大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(46) 辻なおき 2 「タイガーマスク」 2

しろいマットの ジャングルに
きょうも あらしが吹きあれる
ルール無用の 悪党に
正義のパンチを ぶちかませ
ゆけ ゆけ タイガー(タイガー) タイガー マスク



…はい、こんばんは。今夜は梶原一騎原作、辻なおき画、による「タイガーマスク」(講談社刊)紹介の続きです。
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男の中の男、伊達直人=タイガーマスクの生き様を描いた名作です。
前回でタイガーマスクが第二の必殺技、フジヤマ・タイガー・ブリーカーを習得した所まで書きましたが、さらにあのUSチャンピオンにして千の顔を持つ男、ミル・マスカラスと引分けた上で凱旋帰国するタイガー。
孤児院"ちびっこハウス"の子供達…特に健太(ちなみに彼のフルネームは最後まで不明のままでした)は大喜びですが、いつも心配しているのはここの先生でヒロインのルリ子

タイガーマスクが帰国すると、ちびっこハウスにも伊達直人が現れる。それでも正体に気づいているのはルリ子だけなのが寂しいものですが、伊達直人自身も金持ちのバカ息子を演じて自らバカにされるように嘘を付く。
ルリ子は思います、
『うそ!……でも うつくしいうそ……
 あいてにおんきせがましくない愛こそ この世でいちばんうつくしい愛なんだわ
 なみだがでるほど うつくしい愛……』

…と。

さて、日本に戻って早速アントニオ猪木とタッグを組んで戦ったザ・アウトローを相手にフジヤマ・タイガー・ブリーカーをお披露目(技の名前が決まったのは、実はこの時)。
続いて日本プロレス界に挑戦してきた黒い魔人、ボボ・ブラジルを倒したタイガーマスクですが、負けたボボ・ブラジルは自ら有望な者を選んで少年時代から鍛えた、秘密兵器のブラックVを呼んでタイガーマスクに復讐する事を決めました。
このブラックV…ボボ・ブラジルによる白人レスラー皆殺し復讐計画の切り札で、さしものタイガーマスクも死を覚悟したほどの強敵です。ジャイアント馬場による特訓で敵の『V式ミサイル・ヘッド・バット』をかわし、背骨を折り曲げてとどめをさすウルトラタイガーブリーカーが効かないタコのような軟体にも勝つ方法を見出し、執念の勝利。

タイガーマスクは以前に『ふくめんワールド=リーグ戦』を制して覆面世界チャンピオンになっていましたが、そのタイトルをNWA(国際プロレス連盟)が正式な物と認めたため、タイガーは追われる立場となって世界中の一流プロレスラーの挑戦を受け続ける事になります。
その第一弾がシンシン刑務所から脱獄してきたという触れ込みで囚人服のザ・コンビクト。今までこの作品で登場する実在レスラーは、タイガーと戦っても脇役的で地味な勝負が多かったのですが、こいつだけは本物の強敵として長々と登場し、日本史上初のチェーン・デス・マッチで決着を付けるのでした。
そして、その会場には久々に"虎の穴"の使者、ミスターXの姿が…

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ところでここへ来て伊達直人は新たな夢を構想し、もっともっと大金を稼ぐ必要に迫られるのですが、それは富士のすそ野あたりに日本中のみなしご(孤児)達のために"みなしごランド"を作り上げる事。
遊園地として最高の設備を備えるのはもちろん、両親役の人々も用意して家庭的ムードを楽しめて、体育館や文化施設も充実させるそうです。でもそれって、みなしご以外の子供達は入れてもらえないのでしょうか。

タイガーマスクの持つチャンピオンベルトを狙って覆面レスラー達が次々と現れるので、チャンピオンである限りタイトルマッチを続けてお金を稼ぐには絶好の機会。また個性豊かなゲテモノ系の奴らばかりが次々と現れるのですが、やはり荒唐無稽な戦いの方が面白い。しかもここからはリングにも趣向を凝らした『覆面デスマッチシリーズ』の始まりで…
ザ・ピラニアンとのプール・デス・マッチ、デビル・スパイダー(悪魔の毒ぐも)とのスパイダー・ネスト・デス・マッチ、ゴルゴダ・クロスとのゴルゴダ・クロス・デス・マッチ。リングがゴルゴダの丘になる、ゴルゴダ・クロスとの対戦前に、ルリ子はちびっこハウスの皆に14ページもかけてキリストの物語を聞かせた上で、キリストと伊達直人を重ね合わせるのです。

ここまで命がけの死闘をした所で残酷すぎると非難され、警察にも呼び出されて危険なデス・マッチはやれなくなりました。テレビでの試合中継は打ち切られて、次のユニバーサル・マスクとは当たり前のワイヤー・デス・マッチでは客の入りも悪いため会場代にもならず赤字…と、敵と戦う以外の苦労も見せるタイガーマスク。
会場もちっぽけな区立体育館になってジキル・アンド・ハイドと戦い、次は小さな会場すら許されず会場に作ったリングでバイキング・キッドと対決。

そして次がいよいよ虎の穴の刺客、ミラクル3!今まで虎の穴の卒業生でも一番の優等生はタイガーマスクだったのですが、それを超えた最高のレスラー。
ミラクル3の『3』は力、技、反則というプロレスの三大要素の事で、その全てで超一流というかつてない三拍子揃った選手に、何とタイガーマスクが敗北してチャンピオンベルトが奪われます!

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ついに敗れたタイガーマスクにとどめを刺さずに去った虎の穴…つまりミスターXとミラクル3。
伊達直人は戦いの連続から負けて初めて人並みの生活が戻るという皮肉な事になりましたが、伊豆の奥地の温泉で湯治していると、孤児院の後輩でタイガーマスクの付き人をしている大岩鉄平がテレビで『ハウスの子達が孤児の悲しい運命に負けた時に負けっ放しにならぬよう、今こそ七転び八起きの根性を教えてやってくれ』と呼びかけました。
思い直した伊達直人は再び特訓を始めるのですが、その場所は富士のすそ野、つまり"みなしごランド"建設予定地。既に覆面デスマッチシリーズのファイトマネーをつぎ込んで土地も一部ながら買い、巨大なシンボルの『猛虎の像』は着工されています。その像の姿はタイガーマスク…自分じゃないですか!ここは伊達直人の姿じゃないにしろタイガーマスクが作った施設という事を明かして運営するつもりなのでしょうか。

タイガーマスクはサイクロン・ガストンを倒して再びミラクル3の覆面世界チャンピオンへ挑戦する資格を得ると、猛スピードで突っ込んでくる車をブリッジでかわし後輪をつかんで逆落としにする特訓を繰り返し…
ついに第三の必殺技タイガーVの完成!ミラクル3の秘密も暴いて再び王座につきました。
となると失敗を重ねてもはや処刑されるしかないミスターXでしたが、何と健太をさらってアルプス山中にある虎の穴本部まで連れ帰り、ここで助けに来たタイガーマスクを迎え撃つ。この敵地にて、ジャイアント馬場、アントニオ猪木、大木金太郎グレート小鹿上田馬之助らも参戦して今まで最高のスケールでついに虎の穴との決着です!

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虎の穴壊滅以降も、物語はまだまだあります。
次の敵はタイガーマスクと体格も声もそっくりな、にせタイガーマスク!しかもこいつは『黄色い悪魔』時代の反則戦法で相手をこっぴどく痛めつけるためにタイガーマスクの築き上げてきた人気や信用は地に落ちる。
本物のタイガーマスクがあいつは偽者だと申し開きしようにも、ジャイアント馬場達ですら素顔を知らないわけで、証明する術がない!
『感謝をあてにせぬ愛こそ まことの愛と信じ ひたすら孤独に仮面のかげで戦いつづけているうちに・・・・
 おれは・・・・「顔」のない男になっていた!
 ああ自分が自分であることをしめす手段がない・・・・これほどの恐怖が 孤独地獄がまたとあろうか!』

人間とは、実在するとは、そしてアイデンティティーとはどういう事か問題提起する、にせタイガーマスク編です。

アメリカに乗り込みんで偽者と戦う所までは行きますが、勝った方が本物、つまり負けたら自分が偽者になるというとんでもない条件でラスベガスにて行うギャンブル・デスマッチ。また凄い仕掛けを考えるものですが、この血まみれの一戦はタイガーマスクは禁じていた反則で応えて反撃し、ついに勝利。
ちなみに正体は虎の穴時代の先輩であり、虎の穴は滅んだわけではないと言います。ファンが血と残酷さを要求するかぎり生き続ける、と。

結局は残虐な反則を使う悪役に逆戻りしてしまったタイガーマスクは、ラスベガスにとどまって『悪役ワールド・リーグ戦』に参加させられまする。
もちろん反則自由のデスマッチですが、この大会は参加者が実在レスラーばかり。虎の穴のバケモノ達を軒並み倒したタイガーにとって実在選手ごとき楽勝のように思えます。しかも、ここで最大の敵がディック・ザ・ブルーザーキラー・コワルスキー。彼らは過去にも登場していてやられ役だったのに、作者も忘れていたのでしょうか…ラスト近くなって今更強敵として出てきてしまいました。

ミル・マスカラスの弟であるエル・サイケデリコに5カウント内の反則はルールで認められているし、何より反則技も才能であり超一流となれば正統テクニック並みに難しい芸術だと助言されて『気づき』を得たタイガーマスクは、ルー・テーズのような偉大な王者、オール・ラウンドのプロレス完成を目指してまた強くなりました。そしてコワルスキーにも勝って優勝。
ちなみにこのラスベガスでは健太に代わりに、靴屋で働く黒人少年・ソニーを助けます。今度はみなしごではなく、黒人という被差別者でプロレス会場で隣の白人紳士に『黒んぼうのくせに なれなれしくもけがらわしいやつだ!』なんて酷い差別発言をされたりしていますが、彼らのためにタイガーマスクはまた強くなる。

あと今さら特筆すべき事でもないかもしれませんが一応触れておくと、「タイガーマスク」の世界におけるプロレスは全てガチンコ対決として描かれています。特にタイガーの戦いは命がけの殺し合いみたいなのも多い。プロレス界における『台本』の存在なんて、少なくとも当時の少年読者は知らなかったのでしょうね。

さて、この「タイガーマスク」における最後の試合の相手はドリー・ファンク・ジュニア。NWA世界ヘビー級のタイトルマッチです!
あと一歩の所でベルトは奪えなかったものの、大阪で行われるリターンマッチで決めてくれるはずでありましょう。しかし…その勝負の直前に、伊達直人をとてつもない悲劇が襲います!
ダンプカーにひかれそうになった子供を助けて身代わりではねられて、あっけなく死ぬのです。あれだけ鍛えて超人となっていた体が、何で今さら車ごときに?
唐突に主人公を殺して連載終了、これは人気なくなって打ち切りとなる漫画が使うような安易な手だし、みなしごランドも建設途中。最後の力でポケットに入っていたタイガーマスクの覆面を川へ投げ捨てて、タイガーマスクは正体を誰にも告白出来ないままこの世から姿を消すこの悲しいラストでした。

最後に一冊、関連する解説本というか読み物をお薦めしましょう。河崎実「タイガーマスクに土下座しろ!」(風塵社刊)です。
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これがタイガーマスク愛と情熱にあふれる良書で、TVアニメの方も含めて面白い登場人物や場面の紹介その他が有り、さらに漫画を描いた辻なおき先生と原作の梶原一騎夫人である高森篤子さんへのインタビューも決行しています!
それ以上に衝撃的だったのは、次号から新連載という時に描かれた予告ページが載っているのですが、その段階でまだタイガーマスクのデザインが全然違い、しかも可愛くて可笑しすぎる事!このデザインで本当に進んでいたら、これほどの名作にはなってなかったかもしれませんね。


その覆面をはいだところで タイガーの心まで征服はできん!
タイガー・マスクの偉大さは もちろんその肉体の強さにあるっ
しかし ほんとうの偉大さは その神にも近い かぎりなき愛だ!



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  1. 2013/04/30(火) 23:59:59|
  2. 梶原一騎
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  1. 2013/05/02(木) 10:29:46 |
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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