羅」

さすがにもういいんじゃないのか。そう思われても自己満足のためにまだ続けさせてもらいます、今夜の日野日出志作品紹介は…
「幻想恐怖劇場 怪奇曼陀羅」‏‏(桃園書房刊)。
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これ一冊に16編もの短編を詰め込んだ怪奇短編集なのですが、ただただ不条理に人が魔物に殺されて行く怪談風な話が多いです。

過去に日野日出志先生が残した名作への、自分オマージュみたいなシーン、作品も多くて嬉しく思います。
もちろん、持ち前のグロテスク描写は快調で、絵の力も入れている方でしょう。

話が単純で深く考えなくていい作品こそ、地獄生物デザイナーとしての日野先生の力量が分かる気もしますね。
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モンスター画集としても楽しめますし。

この「幻想恐怖劇場 怪奇曼陀羅」‏‏でトリを飾る作品「奇胎の海」は特に光っていて、これは不条理漫画の名作です。
内容は細かく書きませんが、こういう作品はもっと広く読まれて欲しいなぁ。

  1. 2008/04/25(金) 23:59:16|
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日野日出志(31) 「地下室の虫地獄」

虫よ 虫よ わが愛する虫たちよ……闇からの声を聞け!!
虫よ 虫よ 虐げられし虫たちよ……わが声を聞け!!
虫よ 虫よ 太古の昔から行き続けてきた虫たちよ……今こそ目覚めよ!!
虫よ 虫よ わが愛する虫たちよ……人間どもへの復讐のときが来たのだ!!
虫よ 虫よ わが愛する虫たちよ……汝らに生贄を捧げん 人間どもの血と肉を捧げまつらん!!


今夜の日野日出志作品紹介は、「地下室の虫地獄」(講談社刊)。
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講談社でいろんな怪奇漫画家の作品を発表していた"怪奇ロマンコミック"というシリーズの6作目として上梓されました。

いきなり↑の冒頭で書いた文と虫、そして虫に食い荒らされて朽ち果てた人間達の死体から始まります。

近所の人々からお化け屋敷と呼ばれて恐れられていた廃墟のような洋館では、こんな男
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が一人で住んでいて、こいつは"怪人虫男"。実は世界でもトップクラスの昆虫学者らしいのですが…

ゴキブリ、ヒル、ミミズ、ムカデ、ナメクジなどの日陰の虫たちをこそ愛しているようですが、巨大な温室もあって他のあらゆる虫たちで溢れかえる虫天国を造りあげていたのです。
そこで虫たちに向かって
『おお………!わが愛する虫たちよ!!
空を飛べ! 地を這え! 水に泳げ! 命の歌を合唱せよ!!
ひひひひ ひひひひ………!
ひ~~っ ひひひひ ひひひひ………!!』

とか叫んで目が血走っている、キチ●ガイであります。

そこを通りかかるといつもジッと見つめられ、気味悪がっているのは白沢健悟の娘・百合
ある夜に巨大でグロテスクな吸血虫に血を吸われると、怪人虫男の遠隔操作で屋敷まで呼び寄せられて注射を打たれました。

すると体が普通の昆虫以下の大きさになってしまい、他にもそのサイズに縮められた人間達と共に、怪人虫男から"人間採集"されないように逃げ回るのです。
網で捕らえられた人間達は、注射打たれて内臓をかき出され、手足頭を針で釘付けにされる…
つまり人間が虫にしてきた事をそのままやり返して復讐しているつもりなのですね。

百合もついに捕まって注射される、まさにその時に健悟パパが警察を引き連れて助けにきてくれました。
銃撃された怪人虫男でしたが、その傷からドバッとミミズ等が飛び出してきて、それから溶けて、屋敷が崩れ落ちてきて。
それでも助かった白沢親子でしたが、エピローグで両親と幸せな一家団欒していた百合の体内から突然虫達が飛び出してきて、百合はメチャクチャ…健悟の方はいつの間にか怪人虫男になっていて、自分の妻を襲うというバッドエンド。

いい加減で、滅茶苦茶な展開です。
コピーを多用しまくりでページ稼ぎしているやる気のなさで、一冊丸々使っている話なのに内容は薄い。
話なんて5分くらいで考えたのでしょう。ただ気持ち悪い虫、虫、虫地獄と、腐った人間のグロ描写だけで一冊でっちあげちゃった凄い作品でした。


虫よ 虫よ わが愛する虫たちよ……闇からの声を聞け!!
虫よ 虫よ 虐げられし虫たちよ……わが声を聞け!!
虫よ 虫よ 太古の昔から行き続けてきた虫たちよ……今こそ目覚めよ!!
虫よ 虫よ わが愛する虫たちよ……人間どもへの復讐のときが来たのだ!!
虫よ 虫よ わが愛する虫たちよ……汝らに生贄を捧げん 人間どもの血と肉を捧げまつらん!!


  1. 2008/04/24(木) 23:59:29|
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日野日出志(30) 「一つ目の怪」

いよいよ30作目まで来てしまった日野日出志作品紹介、今夜は「一つ目の怪」(講談社刊)でいきます。
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はっきり言ってこれはレア本です。持ってる人いないでしょ?
そんなわけで所有しているだけで自慢にはなるのですが、作品の内容といえば…
わりと有名な日本の怪談を日野日出志先生が漫画化したというだけのもので、絵以外に日野先生のオリジナリティは少ないのと、やはり人の原作を使っているからか、あの日野先生特有のダークな狂気は完全に影を潜めていて物足りないです。

もちろん私は個人的にも子供時代からの怪談好きですし、日野絵なだけでもう愛おしく感じてはいるのですけどね。

だからこの「一つ目の怪」も、そんなに嫌いではないのですが。
七編の作品を収録していますが、表題作の「一つ目の怪」ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が紹介した怪談「のっぺらぼう」と同じ話で、細かい設定を変えているだけ。
他にも「茶わんの中」ハーン「怪談」で読んだ話ですし、上手く不気味な雰囲気を描いている「ふたり又五郎」は、エドガー・アラン・ポーの短編小説「ウィリアム・ウィルソン」に近いドッペルゲンガーネタの話で、大好きですよ。

こういう怪談は大抵、罪も無い人がひょんな事から不幸になったり化物に取り付かれたりして釈然としない所があるのですが、この本では「血ぬられたてぬぐい」という話だけ唯一主人公が悪人です。
内容も罪を背負った人間が見る妄想を表現した傑作ですし、殺人を犯した彼が拭いたてぬぐいが毎日百本も風になびいてぱたぱたしている光景は美しく、チャン・イーモウ映画的かと思ってしまうほどです。

単純に化物、幽霊を見たいという方にもお薦めできますし、
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他には「猫又」「鬼女とショウブ」「ばけ犬の山」を収録した、日野日出志怪談短編集でした。

同じ講談社の"日本のおばけシリーズ"「人食い鬼婆」という単行本もあるのですが、そちらはまたいつかの機会に回しましょう。

  1. 2008/04/23(水) 23:59:29|
  2. 日野日出志
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旅行・紀行・街(18) 東京都三鷹市 1

今回は東京都三鷹市への旅になります。

隣接してる武蔵野市調布市、杉並区(高円寺阿佐ヶ谷)は既にこのブログでも紹介済みですが、やっと三鷹市の番になったわけです。

東京都のほぼ中央に位置する三鷹市は、太宰治武者小路実篤森鴎外といった、私が学生時代に心酔していた文豪ゆかりの地でもありますので少し胸キュンであり、友人の家があったり、通ってるラーメン屋もあるので頻繁に訪れています。

最近の小説家でも花村萬月とか津島佑子(太宰治の娘ですが)は三鷹市出身だし、我らが漫画家でも、私が大好きな「私立極道高校」「激!!極虎一家」そして「魁!!男塾」等の宮下あきら先生、「やるっきゃ騎士(ナイト)」みやすのんき先生もそう。
大阪府出身ですが、もはや漫画家として神の域にいる「巨人の星」「新・巨人の星」「男の条件」「花も嵐も」(これらは全部梶原一騎原作)の川崎のぼる先生も長年ここに住んでいるようです。

"三鷹の森ジブリ美術館"や動物園もある"井の頭恩賜公園"も三鷹市(武蔵野市までまたがってますが)にある都立公園。
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ちなみに三鷹市のキャラクターになったPoki(ポキ)は、三鷹の森ジブリ美術館開館時に宮崎駿先生によりデザインされたものですね。
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話のついでに、今年もいつもの井の頭恩賜公園にて開催された花見写真を載せておきましょう。
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参加メンバーが持ち寄った物を、どばっと一まとめにするのが楽しい。
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いつも辛酸なめ子さまの本を持ち歩いている私の、この日の一冊は「処女伝説」でした。
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素敵な押絵羽子板でも遊びました。
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~太郎とゆかいな仲間たち~(人数少ないけど)
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"まんすけばし"前で。
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三鷹市には何かとアバンギャルドな一面もありまして、例えば三鷹市水道局は「新世紀エヴァンゲリオン」綾波レイを浴衣姿で使ったポスター&下敷きを製作して、オタクが集まりすぎて物議をかもした事件も記憶に新しいですね。
パチンコ屋で、その綾波レイ等身大フィギュアを見つけましたので、記念撮影しました。
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↑この下の写真の日は綾波レイが浴衣を着ていたのですが…モデルで見えませんね。


おっと、話をもっと高尚な(?)文学関連の方に戻しましょう。
この"玉川上水"は…
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そう!1948年に太宰治が愛人と共に入水自殺した川です!!

10年くらい前に初めて三鷹市を訪ねた時は、興奮してこの玉川上水を目指したものでしたが、あまりの水量の少なさに唖然としたものでした。川自体も当時よりずっと小さくなっているのです。
それに入水した正確な場所も確定されていないようですね。
太宰治を思い、しばらく玉川上水の流れを眺めました。
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この玉川上水沿いに、三鷹のシンボル的な道路"風の散歩道"がのびていますよ。


次に先月(3月)に"太宰治文学サロン"なる所がオープンしたと、駅のこれ↓で知り、
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早速行ってみましたよ!!
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しばし「惜別」を読んで心を落ち着かせて…
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入場!
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太宰治と三鷹市について勉強しました。
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(↑「人間失格」の複製原稿に感激!)


三鷹市には太宰治以外にもゆかりの文学者が数多いのですが、三鷹駅前から続く中央通りだけで"文学モニュメント"たる碑がいくつも建っています。

さくら通りとの交差点にあるラーメン屋"江ぐち"を通り過ぎて先へ進むと…
あ、また脱線しますがこの江ぐちは二人組の漫画家泉昌之の原作者の方、久住昌之先生初の単独著作「近くに行きたい。 秘境としての近所ー舞台は江ぐちというラーメン屋」(はまの出版刊)で題材に使われてまして、何とこの店一軒についてだけで書かれたエッセイ単行本で衝撃を受けた私としては、ここも聖地とも言える店。
しかし最近タイミング悪くて行った時にやってないのです。地下1階に江ぐちが入ってる、その雑居ビル自体が閉まってる。
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↑随分前に行った時のですが、店内に貼られたメニューが少し見える写真を貼っておきましょう。

話を戻して中央通りをそのまま進むと、まずは三木露風の童謡「赤とんぼ」(山田耕筰作曲)にちなんで建てられた"三木露風の碑"。別名"赤とんぼの碑"です。
三木露風もこの三鷹に住んでいたそうですね。
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次のこれは山本有三関連の"少年の像"。
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"山本有三記念館"というのも三鷹市にありますよ。

武者小路実篤関連の碑は"地球を支える手と人間萬歳"
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そして!
これが太宰治亀井勝一郎の親交をテーマにしたという"本のレリーフ"です!!
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もちろん我々も一緒に記念撮影。
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さらに中央通りを、途中の古本屋とかに寄りながらずーっと進んで少し探すと、太宰治の墓がある"禅林寺"もあります。
ここには森鴎外の墓もあり、そのため永井荷風与謝野晶子斉藤茂吉らも墓参のために三鷹を訪れるようになったのだとか。
そもそも太宰治の墓がここにあるのも、森鴎外のそばに葬って欲しいという遺言にしたがっての事。

多少迷いましたが、ついに禅林寺発見!!
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ちゃんと有名人の墓場所案内もありました。
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ここだ~、ついに来た。
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そしてそして…これこそが、太宰治の墓。神妙に手を合わせた後は記念撮影です。
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私の暗い青春時代のアイドルだった太宰治
もちろんその著作はほぼ全作読んでますし、ついに墓参りができて、いろんな想いが込み上げてきました。
太宰治信者のこの友人(奥)は、太宰と一緒に寝たいのだと言い張ってこの有様。
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もいちど、よく手を合わせて拝んで…
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次は森鴎外の墓です。こちらは本名の森林太郎と墓石に刻んでます。
二人の文豪の墓は本当にすぐ近くにあって、ほぼ向かい合っているのです。
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『余は石見の人、森林太郎として死せんと欲す』と書いた石碑もありました。

ちなみに森鴎外の遺書も400円で買えますよ。
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休憩コーナー"喫茶墓場"で一休みして、
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墓場にあったら焼却炉を覗くと、もちろん人骨がぎっしり詰まってはいたけど、それからも文学の匂いがしてきたのです(嘘)。
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この日はまさに桜が満開で、いい雰囲気の中、貴重な墓参りができました。
♪桜の国の散る中で
 死人の口がうたうたう
 天国と地獄はよく似てる♪
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どうです?
日頃から皇族の方々に憧れる我々は、あのような神々しい笑みを浮かべるべく鍛錬しているのです。
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ちなみに、現在でも太宰治の誕生日、そして遺体が発見された日でもある6月19日は"桜桃忌"として毎年ファン達がここに訪れています。


禅林寺の隣には"八幡大神社"があり、
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市の指定文化財になっている大きなシイの木の中で、血は立ったまま眠っています。


そうだ、この日は桜も咲いてる事だし、帰りに少しだけ住宅街の公園の高台で少し飲んだのです。
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素敵な音(寺山修司記念館BGM集)を聴きながら…
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その後は"子供の王国"を作りました。
…つまり、子供たちのCITYたるこの住宅街の公園を、我々の武力で占拠したのです!!

ヒーローはマントを羽織るものですよね。
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そして強敵である、現役のガキ大将に立ち向かい…
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ついに勝利!!
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"俺達の旗"として勝利の証を風になびかせました。
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他にもこの三鷹市には、太宰治旧居跡だとかの名所、旧跡、記念館、ギャラリー等の観光スポットも地味なの含めていろいろあるのですが、それらはそのうち機会があったらという事にして…

次は私が電車を使ってまで三鷹市に週二回くらいのペースで通う理由となっている、"一圓 三鷹北口店"を中心とした飲食店を中心に紹介します。
とはいえ昔行ってた店は写真が無いし、居酒屋等もどんどん新規開拓しようとしているもののイマイチ通うほどお気に入りになる店が少なく…
今夜のところは、ごく最近行った店の数軒に絞ってのレポートになります。

そういえば最近三鷹駅が改装されて、"Dila三鷹"としてエキナカ商業施設が駅構内に誕生しました。
これで長い待ち時間が必要な場合は、珈琲でも飲みながら有意義に過ごせるぞと思いきや…
珈琲飲めるのはマフィン専門店"muffinari's(マフィナリーズ)"だけ。
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専門店というから珈琲だけでは悪いかと思い、マフィンなるものも初めて食べてみましたが…やっぱり私が食べる物ではありませんでした。
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スウィーツ…嫌い!

三鷹で栄えてるのは南口の方なのですが、私は大抵北口の方に用事があるのです。
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ここを出てすぐに牛めしの"松屋"本社ビルがあり、一階は店舗です。日本一接客態度がいい松屋なんだとか。
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チェーン居酒屋である"白木屋"や"魚民"等、モンテローザ系列の本社もここ三鷹市にあります。私はこういう店はまず行きませんけどね。
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ここは、以前から少し気になっていた"加賀屋"。
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やっと行けたのですが、煮込みと串焼きのこういう店としては値段そんなに安くないなぁ…
でも串焼きとかを喰って、
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宮下あきら先生の出身地・三鷹市ですので、持ち歩いていた「私立極道高校」も写真撮ったりして、飲み食いしました。
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途中からだんだん気分悪くなってたのですが、というのも終始店員の態度が悪く、それだけでもう0点。帰り際まで最悪でしたので、もう行く事はないでしょう。

そんな事もあったりして、どうも私のなじみである高円寺阿佐ヶ谷あたりのお店に比べてしまうと、三鷹市の居酒屋を低く評価してしまいます。

いや、でもそれはまだまだ私の居酒屋探求の努力が足りないだけではあるのです。
ちゃんとお気に入り店もありまして、ここ"さんや"はイイ。
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駅から遠いので分かりにくい場所になるかもしれませんが・・・三谷通り商店街って所にあります。
つまみは一つ300円。
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ラーメンは味噌味、塩味、醤油味の全てが500円。
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友人宅がここのすぐ近くなので通い出したのですが、宅呑みしててもここへ〆のラーメンを食べに来ちゃいます。
そして、特にさんやは店のオヤジがイイんですよ。このオヤジを客席から見てるだけで店に来た意味があったと言うか、癒されると言うか…
とにかくお薦めです。


都心から近いわりに静かで治安もいい三鷹市ですが、夜道や夜中のコンビニでは、こんな人たちも出現するので気を付けてくださいね。
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さてこれからが今夜の本番というか、一番紹介したかったのはここ、"一圓 三鷹北口店"なのです。
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まず一圓は、ラーメン屋というのに店内BGMにはロックが流れています。
'70s王道ロックからグランジ、ハードロック…そうだ、来日公演を控えていた時期だったからかミニマルミュージックの第一人者であるスティーブ・ライヒ(Steve Reich)の名盤が流れていた時もあり、その時は大好きなアルバムを偶然聴けて感動しました。
飲食店でもどこでも、お店のBGMがどれだけ大事なのかを再認識する私ですが、でもほとんどの店が適当に有線放送J-popとか流してる現状が続いてるのは、お客さん自身も皆どうでもいい事だと思っている証拠なんでしょうか…

当然一圓は店員さん達が音楽好きなんでしょうね。バンドやってる人なんかも多いみたいです。
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今回はいつもいるロン毛の店員さん一人だけつかまえて、話を聞いてみました。
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彼の場合はホーミー(西部モンゴル諸族の間に伝わる喉歌と呼ばれる歌唱法)や口琴をやっていてるそうです。
そしてディープな大友克洋マニアなんだそうで、特に「AKIRA」関連の物は単行本、雑誌、CD、LD、DVD・・・それらのジャケ違い、類似品、各国版等、とにかくありとあらゆる物を集めているのだそうで、そこら辺で私のBRUCE LEEコレクションを思い出してシンパシーを感じました。

いよいよ次は川原店長に接近しますよ!
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この川原店長については、以前このブログで吉祥寺秋祭りレポをした時にも触れていますが、改めて書くと私は彼に知り合ったおかげで吉祥寺秋祭りで御輿かついだりしてます。
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川原店長は生粋の江戸っ子で、祭りとなるとワッショイワッショイな人なのです。
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そしてその名も"一圓バンド"というバンドを率いて音楽活動をしていますし、バイク乗りで、いろんな事に詳しく、絵も上手くて一圓の店内にいくつか作品を飾っています。
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そしてサービス精神旺盛に良くしゃべる、そんな…ちょいワルおやじってやつですか。

健さん(高倉健)的な『自分は不器用な人間ですから』とか何とか言って無口を売りにする人達は、日本人の美徳を理解してくれる村社会の相手なら確かにいいんですけどね、国際人としてグローバルな展開をして地球人ネットワークを作る私としては(おいおいw)、常々批判的に思うところもあったのですよ。
なので川原店長タイプこそが現代の侍であると、生きる手本にさせてもらってます(言いすぎ)。

この日は二人でBRUCE LEEについての話をした直後に撮影したので、このポーズ↓
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はい、ようやく次は一圓 三鷹北口店の、肝心な料理についての話に移りますよ。
私は酒飲みですので、ラーメンの前につまみとして食べる物について語ってしまいますが、まずどこよりも皮が厚い名物のジャンボ餃子が大好き。毎回頼んでます。
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居酒屋と違って昼前からずっと開いてますので、休日にはここの美味しいつまみを喰いながらビールを飲むのは幸せですね。
飲み屋として使うにはかなり安いし、夜を待たずともお店で酔っ払って気持ちよくなれるのです。
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もちろん麺類もチャーハンも美味い、安い。
常連である私は、ここ数ヶ月で麺類のほぼ全メニューローテーションを終了しました!
ここで使うべく毎回写真撮ってましたので、今夜はメニュー順に全部載せようと思います。

まずは普通に、"一圓らーめん"正油味。ゆで卵一個入りです。
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一圓らーめんには塩味と味噌味もあるのですが、頼んでません。こういう普通のらーめんはここの真骨頂ではないので。
でも特注であんかけ野菜炒めを入れてもらった事がありました。
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"ほうれん草らーめん"は麺にもほうれん草が練り込んであります。
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"三鷹らーめん"はチャーシューとザーサイが多い。これは特にお薦めです!
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"西久保らーめん"は野菜たっぷりの塩らーめん。一圓らーめんと同じ500円なのが素敵。
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"上連雀らーめん"も塩らーめん系ですが、カレー風味が珍しくて好きです。
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"もやしてんこ"もよく頼みます。
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辛党の私は、特注の激辛で頼むこともあります。
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"手前味噌らーめん"もいいですねぇ。
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やはりこれも激辛でお願いしたり。
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次は"辛みそキムチらーめん"てのもあるのですが、これは写真が紛失してしまいました。

"とんこつらーめん 九州男児"ですが、九州地方で食べるようなあの油ギトギトこってりなのではなく、むしろあっさりしてるのが、一圓流の豚骨らーめん。
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"広東麺"は具が豪華でボリュームたっぷり、あんかけ入り。
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"チャーシューめん"は正油、塩、味噌の三種から味を選べますが、これは正油。
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"坦々麺"もグー。
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"あんかけ揚げそば"もパリパリ美味しかった。
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一圓は"タンメン"がとっても豪華。
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"三匹の子豚"で、ぶー、ふー、うーもびっくり!!
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・・・私は外食でご飯物はほとんど頼まないので、ここ一圓のも二種類しか食べてません。
でも"鳥辛チャーハン"、
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"中華飯"と、これらは満足できるものでした。
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さらに一圓は餃子や惣菜のお持ち帰りもやってますので、最近は花見で頂きました。
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毎月5日は麺類100円引きの日で、15日は餃子が安くなる"餃子の日"です。
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さらに特定の日に行くと、この割引券&お楽しみ抽選券になっている券も貰えます。
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こういったサービスも気が利いてますよね。

ついでに、一圓 三鷹北口店で見かけるお客さん達も一部公表。
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THE STALIN遠藤ミチロウ様も来た事があるそうですよ!

他にも、ミチロウ様と比べたらちょっと落ちますが(ちょっとどころじゃないか…)、ウエンツの奴とか、他にも有名人が来店しているのだとか。

私の個人的な好みでは、『醤油味専門(味噌専門、豚骨専門…)で一筋に何十年もやってきました』とかいう立派すぎるお店より、一圓のように間口が広く開いてていろいろ楽しめるお店の方が好きです。

ちなみに三鷹駅を反対出口から出てずーっと歩くと"一圓 三鷹南口店"てのもありましたが、こちらはやっと最近場所が分かったくらいで、未体験です。
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うわー、長くなってしまいました。
最後はたまに行く三鷹のレコード屋二軒です。

この外に箱積みすぎなのは、ここも店長がよくしゃべる"オールディーズ"
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この日の収穫はオーケン(大槻ケンヂ)関連のレコード二枚で、まだ大槻モヨコと名乗っていた時代の作品です。
根本敬先生のジャケ画が素晴らしすぎる空手バカボン「孤島の檻」と、もう一枚は上條淳司(上條淳士)先生ジャケの筋肉少女帯「高木ブー伝説」
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もちろんこんな基本アイテムは昔にゲットしているのですが、今回は安かったのでお土産用に。

もう一軒の"パレード"では、やぎのデビューアルバム「il neige」
太田蛍一ジャケで、何とあがた森魚様がプロデュースしているのですよ。
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三鷹市には今後もよく行くので、またいい店見つけたら紹介するかもしれません。
それでは、おやすみなさい!
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(↑今回のキャストのうち5名です)


  1. 2008/04/22(火) 23:59:36|
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日野日出志(29) 「怪奇傑作選」

今回の日野日出志作品も、前回の「おどろんばあ」と同じくゴラクコミックス(GORAKU COMICS)から上梓された「怪奇傑作選」(日本文芸社刊)です。
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古道具屋"般若堂"店主の源さん
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が、それぞれのお客に見つけられた古道具にまつわる不思議な話をするという、つまりは「おどろんばあ」の続編です。
タイトルに"傑作選"とあるのは誤解されるだけだと思うのですが、何故こんな名前にしたのでしょうね。
「おどろんばあ」の二巻としてじゃダメなわけでもあったのでしょうか…

今回の題材となった道具は、押絵羽子板、紅珊瑚のかんざし、絵、レコード、オートバイ、ニポポ、サンドバック、凧の八話収録です。

高倉健をモデルにしたヤクザ者を描いた「黒髪と紅珊瑚」は好きですが、相変わらずあるのが戦争を使った悲惨な話で、「母娘像」は泣いてしまいます。私は中国残留孤児ネタでどうしても涙が出てきますからね。

心霊現象に絡めたいい話が中心の中、特筆すべきは「怪奇傑作選」を読んで源さんがケンカめちゃくちゃ強く、背中に般若の刺青を背負っていると分かった事でしょうか。


おどろんばあ……
おどろんばあ……

赤子が生まれて人が死ぬ
死人が腐って骨になる

現世浮世幻の 地獄極楽妖かしの
おどろん おどろん おどろんばあ…………


  1. 2008/04/19(土) 00:00:00|
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日野日出志(28) 「おどろんばあ」

般若の眼は限りなく深く
人の世の闇を見すえておりやす
人の心の闇を見すえておりやす

般若の眼は 怒り悲しみ苦しみ
すべての心を飲み込んで 静かに見すえておりやす

修羅を背負った人間の運命を
じっと見すえておりやす…………


そんなわけで、次なる日野日出志作品紹介は、「おどろんばあ」(日本文芸社刊)。
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そう、日本文芸社といえば漫画ゴラクですが、ゴラクコミックス(GORAKU COMICS)からも日野日出志先生の作品は上梓されているのですね。

ゴラクコミックスだけに内容も大人向けを意識したのか、キレイにまとめた連作となっています。
もちろんちゃんと日野作品特有のグロさも擁しているのですが…
ひばり書房から出してた本のような、恐ろしいまでの情念とか迫力なんかはすっかり薄まっていますね。

とある街の高台にある一軒の古道具屋"般若堂"には、店番にこういう↓店主が座っています。
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そこへ訪ねてくる、訳ありの客とその客が見つける古道具にまつわる不思議な話、というのが毎回の基本設定。

店先に飾られているでかい般若(カバーイラストの物)が全てを語ってくれるとかで、店主はそれぞれの道具についての逸話を教えてくれるのです。
ベーゴマ、赤い靴、日本刀、リール、雪ん娘人形、鉄道模型、カスタムナイフを題材にした七話を収録していますが、そのほとんどが死人が現世に思いを残して現れるような心霊現象を扱っています。
「怪談雪女 ゆうれいのまんが」でも使っていた、越後(新潟県)の民話「雪太郎」と全く同じ話なんかも使われていました…

そしてこの連作には続きもあるのですが、その話はまた次回。


おどろんばあ……
おどろんばあ……

赤子が生まれて人が死ぬ
死人が腐って骨になる

現世浮世幻の 地獄極楽妖かしの
おどろん おどろん おどろんばあ…………



  1. 2008/04/18(金) 00:50:51|
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日野日出志(27) 「畸書 全身に鱗が生えてくる本」

今回の日野日出志作品は、いつもと違います。
「畸書 全身に鱗が生えてくる本」(KKロングセラーズ刊)で、単純な漫画作品ではありません。
その内容は小説、絵物語、イラスト集、写真集、まんが、心霊実話、猟奇実話、告白等とバラエティに富んでいるのです!
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まずカバー袖の解説を読んでみましょう。
『扉を開けると……「皮膚感覚」の恐怖が襲いかかる!
用意された"九つの扉"。その扉を開けると―得体の知れぬ怪物があなたの足首を掴む!!
異常な男があなたの体をナタでバラバラに切り刻む!!毒虫が全身にたかり、ウジやミミズの大群が蠢く!!
気がつくと、肌にウロコが生えている!!
逃げても、逃げても追いかけてくる―こわい!!でも、開けずにはいられない!?』

とあります。

早速ページをめくってまえがきを読むと、この本は
『読むお化け屋敷、読むホラー映画である』
のだそうです。
さらに日野日出志先生、活字が多い本だけにいつもより雄弁に"闇の世界"についてとか語ってくれてます。

もう我慢できない!早速ですが"九つの扉"とやらを順に見ていきましょう。


●奇病の扉

この扉をめくると、小説「肉瘤」が始まりました。
小さな産婦人科病院の院長は恐るべき秘密があったのですが、それは堕胎された胎児たちの肉塊を、様々に料理して食べる事。
気持ち悪い描写で胎児料理についてとか語ってくれるのですが、そのうち院長の体中にできた瘤が肥大してきて、ついにはその全てから胎児が生まれ出ると、胎児たちは一斉に院長の体を貪り食う…
というおぞましい話。

見開きの右ページは小説ですが、左ページはグロい挿絵になっていて、そちらの出来もいいです。


●異形の扉

ここは絵物語「ビン詰めの異形」
1ページの半分は文章、半分は絵という形式で進みます。

石造りの床で目覚めた少女は、どうやら記憶を失くしています。
考える間もなく、無数の大きなビンの中から出てきた醜い怪物が少女を追ってきて…
危ない中を逃げて逃げて、最後に偶然鏡を見たら少女自身も醜い怪物の仲間だと分かるという話。

って、これは怪奇小説の古典であるH・P・ラヴクラフト「アウトサイダー」(The Outsider)と、まるっきり同じ話ですね。


●鱗の扉

次は純粋なホラー漫画「畸型の魚影」。絵も力入っていて、さすが本業の漫画だと思わされます。

海洋汚染と奇形魚の因果関係を研究している"北浜海洋生物研究所"に、とんでもなく醜い新種の魚が届けられました。
ここの科学者、さとるの妻がその化物魚に襲われたようで、全身に鱗ができた後、この世の者とは思えぬくらいの醜い姿に変わり果ててしまいました。
そしてその妻の体を食い破って出てきた化物が、『海の全生命体の意思である』としておごりたかぶった人間どもに復讐を宣言する話。


●猟奇の扉

ここは猟奇実話を集めた「猟奇コレクション」で、人肉食事件他を短くまとめて紹介してくれます。
『人肉はハムやソーセージより生が一番ですぜ。だけど大人の肉は固くていけねえ。子供の、それも血のしたたるような、新鮮な生肉が何と言ったって最高でさあ』


●血の扉

ここはイラスト集「血と肉と華」
大蛇や巨大な蛾、植物、大トカゲ等が、全裸の人間の女を喰っていく見開き絵が続きます。
やはりグロいだけではなく、色気もあって幻想的で美しいのが日野日出志先生の絵だ、素晴らしい。


●心霊の扉

ここは心霊実話「身の毛もよだつ体験」
日野先生自身の恐怖体験を文章化して、『やはり心霊現象は、存在すると言う他はないのである』と締めくくります。


●残虐の扉

ここは写真集「人肉処理室」。絵も文章もありますが。

手首、両腕、太股とナイフやノコギリを使って切り離した後は、内臓を引きずり出し、首を切断し…さらには眼球をえぐり出して、新たなる生贄を求めて終わります。
こんな"地獄の人肉処理室"の描写を、写真付きでやっているのだから凄い。子供なら泣いちゃうでしょう。
写真は日野日出志監督で作った映像作品「ギニーピッグ2 血肉の華」からの流用ですけどね。


●死葬の扉

ここも絵物語ですね、「腐乱する男」
ページ上部がイラスト、下部に文章です。うへっ、絵が気持ち悪い!
生きながら腐っていく男が、最後は骨も砕けて…宇宙、森羅万象のあらゆるものと同化するという話。
これは類似の話が何度か漫画化もされていますね。



●開かずの扉

…に入る前に、『告 故あって左の扉、開けるべからず。』とあるのですが、無視してページを開くと、「闇からの告白」

扉に入ってしまった後も、もう「地獄の子守唄」以上にしつこく『今すぐにこの本を閉じるのだ。』とか『これ以上読み進むのを止めるのだ!!』とか言ってきます。
でも無視すると、
『ああ…………これほど言っているのに、あなたはまだ読んでいる。』
とか言って諦められ、ついに日野先生の恐ろしい告白が始まります。

そして読んだ恐るべき内容とは!!

…それはここでは秘密にしておきます。
だって言ってしまったら私にも貴方にも、どんな災いが降りかかるか分かりませんからね。
いや、私はもう遅いかも。何故なら私はアドバイスも聞かず、最後のページまで開いて"恐ろしい呪詛の図形"を目撃してしまったのだから!!
今日から数えてきっちり十三日目に、私の身に恐ろしい何かが起こったら…それはこの本、「畸書 全身に鱗が生えてくる本」のせいです。


---------
あとはこの本、それぞれの扉の間に"地獄虫小図鑑"というのがあって、鬼んぼ、姫んぼ、魔虫んぼ、蠍んぼの四人が恐ろしい地獄虫達を紹介してくれるのです。
その地獄虫達を見てたら、こういった生物のデザイナーとしての日野日出志先生がどれだけ凄いかも理解できるでしょう。


怪奇、恐怖、幻想、耽美、猟奇、血、狂気、戦慄ー

読むほどに、見るほどに、あなたの肌は恐怖と戦慄に泡立ち、本書を読み終わる頃には、きっと全身にウロコが生えているに違いない。

そして、怪奇と幻想の迷宮に呑み込まれ、抜け出せなくなった自分に気がつくだろう。
その時こそあなたは、怪奇と幻想の世界の住人になるのだ。

闇の神がすべてを支配する、怪奇と幻想の世界。
僕は、この世界を限り無く愛している。



  1. 2008/04/17(木) 01:42:03|
  2. 日野日出志
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楳図かずお邸

建設中の楳図かずお邸

それは武蔵野市吉祥寺本町、吉祥寺駅のすぐ近くという最高の立地なのに閑静な、高級住宅街にあります。
先週末は私、その楳図かずお邸(まことちゃんハウス)へ行ってきたのら~。

すぐに見つけたよ!!
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可愛い~!!

そして、まだ確認不可でしたが奥に見える窓はステンドグラスで、何かの絵になっているようでした。
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この扉を楳図かずお先生が毎日開けるんだ…熱狂的なファンの一人としては、それを思うだけで感激。
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ここで一応触れなくてはなりませんが、近隣の住民であるおばちゃん2人が、この家を『街の景観を壊す』として建設差し止めを求めた仮処分申請したのが話題になりましたね。
さらに『あんな建物は色彩の暴力であり形の暴力』とかぬかしてるそうで。

私なら尊敬する楳図かずお先生のお宅だという事は無しにしても、そうとう可愛いこんな家が近くにあったらどれだけ嬉しいかと思いますが…
まぁ人にはそれぞれ価値観があります。
でもそもそも景観を壊すって、貴方達の家並みはそんなにハイソなものなのか。
確かにここら辺だと昔から住んでそうな住人達ばかりと思えるし、とにかく何にでも保守的、しかも何不自由ない生活で暇なんでしょうか。

訴えてTVに出てた、あんなおばちゃん二人に『心が狭い』とか言ってもしょうがないのは分かりますが…
もちろん楳図かずお先生の漫画なんて読んだ事ないのでしょうね。あの感じだと気持ち悪いイラストか一コマくらい見せられて嫌悪感を持ってるのかもしれません。
それが子供達が大好きな、例えば「ワンピース」「ドラゴンボール」や、そういった漫画の先生だったら喜ぶくせに、楳図先生を気持ち悪い漫画の人ってイメージだけで嫌がって(いや多分ね)、偉大な楳図先生に対して余計な恐怖心だって植えつけたでしょうし、あ~許せん!
私で何か力になれる事はないだろうか。

それはさておき…BRUCE登場!!ぐわし!!
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キャッキャ、キャッキャと、興奮気味にはしゃいで何枚かの記念撮影。
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家に合わせて着ている、この赤白の"楳図ボーダー"Tは、一年前くらいに買っていたのですが、やっと初めて使えました。まさにこの日ために買っていたのですね。
楳図先生のTシャツは、吉祥寺の安売り店"ロジャース"でまとめ買いしてるそうですが、私はそこでは見つけた事がなくて、同じ物は手に入れてないのですが。

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↑ここで手に持ってる本は楳図かずお先生が何と14歳の時に描いた(世に出たのは18歳の時)、衝撃のデビュー作「森の兄弟」ウメズカズヲ名義なんですよ。
それと本名の楳図一雄名義時代の「底のない町」ですね。

私は一旦、この「おろち」Tシャツに着替えて…
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同行した友人にも着させてあげました。
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彼はぐわしできないので、こんなんでごまかしてます↓
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楳図邸を目当てにけっこう観光客が来るのですが、楳図ボーダーTを着ている我々は面白がられて、写メ撮っていいかと頼まれたりしました。もちろんOK!
こちらもついでに、友人とのツーショット写真のシャッターを押してもらいました。
chez-umezu-brucetaro1.jpg
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あと工事中のこういう看板。
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"建築主又は建造主氏名"の欄には、しっかり楳図かずお先生の本名(楳図一雄)も記されています。
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文字サイズが小さい!何故こんなに控えめなんですかね。 本当は工事監督の10倍くらいの大きさで記して欲しい。それに何でこんなに文字のフォントもサイズもバラバラなんでしょうか。
そして、ここが完成したら高尾にある真黄色な外壁の有名な家は手放すのでしょうか。

ふぅ・・・
まだまだ工事中ですのでまた様子を見に行こうと思います。進行具合のチェックや確認不可だった部分の調査もしたいですし。
でも今日の所はとりあえずこれで満足して、ビールと日本酒を買って、すぐ近くの"井の頭公園"で飲みました。桜の国の散る中を。
そこで広げたこれは、そう。「ウォーリーを探せ」も"楳図ボーダー"愛用者なのれす!!
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寒くなってきたので"HUB"へ移動して打ち上げしたのですが、その時もこの楳図ボーダーTは放せませんでした。
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そういえば以前は吉祥寺で何度も楳図かずお先生本人を見かけていましたし、このブログでも記念撮影までお願いしちゃった楳図かずお先生との邂逅レポをした事もありましたが、ここ一年以上は見かけていない…

とにかく今夜は、ここでアップした写真を見ながらumezuな気分に浸っていられます。

それでは、サバラ!


  1. 2008/04/16(水) 00:00:00|
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日野日出志(26) 「餓鬼地獄」

今回の日野日出志作品は、「餓鬼地獄」(大陸書房刊)。
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懐かしい大陸書房から出版されたこの本は七作収録の短編集になってまして、レベルの高い作品ばかり収められています。
しかし出版社が大陸書房だからか、イマイチ知名度が低いのが悔しいところですが…
これこそ名作短編集ってもんですよ!!

順に見ていきましょう。

---------
まずは「花ざかりの森」
勘違いされそうなので先に言っておくと、三島由紀夫の有名な同名小説とは関係ありません。

ある村に春の間中狂ったように咲き乱れる桜の森があるのですが、ここは恐ろしい妖魔がひそむという言い伝えがあって誰も近づかなかったのです。
しかしあまりの美しさに誘われるように森の奥へ入って行った少年・太郎は…
本当にこの森に住んでいた魔物・桜姫と出会ってしまいました。

本当なら桜姫を見た者は殺されるのですが、太郎は美しい顔をしていたために殺されずにすみ(「怪談雪女」とそっくり)、しかし桜の花の蜜で作ったという飲み物を飲まされ、性的玩具に使われます。
これははっきりとした描写はないのですが、たくましい白馬に見立てられた2ページは多分そうでしょう。

それからまた桜の蜜が飲みたくなったら太郎の父の首と引き換えにくれると言うのですが、太郎は既に蜜無しには胸が痛くて耐えられなくなる体にされていたため、それを抑える蜜を手に入れるべく…
本当に父の首を鎌で切り落として桜姫に献上し、蜜を貰いました。これで未来永劫にわたって桜姫の奴隷です。
ちなみに、今度は白馬じゃなくて龍になって桜姫と交わる、幻想的なシーンがあります。

狂った太郎は続けて母、祖父、祖母の首も刈り、それからも泥沼に引きずりこまれるように夜な夜な村人達を襲って殺すようになったのですが、その姿は完全に鬼と化した太郎。
しかも恐い事にこの「花ざかりの森」では、最後まで太郎には因果応報的な罰は当らずに、それからも桜姫と共に魔界の人間として花ざかりの森の奥深くへ行く…。
桜の舞い散る光景が美しい、恐怖漫画でした。


次に表題作「餓鬼地獄」
一人の若い女が、三年も便りをよこさない恋人に会うために、京の都にほど近い山中の道を歩いていると…
恐ろしい餓鬼達に襲われ、体中をかじられてあわや喰われる所でしたが、通りかかった僧に助けられます。

女は寺で世話を受けますが、餓鬼にかじられた傷は悪化して毒が回り、もはや全身がこぶの塊の醜い姿に成り果てました。
これも便りをよこさぬ恋人のせいと怨めしんだ女の、全身のこぶからまた新たな餓鬼が大量に生まれ…
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自らも死してなお愛の餓鬼となった女は、自分の事などすっかり忘れて帰ってきた恋人を骨も残さずに喰い尽くして永遠に自分のものとする、恐ろしい話でした。


次は「原色の海」で、これは日野日出志先生お得意の、公害の街と奇形生物を描いた幻想的な傑作です。
今回の舞台は海辺の街なので、異形の魚を集めて夢想する少女でしたが、狂った祖母が公害魚を食べて腹から魚を出して死んだのを期に魚に恨みを持ち、最後は見た事もない巨大な魚に殺されて(岩に叩きつけられて目玉飛んでってますよ!)、海の中で腐った少女の死体は"美しい人魚"として死んだ海で極楽を体験する…というもの。

そしてあの「マンホールの中の人魚」
既に紹介した日野日出志監督の映像作品「ザ・ギニーピッグ マンホールの中の人魚」
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の原作となった作品ですね。

映像作品の方とは細かい設定などで多少の違いがありますが、狂った画家がマンホールの中で美しい人魚を発見して部屋へ連れ帰り、それをスケッチしているが…実はそれは腐った死体だったという基本設定は同じ。
もちろん漫画は漫画ならではの効果を使った盛り上げ方で、22ページしかないこれをホラー漫画の傑作と呼ばずして何と呼びましょう。

『ひっ……ひひ…… おばさん……きれいでしょ?それ………
人魚……ぼくの…に…ん…ぎょ………』

(↑コレを言ってる最後のコマの顔!!)


次はさらに短い、10ページ作品の「おとなりさん」です。
これだけは短編集「餓鬼地獄」の中でダントツに古く、1972年の何と女性自身で掲載された作品。
あるサラリーマンの妻は、団地妻らしくおとなりさんの事ばかり気にして、旦那の稼ぎから勝手に大島つむぎ、ダイヤの指輪、カラーテレビにクーラー、果ては車まで買ってしまう。
疲れて夜の性生活をパスした時までおとなりさんと比べられてますから、これは笑っていいのか…
そして事故に見せかけてベランダから突き落とされ、おとなりさんと同じく生命保険が妻に入るというオチの、こわーいサイコホラー漫画でした。


次の「人形の家」は、"私立 日の出学園"の生徒である花村くんマリっぺが知り合った人形師の家で、人形師が死んだ娘を思うあまりに作ったら魂の宿った"人間の剥製"に襲われる話で、人間の暗部を描きながらも単純に恐いというより悲しさでやられてしまう作品。


最後に「おしゃべりな口」ですが、これは日野日出志先生自身の作品「おーいナマズくん」に似てますね。
あのコミカルなタッチで、同じく体にできた口がが勝手にいろいろしゃべったりするけど…
結果的に主人公が成長するきっかけになるという話。

ただこちらの主人公で内気な古川くんには、体中に無数の口ができてしまうから凄い。
自分の体に出来た口に食べ物を食べさせてるシーンとか、やはり「おーいナマズくん」を思い出しますね。

最後は成長した古川くんがクラス一の美人・花村さんを映画に誘うまでになるのですが、二人が行った映画は「太陽伝」
『赤沢明監督作品』黒澤明のもじり名前が使われてますが、それは日野先生自身の作品タイトルじゃないですか!
自分の原作をあの黒澤明に監督してもらえたらとかって願望が入ってそうです。


---------
とにかくこういう七作が収録された「餓鬼地獄」は、私からしたらかなり思い入れもあるし、傑作ばかり。
そう思うのですが、ひばり書房で発表した作品のように復刻がされていないために現在は激レア状態。

そりゃ古本好きならレアなオリジナル本で手に入れなきゃとは思うものの、やはり多くの人に読んでもらうには新刊として復刻してもらわなきゃダメなわけで、今のままでは手頃に読めないためにこれらの作品が幻となってしまう、悲しい現実を迎えます。
誰か早く「餓鬼地獄」の復刻作業を進めて、人々の目に触れる位置に置いてください!

  1. 2008/04/14(月) 23:59:59|
  2. 日野日出志
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日野日出志ポストカード集 「地獄のどくどく絵葉書」

今年(2008年)の2月からというもの、ほとんど日野日出志作品ばかりの紹介になっているために一部で不評を受けているらしい、この大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)ですが…まだ日野作品紹介は続きます。

その前に、今宵は単行本以外の物を自慢します。

かつてこのブログでは、日野日出志グッズとして日野日出志腕時計日野日出志T-シャツも紹介した事がありましたが、ブログのために最近また日野作品を収納している本棚を漁っていて、こんな物を見つけたので。
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これは封筒になっていて、開けると素晴らしすぎるオールカラーの絵葉書が10枚入っているのです。

懐かしいな~。昔、中野のタコシェで買った物ですよ。
販売店であるタコシェが、自ら製作してこんな素敵グッズを作っていたのだから感激。
実際に、どんな絵柄が使われているのかを…一気に10枚、見てもらいましょう!
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貴方はどれがどの作品で使われている絵なのか、全部分かりますか?

ちなみに絵葉書の表面は全部共通で、こうなってます↓
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買ってからすぐに誰に出そうか考えた末、結局誰にも送れなかった絵葉書でした。
何故送れなかったか?
そりゃ私はこんな絵葉書が来たらかなり喜ぶでしょうが、でもシャレが通じない人に送ってしまうと、このグロテスクな絵柄だけに不幸の手紙くらいに忌まわしい物だと思われるかもしれないじゃないですか。
あいつなら大丈夫、と思っても待てよ?
葉書は当然家に着くので、婆ちゃんあたりが見たら腰抜かすんじゃないか…
とかいろんな心配してしまう、送れない絵葉書集。

これはやはり保存しといて、自分で鑑賞するのが一番いいようですね。
  1. 2008/04/13(日) 00:00:00|
  2. 古本 番外編
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日野日出志(25) 「霊少女魔子」

今回の日野日出志作品は、もう一冊だけレモンコミックスで続けさせてもらって、日野先生が一ヵ月半かけて描きおろした「霊少女魔子」‏(立風書房刊)。
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まず本を開いて1ページ目で、顔は影になって見えないが少女らしき姿をした者が、
ごしごし キュッキュッ
と、包丁をといでる絵。

そしてページをめくると…
『怨んでやる! この世のすべてを怨んでやる!!』
と言って包丁とぎ(ごしごし キュッキュッ)を終わらせた少女が、柱に縛られて震えている二人(シルエットになっていて姿は見えない)を向き、
『おまえらを殺す!!』
と言って向かってくるのです。

そこであらわになった顔はジャケにも出てるコレ↓
HINO-reisyoujo-mako2.jpg
ですが、決してこいつがタイトルになってる、つまり主人公の魔子ではありません。
魔子はこっち↓
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の絵で真ん中にいる姫カットの美少女です。
ちなみに左の太めは怪奇漫画家を目指す同級生(小学6年生)の武田由紀
右のガキはその弟で生意気な太郎

さてオープニングの危険なシーンは一度中断し、平和な小学校の世界になります。
学校の名前は"板橋区立蓮根小学校"。おおっ、「怪奇! 地獄まんだら」で出てきた小学校と全く同じ校名ではないですか!

主人公の魔子、フルネームで早乙女魔子は、とっても可愛いくて金持ちの娘な上に、ものすごい霊能力を持っていて、これまでにも数々の怪奇な事件を解決してきたそうです。
その中からの一つの事件を、この「霊少女魔子」‏一冊を使って見せてくれるそうです。

ある日、いつも通り由紀と太郎の武田姉弟が魔子を迎えに行ってから学校へ行くと、魔子は白目をむいて
『わたしたちの学校に不吉な影が見えるわ!!
きっと学校に恐ろしいことが起こる前兆よ!!』

と言って不安にさせます。

その日の給食の時間に早速魔子の予言が当りますが、突如ものすごい数のミミズが発生して学校はパニックになるのです。
続いて理科の時間には、カエルの腹を割いて内臓を調べる実験をしていると、カエル達が一斉に起き上がって腹わたを引きずりながら飛び跳ねるのです…

さらに恐ろしい事件が起こるのはその翌日で、学校の彫刻や人体模型が動き出して児童達を襲います。
魔子には見えた『憎しみと殺意を持った邪悪の霊力』がそのうしろにあって、それを何とか魔子の霊力で撃退したのですが、直後学校の窓ガラスが一斉に割れてたくさんの怪我人を出したため、学校は休校になりました。

それから仲良しな三人は魔子の家で真夜中に、小学生のくせにけっこう本格的な儀式をやって霊視に挑みます。
そして学校に呪いをかけている犯人に行き当たりますが、逆に雷を向けられて魔子、失神。
犯人さらに、正体がばれる事を恐れて包丁を持ったガラクタみたいな人形を差し向けてきました。

かろうじて魔子は撃退出来ましたが、犯人の恐ろしさと執念と殺意をいやというほど知らされて…
それでも翌日には、三人で直接対決するべく霊視した敵がいる、町はずれのどぶ沼へ向かいました。
とある罠にかけられて魔子が離れた隙に由紀と太郎が捕まってしまい、それからやっとオープニングの包丁とぎ(ごしごし キュッキュッ)シーンになるわけですね。
あのシルエットで震えていた二人は由紀と太郎だったのです。

危うい所で魔子が助けにきてくれて、人間ばなれして恐ろしい形相の犯人
HINO-reisyoujo-mako2.jpg
と直接対決。

魔子は指から霊力のビームを出して攻撃し、犯人も人形やヒルの大群なんかを差し向けてきて苦戦しますが、ついにビームをモロに喰らった犯人が倒れました。
それから犯人が誰なのか霊視してみると、やはり同じ板橋区立蓮根小学校の生徒であり、普通の小学2年生だったのに両親の離婚によって病気がちな祖母と二人の生活になり、少女はお風呂も入れずにアカだらけになっていじめられ…
唯一の遊び相手になったゴミ山の捨てられた人形たちの怨念や憎しみが、恐ろしい邪悪の霊力となって少女にとりついて恐ろしい存在になったわけです。

そして少女の学校に対する恨みや憎しみが板橋区立蓮根小学校に恐ろしい怪奇をもたらす事になったのですが、同情した魔子の涙を顔に受けた少女は元に戻り、しかも両親は和解して帰ってきたし祖母の病気も魔子の霊力ですっかり治り、学校にも平和が戻ったという絵に描いたようなハッピーエンド作品でした。


われらが学園に 悪しきをなす邪悪の霊力よ!!
この場からたち去れ!たち去れ!!
なんじ邪悪の霊力よ!!
われ なんじの悪しき相念に
因果の報いをなさん!!




  1. 2008/04/11(金) 23:43:52|
  2. 日野日出志
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日野日出志(24) 「怪奇! 地獄まんだら」

目玉をぬかれた人形は 砂に埋もれてなんと哭く
オロロン オロロン オロロン ロン
青い海見る 目がほしい


今回は日野日出志先生のサイキック・アクション・ホラー・妖怪漫画「怪奇! 地獄まんだら」(立風書房刊)。
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もちろんレモンコミックスです。

板橋区立蓮根小学校に転校してきた気味の悪い少女、星小夜子が本編の主人公。

乱暴者のガキ大将が便所でウンチしようとしていたら、小夜子が裏庭で生きたままの毛虫を食べてるのを目撃します。
見開きページ使って『くわっ』とか言ってカメレオンのように舌を伸ばして毛虫狩りする小夜子は確かに不気味ですが、驚いてウンチをもらしたままの姿でクラスメート達にその説明をしているガキ大将が可笑しくて、笑ってしまいます。
プーン プーンって本当に臭そうな描き文字と、その大量にもれたウンチが…

ガキ大将は小夜子の正体を探るために後をつけたら、催眠術で地獄の風景を見せ付けます。
それがいたずらな子供を懲らしめるためにしてはしつこく、14ページも使って恐ろしい世界を体験させるのですが、やはり日野日出志先生は現実世界よりあっちの世界を描く方が好きなんでしょうね。かなり力も入ってます。

小鬼どもを連れてる一つ目老婆(↓この左の奴)は、
HINO-jigokumandara3.jpg
生臭いよだれをたらして屍をむさぼり食い、歯につまった蛆虫までも骨のようじで食ったら『生首じゃ 生首じゃ』と叫びながら地獄の宴を繰り広げるのですが、さんざん恥をかかされた上に包丁持ったこんな奴にまで追われるガキ大将に同情しちゃいました。

さてそこまで隠す星小夜子の秘密とは!?
読者はそれを見る事ができるのですが、小夜子は廃屋のようないい感じのボロ屋に帰宅すると、まず飼ってる蛙や鼠や蛇等を、凄い勢いで全て生きたまま食べていきます。
HINO-jigokumandara2.jpg

それから百年以上前の日本の妖怪一族の話になるのですが、小夜子は実は妖怪族大魔王、ごんごろ三世の娘・まんだらでした。
巨大な地下空間で暮らしていた妖怪達の姿がまた素敵ですが、火山活動の地下変動が原因でそこは壊滅の危機にみまわれていて、絶滅の危機に瀕して闇の神の像に祈ります。
そして得た御神託が、御神眼を与えるからまんだらの眼をくりぬいてそれと入れかえろというものでした。
早速左目を入れかえて次は右目という所で…地下空間に最後の破壊がやってきたのです。

そのため地上に出て自ら御神眼を右目に入れなくてはならなくなったまんだらでしたが、初めて見る人間の世界を興奮して見学しているうちに、何と御神眼を紛失してしまいました!
それから百数十年も御神眼を探しているまんだらですが、今の地上の世界は日本妖怪が滅びて、西洋の妖怪がすっかりはびこってしまってます。
そして西洋妖怪達は日本妖怪の復活を止めるために、御神眼とまんだらの命を狙っているのだとか。
奴らから身を隠すために、まんだらは人間の星小夜子としてボロ屋に住み、催眠術で先生達をだまして小学校にもぐりこんでいるのですね。

ちなみにそのボロ屋、まんだらが来る前は怪奇漫画家が住んでいて狂い死にしたのだそうで、その著作を見ながら
『よっぽど変わった人間だったらしいわね』
なんて、妖怪のまんだらに言われちゃってます。
まんだらが読んでる本のタイトルは「血野血出志/怪奇千一夜」となってますが、日野日出志先生の自虐ギャグですね。

あとでクラスで唯一まんだらに親切にしてくれる田中という少年が漫画を読むかと薦めますが、そのタイトルは「日野日出志/怪奇全集」となっています。
彼の部屋の描写でも、並んでる本の中に控えめに「日野日出志怪奇集3」というのがあるのも見受けられます…

さてある日、その田中があの御神眼を拾うのです。
そのせいで酷い恐怖体験をし、学校を休んで震えている所をまんだらが見つけます。
田中を助け、そして御神眼もついに手に入れるチャンスでしたが…惜しい所で西洋妖怪の血吸い鴉(ジャケ画で主人公のまんだら並にでかく描かれてる奴)に邪魔されました。
それからまんだらと血吸い鴉の対決になるのですが、危うい所でまんだらの"闇の秘法 地獄火"が決まって辛うじて勝利。

一冊使ってやっと西洋妖怪を一匹倒したにすぎないのですが、これから結局手に入らなかった御神眼を見つけるため再び孤独な旅に出るまんだら・・・・


目玉をぬかれた人形は 砂に埋もれてなんと哭く
オロロン オロロン オロロン ロン
青い海見る 目がほしい



・・・完。
これが「怪奇! 地獄まんだら」
話は普通な上に中途半端な形で終わってしまいましたが、まんだらも孤独な悲しみも分かるし、激しいグロ描写や地獄の風景等、見所も多くて気に入っている作品です。


  1. 2008/04/09(水) 23:59:20|
  2. 日野日出志
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日野日出志(23) 「4次元ミステリ ゴゴラ・ドドラ」

今回も日野日出志作品で、レモンコミックス「4次元ミステリ ゴゴラ・ドドラ」(立風書房刊)。
HINO-gogoradodora1.jpg

あの「恐怖!四次元の町」‏‏に続いて描かれた"四次元シリーズ"でしょうか。
話は関係ないし、その後"四次元シリーズ"が発表される事はありませんでしたが…

「4次元ミステリ ゴゴラ・ドドラ」
まず、いがくり頭の少年・春彦がいつものように天体望遠鏡を覗いていると、となりのフーコが茶化しに来ました。
そして、冒頭からいきなりUFOの大編隊が放つ眩しい光を目撃。
それはすぐに去りますが、その不思議な光こそが恐るべき大異変の前ぶれでした。

次の日フーコが目覚めると部屋の中まで植物が侵食していて、両親は姿を消してその部屋は砂漠になっています!!
となりの春彦の方は両親も家も無事ですが、近所の家は全部森になっている。
そこへ空からサーフボードみたいな形をした物が落ちてくると、入口が開いて中から変な生物が出てきました。
家の中へテレポートしてきたそいつが言うには、
『わたしは危険な者ではありません
モドガル星雲のドームル星系第六惑星からやってきたのです』

と言う事で、つまり俗に言う宇宙人。可愛い姿をしています。

さらに説明してもらうと、今宇宙では大変な事が起きているそうで、ゴムラ星雲が大爆発を起こして、そのショックで宇宙空間に亀裂が入ってしまったのだとか。
そのために恐るべき宇宙津波が発生して、あらゆる空間や時間、次元がめちゃめちゃに歪んでしまうそうで、その宇宙の危機を救うためには…

と、ここで
『で…伝説……の ゴゴラ・……ドドラ……』
なんて謎の一言を残して死んでしまう"モドガル星雲のドームル星系第六惑星"の人。ガクリと死ぬ姿も可愛い~。

ふと気付くと外の森は砂漠化していて、次にフーコが見た光景は、どこぞの宇宙空間のよう。
春彦がいるのは見つけましたが、彼の両親は見当たりません。
どうやら宇宙津波に巻き込まれて、次元のゆがみの中に入ってしまったようです。

歩いてその星を探索するフーコと春彦。
人間よりはるかにでかいミミズがズルズルと這って襲ってきますが、それを食べるバカでかい鳥の化物みたいなのがいたりするシュールな世界から、霧に包まれて…それが晴れると今度は唐突に、あの"羅生門"の前に出ます!!
そこでは土の中からゾンビみたいなのが這い出て襲ってきて、おおっ、そいつらの絵はやっと日野日出志タッチの気持ち悪さ。
逃げに逃げて船に乗ると、また宇宙津波が発生したのか別の星へ。
(さっきまでいた所が羅生門であった意味は、全くなし)

次は水の中から、手足に水かきが付いて何でもかじって喰ってしまう悪魔の赤ちゃんの大群が襲ってきます。
この大群から逃げると次はそれが成長したような化物(人間の100倍くらいの大きさ)に襲われ、そいつからも逃げて洞窟に入ると、ありえない動物達の暴走とそれをヤリと弓矢で狩る高等生物。
その高等生物は龍と馬の合いの子のようなカッコいいのに乗ってますが、自分の姿は体が人間で、顔がどうみても…ホウケイのあれなんでございますよ。

彼らに捕らえられたフーコと春彦は、いけにえとして崖の下の宇宙へ投げ捨てられましたが、また次に目を覚ますと、そこにはまさに自分達二人の姿をした銅像が建っていました。
(「恐怖!!ブタの町」そっくりなネタです…)

そこにあの"モドガル星雲のドームル星系第六惑星"と同じ姿をした人が現れて、
『おおい みんな出て来い…!! 伝説の二人が現れたぞっ!!』
とか言うのです。
そして"伝説のゴゴラ・ドドラ"というのは、宇宙の創世記が書かれた"モドガル星雲のドームル星系第六惑星"の聖書だと分かり、春彦の誕生日にフーコがあげたお揃いのハート型のペンダントを二つに合わせて像の上にある星にかかげると、超力が発動されて…
あっさりと宇宙の危機が救われました!!

そこで発生した光が、冒頭のUFOの大編隊が発した光とかぶり、あの時点に戻る事ができたのですが、二人とも宇宙を救った記憶はなくしてます。
こうしてこの二人も普通の大人になって結婚して、平凡な人生を歩み、やがて死んでいくのでしょうね。


メチャクチャで脈略なく攻め立ててくる世界に理由なんかないけど、とにかく『きゃあ~っ!!』『げっ!!』『うわあ~っ!!』『あっ!!』とか叫ぶと次のページに化け物が出てくる、あの好美のぼる先生の「妖怪屋敷」を意識したかのような展開で見せるフリークス・ショウ的な作品でした!
HINO-gogoradodora2.jpg

いかんせん絵がイマイチなのは不満も残ります。
化け物達はともかく、主人公達の顔は普通な上に表情もほとんど同じ数パターンだけを繰り返し使われていますから。

日野日出志先生だっていろんな絵を試してみようとしたのでしょうし、いつまでも初期の超傑作と比べてもしょうがないのは分かってますけどね。


フーコと春彦はなにも覚えていなかった
夜空がいつものように静かに広がっていた…
しかし宇宙の危機はたしかに救われたのだ……
何ものにもめげない 不屈の闘志と二人の愛によって……


(↑こういうエンディングですが二人は作中ずっと逃げ回っていただけだという事を付け加えておきましょう)

  1. 2008/04/07(月) 23:59:57|
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日野日出志(22) 「吸血!黒魔城」

まだまだ続く日野日出志作品紹介は、しばらくレモンコミックスで続きますが…
今回は「吸血!黒魔城」‏(立風書房刊)です。
HINO-kokumajou1.jpg


主人公の花村亜矢(17歳)は、都内の女子高校に通う明るくて美しい少女。
成績は良く、スポーツ万能で、プロポーションもいい人気者の亜矢でしたが、地の底からの呼び声に引き寄せられて行った古道具屋"黒魔堂"で不気味な老婆から水晶玉を貰うと、その日から繰り返し悪夢を見るようになる…

実は夢の中で幻の城・黒魔城を守る"闇の一族"の妖かしの軍団に引き寄せられていて、そこのお館さまに連日血を吸われていました。
(亜矢とお館さま↓)
HINO-kokumajou2.jpg

この邪悪な闇の一族は、かつて高僧によって城ごと水晶玉の中に閉じ込められていたのですが、亜矢を引き寄せて七日目の夜の儀式さえ完了すれば、水晶玉から逃れられると言います。

闇の一族の守護神である不気味な像も出てきて、まさに亜矢がいけにえになろうとしていたその時、黄泉の国の武将達、幻の軍団が攻めてきて、亜矢は危機一髪で助かりました。
真っ先に助けてくれた青年が隼人というイケメン。

この隼人が、次の夜も夢の中で闇の一族に引き寄せられた亜矢を助けてくれて、長々と闇の一族についての歴史なんかを語ってくれるのですが…
昔の武将で鎧姿の隼人が、現代人でパジャマ姿の亜矢を白馬に乗せて普通に語ってますが、読者からは違和感があります。
そしてこの図はあれですね、少女の憧れの"白馬の王子様"ってやつですか。

最後は隼人に頼まれた亜矢が、自ら黒魔城に乗り込んで昼間は棺桶で寝ている城主の胸にクイを打ち込んで倒すのです!
って、これは完全に西洋の吸血鬼神話のパクリネタですが、まぁいいでしょう。

エピローグで亜矢は、以前から文通していた星野一郎(日野先生の本名と同じ名字だ)に会うため、夏休みに北海道の牧場まで訪ねて行きます。
そしてこの星野一郎は、いくら北海道の人だからって馬に乗って迎えに来るんですよ。

さらに星野一郎の顔は…あの助けてくれた幻の軍団の隼人と瓜二つ!!
隼人にはいいなずけの綾姫を黒魔城の城主に血を吸われて奪われた苦い過去があり、その綾姫と亜矢が瓜二つという設定でしたが、二人の『運命の出会い』を演出したかったのでしょう。
さらに、実は星野一郎は文通の時に花村亜矢に銀の鈴を贈っていて、あの夢の世界で隼人が綾姫に銀の鈴を贈っていた。

おいおい出来すぎだろう、とか思いますが、あの夢の世界は全て夢見がちな年齢の少女である亜矢の妄想だった、と深読みしてみたらどうでしょう。
たちまちサイコホラーの要素が加わってくるというものではないですか。

そう、日野作品においてはストーリーが単純だとか出来すぎだとかはさほど重要ではないのです。
が、この「吸血!黒魔城」‏はまず、絵がちっとも怖くない!これは致命的ですね…

ひばり書房の単行本では、被害者や普通の登場人物すらも怖い日野日出志絵が、何ですかこれは。
そもそも主人公が美人でスポーツ万能の女の子って…
あの異形の者への愛を表現している名作群には及ぶべくも無い薄っぺらさを感じる、ちょっとダメな長編でした。

鬼気迫るような迫力を感じるシーンがないし、とても私が絶賛できる作品ではないのですが、まぁ最後まで読んだら恋愛ものだと分かるし、少女向けを意識して描いちゃったのでしょうね。
いや普通に恋愛物を楽しみたい読者もいるのでしょうし、私から見ても夢の世界での幻想的な雰囲気とか、化け物の合戦シーンでは少しは日野キャラらしい奴が出てきたりとか、いい所もあるのですよ。

何だか無理矢理いい所を探さなくちゃいけないようなはめになりましたが、これだって私には大事な日野日出志作品です。はい、終わり。


湖水を血の色に変えて戦う呪われし運命
未来永劫にわたって戦う無限の地獄
それは幻の戦
それは妖かしの戦


  1. 2008/04/03(木) 23:59:08|
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日野日出志(21) 「黒猫の眼が闇に」

黒猫の眼は 原色の人間模様を覗く 七色の万華鏡
黒猫の眼は 人間の姿を屈折させて 投影する 七色のプリズム
黒猫の眼は さまざまな人間を凝視して 変化する 七色のガラス玉


そんなわけで今夜の日野日出志作品紹介は、レモンコミックス「黒猫の眼が闇に」‏(立風書房刊)です。
HINO-kuronekonomegayamini1.jpg

これは日野日出志先生が、得意とするスプラッター描写へと安易に走るのを避けて、人間心理の奥を描くサイコホラーの傑作を描くべく意識したのであろう力作です。

これは人さまから忌み嫌われる不吉な存在だと認識している、黒猫の独白から始まります。
『おれは ある工場地帯の片隅にある ゴミすて場の下水管の中で生まれた……………』
というのは、あまりにもいつもの日野作品の舞台そのまま描写で微笑ましいです。


確かに『黒猫=不吉の象徴』という印象は、熱心なクリスチャンがほとんどいない日本においても未だ根強く残ってますよね。
エドガー・アラン・ポーの傑作短編ゴシック小説「黒猫」(私の敬愛するルチオ・フルチ監督も映画化してます)を例に出すまでもなく、昔の作品ではさらに強く黒猫は気味の悪い存在として扱われていた印象があります。
魔女の最も一般的な使い魔ともされてるし、イタリアでは現在でも黒猫というだけで一年に何万匹もが迷信を信じる市民に殺されてるそうです…
一番アイドル的な人気を博したのは妖怪ヘヴィメタルバンド、陰陽座のボーカリストである黒猫ちゃんでしょうか(笑)

ちょっと思い出してみるだけでも、黒猫に限らず人間と馴染みの深い"猫"を主題にした、または主人公にした作品って漫画や小説以外にも映画、昔話、伝説、落語…かなり多いですよね。
有名漫画だと藤子不二雄先生の「ドラえもん」楳図かずお先生の「猫目小僧」を思い出しますが、いやこれは単純に猫漫画とは言えません。
杉作先生の「クロ號」こそが黒猫を主人公とした漫画の最高傑作だ!なんて思ってみた直後、日野作品を語る場であんな可愛い猫漫画の名前を出した事に違和感を感じました。


脱線はここまでにして「黒猫の眼が闇に」ですが、これは冒頭の黒猫が人間に興味を持ち、その狂った生態を見ていくという話。
あくまでこの黒猫は狂言回しのような役割に留まり、人間を観察していくだけ。
最初の記憶では兄弟猫が他に三匹いるのですが、初めて見た人間たちによって黒猫は気味悪がられて追い払われ、兄弟猫は全部可愛がられて連れて行かれました。

それからの黒猫はいつも探検していたゴミの山以上に外に広がる未知の世界に好奇心を持ち、冒険の旅に出る…
と、ここまでがオープニング。
これから四話構成で様々な人間達を見ていく事になります。


まずは「腹話術師の男」
黒猫が食い物をくれるという理由で住み着いた先は、"日の出大サーカス"という名のサーカス団で売れないピエロをやっていて、赤鼻と呼ばれている酒好きオヤジの部屋。
誰にも笑ってもらえないピエロ様…サーカス団の鼻つまみ者である赤鼻は、それでもサーカスが好きで20年も一座にいるのですが、問題も起こしてついに一ヵ月後にクビにすると宣告されました。

その翌日から赤鼻が部屋に篭って作ったものは、腹話術人形の太郎。
HINO-kuronekonomegayamini3.jpg

この太郎が大当たりで、おかげで赤鼻は一座の花形にまで登りつめます。
…が、これは太郎の人気であって赤鼻の人気ではないと悩み、太郎は目つきが嫌らしくなってきて嫌味も言うようになり(人形ですが)、飲んだくれがいっそうひどくなります。

嫌な目つきで笑いながら、太郎は言います。
『ぼくの人気が高まれば高まるほど お父ちゃんの影はうすくなってゆく……
それを恐れているんだろう!?
お父ちゃんは ひょっとしたら自分自身がいなくても
ぼくの人気には ひびかないのじゃないか? そう考えることを恐れているんだ!!』

さらに
『今や あやつっているのはぼくの方だ』『おまえは能なしさ』『おれがいなけりゃ ただのキップ切りだ!!』
等とまくしたて、激高した赤鼻から執拗にハンマーで叩かれて粉々になってしまいました!

そして物音で集まってきた人々が見たものは…腹話術人形のようなメイクをして、
『はあ~い みなさんこんばんは~~っ!!
ぼく太郎で~す!! へへへ…ぼくが太郎で~す!!』
 
と言う、狂った赤鼻!
なんという醜悪さと恐さか…
腹話術人形の太郎が言ったように思えた事も、成功を信じられない自分の心の声とか、そんな所だったのでしょうが、狂った人間は恐い(昔、海外の怪奇小説でほぼ同じ筋の話を読みましたが)。

黒猫はその夜のうちに赤鼻の元を去り、その後どうなったかは知らないそうです。


次は「ある怪奇漫画家」と題して、黒猫は怪奇そのものの生活をしている漫画家の家に住み着きます。

そこには大量のナメクジ、ミミズやゴキブリ等が寄生しているのですが、それを黒猫は気に入って住み着いたんだとか。
苦手な人にはかなり気持ち悪いのですが、ちゃんとこの虫達を食べる時の描写もあって、
『ゴキブリなどは 歯ごたえがあって最高のごちそうだ
ミミズやナメクジはキュッとかんだ瞬間に ブチュッと汁が出て そりゃあなんとも言えない味なんだ』

ですって。
怪奇漫画家自身も、野犬を捕まえて吊るし、バットで殴り殺して鍋にして喰ったり…
ゴキブリ、ミミズ、ナメクジ、マムシ、ムカデとトカゲとイモムシのごった煮鍋なんかも喰ってますしね。

この怪奇漫画家が住むボロ家に原稿を取りにくる、編集者とのやり取りがおかしいです。
最後は怪奇漫画家が、時間とあらゆる次元を超越した永遠不滅の存在となって原稿用紙の中に入り込んでしまいました。
彼が漫画の中から手を突き出してきたのにビックリした黒猫は、そのまま後も見ないで逃げ出し、二度とその家には近づかなかったので、またもその後の事は知らない、という結末。
「黒猫の眼が闇に」収録の四話の中で、これだけコメディ色もあってシュールな作品でした。


次は「少年と黒犬」
母子家庭に育ち、孤独で、そしていじめられっ子の少年・ひろしが黒犬と仲良しになり、その黒犬を使っていじめっ子達を次々殺して、河原の片隅の深い穴に死体遺棄していきます。

ある日母親が新しい父親を連れてきますが、その父親は黒犬と仲が悪い。
ついに黒犬は父親を殺して、一匹の力であの穴に死体を棄てるのですが…
それを知らない母は、父親が帰ってこなくなったのは黒犬のせいだと泣きます。
そんな母に哀願されて、ついにひろしは黒犬を殺すことを了解しました。

泣きながら包丁突き刺して黒犬を殺したひろしは、あの穴に死体を棄ててから家に帰ると…
家に黒犬がいたため、血相を変えてひろしが穴に確認に行くと、あったのは母親の死体でした!
ひろしは発狂し、ずっと傍観者として見ていた黒猫も、これでまた次の土地へ去って行く。


最後は「じいさん ばあさん」
とにかく仲が悪くていつも普通ではない、実にすさまじいケンカばかりしている老夫婦の所に居を落ち着けた黒猫。

昔、じいさんは彫刻家で、ばあさんはそのモデルをしていたそうなのですが、今やこの二人によって毎晩繰り広げられるケンカは汚すぎる罵り合いの口喧嘩に始まり、必ず取っ組み合いにまで発展します。
さらには水をかけあったり、とにかく憎しみをぶつけ合うのです。

黒猫は二人それぞれから話を聞かされてうんざりしているのですが、ばあさんは
『あのじじいときたらサ 障子の破れ目にケツの穴をくっつけて
あたしの部屋に屁をこき入れるんだからねえ いったいどういう神経なんだろうねえ…………
あたしゃあんまり くやしいもんだから 二度目の時には 障子の穴にハシをつき刺してやったさ…………』

と言って、ひ~っひひひひひひと笑い、じいさんは
『あのばばあときたひにゃあ わしの部屋の出入口にクソをたれておきゃあがるんだから
わしゃあ ふんづけてひっくり返ってしまったがな
わしゃああんまり頭に来たもんで ばばあの部屋の出入口に画ビョウをまいてやったら ふんずけてひ~ひ~言っておったわい……!!』

と言って、ふっひひひひひと笑う。
二人とも下品で、その場面を想像するだに笑ってしまいますね。

ある日朝からばかに静かだと思ったら、ばあさんが風邪で寝込んでしまって…その夜のうちにポックリと息をひきとってしまいました。
それをじいさん、『ざまあみろ わしよりも早くくたばりやがって…!!』と言いながらほうきで死体を殴ってます!
黒猫もあきれてますが、さらにじいさんは死体に物を投げつけ始め、すさまじい形相で
『ひ~っひひひ くやしかったら 生き返ってみろ!生き返ってみろ!!』
と叫んでます。寂しさの裏返しとか、本当に生き返って欲しいという思いがあるからなのでしょうか?

いたたまれずにその家を去った黒猫が、一ヵ月後に再びここへ訪れてみると…
『ええい!このくそじじいめっ!!』
『やかましい!くたばりぞこないの ゆうれいばばあめっ!!』
『こ…このきちがいじじいめっ!!』
と、何と生き返ったばあさんとまたケンカしているじいさん!

いや、良く見るとばあさんの方は彫刻でした。
ケンカ相手を亡くして寂しくなったじいさんが、ばあさんの彫刻を作り、ばあさんの声色まで使いながら一人芝居のケンカをしているのですよ…恐いっ!
まるでアルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」におけるノーマン・ベイツ!!

何が何やらわからずにそっとまたここを離れた黒猫ですが、『あの彫刻はふるえる手で造ったじいさんの一世一代最後の作品なのだろう』と、感慨深くなっています。
そして、また次の土地、次の人間の元へ…


結局この黒猫は何をするわけでもなく、ただ人間の狂気を傍観しているだけなのですが、まぁ別の考え方をすれば、この黒猫が近寄った人間は狂っていく、とも取れるわけですね。

最後に単行本のカバーに載ってた、この時の日野日出志先生の写真も載せておきましょうか。
HINO-kuronekonomegayamini2.jpg


こうしておれは 今まで色々な人間たちを見てきたが
人間ほど不可解で怪奇に満ちた生きものは 他にはいないのではないだろうか………………
とうていおれには 人間の心の奥底を知ることはできそうもない……
しかしまた考えてみれば 人間ほどおもしろい生き物もいないような気がする
これからもおれは 色々な人間を見てゆくだろうが
おれを思うとおれは 楽しくてたまらないのだ………………
人間……!! 人間……!!
人間とはいったい何だろう…………



  1. 2008/04/01(火) 23:59:57|
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プロフィール

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Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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