大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(146) タカ 1 「ブルーカラー・ブルース」

今夜はタカ先生の「ブルーカラー・ブルース」(宙出版刊)です。
TAKA-blue-collar-blues-yellow.jpg

世にサラリーマン漫画は数多くあれども、それはいわゆるホワイトカラー、つまり事務や営業職などのスーツ着てる側だけの物ばかりだと思います。例えば「釣りバカ日誌」「総務部総務課山口六平太」、島耕作シリーズとか。
それが今作はブルーカラー、工事現場で働く労働者を描いている作品である事で、まず快挙だと思います。いや、私が個人的にこの主人公と同じような仕事を"青い作業着"着てしているからというだけでしょうが、"共感"し続けられるのです。それは大抵どこも恵まれない職場環境にある職業柄、気分が沈む種類の共感なのですが…

漫画の読者層って、決してホワイトカラーの方が多いという事もないと思うのですが、まぁ出版社や描き手はブルーカラーなんてヤンキー漫画とかバトル漫画でも与えておけば大丈夫、という事でしょうか。
『職人』という部分で近い所で、一番メジャーな題材は料理モノでしょうか。調理師だとあれだけ多くの作品が毎週描かれているというのに、例えば電気工事士の日常だとか、左官屋の職に対する情熱、配管工の恋愛、溶接工の冒険…出版社はそんな内容の作品には全く興味が無い、もしくは商売になるわけがないと判断されているのでしょうね。

作者のタカ先生は1981年生まれで、この「ブルーカラー・ブルース」Yahoo! JAPANの『Yahoo!コミック』内、Nextcomicファーストで2009年から翌年まで連載された作品であり、第一回ネクストコミック大賞の期待賞を受賞した今作がデビュー作になるようです。
TAKA-blue-collar-blues.jpg
(こちらは祝・受賞版の帯付き本)

自身の実体験を元に描いた私漫画で、主人公の松本貴仁は作者のタカ先生そのものでしょう。大学を卒業して工事現場に勤め初めて2年目の24歳、東北地方出身…最初に内定が出た会社がたまたま工事会社だったために就職しただけの彼が、電気工事施工管理(現場監督)という職種で遭う受難の数々を描いた作品。

要は過酷な労働が続く悲惨な日々と人としての悩みを描きながら、ブルーカラー中のブルーカラーである工事現場の仕事を丁寧に説明してくれて、とても勉強になる本なのです。さぁ、君もこれを読んで工事現場の現場監督や職人を目指そうじゃないか!

初めての就職先では会社員と言ってもスーツにネクタイではなく、ヘルメットに作業着、軍手に安全靴というのがユニフォームの松本は、客の要望を聞いて他の業者と打ち合わせ、職人への指示を出す。板ばさみの立場で両者から怒られながら、要領が悪い彼は自分で電気工事をして、失敗して…
うん、既に共感出来ると書きましたが、正に私もそんな感じです。専門の職人じゃないので、決められた仕事だけやればいいわけではなく、しかも浅く広く仕事する必要があるため絶対の技術・職人技を身に付けられるわけではない。
照明の安定器や絶縁抵抗器だとか、専門の小道具もちらっと出てくるのですが、私も電気工事士の免状を持っているのでもちろん分かりますよ。個人的な話で、ちょっと違う分野のボイラー技士だとか危険物なんかも取ってますが、国家資格ながらこれらガテン系の資格は決して生活の保障にならないし、まずスーツ族以上の高給を取れる事もありません。

松本は安月給の上に残業手当なんか無い会社で長時間労働して頑張り、しかも怒られるばかりでストレスを溜め、身体的にも粉塵やケガの危険が付き物で、その上工事の恩恵を受けるホワイトカラー側からは感謝される所か汚いモノ扱いで蔑まれ。もちろん同僚に女性なんかいないし、それどころかタトゥやピアス率が高い人々からの暴力や恫喝が当たり前。
そういった状況を丁寧に描かれており、短く挿入される活字のコラムによる補足も良いですね。正直絵が下手なのできつい部分もありますが、そこは実体験漫画ゆえの生々しさでカバーしています。

読者は、そんな仕事ならすぐ辞めちゃえよ、と言うでしょう。
まぁそこが見所でもあるのですが、辞めるのは逃げなのではと悩み…
結局は辞めるのですが、一難去ってまた一難。作品後半では再就職への苦難の道が描かれるのです!

クソ会社を出て全身に感激が走り、『無職すなわち無敵だ!!』とガッツポーズを決める松本ですが、
『俺を本当に活かせる場所へ行く』
『「ホワイトカラー」になって あいつら全員を見返してやる!!』
といった初志がすぐにブレ始め、体調は悪化し…単純作業のバイトで優しく可愛い女の子が声をかけてくれたと思ったら宗教的なモノへの勧誘が目的だったり、全てがさらに落ちていく。
と、まぁ何ともリアルなだけに辛い本なのですが、それでもこの後、自分自身のある気付きによってハッピーエンドへ向かって行くので救われました!

いや、私には本を置いたらまた明日早起きして会社に行かなきゃならない現実が待っているわけですが。ただ私はこの松本貴仁ほど考えすぎて悩まず、バカになって忘れる術は身につけましたね。
でも結局の所、憧れのホワイトカラーだって誰だって不満を抱えているし、望んだ通りの就職が出来ている人なんてまずいないんですよね。就職先が人生の全てを決定するくらいに思っている人が多いみたいですけど、大会社とかお役所に勤める事がそんなに素晴らしい生き方でしょうか。
だいたい仮に楽で収入がいい仕事してても、ただ食えて生命をつないでいるだけみたいな人を見ると辛くなるし…逆にニートしてても食える身分で毎日好きな映画観て漫画読んでってしてられたら、それは幸せなのだろうか?
仕事以外の時間をどう過ごすかで人生の充実具合、自身の納得度も違ってくると思いますが、仕事自体も自分の情熱を傾けられ、楽しいモノであるならばそれが一番の幸せですかね。さらに当然金持ちになって、異性にモテモテでいつでも海外旅行に行けて名誉も人脈もあって力も強くて適度に冒険が有り趣味と家庭が充実して好きな食べ物を食べ続けられたら、そうかもしれません。
あと学校教育を受けると同時に付いて回る、あの勝利者は英雄で負けた者はクズ、という基準は正しいのだろうか。それも成績だとか何とか誰かが勝手に決めた基準で。そういった勝負という基準でいうなら、今の成功者だっていつ落ちるか分からないわけですが、その人の人生のどの時点で判断すればいいのでしょうか。


何もかもがもう嫌だ
工事現場における ありとあらゆるものが 吐き気すらするほどに
朝のラジオ体操も ブレーカーも 電動工具も
ケーブルも プレハブ小屋も 不潔極まりない簡易トイレも
そして そこにいる全ての人々も



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  1. 2012/09/24(月) 23:59:59|
  2. 劇画
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  4. | コメント:2
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コメント

電気工事士…

こにゃにゃちは!
お久しぶりです!

「電気工事士」って、あの高所作業車(バケット・カー)に乗って、ケーブルを繋ぐ作業をしたりする、あの人たちですか。あゝなるほど、実は私の職業は交通誘導員てやつでして、いつも御世話になっておりますよ。私が接するのは主にNT○関係なので、電気屋さんとはまたチト違うようですが…。簡易トイレ、思い出しちゃったじゃないですか(苦笑)。この劇画、読みたいですね~。現在手軽に手に取れる本なのでしょうか?
ところでBRUCEさん、凄く免許資格、沢山お持ちなのですね。アタシャ自動車の普通免許しかないです。しかも自家用車はもう8年も持ってないし(汗)。
「冒険少年秀和王国」にもよかったらコメントくださいね。BRUCEさんがどんなこと書いてくれるか楽しみです(笑)。
  1. 2012/09/27(木) 21:46:13 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

ブルーカラー仲間ですね。

>秀和さま

タリラリラ~ンのコニャニャチハ~。

私は高所作業車上での電気工事はした事ありませんけどね、作業に立会って管理したりはしています。
資格は工事関係以外にもけっこう取ったものの、稼げる資格が一つも無いという状態です。持っている中では大型自動車免許あたりが稼げるか!?と思いつつもドライバーは絶対やりたくないし。
「ブルーカラー・ブルース」は今現在容易に入手出来ますよ!是非読んでみてください。

「冒険少年秀和王国」は何度もお邪魔して読ませていただいてますが、なかなか私がわざわざ入っていくようなタイミングが無く…。しかし秀和さま、とても幅広い趣味をお持ちですよね!
  1. 2012/09/28(金) 14:05:17 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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