大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(54) 「星人ドビンソン漂流記」

今夜の藤子不二雄作品は、「星人ドビンソン漂流記」(中央公論社刊)です。
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初出は先日紹介した「キテレツ大百科」と同じくマイナー雑誌こどもの光(家の光協会刊)誌上にて、1971年から翌年までの連載でした。単行本は、この藤子不二雄ランド(FFランド)版だと全2巻。

これも二人の藤子不二雄先生のうち藤子・F・不二雄側の作品で、普通の人々の日常生活に"異能の異物"が入り込んで巻き起こる騒動を描く…定番タイプのSFギャグ漫画です。
タイトルで分かる通りアイデアの元ネタはダニエル・デフォーの小説で通称「ロビンソン・クルーソー」(「ロビンソン漂流記」)で、主人公はポッド星人のドビンソンという…頭が土瓶(ドビン)の形した宇宙人の少年。物語の導入部は宇宙空間でスタートし、宇宙船の事故に遭ったドビンソンが手近のロボート(ロボットボート)で脱出しますが、そいつがポンコツであったために地球に不時着して漂流生活を行う、という物。

ドビンソン目線では地球も宇宙の辺境にある未開の星であり、日本家屋は『木とドロでできた原始的な巣』だし、人間は謎の多い動物。空気は有害物質でいっぱいだし、かけ回る鉄の怪獣(車)だらけのこの魔境で、ただ一人の文明人としてあてもない救いを待つ身となったドビンソンは、小学生のマサルとその両親が暮らす家でロボートと共に居候する事になります。
しかし地球人よりはるかに発達した頭脳と文明を持つドビンソンなので、耳が小さく尻尾も無いマサルら地球人という動物を見下しまくり。ここでの生活を冬休みの宿題にして『ドビンソン漂流記』を書き上げようと地球を研究(後にポッド星で本を出版する目標になる)するうちに理解し軟化していくのがいいんですけどね。

あとは他の多くの藤子F作品と同じように、毎回ユニークなアイテムが登場して面白可笑しい騒動が起きるパターンで続きます。地球よりはるかにテクノロジーの進化したポッド星の様々な道具をドビンソンが作るのですが、地球にはろくな材料が無いため欠陥品ばかりで…

そうそう、荒木飛呂彦先生の名作「ジョジョの奇妙な冒険」は連載開始からずっとリアルタイムで読んでる作品ですが、第5部の準主役といえるブチャラティの持つスティッキィ・フィンガーズというスタンド能力、これが本作の「次元チャックで挑戦」という話で出てくる次元チャックそのままのビジュアルなんですよ。つまり、地面などに取り付けたチャックを開けるとその中に入り込めるという(ドビンソンの方はどこでもドアのような性能を持っていますが)。しかしジョジョでこの能力が登場した当時、いかに世間の人々は「ドラえもん」以外の藤子F作品を読んでないかを思い知らされましたよ。つまり誰に言っても国民的漫画家、藤子・F・不二雄先生の描いた「ドビンソン漂流記」自体を知らなかったわけです。
ちなみに荒木先生はいろんな所からネタを持ってきますが、彼に使われると誰もが誇りに思うのではないでしょうか。パクリではなくこれこそがオマージュであり、必ず進化させますからね。だいたい次元チャックがこんなにカッコよくなるなんて!

「空中遊泳は快適だねー」の回では水泳ならぬ"空泳"という空飛びネタが出ますが、やはり誰もが夢見るのは生身で空を飛ぶ事ですね。いや、それはともかくこの話、土人が出ます!あのヤリを持って太鼓の音と共に襲ってくる、あのまんまのイメージで!これは「ジャングル黒べえ」などが封印された例の問題に関わってくるのでは…そういえば確かに、このFFランド版(1988年発行)以来今年まで絶版状態になっていました。ラストのオチを書いちゃうと彼らは本物の土人ではなく場所も日本だったのですが、この描写だとあの時代には自主規制せざるをえなかったかも。

ところで「星人ドビンソン漂流記」ではジャイアンとしずかちゃん的な、つまりガキ大将やヒロインの影が薄いのですが、ちょっとだけ出るジャイアン役のネーミングは…何とブタオコゼ
ヒロインの方はまみちゃんというのですが、名前すらほとんど出ません。ドビンソンやマサルと一緒に遊びはするものの、特に好きだとかの設定もないし。
道具の類似点や物語の進行も「ドラえもん」パターンを踏襲しているだけに、この辺りで個性を出せない弱さがあって短命に終わったのでしょうか。

でも、1話完結の連作で日常を描くものだから最終話らしき話で完結しない事も多々あるF作品の中で、これは「ステキなクリスマスプレゼント」できちんとしたラストを迎えます。
後半は帰れそうで帰れない展開が続いており、地球漂流時間も2年間を数えた頃、ついにドビンソンの両親が地球まで探しに来るのです!
あくまで子供であるドビンソンの、この作品における目的はポッド星にいるパパとママの元へ帰る事。家族を思ってホームシックになり、そのために材料の足らない地球でいろんな道具を作って努力していたのだから、長い漂流の果てついに再会する最終話は感動します。この最終話があるから「星人ドビンソン漂流記」が名作になったとも言えますね。また、一度はすれ違うかと思わせて…の、この盛り上げ方が上手いんです。
所で最初の頃にヤカンを見てママを思い出すシーンがありましたが、その時に回想するママの顔と実際に登場したママが別人のようなのはご愛嬌。全然ヤカンに似てなくて、ドビンソンと同じ土瓶型です。でもドビンソンが攻撃する時にプーッと蒸気を出す時は口が尖ってヤカンみたいになってたから、きっとママも同じでしょう。

ちなみに、初単行本化で同じく全2巻だったパワーコミックス(双葉社刊)だとタイトルに『星人』がなく、ただの「ドビンソン漂流記」
FUZIKO-dobinson-power.jpg

さらに今年になってA5判で全1巻にて復刻された藤子・F・不二雄大全集(小学館刊)でも、タイトルは「ドビンソン漂流記」になっています。
FUZIKO-dobinson-zensyu.jpg


ロケットは前から作りかけていたんだ
どっちみち出かけるつもりだったんだよ
もう がまんできないんだよ 帰りたくて
きみにだってわかるだろ
当てもなしに待ってることが どんなにつらいことか



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  1. 2011/12/08(木) 23:33:18|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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