大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(140) 上村一夫 20 「津軽惨絃歌 怨霊十三夜」

今夜は上村一夫作品から、「津軽惨絃歌 怨霊十三夜」(チクマ秀版社刊)。
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「怨霊十三夜」といえば週間漫画TIMES(芳文社刊)で1976年から掲載されたオムニバスシリーズで、その名の通り十三編に渡るのですが…今までに
「ココ」その二夜「おきせの乳房」その十一夜「刺青心中」を、
「ココ」その一夜「子年のお岩」を、
「ココ」その四夜「蛇の辻」その九夜「蝦蟇」を、
というように前に紹介してきました。

この単行本には表題作の「津軽惨絃歌」その三夜に当たり、他にその五夜「春の雪」その六夜「春の華」その七夜「春の嵐」その十二夜「まごころ」が併録されています。
となると残りはその八夜、十夜、十三夜という事になりますね。

今回のを順に見ていくと、5回に渡り連載された一番長い「津軽惨絃歌」だけ1976年の作品。
冒頭いきなり見開きで『ドドドドドォォン』と大荒れの海と嵐、そして三味線を弾く女が登場する、大仰さが素晴らしい幕開け。もちろん絵の芸術性が高い作品です。
その女は瞽女(ごぜ-女盲目の旅芸人)のお波、その元へ駆けつけてきたのは村の網元の息子・真介。身分のかけ離れながら愛し合う二人を描いてます。もちろん、抑えがたい情念をドロドロに燃やしながら。

父親にいいように仕組まれ、言いくるめられた真介は妊娠しているお波を諦め、お波だけが罰を被る事になるのです。瞽女の仲間から三味線を弾く右手を切り落とされ、さらには両耳をちぎりとられ!元々盲目な上に利き腕と音まで失って雪の中に放り捨てられるのですが、それでもお波は生きる方を選ぶのでした。
落とされた自分の右手を、そして木の根や蛇を喰らいながら、たった一人で娘を産み落として復讐させる…となると誰もがこの前(1972年~)に小池一夫(雄)原作を付けて生んだ名作「修羅雪姫」を思い出すでしょうが、この「津軽惨絃歌」では幻想物語に仕上がっています。

あとは全て1977年の作品ですが、食道楽が高じてついに禁断の食材(…やはり人肉)に手を出す尼を描いた「春の雪」。罪人首を刎ねる家格(おおっ、公儀介錯人!?)で"首斬り浅右衛門"と呼ばれた山田浅右衛門とそれに斬られたがる少女の女中の話「春の華」(山田は実在の人物で、沙村広明「無限の住人」なんかでも出ます)。希代のペテン師または鬼才と呼ばれた博物学者・平賀源内が女性器用の性具(今で言うバイブレータ)を実験する話「春の嵐」

最後の「まごころ」は、チビで盲目の按摩と大女の仲良し夫婦が相撲を取る見世物興行で大当たりしますが、女房・おかねが金持ちの道楽のために本物の関取・恐山関によって強姦され、敵討ちに行った按摩は返り討ちにされて殺され…そこで土俵で決着をつけるべく、江戸でおかねVS恐山関の取組が決行される話。
読者はラストの土俵上で凄い光景を見て感動を覚える事となるのですが、怨霊十三夜シリーズ中で一番ユーモラスに描かれているのがこの「まごころ」であり、山口昌男・漫画論集「のらくろはわれらの同時代人」立風書房刊)で日本の芸能や女相撲の歴史と共に語られていた作品でした。
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没してから長い年月が経つ上村一夫先生ですが、こうして復刻しては現在の読者に激しい刺激を与え続けているのです。劇画の中にある、色あせない芸術の力がよく分かりますね…


人の心にだきゃ 耳は無(ね)ごす
海神様のおつげば聞くべす
まいねごす~~ まいねごす~~
いごーすじゃ~~ いごーすじゃ~~



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  1. 2012/04/24(火) 23:59:04|
  2. 劇画
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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