大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(155) 畑中純 3 「1970年代記 「まんだら屋の良太」誕生まで」

続いての畑中純作品は、「1970年代記 「まんだら屋の良太」誕生まで」(朝日新聞社刊)。
HATANAKA-1970s.jpg

タイトル通り輝かしき1970年代を描いた本で、畑中純先生の自伝的作品。
時系列で1年ずつ丁寧に紹介されていきますが、最初の「1970」は2002年の週刊アサヒ芸能増刊 コミック1970 vol.1(徳間書店刊)にて掲載、続く「1971」から「1979」までは2003年から2005年までにかけて季刊 en-taxi(扶桑社刊)で連載されました。

私は1970年代後半生まれなので、実際に70年代を体験した記憶はほとんどなく、しかし憧れの時代であり後追いでその文化を追っている口ですね。
何しろ漫画は例えば週刊少年マガジンだけで「アシュラ」「男おいどん」「空手バカ一代」「デビルマン」…等々の名作が70年代前半にリアルタイムで掲載されていたわけだし、音楽でも私が人生で一番聴いているプログレッシブ・ロックは1970年代の音楽と言え、他の70年代ロックなども大好き。
そして映画は私の愛するオカルト映画ブーム、そしてブルース・リー(Bruce Lee、李小龍)映画の時代!この「1970年代記 「まんだら屋の良太」誕生まで」でも当時上映していた映画を、その年の象徴として中心的に扱われてもいますが、それはそうですよね。製作年がハッキリしているから、その時どうしていたかと記憶を呼び覚ますのにも有用でしょう。で、1970年代一番の伝説となったあの映画…「燃えよドラゴン」も当然ながら出るのですが、日本初公開は1973年12月なので「1974」の所で出てきますね。
当然、当時の事件や芸能なども含めた世相が織り込まれていますよ。

そんな1970年代を漫画で学べるのはもちろん嬉しいのですが、他に自伝などは出ていない畑中純先生の半生を知る上でも重要な作品です。もちろん、娯楽漫画としても面白い。
単行本ではまず写真入りで畑中純私的1970年代記もあり、本編が始まると最初の2ページだけ、2002年現在の調布市。何とつげ義春先生も含めた数人で談話中!

時代が遡ってスタートした過去・1970年の時点では畑中純先生はまだ二十代。1950年生まれなので、1970年代という10年間が丸々二十代ですね。この時は川崎市にて鳶職から火力発電所建設の配管工に移って飯場で同じ北九州小倉出身者らと働いています。
漫画家になる大志を抱きながらも『マンガが分からなくなっていた』と言い、生活に流され漫画が遠くなっていく…イライラして街でチンピラとケンカしてボコボコにんされたり、カッコ悪い部分も正直に描かれている回想録。
それでもどうにか1974年には自費出版で「それでも僕らは走っている」(跋折羅社刊)を出しているのですが、貴重なその作品もここで見る事が出来ます。おおっ、個人史に当時の作品も交えたノンフィクション、これは「まんが道」の手法ですね!
1977年のデビュー作「月夜」や、「田園通信」「ミミズク通信」といったレア作品も読む事が出来ますよ。

「1975」の時点では渋谷区恵比寿のアパートで暮らしているのですが、突如現在の恵比寿駅周辺が現れ、現在の畑中純先生と対話するという、幻想的な遊びを入れた話になりました。
1976年に結婚し、1977年には調布市で新生活をスタート…ここは場所が場所なので同じ漫画家としては神様扱いであろうつげ義春先生や水木しげる先生とすれ違ったりしてますね。その時の駆け出し漫画家仲間である連れの方は、『水木しげる つげ義春 ここらは妖怪の巣か』とつぶやいてました。

若者らしく焦って迷路に落ち込み、苛立ったりもするのですが、1979年にはついに漫画サンデー(実業之日本社刊)で10年間続く事になる「まんだら屋の良太」の連載スタート!タイトルでもお分かりの通り今作は1979年までしかなく、これが1970年代のゴールとなっています。
そして長編となった単行本の第1巻に収録されている「聖職は性色?」が掲載されているのですが、改めて読み直してみてこの作品の凄さもよく分かりますね。

最後のあとがきで作家の能力の衰えに関する深い文章が読めるのですが、あとは
『1950年代記、60年代記、80年代記、90年代記と描き継いでいきます。』
と発表していたのに、それが完成されずに今年没してしまったのが残念でなりません。
小倉時代の畑中純先生や、漫画家として成功した後、家庭はどうだったのかとか…そこら辺も見たかった。それでも、畑中純先生が多感で挑戦し続けていた時代であり、世相も一番面白い1970年代を描き上げてくれた事に感謝しましょう。


飢えていた なにより 言葉に飢えていた
時々アルバイトに出る以外は 部屋に引きこもってマンガを描いていた
半年もやっていると 焦りや不安や孤独でおかしくなる



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  1. 2012/12/28(金) 23:59:59|
  2. 劇画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

文庫本

こんばんは!お久しぶりです。
最近出版された「197×」という漫画文庫で畑中純さんのこのシリーズの一部は読むことが出来ました。つげ義春さんも出てきましたね。また読んでみたくなります。70年代。1961年生まれの私にはまるごと十代ですヨ!・・・もう一度帰ってみたい!(笑)。

BRUCEさん、今年一年ブログ楽しかったです。どうもありがとうございました。どうか、よい新年をお迎えくださいね。
  1. 2012/12/29(土) 20:10:26 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

よいお年を!

>秀和さま

いつもありがとうございます。そして年の瀬にとても有難い言葉、身に沁みました。
70年代をリアルタイムで体験している秀和さま、うらやましいですなー。
ではでは、お互い元気に年を越して、また来年お会いしましょう!
  1. 2012/12/30(日) 01:41:48 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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