大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(134) 松本大洋 1 「ピンポン」

今回は松本大洋先生。1967年生まれの東京都出身で、20歳で漫画家デビュー。
代表作に「ZERO」「花男」「鉄コン筋クリート」「ナンバーファイブ 吾」「竹光侍」などで、同業の井上三太先生が従兄弟で冬野さほ先生はアシスタントかつ嫁さんで…まぁここまで革命的な天才漫画家を、今まで全く触れてこなかった私が今更、という感じなのでサッと紹介しますが、今回紹介するのは特に好きな作品で卓球漫画の金字塔…
「ピンポン」(小学館刊)です。
MATSUMOTO-pingpong1-2.jpg
初出は1996年から翌年までのビッグコミックスピリッツで、単行本は全5巻。実写映画化もしたので、松本大洋作品の中でも特に有名ですね。

フリーハンドで描かれる絵柄は作品ごとで大きく変わっていますが、どれも個性が強くてコマ割りや背景の細かい部分まで神経が行き届いてて、芸術的。いや芸術なんて言葉を使うととたんに難しそうとかつまらなそうとか思われそうですが、あくまで松本大洋先生はエンターテイナー…もっと言えばこの「ピンポン」はバトル漫画のような要素も強く、圧倒的に楽しいのです。

神奈川県藤沢市(江の島など出てきます)の高校を舞台に、様々なスタンスで卓球をやる奴らを描いてます。
主人公は"片瀬高校"の卓球部員であり幼馴染の二人。ペコ(星野裕)はラケットがペンホルダーの速攻型で、スマイル(月本誠)はシェークハンドのカットマン。性格も正反対です。
当初一年生の二人は卓球の才能に恵まれているものの名門校ではない片瀬高校で適当にプレイしていて、少年時代から町の卓球場"タムラ"に出入りして素人と賭け卓球しているペコと、凄い才能を持っているのにペコの背中に隠れているのがスマイル。

二人で中国から雇われたチャイナこと孔文革(コン・ウエンガ)選手のいる"辻堂学院高校"へ遊び半分の偵察に出かけ、明るく自信家のペコが対戦しちゃいますが、スコンクで敗北して泣かされます!
この前から作者は少しずつスマイルの方が才能は桁違いに高いと知らしめる演出をしており、やがてかつては"バタフライジョー"と呼ばれた卓球部顧問の小泉先生が、やる気の無いスマイル(『卓球は暇つぶし』と豪語する)を卓球に打ち込ませる…
あ、物語とは関係無いけど後でチャイナの練習を見ていたギャラリーが、『だってお前ブルース・リー好きじゃん』というセリフがあって個人的に嬉しいですね。
それから部員はスキンヘッド集団で全国屈指の名門高校"海王学園高校"…特に強すぎるドラゴンこと風間竜一らも登場して、インターハイ県予選が開幕。

この時一年生のペコとスマイルは共に順当な所で強敵に負けてしまいましたが、ここでふてくされて落ちていくペコはラケットを捨て、一方でついに目覚めて圧倒的な力を身につけていくスマイルと…差が付いていきます。
落ちていくのはもう一人、サブキャラながらこの二人とは幼なじみの卓球仲間で海王学園高校のレギュラーにまでなったアクマこと佐久間学。努力の虫ながら主人公らのように『才能』がなかった人間として対照的に描かれていきます。
あ、物語とは関係無いけどヤケになって佐久間がケンカする相手が直前に『ほいでさァ、ブルースリーの死因には多説あってね……』と話していて、これまた個人的に嬉しいですね。

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さて物語はこれからです。
かいつまんで書けば、負けて落ちて逃げていたペコが佐久間に説得されて再び発起し、タムラのオババやその息子・道夫から特訓を受けて"ヒーロー"として立ち上がる…

それから始まる、ペコとスマイルが二年生の年のインターハイ県予選こそがこの作品「ピンポン」のメイン!
ペコは一回戦でチャイナと当たりましたが、かつてスコンクで負けた時とのペコとはもはや別人であり、見事に勝利。中国で落ちこぼれて日本での再起を狙ったチャイナは悲しい結果に終わりました…他にアクマやさらなる脇役も含め、悲しい敗者の心情や人生をも大事に描くのは松本大洋節と言えるし、彼らも非常に重要なキャラではありました。
スマイルの方も海王学園高校の副将・真田を2回戦で破り、そのままサイボーグのような強さで決勝進出。

ちなみに小学生時代は卓球部に所属していた私、当時は卓球といえばオタクでもやれるスポーツで…暗くてダサいイメージでしたが、何事もとらえる側の感性次第だったんですよね。単行本の帯にある
『274cmをとびかう140km/h 地上最速の球技、卓球!!』
のコピーを見て、「ピンポン」以後は卓球に憧れる少年少女が増えたかもしれません。いや、子供が読む漫画ではないからダメか。

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最終巻でようやくペコが表紙に来ました。

スマイルと決勝で対戦する者を決める準決勝は、『ペコVSドラゴン』の黄金カード。
ド迫力で迫り、躍動する高速球の表現…何というコマ割り!初めて読んだ時は漫画の進化を感じて感動し、松本大洋先生の才能に感謝したものでした。
試合展開の方でも、どうすれば盛り上るが計算し尽くされていますね。

この試合の勝者はスマイルとの決勝戦を迎えて、激戦はクライマックスへ。
…で、これは書いちゃうと十数話に渡って描いてきたインターハイ県予選は、最後から2話目の時点でもまだ途中でしたが、最終話はそれから5年後に飛びます!
そこであの決勝、そしてあれからどうなったのかが一気に判明する展開。何だか勿体無いような気もしますが、これがクールなのです。人気があるからとダラダラ長く続ける作品とは種類が違う名作なのだと分からせてくれます。物語の幕引きまで、完璧か。
常に描かれてきたペコとスマイルの関係について…これはいかにも頭の良い人たちが人間の精神、気質、魂などを絡めてもっともな事を語っていそうですが、私には似合わないのでやめておきましょう。


全身の細胞が狂喜している。加速せよ、と命じている。加速せよっ…加速せよっ…!!
目には映らない物、耳では聞こえない音、集中力が外界を遮断する。
膨張する速度は静止に近い。奴は当然のように急速な成長を遂げる。反射する頭脳、瞬発する肉体…
しだいに引き離されてゆく…徐々に置いてゆかれる感覚。優劣は明確。しかし、焦りはない。
全力で打球している。全力で反応している。怯える暇などない。
怯える必要など……



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  1. 2011/11/03(木) 23:14:54|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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