大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(52) 「UTOPIA 最後の世界大戦」

先日「ココ」でお伝えした通り"川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム"に行ったばかりで…
その興奮さめやらぬ私ですので、藤子不二雄作品紹介をしましょう。

基本に立ち戻り、二人の藤子不二雄先生の原点といえるこの作品!
「UTOPIA 最後の世界大戦」(中央公論社刊)です。
FUZIKO-utopia-ffland.jpg
この藤子不二雄ランド(FFランド)版はこの作品2回目の復刻にあたり、7年間に渡って出版されたFFランドの最終巻を飾るNo.301として、1991年に出版されました。この版だと初期作品「ユリシーズ」「おやゆびひめ」も同時収録されています!
FFランドの特徴とも言える巻頭付録のカラーセル画はレアな鶴書房版の表紙絵で、巻末の新作漫画として連載していた「タカモリが走る」「チンプイ」もシリーズ終了に伴い最終回が載っています(「チンプイ」の方は単行本の最終巻に描き下ろし最終話を加える予定でしたが)。これで『第一期』が終了したにすぎないはずのFFランドですが、『第二期』が出る事は今後もないのでしょう。

元々「UTOPIA 最後の世界大戦」は、藤子不二雄…つまりは藤本弘と安孫子素雄という偉大な漫画家の初単行本で、全1巻の描き下ろしという形で1953年に上梓されました。二人が漫画家デビューした新聞投稿の4コマ漫画「天使の玉ちゃん」から約2年後の事ですね。
藤子不二雄の名はまだ生まれておらず、この時に使ったペンネームは足塚不二雄。その前に手塚不二雄という名義を使っていたものの、『手塚先生の足にも及ばない』事でこの名義が生まれたのでした。

もはや貴重な文化遺産である、鶴書房刊行の初出単行本はこちらで、
FUZIKO-utopia-tsuru.jpg
藤子タッチでないこの表紙絵は、戦前から活躍していた大先輩の大城のぼる先生の手による物だし、著者不明の「覆面団」なる作品も併録されています。さらにタイトルに『最後の世界大戦』を追加されたのはともかく、何と最終コマを別の人の手で差し替えられており、いくら新人とはいえ酷い扱いですね…
これを出すまでのいきさつや当時の状況などは「まんが道」などでも知る事が出来ますが、とにかく手塚治虫先生の紹介で単行本化されました。

それから時が経ち、幻の作品と化していた「UTOPIA 最後の世界大戦」が初めて復刻されたのは、1981年に名著刊行会より。
FUZIKO-utopia-meityo.jpg
今度は表紙絵も藤子・F・不二雄先生が描き下ろしています。

毎度復刻されてもすぐに絶版になるので、時が経つにつれて復刻本もレア化していた状態ですが…
今現在は、今年(2011年)になって小学館クリエイティブより3回目となるの復刻が成されたので、容易に入手出来ますよ。価格が3990円はちと高いですが。
FUZIKO-utopia-syogakkan.jpg
こちらは最初の鶴書房版を完全復刻しているとの事で「覆面団」や最後のコマなども忠実に再現されており、2色刷りまで忠実に再現しています。さらに別冊の『UTOPIA読本』で藤子不二雄A先生のコメントや、この復刻の原本となった鶴書房版のを所持していた松本零士先生のインタビューなども収録されていますね。
ちなみに4回目の復刻として、現在刊行中の『藤子・F・不二雄大全集』で来年(2012年)に出る予定だとか。


それでは足塚不二雄著、「UTOPIA 最後の世界大戦」の内容を見てみましょう。
後に藤子不二雄となる、藤子・F・不二雄先生と藤子不二雄A先生の合作作品ですが、当時新聞社に務めていたA先生は合間に手伝う形だったため、F先生が主力。ペンネームだけでなくまだ画風も手塚治虫先生の影響が強いのですが…もちろん藤子色も随所で見る事が出来て嬉しくなります。
そもそもこのさらに前、学生時代に描いて宝塚の手塚治虫邸を訪れて見せたという未だに未発表(藤子・F・不二雄ミュージアムで原稿の実物を見れます)の「ベン・ハー」で、手塚先生をして『これは敵わない』と恐怖心すら抱いたという逸話があるくらいですから…画力や構成力などの実力については既に天才の物ですね。

最初の舞台は20XX年の第三次世界大戦末期。
文明が発展し尽くした未来に、最終兵器である氷爆こと氷素爆弾が投下されて凍結=生物は死滅した街で、氷爆シェルターの実験台にされた死刑囚(戦争反対罪)の息子が生き残り、百年間の眠りから覚めて地球国首都"ユートピア"を目の当たりにします。

この生き残った息子が主人公です。ユートピアは科学がさらに進歩して人間の寿命は200歳まで延びている世界なのに、主人公に父親を忘れさせるため頭を叩いてショックを与え、ノウミソの一部をしびれさせて忘れさせるという原始的な手段が微笑ましい。
人口も激増していて…能力の劣った人間などは"零の空間"(これは何と後の「21エモン」にも登場しますね!)へ送られて存在を消されます!他にもここでの未来描写は面白い所が多い。
それから独裁政府と反体制の人類連盟との攻防から、自分の意思を持てるようになってたロボット軍の反乱により人類は滅亡へと追い詰められる…

こんな初期から現代にも通じる戦争批判・科学至上主義批判など思想を込めているし、最後のどんでん返しまで構成が見事な終末SFに仕上がっています。
さらにこの手のSF大作は後年に国民的漫画家になってからは「大長編ドラえもん」などの一部でしか描かなったので、研究…というほど大げさなものじゃなくても藤子ファンには貴重な資料としての価値が高い。
後に藤子・F・不二雄先生が「エスパー魔美」で、藤子不二雄A先生が「笑ゥせぇるすまん」で同作品を貴重な古書として登場させるセルフパロディのようなシーンを描いています。


フッフッフッフッフ おもしろいことに気がついたよ
人間は何千年もかかって世の中を進歩させた…………ところがね
ところが人間自身は ほとんど進歩しなかったんだ!



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  1. 2011/11/29(火) 00:08:02|
  2. 藤子不二雄
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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