大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(45) 辻なおき 1 「タイガーマスク」 1

梶原一騎原作、辻なおき画、による「タイガーマスク」(講談社刊)です。
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梶原一騎原作でプロレスを主題に扱った作品は数ありますが、中でも「タイガーマスク」は最も有名な作品ですね。
ここで作画を担当した辻なおき先生は1935年生まれの京都府出身で、旧制中学に上がる前にあの「チャンピオン太」「ハリス無段」などの漫画家であり、竜の子プロダクション(タツノコプロ)を設立した吉田竜夫が家の前に引っ越してきた事から共にまんが道を歩んだ方です。
1954年に「魔王の目」でデビューし、他にも「ジャイアント台風」「0戦仮面」などで梶原先生と組んでいる方ですが、代表作はやはり今作。アニメ化もされて大ヒットし、漫画の主人公が実在のプロレス界にも登場するメディアミックス手法で社会現象にまでなりました。
1968年から1971年にかけて、ぼくら週刊ぼくらマガジン週刊少年マガジンと講談社の漫画雑誌を移りながら連載され、単行本は全14巻。

全米のプロレス界に突然現れたのは虎のマスクをかぶったレスラー、タイガーマスク。彼は『黄色い悪魔』と呼ばれ、残虐な反則技で恐れられていました。
正体は日本人だと判明したタイガーマスクが日本へ降り立つと、"日本プロレス協会"へ乗り込んでゆく…
ちなみにこの時の日本プロレスは力道山が設立した団体で、作中に出てくる日本のプロレス団体はこれ一つ。まだ全日本プロレスとか新日本プロレスに分裂する前なのでジャイアント馬場がエースであり、アントニオ猪木らとも共に行動していた時代です。そういった実在のレスラー達も重要な登場人物として活躍しています。

読者はタイガーマスクの正体もすぐに分かるのですが、ある孤児院が借金をかかえて解散し、別の孤児院へ引き取られる日に上野動物園の虎を見て強くなる事を誓い雲隠れした少年・伊達直人でした。
その時の孤児院経営者の子供達が若月先生と、その妹でヒロインのルリ子。彼らは大人になって再建した孤児院"ちびっこハウス"を経営しているのですが、やはり経営が厳しく手放さなくてはならない時に…10年ぶりに帰ってきた伊達直人が大金を出して救うのです。
伊達直人は雲隠れした日に悪役レスラー養成機関"虎の穴"からスカウトされており、10年間の地獄の特訓を受けさせられた上で卒業し、悪役レスラーのタイガーマスクとして命がけのプロレスで稼いでいたお金の全てではありますが、それもルリ子らが負担にならないように『親戚の遺産ががっぽり入ったので自分にはほんの小遣い程度』だと見栄を張り、ひ弱でキザな人間という皮をかぶって寄付するのです。

虎の穴は出身レスラーにファイトマネーの半額を一生に渡り上納金として支払わせる事で儲けているらしいのですが、膨大な人手と資金をかけ10年計画でレスラーを養成して、それで元が取れるのでしょうか…
『5年半が過ぎた頃には三分の二が死に、残りの半分がかたわになった』という訓練も漫画的なので、まぁそんな事は気にしなくて良いのでしょうが。さらに生き残った者への訓練が、さらにすさまじい。ほとんど訓練で全滅する勢いじゃないですか!
それでも生き残った伊達直人は、鬼教官に『虎だ、お前は虎になるのだ』と言われますが、これは同じ梶原一騎原作の「あしたのジョー」における『たて…立て…! 立つんだジョー!』くらい有名な台詞で色々な所に使われていますね。

虎の穴へ上納金を支払っていた伊達直人=タイガーマスクですが、ちびっこハウスを救うためには半額の手取り分では足りなくなり、また常に残虐非道な悪役レスリングだけをやらなくてはならない掟も子供達にフェア・プレーの精神を教えるため破り、正統派スタイルへ転向。
タイガー、つまり虎の穴が組織の名前を与えたほどの優等生だったタイガーマスクですが、ついに裏切り者とみなされ、虎の穴の幹部・ミスターXが次々と刺客を送り…それを命がけで迎え撃ち、生きている限り孤児(みなしご)達に尽くす、というのが本編の大筋。
ちなみに偉大な元プロ野球選手の野茂英雄投手が「タイガーマスク」の大ファンらしいですね。みうらじゅん先生が雑誌(ナンバー)の不定期連載『巡礼の旅』シリーズでタイガーマスク巡礼した時に載せた"虎の穴のシンボル像"を欲しがって連絡し、譲り受けたというエピソードがあります。

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ポポ・アフリカらの強敵を残酷な反則技で倒していたタイガーマスクでしたが、虎の穴から送られた最初の刺客はブラック・パイソン。『黒いニシキヘビ』の名を持つ彼は手刀一発で虎を殺し、二人を殺している必殺技のパイソン締めを持つ実力者ですが、ちびっこハウスのわんぱく少年・健太が見ている事が分かると正攻法レスリングで勝利しました。
続いては獣人ゴリラマン。ジャングルでマウンテンゴリラに育てられた人間を虎の穴がレスラーに仕立て上げた奴で、巨体も凄いし獣すぎる強敵でしたが、ジャイアント馬場による助けで勝利。

また九州の小倉へ巡業に行った時に訪れた"希望の家"という孤児院の、あまりに貧しい実体を目撃。その中でさらにめくらの少女を発見し、今までちびっこハウスだけを幸せにして喜んでいた自分の思い上がりを反省するのです。
そのために高い賞金がかかった『ふくめんワールド=リーグ戦』への参加を決意します。リーグ戦という形式を取りながらも、参加レスラーは全員が虎の穴からの刺客ばかりで、つまり実際はタイガーマスクを殺すために仕組まれた大会と知りつつ、しかもジャイアント馬場らを裏切った形になりファン達に恨まれながら。
『ほめてもらえぬ正義もある だれにもしられぬまごころもある しかしやはりさみしい つらい!
 だが おれはしんずる道をいくのだ!あのめくらの少女のために……めぐまれぬ全国の孤児たちのために……』


出てくる覆面レスラー達もギミック満載でゲテモノ的な奴らばかりなので、そのキャラクターを見ていくのが楽しい部分でもあります。
ミスター・ノーザ・ドラキュラスカル・スターミスター・シャドウキングサタンゴールデン・マスクエジプトミイラザ・ライオンマン
ルール無用、反則自由の殺し合いが続くのですが、どいつもこいつも見た目と反則ネタが奇抜すぎて凄い!ちなみに覆面を剥ぐと正体は虎の穴で共に訓練した仲間やコーチ、ついには総監督も現れました。

ふくめんワールド=リーグ戦を制し、無事にいくつかの孤児院へ寄付した伊達直人。もちろん、めくらの少女の手術も成功しています。
彼は救われた孤児達には神様のように思われますが、自分の素性は一切明かさない本当に善意のみの行動ですよね。まぁ、自己満足のためという見方は出来ますが…命がけで稼いだお金をほぼ全て使い、しかもその事を誰にも知らせないので名誉にもならず褒められる事もない、この伊達直人こそが男の中の男であると私は少年時代から思っていました。姿を現して寄付しているちびっこハウスですら、金持ちのバカ息子という触れ込みで感謝されるよりバカにされるように自ら仕向けていましたからね。
記憶に新しい所では東日本大震災が起きて、この日本で善意の嵐ともいうべき現象が起こりましたね。寄付寄付、ボランティアボランティアって騒いでましたが、多くの企業や有名人が寄付していましたが、その事を『宣伝』するのが伊達直人と大きく違う。普通の社会人でも、今はブログやらツイッターなんかで公表していい人だと思われようとしているわけでしょう。私は寄付するならその事は誰にも言わない。その伊達直人の行為に感動し、そうすべきだと教えてもらったのですから。

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虎の穴で悪役ファイトしか練習してこなかった伊達直人(タイガーマスク)はまだそこから抜けきれず、正攻法で技のプロレスをやるには力が足りない。壁に突き当たった彼は独自の必殺技を開眼すべく、北海道の大雪山へこもって命がけの特訓。
冬眠せずに凶暴化している野生のヒグマに襲われつつも(!)、ついに手にした必殺技は、ウルトラ・タイガー・ドロップ!!
これを得て、次の強敵である南米のタッグチャンピオン、アポロン兄弟と反則抜きで戦うのです。

続いては『全アジアプロレス王座決定戦』が開催されます。馬場と猪木は既に持っている世界的なインターナショナル・タッグの王座防衛戦があって参加出来ず、一本足原爆頭突きの大木金太郎は母国の韓国代表で金一(キムイル)として参加する…となるとそうです、我らが日本代表はタイガーマスク!
アメリカやヨーロッパと違って謎に包まれたアジアのプロレス界へ戦いを挑み、インドに旅立つのでした。

タイ、台湾、フィリピン、パキスタン、ベトナム、シンガポール、韓国、そして日本と開催国のインド。これらの国々から集まったレスラー達がこれまたゲテモノ揃いですが、さらに最強の敵として名前が『?』で国籍不明の怪人。
インド代表なんて何と幻の雪男だと思われる奴だったり、ウルトラ・タイガー・ドロップが『?』に破られたりしましたが、謎につつまれたこの大会も無事にタイガーマスク優勝で幕を閉じるのでした。

帰国したタイガーマスクの前に立ちはだかるのは久々に虎の穴からの刺客。二千種類の反則技を持つ、初めてタイガーも反則でかなわないと思った…ザ・レッド・デスマスク(赤き死の仮面)です!
アメリカでも彼がリングに現れるとその州のその町のプロレス・ブームはたちまち死に絶えると言われ恐れられている悪魔。風貌も性格も人間というより怪獣に近いです。
ウルトラ・タイガー・ドロップを失ったタイガーマスクが第二の必殺技も得る前に戦って勝ち目は無いと思われましたが、勝ちました。しかし敵を超える大反則の残虐ファイトでかつての大悪役・黄色い悪魔に逆戻りし、プロレス史上最も陰惨な結末を迎えたために、去ってしまったタイガー。

次なる舞台は何とフランスはパリ!その地下プロレスです。
地下プロレスも梶原一騎作品では再三登場するし、著者曰く実際にアメリカとフランスの一部で行われているらしいのですが、表舞台のプロレスと大きく違うのはレスラーがどちらか死ぬか、かたわになるまで地獄のルールの下で戦い抜く事。
そこに飛び込んだタイガーマスクはザ・マップマン(地図男)ザ・ジャングル・キングといった敵を倒した上で、ここの帝王ミスター・カミカゼと戦うのです。
覆面をしているカミカゼの正体は日本の空手界で並ぶ者のいない達人だったがある事情から地下プロレスに流れてきた男。そんな空手家を梶原一騎先生が描く以上はマス大山こと大山倍達総裁をモデルにしていたのでしょうが、そのマス大山を主人公にした「空手バカ一代」でも同じパリの地下プロレスへ流れるエピソードがあります。つまりタイガーマスクVSマス大山の対決!?空手家は本名が出ない設定なのもにくい!

ここではもちろん主人公側、つまりタイガーマスクが勝利します。
そして、この地下プロレス編の大きな収穫は、タイガーマスクが第二の必殺技、フジヤマ・タイガー・ブリーカーが生まれた事!
この後もタイガーマスクの前には強いライバルが現れ、特訓の末に必殺技を編み出しては立ち向かっていく少年漫画手法が続きますが、それに加えて孤児達との絡みでドラマを作り、タイガー自身の苦悩、教訓も織り込まれた傑作となっています。
続きは、また次回。


健太くん……かっこよさばかりに目をうばわれず……
それまでタイガー・マスクが じっとじっと・・・
マントの中でたえしのんだ時間をかんがえることだわ
どんなにくるしかったか……それをこえてかっこよさがあるのよ



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  1. 2013/04/28(日) 23:00:00|
  2. 梶原一騎
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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