楳図かずお作品より、
「木の肌花よめ」(
朝日ソノラマ刊)です。

朝日ソノラマから出た
『シリーズこわい本』のシリーズの12巻目に当たり、画像の左は1985年初版の
サン・コミックス版で、右は1991年に同内容を装丁変えて再出版された
ハロウィン少女コミック館版。
サンコミの方は全12巻の形だったので、今作でシリーズこわい本は最終巻となっております。ハロウィン版がまだ続くので、細かい事は次回書きましょう。
今回は初期作品5編を収録した短編集になっていて、まず表題作の
「木の肌花よめ」は1966年の
別冊少女フレンド(
講談社刊)にて掲載された怪奇時代劇。
黒部家の
あや姫は美しく、嫁に貰いたいという男達が後を絶たないほどでしたが、ある人と結婚の約束をしてから急に肌が松の木目のようになり、今まで寄ってきていた男達は全員去っていく。しかし
水上という侍だけはそれでも欲しいと言う。その水上に、今や完全に全身が木目になったあや姫が襲い掛かる…
オチとしては、黒部家にあった屋敷以上に立派な松の木があや姫に恋して、どこにもやりたくないがためにこんな呪いをかけたのでしょう、という話でした。近年のアキバ系のオタク達は動植物や無生物などを『萌え擬人化』して楽しんでいるらしいじゃないですか。そういう人には、美少女が松の木のようになっていく様は萌えなんですかね。松の木たん、木の肌たん、とか。全然違いますか。そうですか。
続いて
「悪魔の手を持つ男」は1965年の
別冊少年マガジン(講談社刊)にて掲載された少年向け怪奇SF漫画。
五郎の兄はいくら食べ物を食べてもそれが血にならない奇病に侵されて、あとは餓死を待つばかりの状態で病院に横たわっていました。ところがある時右手が巨大化すると、その手が触った人から血を一滴も残さず吸い取るようになるのです。何人も犠牲者を出した後、五郎は兄が怪しいとにらんで調べる事になる…
特筆すべきは、この五郎は後に描かれる
「笑い仮面」の五郎(探偵ゴロー)と同一人物かもしれない事でしょうか。まだでっかく『5』と書かれたシャツは着ていませんが。
「青い大きい鹿の死」は1962年に
ゆりかご(
東邦出版刊)という短編誌へ描き下ろされた少女漫画。
新人バスガイドの
浜あけみは、尊敬する先輩・緑野さんと共に鹿号と名付けられたバスを担当しますが、ある時緑野さんがひき逃げに遭って死んでしまいました。それから緑野さんに可愛がられていた鹿号は調子が悪くなり、ある時勝手に暴走したと思うと緑野さんをひき殺した犯人に向かって行くのでした…
これも表題作と同じく擬人化好きの人々に愛されそうな作品で、昨年『楳図かずお画業55th記念』として
講談社漫画文庫から出版した単行本
「生き人形」にも併載されていましたね。
「のろいの面」は1965年の別冊少女フレンドで掲載された作品で、サンデー・コミックスの
「百本めの針」(
秋田書店刊)に
「呪いの面」のタイトルにて収録されていたので、既に
「ココ」で紹介しました。
仲良しなあや子と雪子が、朝霧面と夕霧面の力を受けて殺し合う話です。
最後の
「大怪獣ドラゴン」は、1966年の
少年画報(
少年画報社刊)にて連載された怪獣漫画で、この単行本の半分近い分量を使った中編。この時代の少年画報という事は『楳図かずおの恐怖劇場』と題して次々短編・中編を載せていたうちの一作で、後に改題された
「原子怪獣ドラゴン」の方が通りがいいかもしれません。
天文十二年、ある漁村で
小助という少年が竜神の卵らしきモノを拾い、納屋で何と自分の体を使って温めると…卵から孵った生物は太古の恐竜のようなヤツでした。これを
楳図かずお先生はタイトルの通りドラゴン、つまり竜と呼んでいるのですが、竜は竜でも恐竜なのです。後で学術的にはモササウルスの仲間ではないか、という話も出てきます。
その竜に
太郎と名付けて可愛がる小助でしたが、体がどんどん大きくなって村人に恐れられ、ついに太郎は檻を破って牛を丸呑みしたりと村で暴れまわり、小助は家族(父と婆)諸共村人によって惨殺されてしまいました!一軒家くらいのサイズになっている太郎も村人の爆薬で怪我をし、片目になって海へ逃げて行きました。
それから現代へ。つまり400年以上が経っているのですが、あの殺された小助の伝説が基で"小助村"と名付けられた東北の村で、小助を弔った小助地蔵が壊れた時、もうビルよりでかくなっている片目の竜・太郎が小助を探して現れるのです!それから小助の子孫に当たるという
一雄少年(お、楳図かずお先生の本名と同じ!)が家族と逃げた東京まで、途中の町を壊滅させながら進んで行く…
後の名作
「怪獣ギョー」(
「ココ」で紹介しました)と共通する、というかシチュエーションは正に同じなので基になった作品と言えるでしょう。
ほほほ こんなわたしをつれていく気か
それっそれっ 見るがいい……この手を
これでもよめにするというのか このばかものめ!
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- 2012/08/28(火) 23:37:59|
- 楳図かずお
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