大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(144) 真鍋昌平 2 「THE END」

真鍋昌平先生の「THE END」(講談社刊)。
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真鍋作品は既に「スマグラー」を紹介しましたが、同じ月刊アフタヌーンにて2001年から翌年まで連載された作品で単行本は全4巻と、後に描いて現在も連載中の代表作「闇金ウシジマくん」の次に長いですよ。

肉体労働の現場仕事をしながら退屈な日々をダラダラ過ごしていた主人公はシバシロウ
彼が道を歩いていると、空から素っ裸で降ってきた美しい女…ルーシーと名乗る彼女と行動を共にすると、意味を見い出せなかった生活が一変し、全てが嬉しくなるのです。時に哲学的な事を語ったり、屋上で"今日"の終わりを見る詩的な時間を過ごしたり。
しかしそんな最高の時間はたった2日間だけで終わりました。ある時シロウが部屋に戻ると、アパートの住人達が惨殺されており、死体の中に立つ一人の男…そしてルーシーは姿を消していた!!

導入部はそんな感じで、地下水道で生活する地底人と会った後は、日常生活とかけ離れた冒険の日々が始まるのです。
地底人曰く、彼とシロウの他に5人の仲間がいるらしく、再び集結させる時が来たのだとか。シロウはかつて自分で望んで失くしている記憶があり、同じく記憶をなくしているかつての仲間達を集め、敵と戦わなくてはなりません。そう、時を同じくして『敵』に命を狙われ始めるのです。
主人公が現れる敵と戦いながら仲間を探し、最終決戦に挑む…概略だけ見たらロールプレイングゲームみたいなストーリーです。
普通の社会人…というよりダメな大人に、実は今と違う"本当の自分"の姿があった!というのも有りがちながら、世間に疲れた大人がいつも願う夢。

仲間達は"第一の男"、"第二の男"、という風に集めていくのですが、敵も"第一の敵"、"第二の敵"と出てきて…どちら側も個性的でいかれた奴らばかり!!
現実ばなれした内容に流れていきながらも周りを彩る登場人物や日常描写ではウシジマくんを思わせるリアルな怖さもあるし、後半は特に絵柄も現在の物に近づいてますね。あとはやっぱり、セリフがいい。

シロウが集める仲間達は全員が異常な能力(ちから)を持っており、リコリスという『悲しき思い出』を花言葉に持つ花をモチーフにした刺青をどこかに入れている…という事で、「南総里見八犬伝」っぽいですね。それぞれの名は
最初の男・地底人
第一の男・ギブス(チャパ)
第二の男・鸚鵡(オウム)
第三の男・ミスターQ
第四の男(女)・なな
第五の男・名無し

で、他に作業着の大男やアパートの住人達など、忘れている過去に関係ありそうな人物は出てきます。

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最初の男である地底人が他全員の記憶と能力を封じた張本人だったのですが、まずシロウの謎につつまれた記憶、そして特殊能力が解放されると…強すぎると思われた第一の敵・頭傷(アタマキズ)をあっさり倒してしまいました!!
蘇った過去の記憶によると、かつて彼らはどこかの国ででかい組織(政府?)に兵士として軍事利用されていたようですね。他の目的もあった事が終了間近に分かりますが…かつて彼らは雇い主から逃れるために伊豆・小笠原海溝で死んだ事にして、記憶を消して別れて生活していたのです。
ついに"昔の知人"達を集めたシロウは、地下施設で乾杯を交わす事になりました。それもつかの間、すぐに襲い来る第二の敵、第三の敵が強すぎます!!姿も能力もユニークすぎる彼らによって一気に崩れる味方の陣形。そういえば第三の敵の容姿は、アルバム「メカニカル・アニマルズ」(Mechanical Animals)カバー写真でアンドロギノス(両性具有)を演じた時のマリリン・マンソン(Marilyn Manson)そっくり!

頭傷の事とか、謎が少しずつ分かってくるのですが、特に気になるのがシロウが最初から最後まで求めていたルーシーの正体。謎につつまれた彼女の真実が明らかになるのか!?
そして、カッコいいクライマックスに流れ込むわけです。印象的なラストシーンまで読み終わった時、改めてタイトルを「THE END」とした意味を考えてみましょう。

真鍋昌平先生の作風は社会の裏側を描いたリアルで陰惨なモノ、というイメージが定着しているかとは思いますが、昨年出た短編集「青空のはてのはて」で明らかにした所によると(もちろん最初期から追ってた人は知ってたでしょうが)、かつては色々なジャンルを試行錯誤してようやく「闇金ウシジマくん」に至ったのですよね。
「THE END」も過渡期の一作であって、これで画力が高ければ…と惜しい気持ちになる事がしばしばありありました。この荒削りさが大事な個性ではあるのですが、おそらくは自分が画力がモノを言うこの手のアクション物を描く漫画家ではないと気付いたのでしょう。この後で個性と魅力を活かしたウシジマくんに着手する事になるのです。


"ある"のに感じ取れないもの たくさんあるでしょ
人は人が持ち得る感覚でしか 世界を測れない
私 こわい?



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  1. 2012/09/13(木) 23:59:59|
  2. 劇画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

ヌルさを糾弾する姿勢にしびれてました

コレ、好きでしたー!
スマグラーのときからこの作者さんの、人間のヌルさから生じる欺瞞を糾弾する姿勢に感心していました。
飼っていたインコを殺そうとするいかついオッサンがわりと印象に残ってます。
あと、脂ぎったオヤジがコメディリリーフとして使われているのがものすごく新鮮でした!
「思考停止でワッショイワッショイ」では爆笑しました!
この作品までは糾弾されるのはあくまで主人公格のキャラクターだったのですが、ウシジマくんでは読者に変わったようですね。啓蒙マンガなのでしょうが、正直、ベラ編が怖すぎて読むのをやめちゃいました……
  1. 2012/09/24(月) 00:02:34 |
  2. URL |
  3. 通りすがり #-
  4. [ 編集]

目に映るものが全てじゃない

>通りすがりさま

コメントありがとうございます。
本当、真鍋昌平作品はメッセージ部分がグッときますよね。
『ワッショイ ワッショイ
思考停止は ワッショイ ワッショイ』
…ええ、親父のあれは名シーンでしょう!

私のは大雑把な紹介ですが、細かい部分までしっかり読み、楽しんでいる方の目に触れて嬉しいです。
  1. 2012/09/24(月) 22:09:42 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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