大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(33) 「ばるぼら」

手塚治虫作品より、「ばるぼら」(大都社刊)。
TEZUKA-barubora1.jpg

1973年から翌年までビッグコミック(小学館刊)で連載された作品で、この大都社版の単行本は全1巻。
大都社からは手塚治虫先生の生んだ大人向け漫画の傑作が多く上梓されていますが、個人的にはこれが特に好きで、ジャック・オッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」の現代版として描き始めながら、どんどんオカルト色が増していく一作です。

海外にも多くのファンを持つ耽美主義の流行作家・美倉洋介が新宿駅でアル中のフーテン娘・バルボラ(タイトルでは平仮名ですが、作中出てくる名前は片仮名)を拾ってマンションに居候させる事に端を発して巻き起こる騒動を描いた作品。
美倉には『異常性欲』という持病がある事を本人も自覚し苦悩しているのですが、マネキン人形だとかメス犬(!)と変態な情事にはまる所をばるぼらが救う…というのが最初の方。
すぐにバルボラの正体に迫る話が出てくるのですが、ウルカ共和国の作家・ルッサルカが言うには彼女は芸術の女神ミューズの姉妹で一番末っ子で、芸術家にツキを呼ぶ存在なのだとか。不思議な母親のムネーモシュネーも出てきて、バルボラがブードゥーの黒魔術を使う魔女っ子である事も分かってきました。

ただの汚いフーテンだったバルボラが美しい女に変身すると美倉と男女の関係に、そして結婚する事になり、「偉大なる母神」協会と深く関わった事が美倉の身の破滅を呼ぶのでした…
作家仲間として筒井康隆が出演してきて、美倉と一緒に全裸でマリワナも利用した結婚式に出席するもそれが美倉のミスで台無しになり、それが儀式を冒涜したとして「偉大なる母神」協会の日本支部会長・立場陰堂らの怒りを買うのです。
そういえば式の時に『エフ、エフ、 アザラク エフ、エフ、ザメラク』という呪文が使われていますが、これは「エコエコアザラク」以前の作品である事を特筆しておきましょう。

バルボラが消息を絶ち、里見志賀子と結婚して子供も作るもどんどん落ちていく一方の美倉は、あれから6年後についに大阪でバルボラを発見するが!?
クライマックスの逃走劇と阿蘇の火口で受ける受難も見もの、そして美倉が最後に残した手記とは…
呪術黒魔術の説明が長々とされ、ゴシック的な世界も描いた内容をさる事ながら、この作品の良さは作中に流れる幻想的な雰囲気ですかね。

こちら手塚治虫漫画全集版の「ばるぼら」(講談社刊)は、全2巻。
TEZUKA-barubora2.jpg
大都社版(1974年)だと12話しか収録されていなかったのが、1982年に発行されたこちらだと15話が収録されています!
例によって梅田の地下鉄にいたフーテン達の『なんやキチガイか』とか、志賀子の『また私をきちがい騒ぎにまきこむ気?』といったセリフが修正されていますが。
あと、「偉大なる母神」協会日本支部長が協会の説明をする時に言う
『ごくありふれたサラリーマンが創価学会や立正佼成会の信者であるように私どももそういった宗教の信者だと思ってくださればいいのです』
のセリフは、『創価学会や立正佼成会の』という部分が単に『新興宗教の』と修正されています。


バルボラはなァ、のんだくれでグータラで
うすぎたなくて あつかましくて…
無責任で気まぐれで おせっかいで気違いじみている…だろう?
それがミューズの性格なんだ。
芸術ってのはもともとそういうものさ……



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  1. 2013/04/06(土) 23:00:35|
  2. 手塚治虫
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お久しぶりです

 昨日たまたま立ち寄ったブックオフで、大都社版を初見しました。

 この作品自体が初経験で、子供のころから手塚作品を読みあさっていたはずなのに、なぜかこの作品は素通りだったのが不思議。

 こちらでの未収録が三話あるとの事なので、文庫版を買ってみるつもりです。

 とにかく最後のあたりの記述を応用するならば。

 「手塚治虫は二度と帰ってこない」
 「だが彼の作品は残るのだ」
  1. 2015/11/23(月) 14:29:56 |
  2. URL |
  3. 陣 #XCGF5fDo
  4. [ 編集]

お久しぶりです

 昨日たまたま立ち寄ったブックオフで、大都社版を初見しました。

 この作品自体が初経験で、子供のころから手塚作品を読みあさっていたはずなのに、なぜかこの作品は素通りだったのが不思議。

 こちらでの未収録が三話あるとの事なので、文庫版を買ってみるつもりです。

 とにかく最後のあたりの記述を応用するならば。

 「手塚治虫は二度と帰ってこない」
 「だが彼の作品は残るのだ」
  1. 2015/11/23(月) 14:30:40 |
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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