大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(35) 「半魚人」

楳図かずお作品より、「半魚人」(朝日ソノラマ刊)です。
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画像の左が1971年初版の『楳図かずお 秀作選』全3巻のうち3巻目として出たサン・コミックス版で、その右(真ん中)は1991年に同内容を装丁変えて『シリーズこわい本』の15巻目としてハロウィン少女コミック館版で再出版した物。さらに今回は1997年に出たP-KCシリーズ(講談社の廉価版復刻コミックス)の画像も載せましょう。
ちなみに『楳図かずお 秀作選』の2巻目である「女の子あつまれ!」は、その内容からハロウィン版の『シリーズこわい本』には入れられず、シリーズは今作を最終巻とする全15巻で完結となりました。

今回は3作の少年向け恐怖漫画が収録されていて、表題作「半魚人」は1965年の週刊少年マガジン(講談社刊)にて連載6回で掲載された作品。
半魚人といえば…もちろんアメリカ映画「大アマゾンの半魚人」が誰しものイメージになっていると思いますが、そこから着想は得ながらもオリジナル作品であり、楳図かずお作品らしいSF要素を盛り込んでいまして、『半魚人』の読み方も『はんぎょじん』ではなく『はんぎょにん』となっています。

主人公である式島次郎少年の兄は、ある日突然おかしくなり始めました。鋭い牙が伸び、体にはウロコ、手の形も変形してヒレが生えてきた…さらに普通の食事が取れなくなって半魚の姿で海に入っては魚を獲って生で喰らう。
目撃した次郎は襲われながらも何とか逃げ延び、二人は決別する事になりました。が、すぐに兄は現れました。友達の健一の家に入り込んで研究者である健一の父に成りすまして…健一を半魚人に改造するのです!
健一の父の研究では、世界的な温暖化によって南極と北極の氷がとけて地球は海の中に消えるそうなので、その未来に生き残るため強制的に半魚人にする、という事ですね。次郎の兄がいきなり半魚人になったのも、地球が水に沈むのを本能が敏感に感じ取ったから。後の長編「14歳」も同じ設定ですよね。
自然に半魚人になれた次郎の兄が、なれなかった健一を改造するわけですが、この手術が凄いのです。でかい水槽に入れて水中に長時間いる訓練をし、刃物で口を大きく切り裂き、続いて目・・・指・・・と、貸本時代の名作「猫面」を彷彿とさせる残虐な麻酔無し手術が続きます。健一は狂ってしまいながらも本当に半魚人2号として生ま変わるのですが、このデザインは凄すぎますね…
それから、もの悲しいラストシーンまで一気に突っ走り、海に沈んだ世界では生き残れるのだから半魚人になった方が幸せなのかもしれないと結論付けられます。ただし、博士は最初に『あと千年ほどで地球が海ばかりになるのじゃ!!』と言ってるんですよね。それって半魚人になった者も絶対生きてない時代の話ではないですか!
滅亡が先の話すぎるのと、次郎の周りの数人しか出てこないから"終末モノ"としてはスケールが小さすぎるかな。しかし、これも精神が肉体に及ぼす影響を描いたメタモルフォーゼ物であり、どこのページにも楳図かずお作品の魅力であふれている大好きな作品です。

続いては「半魚人」の翌年である1966年に、同じ週刊少年マガジンで連載7回で掲載された「ひびわれ人間」。『楳図かずおのフランケン』というサブタイトルも付いていますが、そのままフランケンシュタインの怪物モノです。
ボリス・カーロフが怪物を演じた1931年の映画「フランケンシュタイン」が元ネタですが、これは以前にも「恐怖人間」(原題「恐怖人間 残虐の一夜」)で描いた自作のリメイクでしょうか。少年誌向けに残酷描写は抑えられ、分かりやすい復讐物語にもなっています。
生命の謎に挑戦する灰田博士と助手の三太少年は、死体の体をつなぎ合わせて作った体に死んだばかりの幼児・森影良彦の脳を移植してついに人造人間(ひびわれ人間)を誕生させました。
良彦の母親は、醜い化物の姿で現れた我が子を復讐の道具として利用するが…という話。良彦の顔が初登場のコマと次のページのとでまるで違っているので、明らかに後で加筆修正しているかと思われます。いつか初出時のマガジンを確認したい所です。

最後は1966年の少年画報(少年画報社刊)にて掲載された「恐怖の首なし人間」
同じ少年画報で翌年に掲載された「笑い仮面」を紹介した時に触れましたが、主人公の少年が同じ五郎(探偵ゴロー)で、もちろん着ているシャツにはでっかく『5』と書いてあります。
いきなり家でワニオン(ワニとライオンをくっつけた怪物)に襲われてケガをした五郎は、藻呂尾博士というマッドサイエンティストが研究所をかまえる島に連れて行かれて、人工的に作られた奇形の動物達を目撃する事になります。しかも自分の体を藻呂尾博士の息子であるとしおに使うため狙われている事が分かり、逃げ出そうとする…
ちなみにタイトルにある"首なし人間"というのは藻呂尾博士の事で、彼は自分の体までも実験材料にして、首を胴体と離す事に成功していたのです。ラスト近くで五郎を追い、両手を上げて迫って来る首なし人間の姿は怖がればいいのか、笑えばいいのか。

最後の「恐怖の首なし人間」はもちろんH・G・ウェルズの小説「モロー博士の島」が元ネタになっており、とするとこの本に収録されている三作は「大アマゾンの半魚人」「フランケンシュタイン」「獣人島」と、それぞれ往年のアメリカで作られた怪奇映画に関わる物ばかり。
それに描かれたのが同時期であり少年向け作品なので、統一されていて良いですね。同じ『シリーズこわい本』でも、絵柄が内容がバラバラすぎる短編集になっている巻もありましたから。


ゆうべはとんでもないところを見たな…
殺してしまうつもりだったが とてもできなかった……
おれたちはこれでおわかれだ
そうさ おれはだんだんさかなになっていくのだ



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  1. 2012/09/06(木) 23:58:27|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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