大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

旅行・紀行・街(106) 東京都三鷹市 6 三鷹阿波おどり…等

阿波踊り・・・私のブログでは今まで杉並区高円寺のしか紹介していませんでしたが、日本各地で開催されており、三鷹市でもやっている事をご存知でしょうか!?
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それも今年、2011年度でもう44回目というのだから歴史も長い『三鷹阿波おどり』へ行ってみました。開催場所は三鷹駅南口中央通り。
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踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々…
そう唄われる"よしこの"のイメージでか、阿波おどりを未だに『踊る阿呆』が勝手にバカ騒ぎしている物だと思う方もいるようですが、実際には長い期間厳しい練習してきた者達で同調して踊るマスゲーム(集団体操)に近いもの。
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ヤットサーヤットサー!なかなか見ごたえがありますよ。
この数日後にはより大規模な高円寺のもあるので、見学は軽くで…

また来年~
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ちなみに三鷹駅では現在、構内に『群馬ですが牛もいます』というコピーのでかいポスターが飾られているのですが・・・
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この振り向き牛はピンク・フロイド「原子心母」(Atom Heart Mother)のジャケットそのままですね。群馬の田舎で農場を営みながら、プログレッシブ・ロックを愛し続けている同士がいる!いいじゃないですか、次もヒプノシスのジャケットから元ネタを頂く路線でいって欲しい。

関係ない話ですが、私が愛する苦悩するスーパーヒーロー「スパイダーマン」(もちろん池上遼一&平井和正による日本の劇画版)こと小森ユウの住所が三鷹市で、『東京都三鷹市井ノ頭町1-2-9』となってました。
佐藤秀峰先生「新ブラックジャックによろしく」でも主人公はここに住んでいて、三鷹駅北口が出たりしてました。

さて今まで三鷹市紹介を続けている上で、あの"三鷹の森ジブリ美術館"や太宰治に森鴎外などの文学関係縁の地、"国立天文台三鷹キャンパス"に"三鷹天命反転住宅"…等と有名観光地も行ってましたが、今回は最近行った飲食店だけにしておきます。
あと、住所だと武蔵野市になる所も多々ありますが、細かい事は抜きにして三鷹駅近くは全部三鷹!て事でお願いします。

おなじみの"一圓三鷹北口店"
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私は三鷹に行くとここでビールも〆のラーメンも済ませてしまう事が多いので、他のお店をあまり紹介できませんね。

ここでは、とにかくまず餃子でしょう。
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ちょっと前の話になりますが、今年の4月26日…突然、来日中のグラミー賞ピアニスト・上原ひろみ様が三鷹の地に降り立ち、テレ東のカメラさん達を引き連れて一圓三鷹北口店に来店したそうです。そこで判明したのですが、学生時代の音楽留学決まるまでの間、この一圓でバイトしていたのだとか!
貴重なバイト経験をしたこの店へ訪れ、当時を知る店員さんとハグし、ラーメンと餃子を食べて行った…
5月29日にテレ東で放映された『ソロモン流』という番組にて、その模様が3回も映った所を(予告などで繰り返されたので)しっかりと確認させて頂きました!

今までかなり通ってきた店に、まさか普通にCDで聴いていた上原ひろみ様が働いていただなんて…もうビックリ。彼女はジャズピアニストなので、ジャズなんて高尚で洒落た音楽を私が聴いてるなんて、と思われるかもしれませんが、上原ひろみ様はプログレファンにまで広く聴かれていたのですよ。
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何より、この2004年のアルバム『Brain』では1曲目が「カンフー・ワールド・チャンピオン」というタイトル、2005年の『Spiral』では「リターン・オブ・カンフー・ワールド・チャンピオン」というタイトルの曲で、BRUCE LEEへオマージュを捧げているのです!

世界のHiromiを輩出する小さな一因になった一圓三鷹北口店も、早速その事実を公開して宣伝していました。
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サインも飾ってました。
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ついでに…!?店長の絵にもサイン貰ってますね。
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その絵の川原店長こそ、私が北野武、高倉健、三上寛、水木しげると並んで尊敬する"オヤジ"である事は前にも書いた通り。

さて私の胃の中に納まった最近のらーめん史へ移ります。
まず、一圓らーめん(激辛で)。
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ここではメニューには載っていない『激辛』で注文して作ってもらう事が多く、これが辛い物好きにはたまらない美味しさなのです!
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手前味噌ラーメン(ピリ辛)、
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手前味噌ラーメン(激辛)。
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上連雀らーめん(カレー風味のこれも激辛に)。
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どれが三鷹らーめんで、どれが西久保らーめんだったか・・・
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三鷹らーめん(確か特注の野菜増し+激辛)。
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そしてこれは一体?特注で何か入れてもらったら、ベースが何だったのか分からなくなりました。
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とんこつらーめん九州男児。
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坦々麺。
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広東麺。
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あんかけ揚げそば。
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キムチチャーハン。
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もちろん、ビールとおつまみも。
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とにかく、様々な人々がこの店でお腹を喜ばせてきたわけです。
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前に『餃子だっこ!!』のイラストを載せましたが、これは新作の『餃子の日』モノ。
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『丼ぶりの中へ 麺の中へ ちゃぷちゃぷ』も萌え~。
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初音ミク、紅、L。
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続いて店員さんを撮影。
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それでは、
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一圓三鷹北口店から、サバラー!
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続いて…三鷹では北口店しか行った事なかった一圓ですが、先日ついに"一圓三鷹南口店"へも行きました!!
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南口店では、北口店に無い物を頼もうとメニューからいくつか候補決めましたが…さらに通常メニュー外の物もあり、結局頼んだのは『印度カレーらーめん』でした!
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あとは三鷹で美味いらーめんを喰いたくなったらここ、"らーめん ぎょうざ なないろ"
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ハートランドビールの中瓶を置いてるのはポイント高い!
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そして、なないろらーめん。
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チェーン店の"日高屋"では、
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チューハイと餃子、
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中華そば(味玉入り)、定番の野菜たっぷりタンメン。
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三鷹駅北口出てすぐの立ち蕎麦屋で、きしめん。
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こちらは三鷹駅からはけっこう離れてしまうので滅多に行けないのですが、天文台の近くで東八通り沿いにある…
"パッパパスタ 三鷹店"です。
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いわゆるファミレスなのでしょうがここは気に入ってて、東京で三鷹にしかないのが勿体無い!
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居酒屋では、まず・・・
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"大衆酒場 凧凧"(はたはた)。
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運が良いと千葉ちゃんテーブルを使えます。

とりあえずビールなどを頼み、
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毎回頼むのはグラタン類と刺身類で、他に魚料理や揚げ物など…
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ガヤガヤして楽しい雰囲気ですな。
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逆に騒ぐより、渋く静かにという気分の時は"婆娑羅"(basara)へ。
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お酒と・・・
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それにピッタリのつまみを出して頂けます。
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呑み過ぎには注意!
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続いて、このマニアックな細い路地には・・・
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"串かつ専門大衆酒場 じゃんじゃん"
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次は"うまいごはん家"
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セルフサービスの店で、居酒屋チェーンのモンテローザグループが運営する所にしてはマシだと思いますよ。
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こちらは"酒道ハナクラ しぞ~かおでん"
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若者向けの安価な店で…置いてる漫画が「カメレオン」「カイジ」、しかもコンビニ版というのが頭悪そうでいいですね。
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もちろんメインは静岡おでんです!
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"中華銘菜 さいかん"
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最後に紹介するのは、"うどん屋 五頭"(UDON STAND GOZ)。
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1階のカウンター席、
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背中の座敷わらしと共に・・・
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2階のテーブル席へ。
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人通りの少ない路地に最近オープンした店なのですが、訪ねてみてすぐに気に入りました。
また屋号とメニューからにらんだ通り、店主は私と同じ新潟県出身!そう、新潟に五頭山って山があるのです。

つまみは好みの物・味付けが多く…
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お酒も進みます。
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〆のうどんも、もちろん美味い!
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我々のバックに写る、
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このキノコ頭の看板娘。
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例の新潟出身の店主は料理を京都で修行して、この嫁さん(キノコ頭ちゃん)と実弟とで店を運営しているのです。
仲良しになった、キノコ頭ちゃんと記念撮影!
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彼女は好きな漫画が「AKIRA」であるとかで、連れの大友克洋マニア(右の男)がニヤリ。

もいっちょ!
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…こうしてみると、うちの秘密結社員(座敷わらし)と髪型同じか。

最終的には友人宅飲みになる事も多いのですが、
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たまに"慶和ロケット三鷹店"でテイクアウトしてきてつまみにし、
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ディジュリドゥやヒーリング・シンギングボールの音色を聴きながら癒されたり…
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今夜はここまで。おやすみなさい。
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  1. 2011/08/31(水) 23:59:17|
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劇画(131) ジョージ秋山 2 「アシュラ」

悪を行えば死んで地獄 善を行えば極楽へ行けるという
そんなことは迷信だ 生きているうちが地獄だ


今夜はジョージ秋山先生の「アシュラ」(朝日ソノラマ刊)。
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読む者にトラウマを植え付け続けてきたジョージ秋山作品の中でも、特に問題作として有名ですね。
連載雑誌は1970年から翌年まで週刊少年マガジン(講談社刊)で、最初の単行本は1972年に立風書房より全2巻で上梓されたのですが、私が持ってる画像のは1977年に出たサンコミックス版で全3巻です。

絶頂期と言えるこの同時期に代表作「デロリンマン」「銭ゲバ」を描いており、「アシュラ」終了頃にはあの「告白」を描き上げて引退宣言の後に放浪の旅に出たわけですね。そのどれもメジャー誌を舞台にして、次々とセンセーショナルな名作を生んでいたのです。

さて、「アシュラ」の内容を語る前に。
第1話から強烈なカニバリズム描写があったために、有害図書に指定する地域も出てマガジンの回収騒ぎが起こった事があまりにも有名ですね。それは当然ながらまだ作品の本質も分かってないのに、ただ気持ち悪い作品だから害だと決め付ける、いつもの大衆が起こすヒステリーじみた行為だと思いますが。
ちゃんと読めば分かるのですが、人間の意識が持つ善と悪とは、人と獣の違いとは何か、生まれ育った環境が何をもたらすか…等を痛烈に問いかける高尚な内容を持っている傑作が「アシュラ」なのだから!
これが文学だと、例えば「罪と罰」のように有難がるくせに、まったくもう…なんて偉そうな事を書いても、私なんかは単純に人間が残酷に殺されたり食われたりする描写があればあるほど喜ぶタイプなので、こういう奴を許せない方は世の中たくさんいらっしゃるものです。

では物語を追ってみましょう。
まずはページを開くと、いきなり見開きページで女が赤ん坊の尻にかじりついている絵!それから疫病が蔓延し死体が転がっている死の描写が長々と続き…冒頭より早くもただ事ではない作品の予感を感じさせます。
どうやら作品舞台は中世で「羅生門」の時代といいましょうか…
続いて登場した狂女。この女・藤乃は妊娠しており、動物的本能で生きるために人間の死体を…いや時に生きてる人間も殺して人肉を食らってこの時代を生きのびていました。ついに子を生むとその子を育て始めるのですが、食物はもう死体一つ手に入らなくなり、飢餓の極限まで追い詰められた時!
これが最後の食料か…自分が生んだ赤ん坊を火の中に放り込み焼いて食べようとしますが、この時起こった奇跡のような自然現象によって赤ん坊は生き残り、その子こそが本編の主人公・アシュラなのです。

重たく凄惨なアシュラ誕生の物語でスタートした今作は、この後いかにアシュラが生き抜いていくかも描かれますが、まずちょっと大きくなった彼は化物じみた風貌と生きるために素早い動き・鋭い牙を身につけます。
途中で何とか人間性を失わずに飢饉を乗り切ろうと頑張る愛に満ちた家族が登場しますが、アシュラがそこの息子を殺して喰い、残りも生きるために家族でさえも喰い合う凄惨な状況になっていきます。
どんなに愛だの夢だの友情だのと語ってたって、人間なんて食物が無くなるだけで地獄になるのです。実際に我々もここまでの『飢え』という事実の前には、人間らしくとか言ってられないだろうし信頼などもすぐに失われるでしょう。

暗い世界で物語は続きますが、この作品でアシュラに『救い』みたいな物があるとすれば、まずはある日に雨の中で偶然出会った乞食法師の存在でしょう。自分が人間である事も知らないような状態のアシュラに「南無阿弥陀仏」を教え、初めて一応は人らしい生活をさせるのです。

続いてアシュラは"散所"という世間から見捨てられた土地で、最低の生活ながら中に入って働かされる事で集団のコミュニケーションも少しだけ覚え、実の父であると判明する散所太夫と出会います。
散所太夫は土地の権力者ですが、アシュラの母が妊娠したら『新しい生命をつくる それは人間として罪なことじゃ』と言って捨てた男でした。彼の中で息子・アシュラに対する親心は生まれるのか?

アシュラは生の意味は分からずとも、とにかくそんな時代と環境の中でも懸命に生きます。
そのためには他人を殺してでも何でも…とにかく生への執着が強く、斬られて崖から落ちて手足が折れて凄まじい姿になった時も、這って泥水を飲み草を食べて生き延びました。
そして出会ったのが、二人目の『救い』の人物・若狭という少女です。彼女はアシュラに言葉を教え、多分人の心や恋も教えた事になるのですが、後に飢餓によって死にかけた時にアシュラが持ってきた『人肉』を父親と奪い合いってまでケダモノのように喰らいつき、かつてケダモノだったアシュラはその姿を見たくなくて必死に止めるという立場の逆転が起こってしまいますが。

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両親の事が分かり、それを共に殺そうとしたアシュラは、再び乞食法師の手に渡ります。この頃はもう、ケダモノとして本能のまま人を殺して喰ってた時と違い、人間的感情を得てしまったばかりに悩む事も覚えて涙したり…心が痛くて苦しめられもするのです。

全篇殺人やカニバリズム描写だらけの「アシュラ」は"死"で溢れているからこそ、頭の悪い私のような読者にも"生"を考えさせるテーマが見えてきます。
"人間"を問う乞食法師VSアシュラの問答があり、乞食法師は自ら片手を失ってまで人の道を説くのですが、アシュラはその直後に幸せな家族を意味も無く皆殺しにしてみせます。今度は獣が空腹を満たすためでなく、ついに得た人間の心が何かを満たすために…

アシュラと違って満たされてる家族殺しを繰り返したため、追われて山狩りされている時に散所の子供達が飯をくれてお互いに涙を流す名シーンがあるのですが、これで本当に仲間になったのでしょう。アシュラはあとでその恩返しのつもりか、子供達をろくに食わせずこき使ってた小頭を殺して食料を奪い、都へ向かう道中に彼らも引き連れて行く事となるのです。
そこでまた地獄のような光景もあるのですが…子供達だけでさわぐ様はユーモラスな部分もあり、暗い作品世界の中で清涼剤と言える部分かもしれません。最後にまた現れた、狂った母親との衝撃の再会を経て、最後は『生まれてこないほうが良かったのに』とつぶやいて終わります。

どこかで「アシュラ」が紹介される際には必ず出てくるのが『うまれてこなければよかったギャア』と泣き叫ぶ有名なシーンですが、この作品中で何度も何度も出るアシュラの台詞であり、テーマでもあります。
それが2008年になってスタジオジブリのアニメ映画「崖の上のポニョ」で宮崎駿監督は『生まれてきてよかった。』というキャッチコピーを与えて「アシュラ」への返答としたのは記憶に新しいですね。(関係ないか…)

マガジンの連載は打ち切りという形で、暗いまま救いのないラストを迎えた「アシュラ」ですが、実はこの後発表の場を週刊少年ジャンプ(集英社刊)に移して、それもマガジンでの連載終了から10年も経った1981年に読み切りで完結編が描かれています。その話は単行本に載らないもんだから、そのジャンプ(1981年26号)の値段が古本市場で高騰していたのですが、『ジョージ秋山捨てがたき選集 第2巻』として…
2009年に「銭ゲバの娘プーコ/アシュラ 完結編」(青林工藝舎刊)が突如出版されました!
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何と「銭ゲバ」「アシュラ」の関連作品を一冊に収録ですよ。

メインとしている「銭ゲバの娘プーコ」「銭ゲバ」の正式な続編で、カップリングの「アシュラ 完結編」と共に初単行本化です。
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(素敵な裏ジャケ)

ついに誰でも読めるようになった「アシュラ 完結編」(掲載時はタイトル同じ「アシュラ」)は、都から戻ってきたアシュラが描かれます。
都でのエピソードは丸々カットで…でもアシュラは結局何も変わらなかったというのか、やはり幸せな一家を惨殺して食料を奪っています。他に乞食法師、若狭、七郎、散所太夫らの後日譚も描かれるのが嬉しいのですが、やはりページ数が少ない中で一気に進むのが勿体無い。
ラストは何と、アシュラが頭を丸めて仏道修行へと旅立つのです。これがジョージ秋山先生がどうしても描き加えたかったラストか…本編とは描いた時代背景が大きく変わってますので、本編より明るくなって救いを持たせていますね。良いシーンもあるものの、時が経ち過ぎてテンション落ちている感じもして、マガジン版で完結としていた方が良かったと思います。まぁ描いたものは仕方ない。

「アシュラ」のスピンオフ作品は他にもあり、こちらはマガジンで本編を連載していた時期・1971年1月に朝日ジャーナル(朝日新聞社刊)に掲載された2ページ漫画「アシュラ外伝」です。
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そんなレア漫画がまた、「銭ゲバの娘プーコ/アシュラ 完結編」の表紙カバーを外すと本の本体に載っています。何というサービス精神!
↑にも載せてみましたが、このサイズだと字が細かくて読めませんね。まぁ公害問題を絡めて描いてますが、アシュラが出てくる必然性も全く無い作品です。

こちらは1988年に日本文芸社から復刻された単行本、上中下の全3巻。
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サイズが大きい(A5版)事もあって買い直した物でサンコミ版と同編集ですが、上巻の最初にオマケ的なオープニングページがあるのが嬉しいかな。
しかしこれらは…今現在出ている幻冬舎文庫版も含めて、実は後半の40ページほどがカットされているのです。そのカット部分で「銭ゲバ」の蒲郡風太郎に似た蟇王丸という、アシュラのライバルが登場しているのに…しかも加筆して左目に眼帯している…

まぁその部分も、1993年にぱる出版から出版されたハードカバー版で読めるようになりました。これでようやく、初出に近い状態の「アシュラ」が読めました。
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『人肉を二十四時間地中にうめておくとくさみが抜けて食べやすくなる』『腐ってる人の肉はよく焼かないとダメ』等、実生活で役に立つ豆知識も得られるので、興味のある方は是非実践してみたらいいと思います。
人肉を喰わなくてはならないほどの極限状態を舞台にしているので、そういったタブー的な部分ばかりが目立って語られる本作ですが、こんなにも真摯に生を肯定し、メッセージを投げかけてモラルを問う作品は珍しい…真の名作だと思います。


阿修羅とは迷いの世界のひとつじゃ
いかり なげき 苦しみ きずつけられ 苦悩する人間とでもいうのかな・・・・
戦っても戦ってもやぶれる やぶれるたびにきずつき また戦う
絶望的と思いながらも かなしくむなしい抵抗をくりかえす
一生死ぬまでくりかえす あわれであわれであわれで いたいたしい
それでも生きていかねばならぬのが人
阿修羅は おまえだけじゃあないのだぞ うん



  1. 2011/08/26(金) 23:42:16|
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ゆでたまご先生との邂逅

前回「ココ」で紹介した早見純個展「少女忌」
あの日は衝撃的な続きがありました。

馴染みのない板橋から、杉並区高円寺に戻ってようやく緊張も解けたので反省会として"魚の四文屋"で呑んでたのです。
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この店は店内にたくさんの有名人サイン色紙が飾ってあるのですが、私にとって特に一際輝いて見えたのは子供時代の大スター・ゆでたまご先生の「キン肉マン」色紙ですよ!
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世代的にど真ん中の「キン肉マン」育ちなので、大流行していて田舎の小学生男子は全員が好きだったのはモチロンですが、私は特に同級生の誰よりも好きだったと思います。
単行本は何百回も読んでいたので超人達の出身国やパワーなどのデータは全て把握し、扉ページの紹介のみで本編には登場しない超人も全部覚えてたし、キン消し集めやボードゲームなどにも熱中していました。
今でもキン肉マンを見るとあの頃に戻ってワクワクします。作者直筆のキン肉スグルを見ながら呑む酒の何と美味い事か、などとつぶやいたりしていたら・・・

えーーーーっ!?
・・・あ・・・あの方は・・・・!!!

お店の奥の席に、何とゆでたまご先生ご本人がいらしたわけですよ!
おっとゆでたまご先生といえば嶋田隆司原作&中井義則作画という二人が合わさってのペンネームですので、二人いなくてはならないのか。お店にいたのは、メディアなどへの露出も多い嶋田隆司先生の方でした。それに気づいてからは連れとの会話も上の空となり、ドキドキしながら確か1時間以上…
ついに意を決して、声をかけました。いや、お店の人にお願いしちゃいましたけどね。

知らない奴(しかも男)が声をかけてきて気持ち悪いゾ、なんて反応をされたら、それは悲しいけどかつてのアイドルに振られたらそれはそれでネタになるかな…ゆでたまご先生は正義超人ではなく残虐超人、いや悪魔超人であった!とか語れるわけだし…とかまぁそんな事をウジウジ考えながらも、清水の舞台から飛び降りるつもりで声をかけた(店員さんが)結果、あっさりと普通にお話してくれました。
歳を聞かれたので答えたら『ドンピシャでキン肉マン世代ですね』と喜んでくれましたよ。そう、「キン肉マン」は子供向け漫画なので、出会うタイミングによっては全然好きになれなかった可能性もあります。人気に火がついてTVアニメ化された1983年辺りに小学生…それも低学年でなかったなら、あそこまで熱中出来なかったでしょう。あの時は本当にいつもいつも「キン肉マン」の事ばかり考えていました。『キン肉星王位争奪編』の時に作者が急病とかで長期休載した事があって、その時は子供ながらにゆでたまご先生の事が心配で心配でしょうがなく、回復を祈ったものです。まぁ続きが早く読みたかったからですが。

「キン肉マン」目当てで小学1年生からずっと週刊少年ジャンプ読者だった私は、当然次の「ゆうれい小僧がやってきた!」「SCRAP三太夫」「蹴撃手マモル」というジャンプ掲載の3作品もリアルタイムで読んでいて、やはり大好きでもありました。一応これらのタイトルも口に出してみたのですが、アレ?無反応だったような…お互い酔ってたからかな。かつての少年読者も、今や酔っ払いオヤジの歳ですから。でもでも、ゆでたまご先生の前に立った時だけでも、私は小学生の目に戻っていたはず。

あとですね、サインを頂いちゃいました!
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これも…凄い事です。だってほら、いくらなんだって普段は色紙なんて持ち歩いてないじゃないですか。それが前述した通り、ここで呑んでるのは早見純先生の個展帰りだったためにもう一枚色紙が残っていたという、驚くべき神(紙)のタイミング!
しかし一日で早見純先生とゆでたまご先生とは…どちらも人生の一時期に熱狂した漫画家ですが、面白いくらい対極と言える作風ですね。

ちなみに二人で一つのゆでたまご先生は、藤子不二雄的な共作ではなくて、完全に原作と作画で分離して作業しているはずじゃないですか。嶋田隆司先生はその原作側なので、サインといっても文字で書くのかと思いきや…キン肉マンをスラスラと慣れた手つきで描いてくれましたよ。確かにこのキン肉マンというキャラは、嶋田先生が中井義則先生と出会う前から描いていた創作キャラだと言われているのだから、全く不思議は無いか。
それでも作画を本業としているわけではないので、残念な打ち切りに終わった「蹴撃手マモル」より、本編で描かれる事のなかったレアショット(蹴田マモルが"ニシキ蛇会"のキング・パイソン総帥にチャランボを決めてる絵、とか)をお願いしよう…とかは考えてませんよ。嗚呼!そういえば私のブログで同作品を紹介した時もコメントもらって話題になった『チャランボ』という言葉(技の名前)がどこから出たのか聞けば良かった!!作者本人に聞くチャンスなんて残りの人生でまたあるかどうか分かりませんが、まぁあると信じて生きるとします。

最後は、記念撮影までしてもらいました。早見純個展帰りだったので、エロシャツ着ててすみません。
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プライベートで呑んで楽しんでいる所だったのに、親切に対応してくださったゆでたまご先生…ありがとうございました。

昔と変わらぬ若々しい姿だったので、帰宅して「キン肉マン」のJC(ジャンプ・コミックス)版の最終巻である36巻を取り出し、
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(昨年になって突如37巻というものが22年ぶりに出ましたが!)

著者近影の写真はコチラ。
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…これは今回撮った写真の20年以上前の物ですが、やはりほとんど変わっていない事が確認できますよ!
ゆでたまご先生、今後も応援していきます!



  1. 2011/08/20(土) 23:37:00|
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早見純個展「少女忌」

東京都板橋区に行ってきました。
目的は早見純個展「少女忌」
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早見純先生といえば、一般的には変態エロ漫画家という認識が強いでしょうが、でも早見作品は他の『エロ漫画』と言われる全ての作品が足元にも及ばない力を持つ…というよりは、全くの別モノ。
とにかくその天才ぶりは作品を見てもらえば分かるわけですが、描いてきた残虐の劇画は『抜く』という本来の目的に全く使用出来ない代物ばかりだし(え?違うの!?まさか…)、R指定な内容であるというだけで悪い意味でエロ漫画扱いされて、例えばエログロの大家でありながら芸術家としても評価されている丸尾末広先生や花輪和一先生などのようには評価されにくい!
今はそんな事もないのかな…とにかくそんな早見純先生を応援したい、いや本当は作家プロフィールや私生活は一切謎のままである先生ご本人を見てみたいというファン心理だけですが、会場の"カフェ百日紅"へ来店する日を調べて訪ねてみたのです!
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単行本カバーの『著者近影』なんかも早見純先生は載せてないわけで、どんな方なのか全く分からないで行くのだからドキドキしてしょうがなかったですが…あっさりと逢いました。
自作で登場するキャラの中で、作者の投影されているのは変態少年・純クンなのか、それともいたいけな女の子に非道の限りを尽くす男の方なのか。
その答えは、ここでは公表しないでおきましょう。何と撮らせて頂いたツーショット写真と共に、私の宝物として胸の奥で大事に仕舞っておきます。

こちらは頂いたサイン色紙。うーん力作を描いてくれて本当に嬉しい!
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特に何もリクエストはしてないのですが、普通に部屋に飾って親戚などに見つかっても大丈夫な美少女の絵を描いてくれました。そう、早見純先生は清純な少女を描かせても天下一品。そして早見作品ではその綺麗な少女があんな事こんな事、大変な目に遭う…この色紙も、この後を妄想して楽しもうと思います。

ちなみに会場では展示している原画を販売しており、しかも意外と安かったのですが…気に入った作品は売り切れており、購入したのはTシャツのみ。しかもこのTシャツ、商品化した先生自らが『コレは着れないでしょう』と仰ってました。
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前面に脱がされた涼子…こんなエロTで街を歩けない!?

いやいやそれよりヤバいのが、バックプリントの純クンがパンティかぶってる絵ですかね。
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多分ほとんどの女子に『キモい!』と叫ばれるでしょう。

でも後で私が着ていたヌードシャツを見て褒めてくれて、こんなの着てるのなら大丈夫だと、意見を修正して頂きました。もちろん、変態エロTシャツは普通に使わせて頂きますよ!
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↑これがその時着ていたシャツ。

ちなみにこの度のイベントは狭い場所で対面出来る物でしたので、近づけるのが嬉しい反面一人では緊張して行けないと、心当たりの早見純ファンである友人を誘って同行してもらいました。
その友人は同じTシャツの色違いを購入し、それ自体にキャラの名前を書き加えてもらってましたよ!
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これも先生のセンスが分かって良いな~。

DMに使われていたこの絵は・・・置いてませんでした。
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このような素敵企画をしてくださったカフェ百日紅で飲んだコーヒーはとても美味しかったし、店長のお姉さまは親切でした。ありがとうございました。
そして早見純先生、ありがとうございました。今後も応援していきます!


  1. 2011/08/15(月) 23:22:07|
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劇画(130) 山川惣治 1 「ノックアウトQ」

今回はここでは異色作家になりますが、1908年福島県郡山市生まれの絵物語作家・山川惣治先生です。

何しろ漫画家ではないのですが…絵物語というのは、簡単に言えば少年向け小説にかなり多くの挿絵が入った物、とでもなりますか。絵本よりは文章メインで、現代の漫画のようなセリフの吹出しは無く、絵と文が分離している物です。もちろん普通は絵と文共に同じ作家が担当しておりまして、絵物語作家は画家兼小説家みたいなものでしょうか。
このジャンルの始祖にして第一人者こそが、戦前から紙芝居作家として活躍していた山川惣治先生。代表作の「少年王者」「少年ケニヤ」あたりなら思い浮かぶ方も多いでしょう。
漫画の神様・手塚治虫先生や、アニメの神様・宮崎駿先生も絵物語作品を残しているし、川崎のぼる先生の名作「荒野の少年イサム」は山川惣治先生の「荒野の少年」が原作。
漫☆画太郎先生の「珍遊記2~夢の印税生活編~」の萬々さまによれば、『バカヤローッ!!!絵があってセリフがある!!!どーみたってこれは漫画じゃねーか!!!』となるのだから山川惣治作品も漫画であり、その萬々さまが描いてた妖怪図鑑とは違ってストーリー物で楽しい。
少なくとも漫画の原型とは言えますが…当時の作家的な地位で考えれば『漫画家』なんて言われたら恥ずかしいものだったかもしれません。

1950年代初頭には「少年ケニヤ」で大ヒットを飛ばして映画化・テレビドラマ化されたのを始め、何と石川球太先生による漫画化もされているしで、大ブームを巻き起こした山川惣治先生ですが、絵物語の衰退により財産まで失って筆を置き(後に新作を描きますが)、その後は横浜市で"ドルフィン"というレストランを経営していたそうです。するとその店が荒井由実に歌われて有名になったりもしたらしいですが…1992年没。
私個人は少年時代に観た大林宣彦監督によるアニメ映画化作品(声が原田知世&高柳良一の「時をかける少女」コンビ!)で少年ケニヤに出会って好きになり、角川文庫でされた絵物語も読んだ事があります。

しかし今回紹介するのは、「ノックアウトQ」(学童社刊)。
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私がこの作品の存在を知ったのは随分昔、梶原一騎絡みです。
尊敬する梶原一騎先生が感化院の"誠明学園"に入れられていた少年時代に読んで感動し、その読書体験が「あしたのジョー」を生んだのだと自著「劇画一代」(毎日新聞社刊)で告白しているのです。曰く『この大傑作なかりせば、私が後年「あしたのジョー」を生む日もなかったろう』…と。また、斎藤貴男氏(ゴルゴの作者ではありません)が梶原一騎先生の軌跡を辿った名作ノンフィクション「夕やけを見ていた男」(新潮社刊)では『「ノックアウトQ」は、その後生み出されるすべての梶原作品の原点となる。』とまで書かれていました。

また学生時代に梶原一騎のペンネームを初めて使用して少年画報へ入選を果たした懸賞小説「勝利のかげに」「ノックアウトQ」を下敷きにしたと思われるボクシング作品であり、漫画原作者としてのデビュー作にして名作「チャンピオン太」(作画担当は吉田竜夫)では主人公・大東太が使う必殺技の名前として『ノックアウトQ』が登場するのを見ても、それほどまでに山川惣治作品「ノックアウトQ」を愛していたのだとうかがえます。
そんなわけで現在でも梶原一騎ファンにはよく知られている「ノックアウトQ」ですが、何しろとっくに絶版になっている古い本です。当然現在では激レア化していて見つけるのに苦労しましたが、梶原先生も↑の画像と同じ昭和27年発行の本を読んでいたはず…そう思うとまた、感慨深いですね。

初出は1949年から1951年の漫画少年
物語を追ってみると、舞台は関東大震災後の復興を目指す東京で、"唐沢写真製版所"で徒弟奉公の奉公人として勤める少年・戸村久五郎矢野川章治(スタート時は共に16歳)を主人公にしています。
彼らの日常生活を描写しつつ、同じ町のあきかん屋の職工に悪質な悪戯をされてケンカになった時、唐沢の少年達から特に体が大きく力持の久五郎が拳でこらしめる所があります。この時に初めて強い事が判明した久五郎こそ、後の『ノックアウトQ』でした。
町内の相撲大会でも圧倒的な力を見せて馬入川といった仲間も増え、章治を助けるために不良の集団と大立ち回りで次々やっつけもしました。全身が運動神経のかたまりのような久五郎…強い!

そんな久五郎が章治と共に馬入川に誘われて、東駒方に出来た『拳闘』なるものを教える"江東拳闘クラブ道場"に入門する事になるのです。
そこで素晴らしい拳闘の素質に目覚めた久五郎は、"TC拳闘協会"より来た日本の拳闘界における偉大な英雄・フェザー級の東洋チャンプの荻野貞次と高弟の佐藤東行にスカウトされて、ついには職業拳闘家になる決意をします。この時代の事なので悩みに悩みますが、
『拳闘家なんか、ごろつきのやる商売だと思われているのに、ぼくが製版所をやめて拳闘家になったら、故郷の父兄や兄弟はなんと思うだろう。唐沢先生はゆるしてくださるかしら。しかし自分が拳闘をしているときは、血が自由にかけめぐる。すきだ、おもしろい。』
というわけで、ついに許しを得て唐沢写真製版所を去った久五郎。

一方の章治はいつも久五郎に助けられてばかりでしたが、ついに自分自身の持つ絵の才能が開花し出して、一流新聞の漫画募集に応募して見事に当選しました。
他の新聞社の漫画懸賞でも何度も入選していましたが、しかし世の風俗が乱れつつある時代で新聞の漫画も品の悪い物が多くなっており、ついに嫌気が指して漫画をやめる決意をする…

久五郎は日本人の拳闘選手一行としては初めてとなるアメリカ遠征に参加し、他の日本人選手がアメリカ人に力及ばず倒されていく中、見事ノックアウト勝ちで日本人の名誉を守り続けます。
そしてついたリング名が、ノックアウトQ!しかしブラックとの闘いで初の敗戦を経験します。
他の日本人選手一行は帰国していきましたが、久五郎は出会ったかつての名トレーナー・デッド老人に才能を見込まれてアメリカに残る事となりました。
そこで1926年の大事件、日本を始め世界中で有名だったジャック・デンプシーがジェン・タニー(ジーン・タニー)に敗れた歴史的な大試合を13万人の観客と共に目の当たりにします。
それからアメリカでも、いよいよ今までの田舎から中央の都へと進出して、マジソン・スコアガーデンでブラックへの雪辱も果たして栄光を掴んでいく…

ここでまた一方の章治ですが、さびれていく唐沢写真製版所の中で苦悩し、しかも唐沢の娘で優しかった女学生の良子が肺結核のため死亡します!
逆境の中、唐沢での仕事の責任を全うしつつ絵の勉強を続け、後に紙芝居作家へ、そして32歳で少年倶楽部の編集長に認められて絵物語の画家になりました。
・・・おわり。

何も知らずに読むと、最後の1ページでやっと準主役の章治が山川惣治先生自身であり、これは自伝的作品である事が判明します。
では久五郎ですが、やはりこちらも実在したプロボクサーで、本当に山川惣治先生の親友だった木村久五郎がモデル。作中の活躍もそのまま実話であり、木村久のリングネームからノックアウトQの異名で呼ばれていたのも事実です!
共に徒弟奉公として製販所で働いていたこの二人が全く別の世界で大成功を収めた事は驚きに値しますね。作中では二人の友情も熱く描写されています。
久五郎をスカウトした荻野貞次と佐藤東行もそれぞれ、荻野貞行と佐藤東洋という実在の人物であり、出てくるアメリカのボクサーやデッド老人との交流に至るまでも実話のようです。
となるとイマイチ「あしたのジョー」との共通点が見つからなかった今作は、「空手バカ一代」などの実録+物語での梶原作品へ影響与えているのかもしれませんね。

最後になりますが、ノックアウトQのモデル・木村久五郎(矢吹丈と同じバンタム級)は日本人初の世界ベストテン入りしたランカーになり、引退後も拳闘のトレーナーを務めていましたが、20代の若さで心臓マヒにて急死したそうです。


ノックアウトQ!がんばれ!ぼくもがんばる!
ぼくはこのごろになって、自分の絵の天分をのばしてみようと決心した。
これがあたえられた天分にたいする義務なのだ!
世間にたいして、ほんとうに役にたつ人間になるんだ。



  1. 2011/08/07(日) 23:37:02|
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劇画(129) 新井英樹 6 「SUGAR(シュガー)」

今夜は新井英樹先生の「SUGAR(シュガー)」(講談社刊)です。
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2001年から2004年までヤングマガジンアッパーズで連載された作品で、単行本は全8巻。

あの天才漫画家…それも普通のじゃなく、ひねくれた才能の持ち主・新井英樹先生が多分他の作品よりはエンターテイメント性を意識したボクシング漫画です。そりゃ刺激的な物になっている事は想像に難くないと思います。
もちろん凡百のボクシング漫画のように、主人公が練習頑張って少しずつ強くなり立ちふさがる強敵を次々倒していく…なんて物になるわけもありません。まず主人公の人格が変で、出てくるキャラクター個性派揃いなのも他の新井作品と同じ。

各キャラクターなどを真面目に掘り下げて考察したりはしませんが(元よりそんなのした事ないか)、この魅力的な作品をザッと紹介してみましょう。
主人公は石川凛という、北海道の芦平(あしびら-架空の町だと思います)で生まれ育ってダンスなんかやってる金髪のチャラ男。片親の母親・菊乃との会話から思いつきで16歳にして高校を中退し、上京して母の叔父が勤める料亭"天海"で板前になる事になる…が、そこまでがいきなりやっかいで。

芦平を出る直前のエピソードも良いのですが、まず東京に行く前に寄った札幌市。ここで凛の人生に影響を与えた父のような存在でありながら4年前に芦平を出て消息不明だった玉置欣二、通称"火の玉欣二"と再会します。
様々な喧嘩エピソードによって芦平で伝説の男となっていた火の玉欣二…『その拳 火よりも熱く 真紅の頭髪 炎のごとしっ!!』とか叫びながら数十人相手にも立ち向かっていく男に小学生時代の凛は憧れて、もう一つ教えられた名言が
『ゆるくねえ時に 泣く奴は3流 歯・・・・喰いしばる奴は2流だ 笑え・・・・果てしなく そいつが1番だ』
というもの。それで凛はいつも笑いっぱなしで、ヘラヘラしているだけの奴に思われる事になりますが。

とにかく再会した火の玉欣二が現在同棲している相手が、ニューハーフの"レイラ"こと佐伯剛史。男だった時にはボクシングの国体フェザー級で2年連続優勝の戦歴を持つ彼女が、凛の才能を見出してボクシングを教えるのですが、その直後に凛VS火の玉欣二で決闘をする事となり…その決闘で凛の背中には『世界』が見える。とにかくそんな、天性の才能を持っている事が分かるのです。

ちなみにタイトルの「シュガー」というのは、その昔にそれまでのボクシングを一変させたボクサー、シュガー・レイ・ロビンソンのスタイルを新聞記者が形容した『スイート・アズ・シュガー』から来ていて、世界チャンピオンよりも凄い称号、それが『シュガー』なんだとか。

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続いて、いよいよ上京した石川凛。
板前になると言って故郷を離れた凛が就職先の"天海"には嘘付いて2日遅れ、しかもその間にボクサーになるって浮かれ出してるんだから方々に迷惑をかけているわけで、また騒動があり…策略立てて苦労してどうにか改めて就職出来ました。
母親が謝りの電話を入れた時、凛について曰く『あの子のウソや いえ・・・・生き方自体病気なんです』だそうです。その母親自身も虚言癖があるのですが。

板前修業と同時に二足の草鞋で休憩時間に始めるボクシング、その練習場所はたまたま新宿区の職場と独身寮の近所にあった"中尾ボクシングジム"
まぁ練習といっても凛は天才なので、いきなり何でも出来ちゃうんですけどね。そして偶然入ったそのジムのオーナー・中尾重光は日本ボクシング界が生んだかっての伝説的ボクサー。元WBCジュニアウェルター級世界チャンピオンながら、天才すぎて周り全部が凡人にしか見えないため選手の指導にやる気を見せる事は無かったのですが…そこへ現れたのが凛であると。
中尾も凛と同じく、いやそれに輪をかけて人間としては破綻した欠陥だらけのエロ人間で、これが上手く組み合わさればピッタリの選手とトレーナーになるのか!?

ジムので暴言を吐きまくる凛に、向かって行った練習生の道上光雄(ミッチー)はあっさり返り討ちにされ、中尾ジム自慢の世界ランカー新藤清正からもリングでダウンを奪う。
それから正式に中尾ジムへ入会し、アフロのボクシングマニアが経営するヘアサロン"イソベ"で髪型をロナウドみたいにされて…あとは、とにかくこの石川凛という男の圧倒的すぎるボクシングの才能を描いていきます。

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さて次は、プロテストを受ける事になる石川凛…その受ける事になるまでのいきさつなども面白いのですが、ここは文章で説明してもしょうがないですね。
とにかく凛の度を越した生意気さはとどまる事を知らず、同門の先輩である新藤が東洋のベルトを取っても『ボクシングで判定見たいって奴いるのかよ?金返せって話だろ』と言い放ち、現役の世界チャンピオン・加治源太郎にもケンカ売ってその親衛隊含めてのイザコザあり…

天海の先輩でインターネット、そしてインリンとソニンのオタクであるを言いくるめて戸籍抄本と保険証の偽造をさせ、16歳なのに受けたプロテスト会場。
ここで初めて凛の才能を白日の下に晒す事になります。さんざん大口叩いて、でも実際本当にトンデモナイ天才なのだからカッコいい。今まで努力を続けてきた凡人など、ふざけた凛に一瞬で否応無く叩き潰される。
「SUGAR(シュガー)」にはいろんな面白い要素がありますが、本題は何といってもこの凛が開眼するボクシングの才能。ちょっと普通じゃない漫画の才能を持った、新井英樹先生自身をボクシングに置き換えて描いているような気もします。

とにかくキャリア1ヶ月未満で、日本プロテスト史上最大の衝撃を残してプロボクサーになった石川凛。
それとこの作品で出てくるもう一人の天才が所属ジムの会長である中尾。凛は彼に対してバカ尾などと呼んでいたのですが、彼の現役ピーク時のビデオを観て本気で尊敬し、ボクシングを教えてもらい始める…欠陥人格の天才二人が本気で手を組み、最強コンビが誕生したわけです!

そうそう、新宿のスタジオアルタ(STUDIO ALTA)前で凛が変な宗教の女に声をかけられるシーンがあるのですが、その女がちょっと「あしたのジョー」の白木葉子に似てて、凛は『駅前には元・世界一の男がオレを待ってるんだ』と言って去るのです。
これは間違いなく、ジョーが『リングには世界一の男ホセ・メンドーサがおれをまっているんだ』と葉子を振り切ってリングに向かう、あのラストの戦い前エピソードのパロディ!ちょっと嬉しいです。

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プロテストから派手すぎて、相手ジムが試合を避けるためにデビュー戦の探しに難航している中尾ジム、そして凛ですが、他ジムへ出かけての出稽古…というよりモノが違うのでジム荒らしにしかならなのですが、とにかくスパーリングを重ねます。
そしてついに決まったボクサー達の聖地、後楽園でのプロ第1戦。相手の根本雄之介はこれまた個性的、というか気持ち悪い男なのですが、まぁ当然天才・石川凛の圧勝と思われたこの試合で…ある事が起きて何と世界最短記録を更新する1ラウンド4秒KO負け!!
野蛮なだけのようで実は繊細だった凛は、あの笑顔が消えかけて…

試される凛の精神的な面。天才だのって騒がれていてた人間がいきなりでかく辛い記録を残して記憶も無い有様、会長は凛の存在自体を無かった事にしているし、ここから復活出来るのか!?
いろいろあって結局ボクシングを続けている凛に、次の対戦相手が見つかります。それが高校アマ7冠の桑名まことで、今回は凛の方がかませ犬にされる見立ての組み合わせ。

一応天才同士みたいな組み合わせながらその段は違い、本物の天才はやはり凛なのですが、先の試合の影響でメンタル面で回復しておらず、かつて体験した事のない謎の不調(恐怖?)に見舞われています。
1Rはほとんど意識が定まらぬまま逃げ続けて観衆(読者)をハラハラさせますが、結局の所バケモンぶりを見せ付ける事になるのです。

これが「SUGAR(シュガー)」最後の試合にもなるので、プロでわずか2試合しかやらないまま完結しちゃいます。掲載誌のアッパーズが休刊したからなのですが、まぁ今作は主にプロボクサーとして開眼するまで描くのが主で良いんだと思います。ちゃんと続編である「RIN」週刊ヤングマガジン(後に別冊ヤングマガジンへ移行)にて2005年から連載されました。
そこでWBCスーパーフェザー級世界王者を奪取した後の凛、そして今回全然書いてなかったけど凛の幼馴染で作品のヒロイン・相馬千代との恋の行方も描かれるので、必読でしょう。

他の作品のように重くも暗くも無いからか、新井英樹ファンでは「SUGAR(シュガー)」を推す人に会った事がありませんが、痛快さを求めるならこれが一番。とにかく面白いです。


ちくしょ
自分が揺るぎないものになるとこ考えると こうまで胸が甘くなるか!?
アメリカ 南米 オセアニアの連中 アジア アフリカ ヨーロッパな輩の
オレを追う努力の空しさを 世界に見せつけちゃうのオレ!!



  1. 2011/08/03(水) 23:30:26|
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BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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