大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(135) 井上三太 1 「トーキョー・トライブ」(TOKYO TRIBE)

先日の松本大洋先生に続き、今夜はその従兄弟である井上三太先生です。
1968年生まれで、子供時代をフランスのパリで過ごした方。とはいえあちらのBD(バンド・デシネ)ではなく、日本の漫画の影響を受けているのですが、外国人のように日本漫画に憧れる視線を持てていたのかもしれません。松本大洋先生とは似ても似つかない作風ですが、やはりこちらもオリジナリティの強い天才漫画家。
画力よりも圧倒的なセンスを押し出し、スクリーントーンを多用した効果など独特の物がありまして、漫画読者の中からオシャレ層を開拓して服や玩具の販売で自身のブランドまで持っていますね。

いくつもの名作の中から今回紹介するのは「トーキョー・トライブ(TOKYO TRIBE)」(JICC出版局刊)。
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全編描き下ろしにて1993年に上梓された全1巻の単行本です。

まだ10代半ばを過ぎた頃だった私は、帯文にある90年代トーキョー版「時計じかけのオレンジ」の文字を見つけて買った覚えがあります。
「時計じかけのオレンジ」に関しては当時こんなに凄い映画があったのかと驚いて(もちろんブルース・リー映画以外での話)、何度も観直したり他のスタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)監督作品を片っ端から探して観たりしていた思い出も甦ってきました。
読んですぐにお気に入りにもなりましたが、とはいえ…「トーキョー・トライブ」自体は同映画とは何の関係もなく似てもなく、ただ退廃した若者達と暴力を描いている辺りで共通点があったから書かれただけの宣伝文だったのだと思います。
でも、おかげで井上三太先生と早くから出会えた事は感謝したいですね。何故ならこの当時はまだマイナーな存在で電気グルーヴ「俺のカラダの筋肉はどれをとっても機械だぜ」(宝島社刊)に寄稿していたバカな短編くらいしか知らなかったし、この「トーキョー・トライブ」『TTシリーズ』と呼ばれてライフワークになり、大ヒット作「TOKYO TRIBE2」や現在も連載中の「TOKYO TRIBE3」を始め、数々のアザーストーリーまで描かれる事になるほどの重要シリーズの幕開けであったなどと想像出来るわけもなかったのですから!

物語はトーキョーを舞台に、シヴヤの"SARU"対シンヂュクの"HANDS"というチーマー(ギャング?)同士の抗争や生活を中心として描かれています。
主人公はSARUの保手浜渚で、出会ったフジヲという女とのラブシーン…鎌倉大仏の前で見開きページのキスシーンなんかもありますが、仲間がエスカレートして殺人をしてしまった時から運命が変わる。
敵対するHANDSのリーダー・は家出少女を無理矢理犯したあげくに髪を刈り、さらに乳首を切って笑い飛ばす、といった極悪非道の変態男。
『オレはだれだ? オマエはだれだ?』の言葉を多用しながら進む48時間の構成が素晴らしく、彼らの狂気に満ちた過激な生き様は最終的にシヴヤ全体を巻き込んだ暴動にまで発展します。

単行本の巻末に活字で長々と載っている『TOKYO TRIBE/製作ノート』によれば、登場人物が絡む殺人事件などは実在した陰惨な事件…女子高生監禁殺人事件などから強く触発されて描かれたそうですが、特に私が好きなのは明らかに当時話題になっていた統一教会がモデルだと思われる新興宗教団体"大日本手淫党"
彼らが冒頭にシブヤの街中で演説して言う事は、

『国民の皆様、我々は 大日本手淫党であります
 手淫こそ 神があたえたユートピアです! セックスはエイズという悪魔に犯されました!
 手淫 自慰 自涜 マスターベーション センズリ オナニー
 なぜひとつの行為にこれだけの言葉があるのでしょう?
 それは神があたえた行為だからです。さあ迷える子羊よ ときはなたれるがよい!』


という物で、街宣車の上には全裸の女が!というシチュエーションです。物語の後半には『合同手淫式』なるものをやろうとしているし…
チーマー同士の抗争などを見るならはるかに深くエキサイティングに発展している「TOKYO TRIBE2」を読んでもらえば良いし圧倒的に面白いのですが、この大日本手淫党が素晴らしすぎるために人に薦めたくなる「トーキョー・トライブ」第一作目なのでした。


オレがだれだか知ってるのかッ!!
オレがだれだか知ってるのかッ おいっコラッ
いってみろ



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  1. 2011/11/08(火) 23:45:05|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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