大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

永井豪 (36) 「凄ノ王」

今夜は永井豪作品から、「凄ノ王」(講談社刊)です。
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初出は1979年から翌年の週刊少年マガジンで、単行本はKC(講談社コミックス)版で全7巻。
永井豪とダイナミックプロ名義で掲載されたこれはもう名作の数多き永井豪作品の中でも、私の好み・世間的な評価共にベスト3には入る大傑作です!講談社漫画賞も受賞しています。

主人公の朱紗真悟は、耳宇高校に入学したばかりの一年生。女ばかりの家庭で甘やかされて育った運動音痴の少年でしたが、中学からの同級生でマドンナ・雪代小百合に誘われて超能力クラブ(ESP研究同好会)に入った所から物語が始まる…

超能力者に憧れるクラブ員達ですが、まず二年の大松しげるというデブがSFについての知識を披露します。それが小説はW・H・シラス「アトムの子ら」、J・ウインダム「再生」、ステープルドン「オッド・ジョン」、スタージョン「人間以上」、ベスター「分解された男」「虎よ虎よ」、W・タッカー「超能力エージェント」、ヴァン・ヴォクトー「スラン」、小松左京「継ぐのは誰か」「エスパイ」、平井和正「幻魔大戦」「悪霊の女王」、筒井康隆の七瀬シリーズ、豊田有恒「異次元神話」、辻真先「SF番長ゴロー」。漫画は手塚治虫「三つ目がとおる」、石森章太郎「ミュータント・サブ」、吾妻ひでお「いもむし以上」。映画はまず「キャリー」「フューリー」と、私もほとんど読み、観てきた作品ばかりなのが嬉しい。
遠い昔は、超能力小説に限らずハヤカワSF文庫を読み漁ってたりしてたんですよね。まぁ日本人SF作家のは上記の有名作すら読んでませんが。漫画はここでも紹介しているし好きな作品である事は当然ですが、映画も「キャリー」「フューリー」なんて、私の暗い青春時代に繰り返し観てきた作品でありそれを物語るかのような内容なので、この二本が好きすぎて数多いブライアン・デ・パルマ監督作品も全部観たりしたものです。他に「光る眼」「エクソシスト」「オーメン」「マニトウ」「ヘルハウス」「レガシー」「デビルズ・ゾーン」の名前も出てきます!
後で雑談シーンに実在のエスパーの名前も次々出てくるし…って、まぁここらへんの話は「凄ノ王」を語る上でもう必要ないでしょう。

テレポーテーションで登場してきたのは、超能力クラブの部長である美剣千草。いきなり本物の超能力者がでてきました!
美しい彼女に憧れ仲良くもなる朱紗でしたが、すぐにその美剣すら恐れ敵対していて『破壊王』と呼ばれる超能力者・瓜生麗とも出会います。彼は耳宇高校始まって以来の大秀才であり自分で会社やマンションなども持ち…しかもイケメン。
並外れた天才超能力者のこの二人…美剣千草と瓜生麗が、懸命に朱紗真悟を仲間にしようと動いてくるのですが、それは何故か!?

さて場面は朱紗真悟と雪代小百合の下校時に移り、山の上の人がいない所へ行って愛の告白、そして長い長いキスシーンへ。しかし、この幸せな時は一瞬にして破られました。
雪代を狙って尾行してきていたモヒカンの青沼スケコマシの安(安村)ら耳宇高校の不良グループが襲ってきて、弱い朱紗はそれでも必死に戦って雪代を逃がそうとします。自分はボロボロの状態になりながらも、何とかヒロインである雪代だけは守り抜く…それが通用するのは他の漫画家であり、この「凄ノ王」は永井豪作品。
何と…少年漫画で…しかもここまで、ちょっとコメディ色もある青春超能力漫画でしたが…雪代は獣のような色キチガイ達の手にかかり、無残にも犯され、しかも輪姦されてしまいました!ここでバージンだった雪代がボロボロになるシーンは炎に包まれながら走る馬なども挿入されて丁寧に描かれ、殺されかけてる朱紗にも全裸の雪代を見せ付ける悪党達。衝撃的な展開です。

朱紗が全身全霊込めて超能力を欲した時、瓜生のグループが空を飛んで助けに来てくれましたが、もう時は既に遅い!瓜生曰く、朱紗は彼以上の超能力を持ちながら眠らせている、『超能力の巨人』であるという。瓜生の超能力を封じたペンダントを差し出され、これを持てばその能力が使えると言われますが、朱紗はそれを持ったらやつらをひとりのこらず殺してしまうから、とその申し出を断る…

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ところで朱紗真悟らの住む東京近郊のM市は、ニューヨークに次ぐ犯罪都市に育ちつつあるそうです。物語の開始当初はそんな感じはしなかったのですが…ここからさらに「凄ノ王」は激しいバイオレンス作品へと進んでいきます。
『私をさがさないで さようなら』と置き手紙を残して去った雪代。やりきれなくて泣き叫ぶ朱紗は、それから物凄い超能力が発動するようになるのですが、その時は別の意識を持ち、顔も体も別人のようになっています。超能力の巨人となった姿で街とそこに巣食う悪を破壊し…
次の朝には体はほぼ元に戻っていましたが、性格も体も強くなっています。ちょうど「デビルマン」で悪魔の体を手に入れて以降の不動明が人間の姿をしている時のような生まれ変わり具合です。

異常に強くなり喧嘩っ早くもなっている朱紗は、各クラブ部長が集まって作られていて耳宇高校を仕切る"部団連合"と戦争になり、一方でその敵であり耳宇高校の闇の住人、悪の結社"不死団"(ノスフェラトゥ)とも対立します!
不死団は学園内で麻薬の密売その他の暴力的犯罪は何でもやる奴らであり、朱紗が初めて彼らのアジトである崩れかけた旧体育館に乗り込むと、そこは半裸(もしくは全裸)の女たちが音楽で踊り酒池肉林の世界を展開…って、これはやはり「デビルマン」で明と了が飛鳥邸の地下室の扉を開けるシーンにそっくり!嬉しい事に『麻薬いりの酒やタバコ』も出てきます。

さらに朱紗の変身した姿である超能力の巨人を追って来た某国の超能力者集団の登場、美剣千草は神剣「美剣」の前に座る老人・美剣家当主に会いに行き何やら密談していますが、"凄ノ王"の存在に怯えているようです…様々な謎や力が絡み、さてどうなるのか。

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5巻では、部団連合でも恐らく最強のボクシング部キャプテン・合田VS朱紗真悟の対決がリングで展開されます。この死闘は凄い…多くの読者が永井豪作品トップクラスのバトルシーンとして記憶しているのではないでしょうか。
朱紗はこのボクシング戦の会場客席にひっそりと雪代小百合が来ているのを見つけて、『雪代さんに見せるんだ!おれがきみを守れる男になったことを・・・・』と、がぜんハッスル。
この勝負中ついに自分の超能力に目覚めた朱紗が勝利しますが、その後はお互いの力を認め合った合田が部団連合を裏切り仲間になるという展開は、学園ドラマの王道であり胸がときめきますね。

自分の超能力をコントロール出来るようになった朱紗は、その『人間以上』の能力を間違って使うなと進言しに来た美剣千草をからかって超能力で服をやぶいて裸にしてしまうのですが…超能力の強さで立場が変わったからって、憧れの部長に何て事を!まぁ、読者サービスですね。
続いて朱紗は、あの時に雪代小百合を襲わせたのが不死団(ノスフェラトゥ)だったとつかんだため、単身戦いを挑んで激しい超能力合戦が繰り広げられるのですが、同時に徐々に明らかになる謎…

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朱紗の精神が生まれ変わる前に戻る事もあったし、自分の超能力がいきなり透視能力になってしまったり…朱紗の変化には謎と不安が隠されていますが、部団連合の方にも強敵が残っています。
次に襲ってくるのは剣道部主将・佐々木剣道。彼は何と、ある超能力者によって現代にやって来た本物の戦国時代の剣豪!そんなのが高校生活送ってるってのは驚きます。二人はスターウォーズのレーザー剣のようになった竹刀で死闘を演じるのですが…この結果も意外なものになるので読んでもらいたい。
でもそれより、ここで登場する剣道部の副主将・身堂竜馬!そう、あの「ガクエン退屈男」など他作品でも主役級で出てくるカッコいい彼は、ここでは朱紗のたのもしい味方になります。今まで一人で戦っていた朱紗でしたが、暴力と権力で学園を支配する部団連合のやり方に嫌気が差して仲間になる者達が出てきました。ボクシング部の合田に、各クラブの有力1、2年生達も協力して、いよいよ部団連合と最終決戦!
これは銃器や真剣、それより強い超能力とで繰り広げる殺し合いレベルの勝負になりますが、部団連合の会長・九頭木剛の正体が、また驚くべきものでした。続いて判明する、不死団を率いる王女・カーミラの正体も…。

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黒幕の陰謀は露呈しますが、またしても雪代小百合絡みで朱紗を追い込み、理性のタガを吹っ飛ばすと…
いよいよ伝説の邪神、荒ぶる神・凄ノ王の出現です!そう、もう読者は皆分かっていますが、凄ノ王は朱紗真悟が覚醒した姿。朱紗が正なる光のエネルギーを無限に取り入れられる状態になった時は魔をはらう超神・英雄神(スサノ・ウオノ・ミコト)となる可能性もあったのですが、黒幕の思うがままに負なる魔のエネルギーで変身したために恐るべき邪神となった朱紗=凄ノ王。

この巨大なモンスターが凄まじい超能力で暴れ回り、地球を破壊し、人類を滅亡に近いまで追い込み、異次元までも…と、学園ドラマだった今作はスケールがバカでかくなっていきます。学園モノの終焉をはっきり示す象徴として、超能力クラブでSFについて色々教えてくれたあの先輩・大松しげるが凄ノ王が壊した家の下敷きになって死ぬのです。彼の最後の言葉は『わ わいに超能力がありさえすりゃー にげられたのに・・・・もっとまじめに・・・・超能力クラブやっとりゃよか・・・・た・・・・』でした。

かつて超文明をほこった高天原(アト・ラン・テス)を沈めたのもこいつだったと判明した凄ノ王は、肉体の巨大化が限界に達すると朱紗の肉体を捨て、いよいよ完全なる伝説の超魔人として完成!
それを受けて高天原の善神・摩利支天(マリシテン)の生まれ変わりだと判明した美剣千草は、美剣十二神将ら美剣一族の力で凄ノ王を倒すべく動き出し…数千年の時を経て高天原最大の超戦艦・天浮舟(ラン・グーン)を始動させます。
ここで何故かザコキャラだったモヒカンの青沼が魔に取り憑かれた姿で今更出てきて、一方で凄ノ王としての魂が抜けた朱紗の肉体も立ち上がり…

凄ノ王 完

となります。
青沼と朱紗の久々の出会いが何をもたらすのか、また人類がほぼ滅んだ所で戦いに出た美剣一族や、地下のシェルターで精神バリヤーを張って生き残ったあいつは?宇宙最大の「魔」という八岐大蛇まで復活しましたが、これは何だったのか!多くの謎を残したまま、「凄ノ王」は終わってしまいました。
確かに永井豪作品で未完の物は珍しくありませんが、これは最も読者を焦燥させた作品であるかもしれません。
どれだけ続きを望む声を受けたのか想像に難くないのですが、1982年には永井先生の実兄で漫画原作者の高円寺博こと永井泰宇先生がノベライズした「凄ノ王伝説」を書きました。永井豪先生本人も角川春樹に切望されて続編として「凄ノ王伝説」を角川書店の各誌で描いてみたり…しかしそれら未完。今の所決定版とされるのは1996年に講談社から全6巻で出た「凄ノ王 超完全完結版」でしょうか。
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私もこれが出た時に飛びついた一人ですが、少年マガジン版に大幅な追加ページを加えてこのタイトルで刊行されたのに…何とこれも未完!だまされた…しかも追加されている部分は興味深い物ではあるのですが、少年マガジン版と矛盾する部分もあります。
まぁ「凄ノ王」は作者自身最が初から盛り上げた所で未完のまま終わらせたいと考えていて編集部も了承済みの作品だったそうなので、ここでもやはり、という事ですか。日本神話をモチーフとしたこの作品ですが、『人間がコントロールできないスケールになってこそ、「神話」は成り立つ』のだそうです。

少なくともガッカリするようなオチは付けられずに済んだわけだし、投げっ放しである事で想像させる面白さもあり、今では私もそれに納得しています。
何より部分部分での面白さ、インパクトが群を抜いているので、何度も読み直しているとそんな細かい事はどうでも良くなってきて、ただ永井豪先生のパワーにひれ伏したくなるのです。


悪しき魔神 凄ノ王の狂気の超能力は全世界を破壊しつくすまで とどまることを知らない!
凄ノ王の怒りの咆哮は暴風雨となり 地上を吹きあれる!
悲しみの悲鳴は雷電となり 地上をたたく!
人々は真の恐怖のなかで死んでいく!



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  1. 2012/02/06(月) 23:58:50|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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