大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(33) 「紅グモ」

楳図かずお作品より、「紅グモ」(朝日ソノラマ刊)です。
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画像の左は1968年初版のサン・コミックス版で、右は1991年に再版されたハロウィン少女コミック館版であり、『シリーズこわい本』の13巻目。
サンコミの方は全12巻であったため、前回紹介した「木の肌花よめ」で同シリーズは終了していますが、ハロウィン版で再発売する時にサンコミの単発で出ていた作品も『シリーズこわい本』に入れちゃったのですね。他に2作品が同じ扱いとなったため、ハロウィン版の同シリーズは全15巻になっているのです。

1965年から翌年までの少女フレンド(講談社刊)で連載された作品で、今回は「紅グモ」だけで全1巻で使う分量の長編。連載時は16回に及んだその長さを、主人公の美少女がしつこくしつこく追われ続ける恐怖漫画の傑作ですね。

主人公の女学生北村美也子はクモの研究者である父、そして仲良しの姉・たか子と暮らしていました。その家庭に新しい母親が来た所から、物語が始まります。
そうそう、サンコミ版だと物語の開始2ページ目で姉妹が母に屋敷内を案内しながらここが"クモやしき"と呼ばれている事を話し、その理由として
『お父さんがクモきちがいだからよ』
と説明するセリフがありますが、それはハロウィン版では『お父さんがクモマニアだからよ』と直されています。
前回までのシリーズこわい本と違ってサンコミ版の出た時代がかなり古いために、ハロウィン版の復刻までに出版業界で言葉(台詞)から差別表現に当たる物を探して自主規制する傾向が進んだのでしょう。他にもいくつかセリフ修正箇所がありました。
ついでに書いておくとサンコミ版の方は美しいカラー口絵とモノクロ口絵が各1ページ、表紙絵とプロローグの言葉ページも各1ページ、カバーには若き楳図かずお先生の著者近影まであるのですが、ハロウィン版では全て削られています。

ともかくお話の方ですが、新しい母親というのが財産目当ての酷い奴で、姉妹を亡き者にしようとするのです。
そこでまずは夫の研究室から盗み出した紅グモ…人の目や鼻から体内に入り込む習性を持った恐ろしいこいつを、たか子に飲ませて殺害します!この家では普通に土葬しているようで、死んだたか子の体にクモの毒から取った防腐剤を注射した上で埋められました。
それからたか子は、恐ろしい事に墓の中で息を吹き返しました。紅グモの生命力のおかげだと思いますが、体はか弱い少女の物です。何とか土の中から這い出したものの、その体は白髪でシワシワのお婆さんのようになってしまいました。
生き返ったたか子はばあやとして北村家に入り込み、自分をこんな目に合わせた母への復讐かつ、次は当然妹の美也子に向かうであろう魔の手を阻止しようとするのですが、守りたい愛しの妹にも自分を分かってもらえない!

この後も母は巧妙に美也子を殺すべく追い込んでいきますが、たか子は体が徐々に紅グモに蝕まれていきながらもついに妹を守りきり、同時に母への復讐を果たしました。
はい、これで美也子は危ない所を助かりハッピーエンド、というのが通常の少女向けホラー漫画の時のパターンでしたが、この「紅グモ」はそうはいきません。悪の元凶だった母の死後、今度はたか子を喰らい尽くした紅グモが、新しい体を得てさらに他の少女達を狙うのでした!で、また襲われ続ける美也子…

この時代の少女漫画で描かれる楳図かずお作品は、登場人物の可愛らしさがたまりません。そんな中で肉体的にも精神的にも醜いモノが出てくるから恐怖が引き立つわけですね。
今作でタイトルにもなり重要な役割を担うのが、人に取り付いて支配する紅グモ。しかもその人間の人格や記憶も残したまま混ざり合ってくる恐ろしい生き物…こいつはオーストラリアの奥地にいる珍しいクモなんだそうです。
結局は人間が怖いのであり、楳図作品でより多く使われるヘビがクモになっただけ、と言えばそれまでですが、クモの持つ特性やインパクトも活かしていて、"クモ物"の代表作になったのではないでしょうか。

こんな傑作も人の目に触れなければしょうがない…そこで、またもやってくれたのが小学館クリエイティブ!といっても随分前になりますが、2008年に前・後編に分けたオリジナルの形で「完全復刻版 紅グモ」を上梓しました。
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少女フレンドでの連載終了後すぐに佐藤プロから刊行された貸本時代の単行本を、強いこだわりを持って復刻しています。それに付録の小冊子で楳図かずお先生のインタビュー、そして近田春夫らによる解説も付いています。素晴らしい!!


そうれ もうじたばたしてもおそい かくごするがいい
紅グモがわたしの口からおまえの口へ…



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  1. 2012/08/30(木) 23:27:56|
  2. 楳図かずお
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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