大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(121) 谷口ジロー 7 内海隆一郎 1 「欅の木」

次なる谷口ジロー作品は、「欅の木」(小学館刊)。
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(↑画像右は新装版)

原作は小説家の内海隆一郎先生ですが、この漫画のために書いた物では無くて元々小説で書いていた『人々シリーズ』という短篇小説集から、谷口ジロー先生が8編を選んでコミカライズしたオムニバス作品集です。
しかし内海先生の作風そのままに市井の人々の日常を描く、こんな地味な話をよくぞ漫画化したと初めて読んだ時は思ってましたが、改めて読み返してみると老若男女誰を描くにしろその人の一生でドラマチックな時や事件を切り取っているのです。誰でも一度は主役になれる時がある…わけで、登場人物は『普通の人』だけど一人の英雄を描き続けるよりずっと重厚な物語が続きますね。

掲載されたのは全て1993年のビッグコミック。今でこそ、この手の生活を描く私小説…いや私漫画もある程度は市民権を得ていますが、そのきっかけは谷口ジロー先生のこういった作品群なのではないですかね。違うかな…当時まだ私はビッグコミック系漫画雑誌(ビッグコミックには数種類あるのです)を読んでなかったので正確な答えは分かりませんが、例えば1970年代までの名作などではこんなのは見当たらないし。
ビッグコミックは創刊当初から手塚治虫先生や藤子不二雄先生他多数の大御所がページを占めていた雑誌だし、そもそも後世まで語られるであろう「ゴルゴ13」の長期連載掲載誌で特に知られていますが、とにかく谷口ジロー先生のエッセイ漫画(またはエッセイ風漫画)を多く掲載した事で漫画史にとって重要な役割を果たしたと思います。

で、今回はこんなにも素晴らしき繊細な8編それぞれについての解説は止めておこうと思います。どれもハズレ無しの泣き率高めな作品なのですが、このような感慨や情緒を味わう作品を絵無しの文章で話だけ説明するなんて難しいし、考えてみたら小説を漫画にしたのにまた活字で(しかも下手な私が)ってバカらしいですね。
ただもう、『友情・努力・勝利』の三原則を刷り込まれたジャンプ黄金期育ちの私からしたらね…少なくとも自分の中の漫画史では谷口ジロー作品に出会う前と出会った後では何か変わっていると思います。

最終の第8話は「彼の故郷」
他も全て優れているからこの話だけを特に推しているわけではないのですが、最後にこの話を持ってきたのは単行本の構成上でも良いですね。
ある理由から日本で型染めの勉強に励むフランス人女性の話…彼女の心理とラストに至る展開。嗚呼、思い出すと涙が出てきてしまうけど、同時に幸せな気分にもなるのです。


ようもまた こげん美しかもんば つくったとお。おめでとう。
………放っといてごめんしゃいねえ。あんたはもうフランスに戻ってしもうたじゃろうと思っとった。
こげん頑張っっとっとは知らんかった。ごめんしゃいねえ。



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  1. 2011/05/06(金) 23:24:57|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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