大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(125) 谷口ジロー 10 「晴れゆく空」

今夜は谷口ジロー作品より、「晴れゆく空」(集英社刊)です。
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初出は2004年の週刊ヤングジャンプで、単行本は全1巻。

2004年といえば他誌で「散歩もの」(久住昌之原作)連載中だったし、普通の人の日常を描く地味な巨匠として一般的にも認知されて定着していたと思いますが、ヤンジャン連載の今作品は何と精神が他人の肉体に入り込むというファンタジー!

人格の入れ替わり(ここでは一方的に入るだけですが)などというのは、今までに様々な人の手で何度も使われてきた設定でしょう。しかし映画や少年漫画なら少年と少女が入れ替わるとか、男同士でも武術の達人が入り込んでくる…等になるものですが、そこは谷口ジロー先生。主人公の久保田和広はリストラ過労死に怯え休み残業し続ける、42歳の中年サラリーマンです。
そんな久保田が運転する車が17歳の高校生・小野寺卓也のバイクと正面衝突して、久保田の方は肉体が死んで精神が小野寺の肉体に入る。小野寺の方は肉体が回復するも精神は未だ目覚めない、というのが初期設定。

まだ17歳の小野寺として意識を取り戻したおっさん・久保田が、その事実を知ってショックを受けながらも小野寺家での生活をスタートさせつつ、元の家族に会いに行く…
久保田家に着いた久保田(外見は小野寺)の家族、妻と娘との邂逅は必見です。さぁ、もう死んで葬儀も済ませた夫が、高校生の姿で現れた事実を遺族は信じられるのか!?
久保田家の愛犬・マルはすぐに分かってくれ、娘の智美も2回目の再会で分かってくれました。可愛いおかっぱ少女の智美と久保田が公園で抱き合うシーンは感動を呼びます。

小野寺のガールフレンド・沖田華織も事実を打ち明けると半信半疑ながら協力してくれます。
そもそも何の為に久保田は死に切れず、こんな事になったのか…久保田家と小野寺家共にこの状況を分かってもらい、伝えたい事を伝えられるのか。
そして2ヶ月も経ってから小野寺の意識が目覚めると、一体に収まる二人の人格・精神が交錯し始めて…

他はリアルな描写ながらも、精神が他人の肉体に入ってこの世に残るというファンタジックな設定を使った事で、愛する者と永遠に別れなくてはならない心情を、残された者ではなく死んだ本人の側から描く事に成功しています。
生きる意味と死ぬ事、そして再生などを人間の『心』と共に描いた傑作と言えるでしょう。
最後はちょっと、全てをハッピーエンドとなるようキレイにまとめすぎている感もありますが、やっぱりラスト…小野寺の元々の趣味だったモトクロスを使っての別れのシーンは美しくて、好き。

本編終了後には谷口ジロー先生によるあとがきがあり、あのエッセイ漫画の名作「犬を飼う」の後日談を知る事が出来ます。漫画では描かれなかった、あのペルシャ猫・ボロが死んだ事に触れられてまた「晴れゆく空」のテーマを再認識出来るのです。


私の肉体は死に…意識だけが他人の身体の中で生きている
死にたくない…という私の想いが そうさせたのか………
心残りがあったのか…それじゃまるで……私は…
幽霊じゃないか………!



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  1. 2011/05/24(火) 23:00:49|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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