大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(28) 「復讐鬼人」

楳図かずお作品より、「復讐鬼人」(朝日ソノラマ刊)です。
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朝日ソノラマから出た『シリーズこわい本』のシリーズの8巻目に当たり、画像の左は1985年初版のサン・コミックス版で、右は1990年に同内容を装丁変えて再出版されたハロウィン少女コミック館版。
1960年代の少年誌にて発表の4編、いずれも時代劇で復讐をテーマにした作品ばかりを収録した中・短編集になってます。

表題作の「復讐鬼人」は1967年の週刊少年マガジンにて掲載された作品で、永禄という年号が出るので室町時代だと思います。宇田城の臣下である剣の達人・近藤無双は、落の危機の間に世継ぎの光忠を預かって山篭りする事を命じられました。
わがまま放題で凶暴な光忠の行動にも耐える無双でしたが、息子の正吾を手ひどく苛められ、泥ダンゴを食わされていたある時…ついに怒りが爆発して手を上げてしまい、それによって光忠は失明しました!
それから落城をまぬがれて宇田城に戻った無双は、城主・宇田文武の復讐を受けるのです。劇薬を盛って喉を焼かれた上に両腕を斬り落とされ、罪人の中に投げ込んで残酷な重労働させられる…さらには息子が殺されて、ついに城主に牙をむく無双でしたが、今度は足の筋を切られて二度と歩けなくなりました。城主も無双に復讐しているつもりなので、殺しはせずに生き地獄を味あわせているのですね。さて両手両足までを失くした無双は、果たして本懐を遂げる事が出来るのか!?
そんな、壮絶な話です。時代劇で武士の復讐、そして残酷描写…となるとやはり、そのジャンルでは偉大すぎる平田弘史先生の劇画を思い出しますね。特に両手両足を切り落とされながらも執念で復讐を果たすという内容は…これ、そのまま「血だるま剣法」(後にリメイクして「おのれらに告ぐ」)にインスパイアされたのではないでしょうか。

「面」は1968年の週刊少年ジャンプにて掲載された作品で、ある城の絶対的な城主・鷹影は偉大な武将でしたが、その息子・鷹輝は気弱な男に生まれました。その事から過酷な仕打ちで息子を鍛える鷹影でしたが、ついに戦で命を落とすのです。自分そっくりに彫らせた面を残して…
その面が偉大な父の威光を死後も残しており、城主になった鷹輝はついに狂気に走るのでした。最後の最後、もう敵に攻められて落城するその時、死の寸前についに面を壊して父の重圧から逃れられる、という話。
これは…親の子どもに対する精神的・肉体的な暴力が及ぼす影響を描いた心理学の教科書としても使えそうな内容ですよ。体罰を肯定しているクズにこそ、こういう作品を読んでもらいたい所ですが…まぁそういう者は漫画で改心などするわけないですか。

「人食い不動」は1967年の週刊少年マガジンにて掲載された作品で、文明九年(1477年)が舞台。
領主・阿久津軍兵衛の悪政によって農民達は極限まで苦しめられ、家族も殺されて追い詰められた鬼丸は、逃げて入った山の中で山師の海慶が彫る巨大な不動明王に出会います。
そして、五年かけてようやく完成も間近に迫ったその不動明王の中に入って殺された鬼丸の復讐が始まる…ここで鬼丸が入った不動明王の顔に注目ですよ。木彫りの明王ですが、不思議な事にその表情がとんでもない怖さに変わっているのです。この顔を全人類に見て欲しい…これこそが恨みを抱えた者の『怒り』の表情です!!まぁ、楳図かずお「大魔神」です。

最後の「肉面」は1966年の週刊少年マガジンにて掲載された作品で、劇画調である他の3作と違って描き込みの少ない低年齢向けの絵柄になっています。一見すると可愛いとも見れるこの絵で恐怖シーンが飛び出すから、やっぱり楳図かずお作品であるわけですが。
今回の舞台は室町時代の烏山城…これは今の栃木県に実在した城ですよね。ここの城主・烏山主水之介が面を集める事に執着しており、面作りの名人である夜叉面が命令を聞かなかった為に斬り殺します。そして夜叉面の孫・重太郎が面作りの腕を上げて夜叉面の名を継ぎ、長い時間をかけた復讐を成すのです。
自分の人生は全てを復讐に捧げているので人付き合いなど眼中に無く、周りからバカだと思われていた重太郎が最後に作った面とは!
『ブッ ビリビリビリ ブツーン ベリベリベリ ビリ』
って…自分の顔の皮を剥いで作ってますよ!!それを城に持って行って殿に献上するのですが、顔の皮を失くした重太郎は顔を包帯で覆い、暴君である殿様に殺された上で包帯剥がされてグロテスクな顔を晒す。あとの復讐は、『肉面』がする事になるのです。

気が滅入るような復讐の話ばかりを集めたこの作品集は、目を覆いたくなるような物だからこそ本当は目を凝らさなくてはいけないのです。現実世界と違ってちゃんと復讐が成されるので物語として面白いし。
人間とは…人が持つ心の闇とは…それを知る最良の作品集ではないでしょうか。


父上!やっとあなたの面を ひきさくことのできる時がきた
にくい!父上あなたがこのわたしを どれだけ苦しめたか!
今こそこの面をこわすことができる!!



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  1. 2012/08/03(金) 23:40:01|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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