大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(17) 「怪」

楳図かずお作品より、「怪」(秋田書店刊)。
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オムニバス中短編集ですが、これのために描かれたシリーズではなくて、貸本漫画家時代の作品などを寄せ集めた6編を全3巻にまとめた単行本です。

まず1巻は、「青い火の怪」「四年目の怪」「人こぶの怪」の3編収録。

「青い火の怪」は1960年の「あなたの青い火が消える」を改題し、加筆編集した作品。女学生の尾上むつみが恋人の谷川俊彦に山で迫られた時に抵抗して崖から落ちて後頭部を岩にぶつけると、その時から斜め後ろに振り返ると人の頭上に青い火が見えるようになるのでした。そしてその青い火は『いのちの火』であった…
人の命のバロメーターを得たむつみはそれをどう使うのか。幽霊少女にとりつかれた俊彦、という怪談の設定も加えて展開する物語です。
ちなみに菊川近子先生が「いのちの火が見える」という作品でこれにそっくりな設定を使っていますね。

「四年目の怪」は1961年の「4年目の奇蹟」を改題した物で、生まれてから四年目ごとに素晴らしい出来事が起こる少女・夏川みどりの次なる四年目である十六歳の日々を描いた作品。
みどりの父はN市で会社を持つ事となって家族で引っ越すのですが、あれおかしいぞと不幸続き。しかしそれにはわけがあったのでした。N市からは強制的に追い払われた夏川家でしたが、その直後に新潟地震が起きてN市は壊滅するのです!つまりみどりの四年目の強運で家族全員の命が助かった、というオチ。
お分かりのように『N市』というのは新潟市。楳図かずお作品には珍しく私の故郷・新潟が舞台になっているのは嬉しいのですが、まさか地震で全滅するとは…

「人こぶの怪」は1967年の「人こぶ少女」を改題した物で、家の事情で親戚の家に預けられた女学生の優子が、いとこのアグリから呪われる作品。
『わたしはきれいなのがきらいなのさ』と語るアグリの左頬には異様なコブがあり、それを美しい優子に呪いで移そうとするのです。続いて優子にナイフを持たせて無理矢理コブを切り落とさせ、それを優子にになすりつけるのです。ひどい!
さらに作品の見せ場はこの後で用意されていて、アグリのコブがあった場所に人面瘡が生まれるのです!しかもそれが笑いまくるのですが、ここを大ゴマをたっぷり使って見せつけてくる…怖い!短編での登場ながらこのアグリという女の名前と風貌で楳図ファンから高い人気を得ています。

2巻は、単行本1冊を使った長編「ヘビ少女の怪」のみの収録。
これは1966年の「ヘビ少女」を改題した物で、あの小野サツキ&カンナ(今回はカタカナ表記だ)の『山びこ姉妹シリーズ』第四作目にして最終作。
となると舞台はやはり山中村ですが、今回はここで明治四十年ごろに起きた忌まわしい昔話からスタートします。その頃に猟師の中村利平が禁断の"しのばずの沼"に入り込んで猟をしたあげく、そこのぬしであるうわばみ(大蛇)に襲われ、逃げながらそのうわばみの左目を打ち抜いた為に復讐されるのですが…それが何故かこの時代、利平の孫でサツキの友達である洋子に向けられるのです。
冒頭の昔話はおなじみ、サツキ達のおばあちゃんが語っていたのですが、利平どんが連れていた猟犬のクマ公は『ヒイッ!!ひいいいい』と人間のような声で怖がっていました!

続いて今回の話で被害者になる洋子の家が片目のヘビ女に襲われ、おばあちゃんが殺されると洋子は隣村の屋敷にもらわれていく事となりました。その屋敷は家族ぐるみで『ヘビの病気』にかかっており、ヘビ嫌いの洋子は世にも恐ろしい目に遭うのです。
ヘビのウロコを飲まされヘビ井戸に落とされ、ついにヘビ少女にされる洋子。そして彼女を助けようとするサツキ&カンナに『ザザザーッ』と襲い掛かる、恐ろしい顔のヘビ女!!悪夢のように追いまわされ、危うい所で助かってはまた襲われて…
その可愛らしさで癒し担当だった妹のサツキも今回はコミカルさを抑え、それ所か一度ヘビに操られてカンナにヘビの卵を食わせようと迫ってくるのだから、『山びこ姉妹シリーズ』最恐の話でした。

3巻は、「おみっちゃんが今夜もやってくる」「双頭の巨人」の2編収録。
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まず「おみっちゃんが今夜もやってくる」は、楳図かずお先生の元に届いた手紙の内容を紹介する形で話が展開する『奇妙な手紙シリーズ』の一作。元々は1960年に貸本短編誌で掲載した物ですが、この「怪」には後に加筆し、別作品「丑の刻参り」を併せたバージョンで収録されています。

貸本時代のオリジナル版も、他の奇妙な手紙シリーズ作品も加えた上で小学館クリエイティブより復刻しているので、是非こちらとも比べてみてください。
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熊本の片田舎に住む旧家の夫婦が養子に貰った少女おみつ(おみっちゃん)は、幸せに成長しますが…まだ女学生というのに病の床にふして、そのまま死んでしまいました。両親に忘れられるのを恐れ、一生忘れないようにお願いして逝ったおみっちゃんが死霊となり、新たに養子に迎えられた比奈子を殺そうとして出てくる、そんな話。
これが怖いのですよ!恐ろしい顔になったおみっちゃんは毎夜毎夜現れ、『でていけ!』と叫んで首を絞めてくるのです。とにかくしつこい、このおみっちゃんの呪いも、ある理由で終わりましたが…
いや、まだでした。何と東京に引っ越した一家の元へも出てくるようになり、悩んだ母親が驚きの方法で対抗しようとする!!
ラストのオチも意味深なこの傑作は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の怪談「破約」から発展させたのだそうで、確かにあの夫婦の妄執を親子に置き換えた話ですね。

続く「双頭の巨人」は、少年画報で掲載していた『楳図かずお恐怖劇場』の中の1編で、1966年の作品。なのでこれだけ少年向けSF作品であり、絵柄も含めて単行本「怪」の中では異色。
昭和二十年、東京が空襲されている最中に生まれた雨宮家の子供は、シャム双生児でした。それから二十年後、黒岩山で鬼として恐れられている彼らの姿があった…ある女性と出会う事で同体の二人が争い、果てに『ばけもの!』と罵られて悲劇が起こる、そんな江戸川乱歩的な話でした。

ところで最近続けて紹介している楳図かずお先生のサンデーコミックスですが、これはどれもカバー内側に楳図先生の言葉が載っています。例えばこの「怪」では、
『整然と織りつづれられた模様を、指さきでたどるように、朝夕を何のへんてつもなく、くり返しながら生きている自分自身に、ふと疑いを持ちはじめた意識が、突然うら返された模様の裏側に、有り得べきではない一点を見つけたときの驚ろきは、はたして自分の存在すら、すなおに光にうつされたままを信じられるだろうか?』
とあります。他のサンデーコミックスでもまぁこんな感じですが、何か難しい事ばかり考えすぎて逆にオカシイ人のように見えるインテリが書く文章のような…とにかくTVに出るといつもおちゃらけている、あの姿と同一人物だとはとても思えませんね。


わたしはなにか自分では理解できない いいしれぬ恐れのようなものが
胸の中を突き抜けるのを どうしようもありませんでした
その恐れがなにからくるものか わたしにはかいもくわかりませんでした



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  1. 2012/05/26(土) 23:00:00|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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