大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(22) 「映像(かげ)」

楳図かずお作品より、「映像(かげ)」(朝日ソノラマ刊)です。
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朝日ソノラマから出た『シリーズこわい本』のシリーズの1巻目に当たり、画像の左は1983年初版のサン・コミックス版で、右は1990年に同内容を装丁変えて再出版されたハロウィン少女コミック館版。

紛らわしい事にサン・コミックス版が全12巻、ハロウィン少女コミック館版が全15巻と、少し内容が変わってくるのですが…
後者の初版時に付いてた帯を巻くと、こんな感じ。
UMEZZ-kowai-hon1-2.jpg
帯の裏にはサン・コミックス版と同じく12巻までのタイトルが書いてあり、つまりこの時点ではハロウィン少女コミック館版もサンコミ版と同じく全12巻にするはずだったのが、どうせならサンコミで他に出ていた3冊もシリーズに入れちゃって全15巻にした、という事でしょう。

シリーズを名乗ってはいますが特に共通する設定やキャラなども見当たらず、それどころか掲載年も雑誌もバラバラに短編・中編・長編を寄せ集めただけ…しかし楳図かずお作品を語る上で重要な、そしてレベル高い作品の宝庫なので、順に紹介していきましょう。

今回は第1巻目、「映像(かげ)」
表題作は1968年のティーンルック(主婦と生活社刊)で連載された作品で、人々に"鏡やしき"と呼ばれる立派な洋館に生まれた少女・花野絵美が主人公。
館の中央に古く大きな鏡があり、小さい頃から鏡に自分を映す事が大好きだった絵美は、中学一年生で既にプロポーズされ、ボーイフレンドの申し込みは数えきれないほど美しく成長しました。それを十分に知っている絵美は自らの美しさに見とれている…これぞ正しいナルシシズムの姿。

しかし高校生になった頃から誰かの憎しみを込めた視線を感じるようになり、ある日…鏡の中の絵美が人格を持って出てきて、こちら側の絵美に成り代わるべく動き始めるのです!
その行動は狡猾で、ある作略にはまると誰もが振り向く美しさだった絵美は町で『女こじき』と蔑まされ、家族からは怖がられて精神病院に入れられそうにまでなるのです。親友にまで根回しされて、自分はこの世界で一人ぼっちと思わされたその時、今まで全く相手にして無かった同級生の男子・若殿とその妹・みつこと関わって気も持ち直し、かげに対抗する解決策も思いつきました。
この二人にかなりのページ数を割き、恐怖漫画の中にギャグ場面を挿入する工夫は珍しい企みであり、効果的に殺伐とした雰囲気を和らげていて面白いですね。
一応書いておくと…この作品でも「ロマンスの薬」のチュー子が同級生として登場してます。

併録作品が、「谷間のユリ」
これは1972年の女性セブン(小学館刊)にて掲載された短編で、かなりの傑作。地味な顔…いやリアリティあふれるそれは はっきり書くと『ブスな顔』であり、そのように生まれたために婚期を迎えながらも孤独に生きるOLが、本編の主人公。
彼女の独白で物語は進みますが、この文学性を持たせた人間ドラマの感じは…おお、超名作「イアラ」を髣髴とさせます。ただ実直に生きてきた大人の女性が負のエネルギーを爆発させてある行動に移り、そして知った人間の心、それから贖罪。人間の美醜というものにこだわり、描き続けてきた楳図かずお先生だからこそ描けた女の業に刮目せよ!


あなたは認識を改めなくてはいけないわ
わたしから見ればあなたのほうが かげよ!
あなたこそ鏡に写っている わたしのかげよ!
あなたたちは自分が本体だと思っているけどちがうのよ
べつに信じなくてもいいの
おろかな者ほど 常識のわくからはみ出ることをきらうのよ



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  1. 2012/06/23(土) 23:59:38|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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