大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

トキワ荘(51) 石森章太郎 41 「人造人間キカイダー」

石森章太郎作品から、「人造人間キカイダー」(秋田書店刊)。
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週刊少年サンデー(小学館刊)で1972年から1974年まで連載された作品で、単行本はサンデーコミックスで全6巻。
石森章太郎(石ノ森章太郎)作品を代表するヒーロー物の一つですが、石森先生はネームと下書きまでで作画はひおあきら先生ら石森プロの弟子達が担当したと言われています。

また今作は実写版とのタイアップ作品として描かれた作品であり、そちらも伝説の特撮ヒーロー番組として今でも人気が高いですね。私もリアルタイム世代じゃないのにDVDで全部見直した口です。ヤバイですよね、このデザイン!
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さて漫画版の内容ですが、主人公はジロー
見た目はギターを背負った人間姿の彼ですが、人造人間でした。両肩のスイッチを押すと、戦闘型にチェンジ(変形)してロボット姿のキカイダーになります。
造り主はロボット工学の権威光明寺博士で、息子の一郎が"自然破壊警備隊"の仕事をするうちに公害を撒き散らす工場の者の手にかかって殺されたため、『ぜったいにころされることのない"自然警備隊員"たち』を造るという決意をしてジローを含めた13体のロボットを造るのです。
すると石森作品で頻繁に見られる社会悪に対する怒りがこの作品でも…と思いきやその辺りの内容は影を潜めて、後は世界征服のために光明寺博士を利用していたプロフェッサー・ギルことギル・ヘルバートの組織"ダーク"と戦うばかりになっていきます。

ただし単純な正義の味方モノというわけでもありません。とにかく悩み、葛藤するヒーローなのですね。
ダークの陰謀に気付いた光明寺博士はジローに『良心回路(ジェミニィ)』を埋め込んだため、ジローは悪い命令には従わない良心を持ちながらも、そのために生まれた悩みを描かれ続ける事となるのです。
しかもその良心回路が不完全なままである事もキーポイントですね。なまじ人間に近い心を付けられたために良い心と悪い心の間、人間とロボットの間で苦しみ、兄弟でもある敵ロボット達と戦わなくてはならない事に悩みます。
戦闘型ロボットにチェンジした時にボディ左右のデザインとカラーリングが違うのは、その悩みで不完全な部分を残しているからでもあります。
光明寺博士には二度目の妻との間に生まれた子供・ミツコマサルがいて、ジローの味方でいてくれます。しかしジローはミツコを好きになるも、その機械の体ではどうしようもない。
しかもミツコの前で醜い戦闘ロボットになど二度と変身しないと、また悩み…

ちなみにキカイダーというネーミング。これは早速人間と違う体である事に悩みだしたジローが、ダークのロボットと戦かっている時に、
『チェンジ(変形)する!!……オレハキカイだ!!』
と言ったのを敵、2台目のロボットグリーンマンティス『キ キ キ キカイダー!?』と聞き間違えたため。何故かその後はキカイダーの呼び名で定着してしまいました。
ちなみにこのグリーンマンティスからキカイダーは『みっともない不具者(かたわもの)』と呼ばれており、後に反復して何故か悩むシーンもあるのですが、当然現行されている単行本ではセリフを直されており、『不完全なロボット』とつまらなくされています。

オレンジアント、ゴールデンバットを倒した後で出てくるのが、自動車にひき逃げされて後遺症が残った少年のエピソード。ここでは少年が、『おれは……チンバなんだぞ!!かたわものなんだ!!』とか、ひがんで言う現在では差別用語となったセリフが何度も出てきましたが、ここなんかも現行の単行本では『おれは……足が不自由なんだぞ 完全じゃないんだ』って、何か不自然なセリフに修正されていました。
他にも『ぼくはビッコなんだぞ』→『ぼくは片足が動かないんだぞ』とか。

次のダークロボットは、北海道の山奥に住みアイヌの民族衣装を着た双生児の少年と月の輪熊。彼ら3体が合体して怪物グマになるのですが、その3体の名前がそれぞれ『ア』と『イ』と『ヌ』という…直接的すぎるネーミングの奴らでした。

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悪の組織・ダークと戦ううち、ジロー(キカイダー)は両腕をショートさせて磁力を帯びた高熱の電気メスにする『電磁エンド』という必殺技も使うようになりますが、ジローの弟にあたるサブロウ(ハカイダー)という強敵が出現。超有名キャラ、ついに登場です。
キカイダーの電子脳を狂わす口笛で操って悪事を働かせてミツコらからの信頼を失くす、というまわりくどい精神的な攻撃から入りますが、普通に戦ってもキカイダーに勝つし、その頭部には親である光明寺博士の脳が移植されている。このハカイダーの、脳味噌が透けて見えるデザインもヤバイ!
(後にアメリカでは映画『悪魔のサンタクロース』シリーズの第三作目にあたる「ヘルブレイン/血塗られた頭脳」で、このむき出しの脳が見えている殺人鬼が描かれましたが、同作のモンテ・ヘルマン監督は石森ファンなのか!?)

あとで脳を取り戻して移植し直し、光明寺博士は復活するのですが、実は人造人間よりこの辺りが実現不可能なSFかもしれませんね。
この後はギル教授の脳が移植されて、ギル=ハカイダーとなります。サブロウは意外と地味に終わってしまいましたね。さらに他に3人のダーク幹部もハカイダーの体を得て『ハカイダー四人衆』となり、四人が合体して『ガッタイダー』となる…まぁ、子供向けな設定です。

ダーク基地を爆破した後、基地で研究中だった細菌が吹っ飛んで近くの村がキノコ人間だらけになってしまいます。まるで特撮ホラー映画「マタンゴ」のようですが(そのさらに元ネタであるW・H・ホジスンの小説「夜の声」の影響下な?)、ここでまたセリフ修正ネタ。
『その部落にはキノコのばけものたちがウヨウヨいたんです』が、現行の単行本では『その村には』云々と変えられていました。これなんか明らかに被差別部落問題に気を使っているのでしょうが、これ単に集落の意味で使っているだけですよね。うちの田舎でも未だに『部落』って使っているけど、ダメなんでしょうか。

続いて飛騨の奥山にある"木菟寺"でジローの兄に当たるイチローキカイダー01(ゼロワン)という強力な味方を得ます。
彼こそが光明寺博士が造った最初の人造人間で、博士の息子の名前も漢字ですが『一郎』でした。カタカナになっているのはあの偉大な野球選手の影響、という事は時代的に考えて有り得ないと思いますが、このイチローは動力が太陽電池!エコですねー。あれ、でもジローの方はどうなっているんだろう。
テレビ版はこのキカイダー01が主人公となって続編に移行しましたが、漫画版ではそのままジローを中心にして話が進みます。むしろイチローは良心回路を持っていないので、ヒーローらしからぬ言動を取る事が多い。

それからギル教授(この時点ではハカイダー姿)の幼い息子・アキラと、それを守る謎の美女・リエ子の登場。
さらにダークがハカイダーを残して壊滅に近い状態の所へ、次なる悪の組織・"シャドウ"も出てきます!
アキラの背中にギルが設計した最終兵器『ジャイアントデビル』の設計図が彫られているため、それを狙うシャドウのロボットは入浴中のリエ子とアキラを覗き見するのですが、美しいリエ子の女体に目もくれずアキラの背中しか注視しないのだからさすがロボットです。

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しかしリエ子は、本人自身も知らない事なだら人造人間でした。それもアキラのために造られた乳母(ガード)ロボットであり、チェンジしても女型。すると石森章太郎作品なら当然でしょう、おっぱいからビームを発射して敵を倒すのです。
これにキカイダー達、さらに企みあっての事ながらハカイダーが合流、行動を共にしてシャドウに立ち向かいます。

一度左腕を失ったイチローは改良してマシンガンに、それも『太陽のかけら』と呼ばれる特殊な弾丸を装着した物になるのですが、これは寺沢武一先生の名作「コブラ」のサイコガンより何年も先駆けていますね。
さらにジローがイチローとケンカ別れしていた間に寂しさ(!)からあっさり造った零(レイ)、これがキカイダー00(ダブルオー)として加わり、しかも戦闘力は一番高くて見方陣は強くなっていきます!

次はロボットの心も読めるミエ子。チェンジしたらビジンダー…このネーミングは誰が聞いてもどうかと思うでしょうが、実写の方では志穂美悦子が演じていましたね。やはり女ロボットなのでおっぱいからのビームも使いますが、いわば超能力みたいな能力も持っています。

他にシャドウのドロメダ博士とかワルダーとか、ラスト近くへ来て続々と新キャラが登場しているし、物語の展開自体も複雑に、混沌としてきましたが…。
で、ハカイダーがジャイアントデビルを完成させてシャドウを壊滅させました。急展開すぎてボスの姿すらも明らかにされないうちに。これで、ハカイダーが世界の帝王まであと一歩に近づいています。
キカイダー達はどうしているかといえば、ジロー以外はハカイダーに『服従回路(イエッサー)』を組み込まれ、ハカイダーの手下になってしまいました。そう、あそこまで精巧な作りでもしょせんロボットはプログラムを実行する電気信号で動いているのだから…
しかしジローだけは良心回路を持っているためハカイダーの思惑通りには動かず、ここから衝撃のラスト、ですね。実写版の内容には流されず、しっかり良い時代の石森章太郎節が出ていて素晴らしい。
人間になりたい人造人間のジローはピノキオに例えられており、冒頭と結末部に引用されて2年に渡る連載を締めくくっています。

ところで当初ヒロインだったミツコ。暴走した時のジローに度々襲われたりしながらも、慈愛に満ちた対応で常に味方でいてくれました。
それどころか人間と人造人間による禁断の愛、しかも同じ父親を持つのだから近親相姦でもあるこの二人の愛を匂わせるシーンがいくつかあり、これがどうなるかも見所かと思われたのですが、何と4巻の途中でフェイドアウトします。
脳移植して元に戻った光明寺博士の静養のためマサルも連れてヨーロッパに行く、という事でしたが、ここら辺は子供向け番組である実写版とのタイアップだったからでしょうか…それでも、ミツコがジローにだけする別れのキスが美しい。

それとサンデーコミックス版ではページ数調整のためでしょう、5巻の巻末には「サイボーグ009」の番外編である「サイボーグ戦士 真空戦争の巻」が収録されています。描かれた時代も1965年と、キカイダーより大分古くて単行本としての統合性ゼロ!
6巻の巻末は短編「胎児の世紀」が収録されています。一応キカイダー連載期と被る1972年の作品で、内容もレベルが高く、謎の『泡』によって人類がほぼ滅亡しかけている世界が描かれる終末モノ。

続いてはこちら、1998年から翌年にかけて出版された扶桑社の『豪華愛蔵版』についても触れましょう。石森先生の没年に発売されているので、帯に『追悼 石ノ森章太郎先生』とデカデカ載っています。
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全3巻で上梓されたこの版は、サイズがA5サイズと新書版(サンデーコミックス)より大きくなったのも嬉しいですが、実写版のジロー役を演じた伴大介、イチロー役を演じた池田駿介のインタビューを収録し…

さらに貴重な「ギターを持った少年」が掲載されています。
このエピソードは同じ週刊少年サンデーでキカイダーの連載後期に始まった石森章太郎作品「イナズマン」にジロー(キカイダー)がゲスト出演した短編で、キカイダーVSイナズマンという夢の対決を見る事が出来るのです!
ちゃんとキカイダー本編の最後とつながってもいて、ハカイダーに組み込まれた服従回路をイナズマンが焼き切ってくれます。まさか別作品でこんなにスッキリさせられるとは…最後は二人で一緒に人間の持つ"悪"と戦う事を誓うのですが、これからこの2作品が合体してシリーズ化してくれたら良かったのに!

当時人気を博していたキカイダーは、おもちゃやその他のグッズなども多々出ていたわけですが…
ここでは最後に私が所持するレコード類を自慢しておきましょう。こちらの縦長のジャケットでレコード&本になっているやつ、歌は実写版のオープニングテーマ「ゴーゴー・キカイダー」とエンディングテーマ「戦え!!人造人間キカイダー」が収録されています。
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これがお気に入りだったので、同じく特撮テレビドラマのレコード本シリーズで「白獅子仮面」「流星人間ゾーン」「ファイヤーマン」「愛の戦士レインボーマン」も買い集めたものでした。
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そしてこれも外せない「キカイダー01」の方のEPを載せて、今夜はお別れです。
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…いいんです…ぼく!!
…不完全でもかまわないんです!!
…人間に近い人造人間(ロボット)が…完全なロボットなら…
不完全な「良心」を持っていたほうが人間らしいと思うんです
…ぼくはひとりで…人間と同じように自然に…
「良心回路」(ジェミニィ)を完全なものに近づけていきます
そう"成長"するように 努力がしたいんです…!!



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  1. 2013/05/11(土) 23:00:00|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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