大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(132) 望月あきら 2 神保史郎 1 「サインはV!」

今夜は望月あきら漫画、神保史郎原作の「サインはV!」(嶋中書店刊)です。
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1968年から1970年まで週刊少女フレンド(講談社刊)で連載された作品で、単行本は画像の、私が持ってる分厚い愛蔵版だと全4巻。

私のブログでは珍しい少女漫画ですが、まだ少女漫画もほとんど男性漫画家が描いていた時代の作品です。そしてその方がやはり荒唐無稽で、女性が描く少女漫画より好き。
しかもここで画を担当しているのは佐藤まさあき先生と交流があり、日の丸文庫の貸本漫画でデビューしている…つまりは劇画出身と言える望月あきら先生ですからね!
(このブログでも既に日向葵原作の「カリュウド」をゲストライター様が紹介してくれてます)
原作の神保史郎先生は劇画「白い嵐」「ニセガク無宿」の人だし、これは当然面白いモノになる期待が出来るわけです。

しかも私が愛する「巨人の星」に代表されるスポ根モノの少女漫画版です。
少女漫画でスポ根、しかも女子バレーボールを題材にしているとなればもう一つ、ほぼ同時期発表の作品で浦野千賀子先生の「アタックNo.1」が有名ですが、「サインはV!」の方がムチャな特訓に魔球!と「巨人の星」要素がはるかに高いのです。
かつて実写映画化・テレビドラマ化もして大ブームになったこの作品ですが、とにかく漫画を読んでみましょう。

1964年東京五輪の女子バレーボールで優勝した東洋の魔女こと"ニチボー(日紡)貝塚"のメンバーを主体とした全日本チームは、当時世界でも敵無しの圧倒的な強さを誇りました。同五輪におけるソ連との決勝戦は歴代スポーツ中継で最高の視聴率も記録している事でも知られていますが…作品舞台のスタートはその翌年。
主人公の朝丘ユミは初登場時に"東京都荒川区立城山中学校"の3年生。かつてバレーボール部員でしたが、社会人選手だった姉の美代が過酷な練習の果てに命を落としたためバレーボールを憎むようになり、選手の命とも言えるボールに恨みを込めて足蹴にするほど。このあたり、「巨人の星」における星飛雄馬の初登場シーンとも共通します。貧乏で世間からはバタヤ横丁だのくず屋だのとバカにされてる"川むこう長屋"に住んでるし。

そんなユミが東京都の中学校バレーボール大会に出場する事になってしまいます(部員でもないのに)。わざと負けてやろうと企みを持って参加したユミでしたが、土壇場でかつて姉と編み出した『魔の変化球サーブ』を使って優勝してしまい、運命が変わっていくのです。
立木製作所という会社が新設する"立木武蔵"というバレーボールチームの牧圭介監督に熱心にスカウトされます。
『きみはこのサインをしっているか?そう……VICTORYの頭文字をあらわすサイン……
 日本語で勝利だ!きみには勝利あるのみ サインはVだ!』

というわけで、ついに姉を死に追いやったバレーボールに打ち勝つべくもう一度始める決心を決めました。

貧乏すぎる朝丘家の借金事情から大阪の工場へ売られて行く危険も牧監督が退職金を前貸しして肩代わりまでして回避し、ついに降り立った就職先の立木製作所がある国分寺駅。
バレーボール専門のプロになったわけではなく、昼間はここで仕事もするわけですが、とにかく新設チーム・立木武蔵に入ると小山チイ子という東北便の親友もでき、作中ずっとライバル的な存在となる椿麻理とも出会います。椿麻理は貧乏なユミと逆に、父親が立木武蔵の親会社社長でもある大金持ち。

全国から有名選手も集まってきているため慢心している選手ばかりの立木武蔵は、いきなり栄光のニチボー貝塚を練習試合してテングの鼻を折られ、地道な特訓を開始するのです。身体の小さいユミは、あの作品の大リーグボール養成ギブスに相当する"黒いシューズ"でジャンプ力を得ますが、同チームながら一番のライバルである椿麻理の林の中で目隠しとギブス(!)を使った特訓方法も常軌を逸しています!

そして関東女子バレーボール選手権大会で勝ち進み、決勝相手の強豪チーム"ヤシカ"と対戦!!
ここのエース・大本竜子が打つ『殺人スパイク』も凄まじかったのですが、ユミの新魔球『いなずまおとし』で打ち勝つのでした。
しかし立木武蔵に新たなピンチ…チームを引っ張る牧監督が、死んだユミの姉のコーチだったと判明して分裂の危機を迎えますが、それも乗り切ったと思えば椿麻理が立木武蔵を去り、ニチボー貝塚の一員になってしまいました。
敵対チームがますます磐石になってしまいましたが、その穴埋め以上の強力な味方も登場。

それが…神奈川県の養護施設"サンダースホーム"出身のジュン・サンダースです!
親に捨てられたみなしごで、日米混血(しかも黒人と)、かつ…もう知ってる人も多いでしょうから最初から書いてしまうと、骨肉腫という不治の病にまで犯される悲劇のヒロインの存在こそが、「サインはV!」を名作たらしめている大きな要素である事は間違いありません。今も昔も少女漫画は不幸が大好物だと思いますが、ジュンは本当に救われません。
漫画では肌色コンプレックスを描く時の定番描写ですが、子供時代はお風呂で黒い肌をこすり、『どうしてあたいだけ白くならないの?よ~くせっけんであらったのに』と親に尋ねたジュン。
ずっと白い目で見られて友達も出来ずに成長したジュンはすっかりやさぐれて、立木武蔵のチームメイトとも争ってばかりでしたが、バレーボール全日本選手権大会で優勝して海外遠征のチャンスをつかむ目標のために、ユミと共に猛特訓に励みます。海外遠征でアメリカにさえ行ければ、きっと親に会えると信じて…
作者の望月あきら先生によるジュンの、つまり黒人の描き方までちょっと変、というか全身に細かい縦線を入れているんですよね。なので顔立ちはむしろ美人であるジュンも、アップの絵はけっこうキモい。

いろいろありましたがユミとジュン二人の間に本物の友情が、そして『X攻撃』という大技が生まれました。どんな技かは実際に漫画で見てもらうとして…とにかく並の努力では完成出来ない凄いモノ!
大会でも快進撃し、思わぬピンチこそありましたが、まずは東京代表に選ばれました。ピカピカの体育館も建てて祝賀パーティーも開きましたが、皆が浮かれているその矢先に工事現場の木材が落下してきて、ユミをかばったジュンの右肩に落下するというトンデモナイ事件が起こります!

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それから先はジュンが可哀想で読むのが辛い…
体はどうなってもいいからと戦いたいジュンでしたが、右肩骨肉腫が判明して試合出場も許されず病院のベッドの上で死を待つ身となってしまいました。「愛と死をみつめて」と同じ病気ですか、辛いですね。
ユミも泣いて悩んで、大事な試合を放り出してジュンの病室に行ったりと迷走を続けますが、それでも『ダブル=シークレットプレー』『奇跡のスパイク』といった新技も駆使し、大本竜子率いるヤシカとの決戦では菩薩を思わせる無の境地にまで達して、ついに決勝進出。

決勝の対戦相手はもちろん、永遠のライバルにして万能プレイヤー・椿麻理率いるニチボー貝塚!
日本中の注目を集めたこの一戦、ユミの『いなずまおとし』がついに麻理の手で破られ、またニチボー貝塚の作戦勝ちで大苦戦の立木武蔵。
一方、ジュンは片腕を切り落とせば命は助かると説得されてついに手術を承諾したのに、やっぱり死ななきゃダメとばかりに実は悪性腫瘍は他にも転移していてもう手遅れだって…で、どうせ死ぬのなら、どうせベッドの上でごろごろ寝てたって2,3ヵ月の命ならば今すぐ死んでもいいから満足して死にたいと、立木武蔵のピンチに登場するのです!
しかし非情にも麻理の手で命をかけた『X攻撃』も破られ、倒れて死にかけながらも
『わたしの死に場所はあそこだよ あの九メートル四方の中……そうきめてあるんだ』
と、最後の力を使ったジュンの活躍で勝ち、つまり全国優勝を達成しました!
(実在するチームでもある東洋の魔女こと日紡貝塚は、現実では6年以上無敗で公式戦258連勝したそうです)

海外遠征の資格を得ながらも病に倒れて、念願のアメリカには行けなかったジュン・サンダースの臨終シーン…自分を捨てた母親に会えると信じていた彼女の悲劇の結末は、涙無くしては読めません。
それから「サインはV!」は、全日本優勝の立木武蔵に椿麻理らを加えた連合チームで牧監督と世界戦を目指していくのですが、悲運のアタッカーが抜けた穴は大きく描く意味もなくなったのか、日本からユミらが飛び立って行く所までで終了するのです。
少女漫画の可愛い絵柄とドラマ性にスポーツ漫画の興奮を融合させた今作を、ただの古典で終わらせずに現代にも未来にも広く読み続けていって欲しいですね。

ところで黒人のバネを受け継いで素晴らしい動きが出来るジュン・サンダースは、ギターと歌も上手。日本人ながら見た目と能力は黒人のジュンが歌うのは、ブルースかジャズかゴスペルか、はたまたソウル、ファンク、いやR&B…!?
いえいえ、言うなればJ-POP風な日本語フォークみたいなものでした。


あのぐらいでへこたれたんじゃ 選手じゃないよ
試合にのぞんだ選手ってのは あんたが思ってるよりずっときびしいよ
たとえめちゃくちゃになっても 精神ははがねのようにおれない
そういうもんさ……たたかいなんだ負けちゃいけないんだ 最後まで……


(数ヶ月前から↓のアフィリエイトで、いつも通りキーワードを入力しても全然関係ないものが出てくるようになりました…解決策をご存知の方いらっしゃいますか?)

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  1. 2011/10/09(日) 23:56:50|
  2. 劇画
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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