大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(138) 真鍋昌平 1 「スマグラー」

2011年…今年最後の日がやってきました。こんな時くらい今年の話題作を紹介しようかと選んだのが、真鍋昌平先生の「スマグラー」(講談社刊)。
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真鍋昌平先生は今や時の人。2011年もますます人気に拍車をかける年になっていましたが、現在連載中の「闇金ウシジマくん」が大ヒット中で映像化もされて、その余韻でか今回紹介する過去作品「スマグラー」まで石井克人監督・妻夫木聡主演、他も一流スタッフ揃いという形で実写映画化されました。

私のこのブログは基本的に手塚治虫先生やトキワ荘出身の漫画家達など今ではクラシックな方々を中心に紹介していますが、普通に現行されている数多くの漫画雑誌も読んでいまして、そのうちの一つだったビッグコミックスピリッツで2004年に「闇金ウシジマくん」が始まりました。絵がちょっと下手である事すらも活かして、目をそむけがちな社会のヤバい部分を坦々と描くこの作品に出会って以降は、すっかり真鍋先生のファンなのです。決して手塚先生らでは描けない現代社会の病巣を、人間のダークサイドや社会の底辺を中心にして描く漫画家ですね。

私はウシジマくん以降にようやく知ったので、それ以前が気になって調べてみた真鍋先生の経歴は、1993年にPARCOが発行していたフリーペーパー『GOMES』のマンガコンテストで受賞してデビューしたらしいです(同じGOMESからは、すぐ後に辛酸なめ子先生が出てくる事になりますね)。
それからすぐに漫画家生活には入らなかったようですが、1998年にアフタヌーン四季賞の四季大賞を受賞し、いくつかの短編を経て…2000年から月刊アフタヌーン誌上で初の連載作品となったのが、この「スマグラー」で、単行本は全1巻。この単行本が出た2000年当時は確かにまだ新人で、単行本の帯の背表紙側にも『話題の新人作品が早くも単行本化!!』と書かれています。

本年の映画公開(「スマグラー おまえの未来を運べ」と改題)に合わせたタイミングでアフタヌ-ンKCより新装版も出版され、こちらには10年ぶりで描かれたスマグラーキャラの番外短編「殺し屋」が追加されています(おお、絵が現在のウシジマくんタッチ)。
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「スマグラー」はウシジマくんから先駆ける事数年前…全くもって変わらぬ真鍋色満載で、登場人物も自堕落なフリーターと裏社会の人々。
そのフリーターが主人公で、24歳の砧涼介。彼は役者になるとか夢みたいな道を志し、しかし中途半端で諦めて楽な道に流される人間なので、無職のままパチスロに通い詰め…ある事情から300万円の借金を背負わされ、返済のため日給5万円の非合法な運送屋(運び屋)の仕事をする事になります。

ジョーという男が営むその運送屋は、他に塚田というジジイと共にトラックでヤバイ物を運ぶのですが…おおっ、この車のナンバーは『666』、獣の数字です!
最初に死海幇(スーハイパン)という中国マフィアが惨殺した、暴力団・児玉組の組長の死体を運ぶ仕事をやりますが、物語の世界はこの二つの組織とその間にいる運送屋でだけ進みます。

死海幇の殺し屋は二人出てくるのですが、その名も背骨内蔵「闇金ウシジマくん」でもネーミングセンスの良さは発揮されていますが、この二人も素晴らしい名ですね。身体能力も化物だし。
前者は背後に背骨の刺青を入れてますが、それが後頭部まで続いているので目立っちゃうのではと心配になります。そしてこの男、ヌンチャクの名手です!ブルース・リー好きが高じてヌンチャク使う人は全て好きになっている私ですので、もちろん背骨ファンになりました。
彼のデザインはもしかして、イーサン・コーエンが脚本に参加している映画「ホネツギマン」(THE NAKED MAN)から影響受けてますかね?
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(新装板の裏表紙にも登場しています)

その背骨が捕まり、児玉組に届ける仕事が砧達に回ってきました。依頼主であり、児玉組長の女・ちはるもそのトラックに強引に乗り込んで…
自分の不始末から背骨を逃がしてしまった砧は、背骨の代役として児玉組に差し出される事になりました!当然拷問を受けるのですが、ここで役者の練習していた事が活きて、ジョー達が本物の背骨を連れてくるまでボロを出さずに背骨役を演じる事が出来るのか!?

砧は言ってみれば一般的な若者代表で、実際によくいるような奴(私もそう)なのですが、ジョーからは
『本気になったコトねェだろ 何に対しても やってるフリだろ? なに一つモノにならねェ フリーターなんて族は
 若いうちにだけ許される執行猶予期間を 好きになるのは構わんが 歳食ったらコケにされる覚悟しとけよ』

等々と辛らつに言われ、ちはるからも
『なんで文句を言わない?言いなりは楽だからか? 誰からも嫌われたくないからか?
 私は自分の居場所を築くためなら 争いを避けたりしない』

と…すぐに性格や特性を見抜かれて言われていた砧。
きわめつけに、自分でも
『自分の可能性を信じてた 潜在している筈の力で 思いどおりの世界を切り開ける気がしてた
 なに一つ遣り遂げたコトもないくせに……
 大事な時に何時も逃げ出した キズつかないよう争いを避け 負けないように逃げてきた
 カラッポで何も無いまま』

と独白しますが、最後はその自分から脱却すべく、逃げずに『本気』になって生き残るチャンスを掴む。

終始派手な暴力表現で飽きさせずに続いてきましたが、この心理表現と続く砧の行動こそを最高潮の見せ場にしていると思います。
最後も成長した砧が再び表の世界に戻るという、殺伐とした作品には嬉しいハッピーエンドでした。

真鍋昌平先生はデビュー以来ぶれずに社会的弱者と搾取側などを主題にして描いてきたようですね。その方向性で推し進めた「闇金ウシジマくん」で読者達もその才能に注目し始めるわけですが、描かれる"嫌なモノ"がリアルっぽくて本当に怖くて…現代のホラー漫画家とも言えますよね。現在も連載中のウシジマくんを見守り、今後の真鍋作品にも大注目していきたいと思います。


キミは一生分の快楽を一瞬で使う気か? 限りない未来を代償に……
……いや この国に未来なんてない事 知ってるのかな………



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  1. 2011/12/31(土) 23:49:10|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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