大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(37) 「鳥人大系」

手塚治虫作品より、「鳥人大系」(大都社刊)。
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SF専門誌である、あのSFマガジン(早川書房刊)にて1971年から1975年まで連載された作品で、単行本は全1巻。画像の左は1976年、右は1995年に新装されたものです。

大都社の単行本は大人向け劇画タッチの傑作が多い事は何度か書きましたが、SF作品ながらこれもそう。手塚治虫先生といえばSFは多く手がけているものの、代表作のようなSFとは意味が違い、連載誌の性質もあって上質で本格的な長編作品。

鳥類が知能を高め、人類に代わって地球の支配者となっていく…そして、その後の物語。
これを独立した短編で進めながら全体で一つの連作となる壮大な作品ですが、この雑誌の読者なら確実に読んでいたであろうレイ・ブラッドベリによるSF小説の金字塔「火星年代記」(The Martian Chronicles)を彷彿とさせますね。皮肉たっぷりに人間の文化を風刺する所も同じです。

世界中である理由により鳥類の知能が高くなり、放火する鳥のエピソードから始まって人類との生存競争が描かれます。
鳥と人の均衡を保つために人間の政府に交渉して言う事は、女性の70パーセントに不妊手術を受けさせて徹底した人口調整を求め…そのうちに鳥類が世界の支配者になってしまうと、人間は知能が退化して奴隷、もしくは犬のように飼育される立場になっていきます。
あ、鳥といってもタイトルにあるようにもはや『鳥人』となっている彼らですが、例えば人間の器用さは必要としていたり、設定が細かくてリアル。

時が流れ、もう人類が地球を支配していた歴史など誰も覚えてない時代へ突入。
支配階級にある鳥人達は国家や法律を作り、物欲に囚われ、差別、戦争、環境破壊、つまりかつての人類と同じように行動するようになるのです。
処女の人間女性が自分の膣で卵を温めて孵化させて生まれたのは鳥人は救世主ポロロ。ちなみに聖母となった人間女性の名はマーリヤ…つまりポロロはキリストの鳥類版。十二使徒も現れて鳥らしい生活を説いて回るのですが、群衆に『きちがい』呼ばわりされている部分の描き文字は1995年版の単行本だと消されています。
そのポロロもキリストと同じように姿を消し、最後の審判の日に現れると信じられている…と。

重苦しい話が多い中でコメディタッチのエピソードもあります。もはや人類は原始人みたいになった時代にも突然変異で登場した天才の話とか、肉食種とほぼ草食の種族対立も良かったし…
中でもキャラクターとして特に好きなのは、「ファルコ・チンヌンクルス・モルツス」で出てきた鳥人の一等抹殺士(殺し屋)・ベグラーですね。何とサングラスかけててカッコいいし、その強さと信念にしびれます。目を潰した人間を連れて行く時の『このメクラはあずかるぜ』というセリフは1995年版だと『この人ザルはあずかるぜ』に修正されていますが、後者の方が屈辱的で差別用語だと思います。

同様に別のエピソードで『夜空でメクラ飛行になるが』という部分が『夜空で無視界飛行になるが』と修正されています。『きちがい』にしろ『メクラ』にしろ、私の世代だと子供時代に特に差別意識なんか無く普通に使っていただけに、こうして言葉が消えていくのだと勉強になったものです。私のように同内容でも装丁違いの本を買う人だと比べもしますが、新装版だけしか買ってない人はオリジナルのセリフが違う事にすら気付かないのだし。
また、セリフの修正だけで収録されていればまだいいのかもしれません。この連作の「ローデシアにて」というエピソードは悪名高き"黒人差別をなくす会"の抗議を受けて自主規制され、どちらの版にも収録されていないのですから。

最後は未来の地球どころか宇宙規模のスケールで重要な話し合いが行われているエピソードで幕を閉じる傑作…「鳥人大系」でした。


ああ 人間の堕落ぶりをみせてあげる
人間がどんな生きものかってことをね



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  1. 2013/04/14(日) 23:00:00|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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