大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(151) 上村一夫 25 久世光彦 1 「螢子 昭和抒情歌50選」

今夜は上村一夫作画、久世光彦原作の「螢子 昭和抒情歌50選」(中央公論社刊)です。
KAMIMURA-KUZE-hotaruko-chuko.jpg
小説家であり演出家、プロデューサー、作詞家…様々なジャンルで一流の活躍をした久世光彦先生を原作に迎えた「螢子」は、週刊女性(主婦と生活社刊)誌上で1976年から翌年にかけて連載された作品で、1996年に分厚い愛蔵版の形でようやく初単行本化されました。

ちなみに久世光彦一冊目の著書に当たるのがエッセイ「昭和幻燈館」で、それに収録されている「あんたとあたいのブルース 港が見える丘」上村一夫先生について語られていますし、上村先生が俳優として久世光彦演出ドラマにレギュラー出演した事もあるそうです。そして、その前に二人は親友だったようですね。

こちらは、2005年に上・下の全2巻で再発されたブッキング版。
KAMIMURA-KUZE-hotaruko.jpg
何故か歌手の一青窈が上・下巻両方の帯で推薦文を書いていて、それはつながり分からなすぎて驚きましたが…同じく両方の巻で冒頭にエッセイを書いており、それによると相当な上村一夫好きのようです。
それまでただのJ-POPの人だと思って意識してなかったのですが、上村作品に対する思いの丈を綴った文章も素晴らしく、それならばとウィキペディア(Wikipedia)で調べてみた所、何と『尊敬する人物は井上陽水、根本敬、阿久悠や谷川俊太郎。』という一文がありました!
2番目の人物以外はいかにもですが…好きだとかふられてどうしたとか恋愛を歌っている(ちゃんと聴いた事ないけど多分そうでしょう)J-POPの人が、特殊漫画家・根本敬先生を尊敬している!うーん、かなりキてる人ですね。アルバムのジャケットイラストを依頼すればいいのに。

さて「螢子 昭和抒情歌50選」です。
ああ、このタイトルの通り主人公の名前が螢子というのですが、これは私から下の世代だと誰もが「幽☆遊☆白書」のヒロイン・雪村螢子を思い出すでしょう。ただしあちらは『けいこ』でしたが、上村一夫作品の方は『ほたるこ』
もう一つタイトルに付く昭和抒情歌50選という部分ですが、これも文字通りで歌謡曲と合作・共演した劇画が50曲(1話で1曲)分続くのです。それも歌詞をそのまま劇画化しているわけではありません。絶妙な感じで歌詞とリンクする内容だったりもしますが、ただバックに流れている感じだと思って大丈夫でしょう。
山口百恵、山崎ハコ、浅川マキ、荒木一郎、沢田研二、泉谷しげる、井上陽水、清水健太郎、吉田拓郎…等、この辺りの有名歌手の曲だと知っている歌が出てきて嬉しいのですが、題材になっている歌謡曲のほとんどを私が知らないのは残念な所であり、勉強不足を感じました。いつかこの作品で使われた曲だ、という理由でレコードを全部集めて並べるのも面白いかもしれません。

主人公の響螢子(フルネームだと画数多い!)は第1章「君に捧げるほろ苦いブルース」で娼婦の真似事をしているし、身体を安売りしがちな美人。登場時は21歳。
それがカオリという登場時は4歳の幼女と出会い、行動を共にしてゆく事となる…第5章「コバルトの季節の中で」でカオリのフルネームは桃井カオリだと分かるのですが、この娘はあの女優・桃井かおりなのでしょうか。
私は当然そうだと思っていたのですが、それを歌手の一青窈(根本敬好き)がブッキング版の下巻で『最後まで読み解けなかった謎』として挙げていたので、先日のイベント後半の質問コーナーで上村一夫先生の実娘・汀さんと「リリシズム」編集者で日本一の上村一夫マニアとかの森田さんに聞いてみました。お二人の言うには、まだデビュー間もなかった桃井かおりに、上村先生もかなりのインパクトを受けていたから間違いないだろう…という回答でした。

カオリの母親は狂人で、この方の登場回はそういう人の行動の奇抜さや哀しさを目撃出来ます。螢子とカオリで精神病院まで見舞いに行った第17章「つらい夜」の出来事は衝撃的でした…
第29章「なごり雪」では小学校に上がる歳になったカオリが入学式の前月というのに通学セットを揃えて病院の前から母を呼びかける、いじらしいエピソードもありましたが。
また第9章「さくらの唄」では、全裸にて外を駆けていく狂った母を、追うカオリも全裸になっていくのは面白すぎる名シーンですね。
第19章「ロ・メロメロ」で螢子に全裸の撮影を頼まれた時も撮影者であるカオリまでわざわざ全裸になっている所を見ると、相手が裸なら自分もそれに習うのが礼儀だという躾をされているのでしょう。
ちなみにカオリの父親もスーツを着てますが十分オカシイ人で、螢子は何度も犯されてしまうし…

あとは螢子と夏男の出会いと愛し合うエピソードなんかもあったり、カオリの母が病院を脱走して父を殺してしまったりで、最後はついに螢子とカオリの別れがきて…
主人公の女二人の周辺にはいつも狂った騒動が起こるのでその記録といった形で進んでいましたが、基本的にはストーリー物ではなく、石森章太郎作品でいうと「章太郎のファンタジーワールド ジュン」といった位置付けでしょうか。筋やセリフより絵の流れを重視し、抒情歌が流れる詩的な部分も含めてそう思いますが、もちろん上村一夫作品以外の何物でもない狂気の激しさが溢れた名作です。


娼婦になれるだろうか 私も
娼婦 ほたるこ
どんな男たちにも 美しく笑いかける
そんな優しさが 私の中にあるだろうか



スポンサーサイト
  1. 2012/10/23(火) 23:27:27|
  2. 劇画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<劇画(152) 上村一夫 26 「一葉裏日誌」 | ホーム | 上村一夫原画展「ブルーな女たち PART.2」、阿久悠記念館>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mangabruce.blog107.fc2.com/tb.php/1126-387d959b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する