大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(30) 「手塚治虫 THE BEST 19 緑の猫」

手塚治虫先生のJC(ジャンプ・コミックス)より刊行された『手塚治虫 THE BEST』シリーズ、19巻目は「緑の猫」(集英社刊)です。
TEZUKA-the-best19.jpg
今回は全部1956年から翌年までのおもしろブックで付いてた別冊付録が初出の…となるとそう、連作短編シリーズ『ライオンブックス』として発表したSF作品だけで編まれています。

まずは表題作「緑の猫」
ヒゲオヤジこと伴俊作は、死んだ親友の息子・由志三吾を預かったものの彼が3歳くらいの時に外国で生き別れてしまいました。しかし、それから十数年…三吾は生きていました!それも若者の理想をかなえてくれる不思議な『緑色の猫』の力を借りて、パリの暗黒街で密輸組織の大立者として。
グリーンと呼ばれる緑の猫、その正体は宇宙の果てからやってきて地球に住むために自分達の形に近い猫の姿を借りている宇宙生物らしいのです。今まで様々な若者を堕落させてきたらしいのですが、何を目的として地球へ来ているのかよく分からない…
とにかく幸運と共に自分の元を去ってしまったグリーンを追う三吾、そして伴俊作とパリ警察。
宇宙から緑の猫を救いにやってきた円盤が、グリーンを連れ帰るのではなく助けられないと知って始末して(殺して)去るラストには、初めて読んだ少年時代に痺れた覚えがあります。
現在2011年か…今作の初出から55年が経ちますが、ちょうどこれを紹介しようと思っていた矢先のつい先日にニュースで、米国の研究チームがある遺伝子操作に成功して、猫エイズを引き起こすウイルスに耐性のある細胞を持った猫を生み出したと発表していたのです。それが『緑色に光る』猫だとかで、"緑の猫"写真も載っていましたよ!グリーンを実写にするとこういう顔なのかな、と写真を見つめてしまいました。

続いて「くろい宇宙線」は、ミステリー仕立てで変身怪物モノでもあります。
人間が外傷も無くポックリ死する連続殺人事件…"黒いダブルの背広を着た男"がキーとなるらしい黒い放射線事件に関わってしまった宇奈月博士のおい・ボン太郎少年の怪奇体験が描かれます。
30年前に火星追放されたドリアン・グレイ博士が、生命の秘密を握って地球に帰ってから事件は始まった。タネを明かせば彼は火星で宇宙線を浴びてから年も取らなくなっていて、しかし地球では他の生物の命を吸わないと生きていけない、それで生命を吸われた被害者がポックリ死していたのです。もはや地球では生きていけない体になっていたドリアン博士は、そのうち毛むくじゃらのバケモノにと姿が変わっていき…最後はボン太郎の手で退治されます。
『生命の謎』をつかんだというドリアン博士の、宇宙線に関する講釈は一聴の価値があるかもしれません。同じく神の領域・生命の謎をテーマにした作品で有名なのはメアリー・シェリーのゴシック小説「フランケンシュタイン」でしょうが、あれは作中ハッキリと教えてはくれませんからね。
あとドリアン博士が他者のエネルギーを吸収する時は掌から吸い取っていますね。鳥山明先生はこれを読んで、ずっと後に「ドラゴンボール」でドクター・ゲロや人造人間の能力として流用したのでしょうか。

「恐怖山脈」は、大地震の被害で父を失った大垣龍太が主人公。普通は地震という自然現象が相手では諦めるしかないと思うのですが、龍太は地震を父の命を奪った相手として怨み、東京の大学で研究を重ねて地震に対抗する術を学ぶのです。
その一つが地震測定器ですが、バクダンみたいな見た目のそれを持って故郷の村へ帰った龍太に対し、誤解した村長ら人間の陰謀が襲い掛かる!
地震という"現象"を光る物体で表現し、敵として描いているのが画期的な作品だと言えるでしょう。

最後の「白骨船長」は、鬼子母神伝説を二十一世紀の近未来に生かした設定になっています。
政府の方針で地球上の子供が増えすぎると、くじで選ばれた子はまとめて月に捨てられる…その法律の執行役を担うのが白骨船長と呼ばれ、忌み嫌われるロケット白骨号の船長です。
これも初出から55年ほど経った現在も人気連載中の「イキガミ」(間瀬元朗・作)に似た設定ですね。もちろん逝紙配達人に相当するのが白骨船長ですが、こちらは月で死んでいるはずの子供達が実は元気に暮らしていて、放射能でもうダメになった地球から人類が滅びる前に子孫を安全な場所に移す措置だったという、明るいどんでん返しがあります。
(この日本でも起きてしまった原発事故は未だに収束しないし、この作品が描かれた頃より今の地球はずっと汚れて危険な状態だと思いますが、今後もそれは加速するでしょう。今作のように、あと十年も経たないうちに地球がダメになると分かった時、実際の政府というか人類はどう対応するのでしょうか。)
全人類に嫌われる悪魔の役を担い、しかし誰にも分かってもらえないながら実情は天使の役だった白骨船長は、最後も攻撃してきた謎の宇宙人から子供を守る為に我が身を犠牲にするという、自己犠牲的な終わりを遂げます。嗚呼こんな感動シーンだというのに、出てきた宇宙人はタコ型火星人じゃないけど何だか滑稽な姿をしていて…笑ってしまうのです。


そろそろ行く末のことを真剣に考える時期だよ
したいことをやりとげてみろよ………
こんなところ早くぬけだすほうがいい



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  1. 2011/09/23(金) 23:52:33|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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