大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(97) 丸尾末広 3 「夢のQ-SAKU」

丸尾末広作品紹介、続いては「夢のQ-SAKU」(青林堂刊)。
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画像の右は新装版。漫画は同内容ですが、巻末に収録されていた丸尾末広先生自身の手によるあとがき「泥棒になりたい」が無くなっています。それが印象的なエッセイだっただけに、最初の版で探す事をお薦めします。

前回「ココ」で紹介した「薔薇色ノ怪物」とほぼ同時期に描かれた作品を集めた2冊目の作品集であり、単行本の出版も同じ1982年になります。
丸尾末広先生の魅力の一つである夢野久作(=夢のQ-SAKU)の影響を、そのままタイトルにした事でも窺える意欲作で、持ち前の超絶センスが大爆発!
丸尾先生は後に画集『江戸昭和競作無残絵 英名二十八衆句』でそのまま「夢野久作」というタイトルの作品も描いているし、夢野久作特集の「快人Q作ランド」という本でその絵と共に『夢の又夢の夢』という文章を寄せています。
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では「夢のQ-SAKU」を収録順に見ていくと、まず1982年の「学校の先生」
厳格そうで初老の学校の先生が、小中学生から貢物を貰っているサーカス団の美少年と会い、注意するはずがその美貌に翻弄されて少年愛の夢を見る…これだけ2色カラー印刷で、絵の美しさも際立ちますね。
ディートリッヒ映画「嘆きの天使」の少年版、いやそのまま「ベニスに死す」ですが(そのパロディシーンも有り)、漫画で描かれたこれは早すぎたBL(ボーイズラブ)でしょうか!?

1982年の「笛吸童子」
笛吹じゃなく、笛吸です。「ハーメルンの笛吹き男」をアレンジして美しくも変態な少年愛モノにした、わずか4ページの傑作。笛吸童子に付いて行けなかった片足の少年が悲しく歌う…

1982年の「ウンコスープの作り方」
サブタイトルに『太陽男根』と付いてます。少年二人と少女一人の危険な遊戯はジョルジュ・バタイユの「眼球譚」を下敷きにしたスカトロ物。牛の目玉を少女の性器に入れて、それを口で吸い出したり…ね。

1982年の「初恋・壹萬壹千鞭譚」
今度はSM物ですが、近親相姦にゲイを織り交ぜて…

1982年の「童貞厠之介・パラダイス」
汚いオヤジが少女を強姦殺人しているシーンから始まりますが、その脇を走る汽車の屋根上から見下ろしている…童貞厠之介「薔薇色の怪物」収録のタイトルそのまま「童貞厠之介」で登場したキャラクターですね。
初出は同じ漫画ピラニアながら期間は一年ちょっと空いており、彼は下水道生活から抜け出したようですね。遠藤ミチロウ似の美少年に成長していて、どんな女も惑わせて股を開かせる能力を持っています。ある異形の集団の元に女達を連れて行き、繰り広げられるはおぞましき乱交パーティー。

1982年の「せんずり千太」
お婆ちゃんと性交している少年・みちお。その彼はお婆ちゃんの死後、墓場であんな事を…ちなみにこの『お婆ちゃんと性交する少年』の話は、丸尾末広先生自身がラジオの人生相談で聞いた実話をモチーフにしているのだとか。
お父さんとお姉さん、女中の銀子ら、他の登場人物にももれなく変態ネタが盛り込まれています。

1982年の「地獄の一季節」
タイトルをアルチュール・ランボーから持ってきている事は関係ないかもしれませんが、ドイツ表現主義映画の影響を感じる芸術的な作りの幻想物語。

1981年の「美しい日々」
これは従来の手法の漫画ではなく、一枚絵ごとに文章を付けた『絵物語』みたいなモノ。そう言っちゃうとこのエログロさなので、そのジャンル第一人者の山川惣治サイドから怒られますかね。とにかく持ち前のカッコいい絵を、イラストとして観れて良いかもしれません。

1982年の「きん玉のにぎり方」
全く何てタイトルだよ!で、内容は戦前かそこらの女性向け性教育本をパロディで描いています。少女の生理とか自慰とか性交とか。もちろんエログロさも発揮していますが、丸尾末広流のお笑いセンスもよく分かります。

1981年の「不能少年」
押入れの中で変態妄想を膨らませてオナニーしている少年・道雄が、お母さんに押入れ開けられて、恥ずかしい姿を見られてしまう。シリアスな丸尾末広調で描かれていますが、内容はギャグ。
おなじみ学生服の道雄が初登場した初期作品です。

1981年の「腐ッタ夜・エディプスの黒い鳥」
出ました『腐ッタ夜』シリーズ。これも「薔薇色ノ怪物」収録の2編と直接のつながりはありませんが、どれも奇形を題材に変態性欲を描いています。
今回は江戸川乱歩の「芋虫」パロディ。あれを父と娘の親子に設定して、娘とお金持ちの彼氏との恋の行方も絡ませる。

1982年の「月食病院」
扉絵がロン・チェイニー主演の1925年版「オペラ座の怪人」(オペラの怪人)で、しかしてその内容は動けない少女の患者を強姦(しかも腹開いて内臓いじりながら!)する変態医師らの話。看護婦達のレズビアン…

1982年の「雪子ちゃんの視た夢」
また一枚絵に文字の絵物語方式ですが、見世物小屋のような所を背景にして、いくつも書かれる雪子ちゃんの視た夢というのがシュールすぎて面白い。

そしてこちらは、2006年の「改訂版 夢のQ-SAKU」(青林工藝舎刊)。画像右は近年また出た、表紙違い版です。
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画像左の方(夢のQ-SAKU、ジャケ3種目)はサイン本も入手しています。漢字とアルファベット両方で書かれているのは珍しいですね。
MARUO-yumeno-q-saku6.jpg

この版でも『あとがき』は削除されていますが、改訂版だけの追加収録作品が2編有りまして…

1992年の「東京物語」
小津安二郎監督による同名の日本映画が誇る傑作を基にして、エロシーンとか入れてますが丸尾末広先生にしては割とおとなしめのパロディ。

2000年の「無神経かさねが淵」
もちろん古典怪談のパロディですが、謀殺した按摩の幽霊が出てきても慣れてきちゃって目の前で堂々とセックスしている二人…圧倒的な怪奇色を持つ画力にだまされますが、もちろんこれはギャグ漫画ですね。

以上、改訂版のみ収録の2編も合わせて全15編の短編集でした。
どれもこれも、どこかに絵や物語のどこかにパロディが織り込まれていますが、丸尾末広先生は自らが認める『パクリの集大成』。一番の特徴であるあの絵柄も、画家・高畠華宵の影響が強いわけですし。そして、それが良い。

最後にこちらはフランス語版「夢のQ-SAKU」。何故か「D坂の殺人事件」時のイラストが使われています。
MARUO-yumeno-q-saku5.jpg


だいたい僕は意思が弱いのではなく 意思がないのです
誰からも理解されぬ事 これが唯一の誇りで
朝 目がさめたら甲虫に変身していたなんて すばらしいと思います
僕はグレゴールザムザにも あしたのジョーにもなれないのです
不具者に生まれてくれば良かった
僕には人生なんてないのです
あんた達は何を笑うのだ!!!!



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  1. 2013/02/06(水) 23:00:00|
  2. 月刊漫画ガロ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

丸尾末広氏

氏は少年キングが好きだったそうですね。「猫目小僧」「怪物くん」の怪子ちゃんが好きだったとか。怪子ちゃん俺も好きだった。ショック?いやこれは喜んでいいのかな(笑)。因みに「ジャイアント台風」とかは嫌いだったそうてす、丸尾さん。
  1. 2013/02/14(木) 04:19:08 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>秀和さま

おおっ、丸尾末広ネタもご存知なのですね!
あのエログロ世界の中にも、昭和の少年コミック好きと通じるものがあるのでしょうか…
ええ、もちろん丸尾末広先生の基礎というか内部にはかつての少年漫画好きの血があるのが、随所に散りばめられているネタで見えてきますね。
少年キング好きなのは桑田次郎作品が載っていたからかな。もちろん他の漫画家もカッコいい人揃いだったでしょうが、特に桑田作品のコレクターだったりするんですよね。
まぁ梶原一騎の根性モノは対極にあるような気がしますが…「腐れオメコにDDT」という作品で梶原キャラがいくつか描かれているのは、嫌いだからあえて描いたのですかね。
  1. 2013/02/14(木) 22:29:05 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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