大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(10) 「生き人形」

今夜は楳図かずお作品より、また初期の作品に戻って「生き人形」(秋田書店刊)です。
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初出は1959年から1961年のたのしい五年生及びたのしい六年生にて「人形少女」のタイトルで連載された作品で、何とこれが初めて受けた講談社の仕事だったそうです。
単行本化される時に改題して「生き人形」となり、サンデー・コミックスから上梓されているのでレア感は無い作品ですが、1959年といえば前に紹介した「まぼろし少女」「俺の右手」などが描かれた極初期の作品なので、もちろんまだ上京する前、関西時代に描き上げた物。

この頃は貸本マンガ家として知られていた時期でしたが、ここで挑戦したのは少女漫画であり、いかにも昔の少女漫画的に不幸を耐え忍ぶ少女(小学生にして貧しい母子家庭を背負って奉公に出る)が主人公。そんな従来のオーソドックな設定を土台に、やはりそこは楳図かずお先生なので『怪奇』を持ち込んではいるのですが…まだ『恐怖』は意識しておらず、まだその前夜といった内容。

主人公の少女・岡田久美子の家庭はのどかな山村、川上村でおみやげ物屋を経営していたのですが、三年前の台風で家は流され父を失ったのでした。そして農家のはなれを借り、残された母が慣れぬ畑仕事で久美子と妹のマリ子を養ってくれていたのですが、やつれて倒れるようになってくると久美子は東京へ働きに出る決意をしたのです。
ちなみにこの川上村、隣接している駅が五条と北宇智なので、高野山で生まれた楳図かずお先生が引っ越して幼少時代を過ごした土地・奈良県吉野郡に実在する川上村に間違いないでしょう。楳図先生が次に引越した先は曽仁村で、そこで通ったのが駅名で出た五条小学校でした。

故郷の山を出て上京し、そこでは農家のおばさんの妹がお店をやっているというので頼りにしていたのですが、いつまで待っても現れない。東京は怖い土地なので、駅で待っている久美子は黒服にサングラスの男に連れ去られそうになるのです。
そこで通りかかった藤田みや子というおばさんが助けてくれるのですが、その縁で藤田家にお世話になる事となりました。そこではみよ子という娘がおり、その世話を頼まれるのですが…みよ子とは、人形でした。藤田のおばさんは、人形を自分の子供として可愛がっていたのです!
通りがかりの人々に『気が変になってるんだよ』なんて言われて白い目で見られながら。

久美子はその藤田家のおかげで東京での学校生活が始まるのですが、こんな学園物少女漫画も面白い。
頼まれて人形のみよ子を学校に連れて行くようになり、男子(女子は可愛く描かれるのに対して男子は白痴的!)から『やあい やあい いかれてんの』とかからかわれたり、女子の階級闘争的なあれに巻き込まれたりしても、心強くある久美子は平気。
クラスでは仲間外れにされている暗い女子・雪子と友達になりますが、この雪子の兄は東京駅で久美子を連れて行こうとしたサングラスの男だった。それから雪子がある事故から予知能力を発揮するようになり、犯罪に巻き込まれ…と、少しだけ後の楳図かずお的なSFテイストも出て来ますね。

この後は最後のハッピーエンドまでテンポよく進むのですが、驚いたのは人形のみよ子は足のケガが元で死んでしまう事!初めから生きていない人形が死ぬって…しかもそれが分かるのは、超常的な能力を身につけた雪子だけ。その人形の死もあった事で全てが丸く収まるラストにつながるのです。

実はこの「生き人形」(原題「人形少女」)には、この単行本だけ読むと分からない裏話もありまして、初出時は冒頭にあった人形の誕生にまつわるエピソードが丸々カットされているのです。
その部分を始め、この作品は歴代何度も加筆修正して出版されてきていますが、それぞれのヴァージョンを確認するにはまたもや!小学館クリエイティブから昨年刊行された「人形少女 完全版」の限定BOXを買うしかないでしょう。これまた定価6,930円という高価な本になりますが…
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本当、こういった純粋なめでたしめでたしってやつもたまに読むと心が洗われますね。
セリフも全て可愛いし、愛しの楳図絵で正統派少女漫画の良さを楽しめる名作でした。


どうしましょう!
お人形が足がいたいって とても苦しんでいるわ!
久……久美子さん!今にお人形の身のうえに たいへんなことがおこる……



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  1. 2012/04/06(金) 23:37:58|
  2. 楳図かずお
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

長かった…

こんにちは!BRUCEさん。
かつて「ケンカの聖書」や「あしたのジョー」でコメントした秀和と申します。覚えていらっしゃいますか?
最近、久しぶりに、しかし、またまたこちらのブログにハマってしまいまして…ついさっき、「男の星座」から、06/02/22の「はじめまして」まで何日かかけて最近の記事からずっと遡って確かめました。
フー長かったです~(笑)。気になる記事は全部読みました。私は携帯電話からなので、次に機会があったらパソコンでも見てみたいと思います。

で、一番気になる作品は、ジャーン!なんと意外にも石森章太郎(私も大好きな作家です)の「時の狩人」でした。次に東京の古本屋に行く時には必ず探してみたいです。スゴそうです。
ところでBRUCEさんも新潟県出身の方なのですね!私は佐渡に住んでます。来たことはお有りですか?
そして、私は新潟の古本屋についての知識が全くありません。よかったら教えてくださいね。

この楳図かずお「生き人形」も是非読んでみたいと思いました。面白そうです。
では今後もますます期待してます。毎日拝読しますよ。



  1. 2012/04/08(日) 13:01:50 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

お久しぶりです。

>秀和さま

コメントありがとうございます。もちろん覚えてますよ!
うわー、そんな過去の記事まで読まれてしまいましたか…漫画紹介、といってもほとんど自分の記録用みたいなつもりで書いているブログなので、嬉しい反面本当に恥ずかしいです。
しかも携帯電話からでは、物凄く面倒になるページが定期的に出てきていたのでは!?私は携帯電話でインターネットした事がないのでよく分かりませんが…重ねて申し訳ないです。

一番気になる作品が「時の狩人」とは、渋いですねー。世間的には全く知られていないので評価もされていませんが、いぶし銀的な名作でした。

お、秀和さまも新潟県の方でしたか。しかも楳図かずお先生の「わたしは真悟」の舞台にもなった佐渡島!
行った事はあるのですが、子供の頃に訪れたきりになっています。前回里帰りした時にも、もうちょっと時間あれば佐渡に行きたかった…なんて言ってたのですが、魚沼から佐渡はけっこう遠く、なかなか果たせません。ちなみに、佐渡旅行はどの季節がおすすめでしょうか。
仕事柄連休はほとんどないのですが、そう遠くないうちに必ず行きたいと思います。
  1. 2012/04/09(月) 05:54:11 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

連休ほとんどないですか大変ですね。私が政を行うことになったなればみながもっとゆっくり休めるようにする予定です。
  1. 2012/04/09(月) 22:29:01 |
  2. URL |
  3. あつし #gKumvUXs
  4. [ 編集]

期待してます。

>あつしさま

そうなんですよ…
その分収入ややりがいがあるかと言えばそんな事はない、ワーキングプアでありますし。いや、自分の力の無さが招いた結果ではあるのですが。
島国で閉じこもっている人々はそれが当たり前と認識しているかもしれませんが。で、私が分かるのは生活していた経験のあるフランスだけですが、フランス人を見ると低収入だろうが何だろうが人生をもっと『楽しみ』に重点を置いているし、それはあの長い休みのバカンス文化が大きいと思うのです。
だから、あつしさまによる行政には期待してやまないのです。
  1. 2012/04/10(火) 01:21:24 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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