大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(126) 谷口ジロー 11 「凍土の旅人」

今夜は谷口ジロー作品より、「凍土の旅人」(小学館刊)です。
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6作品収録の短編集で、初出は…ビックコミック系で数種類の雑誌にて、発表期間は1994年~2004年と10年もの幅があります。

1話目の表題作「凍土の旅人」はアラスカの雪山を舞台にして、金鉱探しの白人と当地の不思議な老人や幻のヘラジカを描いた作品で、これがアメリカの作家ジャック・ロンドン本人が登場し、彼のメモを元にした話、という擬似ドキュメンタリーな設定になっています。
これを読んだ当時は非常に嬉しかった覚えがありますが、というのもジャック・ロンドン(Jack London)は個人的に大好きな作家で、小学校の教室に隅にあった『学級文庫』というコーナーに代表作「白い牙」が置いてあった事で出会ったものです。まだまともな活字本をほとんど読んでない時の事でもあるし、ほぼ初めて読んだ邦訳作品だったと思います。

続く「白い荒野」が、そのジャック・ロンドンの「白い牙」「荒野の呼び声」という代表作を掛け合わせたようなタイトルであり、読んでビックリの良く知っている話で…すぐに分かりましたが、最後にクレジットが出て安心しました、「白い牙」のコミカライズ作品じゃないですか。
それも第1章の印象深い、やはりアラスカで人間とソリを引く犬がオオカミの包囲網により徐々に殺されていくスリリングな部分を描いています。谷口ジロー先生の上手い絵と緻密な描写が相成って素晴らしい出来に仕上がっているので、いつか「白い牙」前編を描いて欲しいと願ってしまいます。

「山へ」は、今度は秋田県の雪山が舞台。かつて私はジャック・ロンドンが描いた北方の厳しい自然と野生動物や、そこに住む男たちにもただただ憧れたものですが、舞台が日本だとグッと親しみがわきます。
これはマタギの猟師とマタギ犬、そして因縁を持つ老獪な熊との戦いを描いた傑作。これまた小学生時代に故郷の町の映画館で見た映画「イタズ -熊-」を思い出す内容でもありました。

「貝寄風島」は昭和33年当時に少年だったタカシの思い出を描いたノスタルジックな作品。
都会から田舎の漁村に来たタカシが小学3年生で、年上の少女・八重子との海の事故…いや冒険を描いた胸キュン、センチメンタル物語ですよ!

「松華樓」は昭和四十五年の日本を舞台に、元遊女屋で松華樓というアパートの住人達を描いた作品。三畳一間の部屋に住む主人公の青年は漫画のアシスタント…という事は、谷口ジロー先生自身の青春時代を描いた自伝的な要素もあるのでしょうか。
青年が描いているオリジナル作品『くろろほるむ』という作中作があるのですが、所謂劇画な画風と暗そうな内容が私の好みっぽい。
ガールフレンドが遊びに来た時に、その狭い和室に入って『なんだか、"赤色エレジー"って感じ。』というセリフがあるのですが…師匠の上村一夫先生の代表作が必ず同一線上で語られる劇画「同棲時代」なのに、『なんだか、"同棲時代"って感じ。』としなかったのは照れがあったのでしょうか。

ラストの「海へ還る」は、また舞台を遠い極北の海に移して描く大自然とクジラ、そしてクジラに魅せられすぎた人間の話。
イヌイットの間で伝説になっていた『クジラの墓場』へついに辿り着いた主人公は…!?
凄い作品です。美しく偉大な力の描写に、読者は引きずり込まれるのです。


山神さま……ありがとうごぜえますだ。
あなたはわたしに生きろと いわれやんすだえ。
生きつづけて この山を守れと………
生まれてくる新しき生命ば 育てろといわれやんすか………



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  1. 2011/05/28(土) 23:15:16|
  2. 劇画
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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