大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(157) 中沢啓治 3 「オキナワ 劇画で描いた沖縄報告」

中沢啓治先生の「オキナワ 劇画で描いた沖縄報告」(ドーミエ書房刊)。
NAKAZAWA-okinawa1.jpg

中沢啓治先生が描いてきたのは自身で被爆体験した広島の問題だけじゃなく、沖縄問題を扱った事もありまして…それが1970年に週刊少年ジャンプ(集英社刊)で連載された「オキナワ」
ちなみに今作こそが中沢先生の初単行本になるはずでしたが、時の政府に反対する内容であるが故に会社上層部から圧力がかかり、集英社では単行本を出せなくなりました。JC(ジャンプコミックス)から出る中沢啓治作品は是非見たかったですが、これが商業誌の自主規制ですね。

沖縄がアメリカから日本に返還されたのは1972年だから、連載時はまだアメリカ占領下にあった時であり、作品の舞台は1968年の沖縄県那覇市。当然ながら中沢先生は取材にあたり、パスポートとビザを取り海外旅行の手続きをして、那覇空港に行ったわけですね。この当時のアメリカは、ベトナム戦争を起こしていました。
作品の主人公はグレ始めた少年・仲田三郎で、仲田家は闘牛きちがいの厳しい父親・源造と妊娠中の母親・時子、弟の明に妹の光子という家族構成。
私はこの作品で沖縄で闘牛が盛んだと知ったのですが、少なくともこの頃は26ヶ所の会場があり毎日どこかでやっていたのだとか。

若い三郎にとっては生まれた時から近くに米軍基地があり、どこへ行っても基地の金網がはりめぐらされて自由に歩けない事や、B52の爆音にも違和感を感じないのですが、息子のそんな意識の低さが父親には我慢出来ず親子は衝突してばかり。母親曰く『まるで闘牛だわ…』。
母親は飛び出していった三郎を探しに行くのですが、米軍のバートン兵士が酔っ払い運転するトラックにひき殺されてしまいます!奇跡的にお腹の赤ちゃんは助かって産まれてきましたが、アメリカが支配する軍法会議など結局茶番で…結果、バートンが無罪。
怒った三郎は父親の愛牛・青雲号に乗って米軍基地に殴りこみへ向かうのです。

銃剣で突いてきて顔を切られもした三郎ですが、
『こんなもんでおどかせば だまってひっこむと思っているのか アメリカの勝手になると思っているのか!
 こんなもので心の中をつきさせると思っているのか! やってみやがれ 突いてみやがれ』
と、引かない。
結局はポリ公に連れて行かれますが、青雲号がMP達の前に巨大なウンチを残してきてくれました。

それから敵は日本人にもおり、土地成金のハゲ・富村登場。
こいつは米軍基地のおかげで金持ちになったゼニ命の男で、戦争を喜んでいるクズ。用心棒を連れており、その用心棒に源造が刺されますが…
ケガから回復した源造、そして三郎は名誉あるコザ闘牛場にて、青雲号改め平和号で富村の闘牛・風神号に挑むのがクライマックス。

仲田三郎にはアメリカ人の親友・トムがいましたが、彼との関係や仲田家の絆、未来にかける希望を表面に出しながらも、本当に読者に知って欲しい事・訴えたい事はオキナワ(沖縄)の現状や歴史でしょう。
「ひめゆりの塔」であまりにも有名な沖縄戦。何と同胞である日本軍による住民殺害があった事も知られていますが、特に地下壕に隠れる日本軍と住人が米軍に探知されないよう、泣き叫ぶ赤ん坊を殺した…この事例は三郎が生まれる前にいた源造と時子の子供・健太(つまり三郎の兄)が刺し殺されるという形で、そのまま描かれています。
そして、あの大戦が終わって20数年も経った現在(連載当時)でも残される問題。戦時中や戦後の米兵による住民強姦は酷い物だったそうですが(あいつら本当に鬼畜米英だ)それはまだ残っているし、基地からの毒物や放射能流出、さらにはB52の墜落事故、おびえて暮らす沖縄の人々と本土に住む日本人との温度差。
それらがこの1冊にしっかりと収められています。広島や長崎に落とされた原爆の事だけでなく、沖縄の悲劇も後世に伝えるための重要な作品でした。

こちらは中沢啓治ヒューマンコミックス版の「オキナワ」(汐文社刊)。こちらはタイトルから『劇画で描いた沖縄報告』の文字が消えていますね。
NAKAZAWA-okinawa2.jpg

「オキナワ」は3巻目として上梓された、この『中沢啓治ヒューマンコミックス』は全10巻が刊行されていて、
1、2巻が「広島カープ誕生物語」
4、5巻が「チンチン電車の詩」
6、7巻が「あの街 この街」
8、9巻が「シリーズ平和の鐘 短編集」
10巻が「宝島」・・・と、中沢啓治先生の戦争モノ以外もいくつか収めた貴重なシリーズなので、興味のある方は是非読んで頂きたいものです。


おれは死んでもいいんだ………
おれは………おれの大好きなかあちゃんを
犬死にさせてたまるかっ
ついてみろ てめえの腹にかみついて
腹わたひきずりだしてやる



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  1. 2013/01/13(日) 23:00:00|
  2. 劇画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

読みたい読みたい!!!

強く思いました。
ブルースさん、ありがとう!
今年も期待してます。
よろしくお願い致します!!
昨年5月に国会図書館で「週刊少年ジャンプ」昭和46年1号から11号まで読みました。笠間しろう「切りさかれた青春」と真樹日佐夫・逆井五郎「あいつ!」目当てでしたが、篠原(ファーストネーム失念!)とおる(かな?)「明日はつかめるか」が拾い物の面白さがありました。2年前の10月にはその前のジャンプ読んでました。たしかに中沢啓治さんの連載ありましたね。もう毛嫌いしないで中沢さんの古本あったら躊躇せずゲットします。愛恋夢のキリスト教ポップスじゃなくて、本当のことを言う¨因果¨の仏教演歌がそこにはありそうですから!
  1. 2013/01/14(月) 02:43:38 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

今年もよろしくお願い致します。

>秀和さま

国会図書館に週刊少年ジャンプのバックナンバーを読みに行くのも、また目当ての作品も素敵ですねー。単行本化されていない名作が多数載っているかつてのジャンプは、楽しめたのではないでしょうか。

中沢啓治作品はどんどん薦めていきたいと思いますが、絶版率が高すぎて「はだしのゲン」以外は一般的でないのが残念です。かくいう私も全作品制覇にはほど遠いのが現状ですし・・・
内容から左翼的だと毛嫌いする人もいるようですが、まず漫画として素晴らし過ぎるんですよね。この面白さ、絵の凄さなどを見て欲しい!
仏教演歌ですか、上手い事を言いますね!!
  1. 2013/01/14(月) 06:00:40 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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