大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

トキワ荘(53) 石森章太郎 43 平井和正 5 「幻魔大戦」

石森章太郎絵、平井和正原作による作品、「幻魔大戦」(秋田書店刊)。
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初出は1967年の週刊少年マガジン(講談社刊)で、単行本はサンデーコミックスで全2巻です。
いくつかの原作者付き作品を残している石森章太郎(石ノ森章太郎)先生ですが、今作ではこの時期漫画原作を次々と手がけていたSF作家の平井和正先生を迎えています。
ただし二人の共同原作だったようで、本を開くと原作のクレジットが『平井和正/いずみ・あすか』となっています。後者は石森章太郎先生と赤塚不二夫先生の合作時のペンネームとして使っていた名義だと思うのですが、いくらなんでもこの作風のこの作品に赤塚先生は関わってませんよね…
また、現行の単行本ではいずみ・あすか名義は抹消されています。

物語はヨーロッパの小国トランシルバニアのプリンセス・ルーナ姫が、ある『敵』の攻撃による旅客機の墜落事故から異星人のフロイに救われる所から始まります。ルーナは強力なテレパシーの持ち主であり、フロイによって広大な宇宙の中で繰り広げられている戦いについて教えられる…
そして全ての星々を消滅させて宇宙に完全な破滅をもたらすべく破壊活動を続けている幻魔大王という生命体と、フロイらの抵抗軍とで10数億年も続いている戦いに巻き込まれるのです。

幻魔大王軍にはどんな科学兵器も通用しないので、彼らが人類の住む地球や太陽系を含む銀河系宇宙に魔手をのばす前に、ルーナは地球上の超能力者を集めて地球戦団を組織して対抗しなくてはならない!
フロイが送ってくれた異星のサイボーグ戦士・ベガと共に、最初に訪れる超能力者が我らが日本の東京に住む普通の高校生・東丈(あずまじょう)でした。

この丈こそが本編の主人公。体はちびでも根性の猛特訓で野球部のレギュラーの座を目指したがなれず、失意に泣いているのに自分より体格の良い弟のにぶっとばされ、
『くそっくそっ ちびだからどうだというんだ!そんなこと人間の中身となんのかんけいがあるんだ!ナポレオンだってヒットラーだってちびだったんだ!ちくしょう!』
と家を飛び出すと、そんな状態の時にルナとベガによるショック療法で無理矢理自分の中に眠っていた強力な超能力、サイコキネシスの能力を引き出されます。
こんな宇宙的規模の作品において、登場時はたかだか東京の高校で野球部のレギュラーにさえなれない男でしたが、だからこそ幼少期から抱えていたコンプレックス故に目覚めた力に酔いしれて暴走。まぁ色々あってようやく使命に目覚めますが。
ちなみに丈は親には『できそこない』扱いされていましたが、姉の三千子には命がけで愛されており、それが作品に関わってきます…

親友の四朗に超能力が付いた事を説明する場面では、自分の頭がおかしくなったと言い
『めくらの国じゃ めあきがかたわものということを知っているか?』
と、おそらくはH.G.ウェルズの小説「盲人の国」の事を言いながら現在では差別用語となった言葉を連発していますが、さらに『きちがい』というワードがこれほど多く出てくる作品も珍しい!当然、現行の単行本では全て修正されています。

さて次なる超能力者は、最初からテレポート能力を持つサンボ。この名前はそのまま「ちびくろサンボ」から取っているであろう、ちびの黒人。ニューヨークでその能力を活かした犯罪を続けています。
これを仲間にするのも骨が折れる作業でしたが、そもそもルーナが設定上女王様気質であり、人種差別思想もあるので『あんなニグロの手なんかもうたくさん!』とか発言しています。もちろん、彼女も精神的に成長していくのですが。

まだ地球戦団の準備が整わないうちに、エスパー狩りに地球へ現れた幻魔はサメディゾンビー。作品の規模が規模なので、ラスボスである幻魔大王が地球みたいな辺境の星に自ら来るわけはなく、こいつらは最も下っ端の下級幻魔ですが、それでもエスパーのヒヨコである地球人達にとっては相当強いんですよ。
さらに地球の超能力者でもレオナード・タイガー(ドク・タイガー)のような幻魔軍に付こうとする奴まで現れたり、超能力者たちが一般地球人の敵に仕立て上げられたり、単純に幻魔大王軍VS地球その他の超能力者連合の図式に行くまでが長い道のりすぎる…

とうとう地球侵攻の司令官・シグらの幻魔も地球に到着すると、あっという間に東京は壊滅、完全に滅び去ります!
それでもフロイや101匹(子犬姿)の息子達も地球に来るし、世界中の超能力者を結集、さらに当初サイコキネシス能力しかなかった丈が潜在超能力をさらに引き出して『人間ノヴァ』『絶対0度』といった一流中の一流エスパーが使える技術も獲得…と、地球戦団も強力になってきていますが、それでも幻魔大王軍の力にはまるで及ばないようです。確かにこのスケールがでかすぎる作品における敵の軍団、主人公達の能力に比べて高すぎますよね。

…で、シグから第一の挑戦状としてドクロの顔した月が現れた所で、はい終了。
本当に、ここで未完のまま読者達を置き去りにして終わってしまうのです!!
とんでもなくでかいスケールのスペース・オペラの序章、地球部分だけで終わったわけですが、何故連載が打ち切られたのか分からないほど面白くて、続いていたら必ずや「サイボーグ009」に引けを取らない代表作として歴史に残っていたはずですよ。その009は何度も掲載誌を変えて続きましたが、何故「幻魔大戦」はそうならなかったのでしょう。
平井和正原作が活きていたのか、キャラクターがどれも魅力的で…あ、もしかして原作者がいたのが逆に問題で何かあったのでしょうか!?
現にこの後、石森章太郎先生は漫画で、平井和正先生は小説でと独自の『幻魔大戦シリーズ』を描き続けはしたのです。しかしどれも番外編的な感じであり、この最初の作品のズバリ続きが描かれていない!
未完のままに終わってしまった惜しむべき作品は世にいくつもありますが、その筆頭として挙げたい「幻魔大戦」

結末に必要以上の説明をしなかった事で傑作になった作品はいくつも見てきましたが、これは本当に途中も途中の部分で打ち切りですからね…
読者に想像させる楽しみを残したという意味では、あの終わり方がよかったのでしょうか。コアな漫画ファンの間では人気が高くて話題に上るイメージがあるし、未完の作品なのにアニメーション映画「HARMAGEDON 幻魔大戦」としてずっと後の1983年に映像化されてもいます。
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りん・たろう監督、そしてキャラクターデザイン&原画担当としてですが大友克洋先生が初めて手がけたアニメーション作品としても知られている今作は、結末を付けてもくれました。
もちろん私も大昔に観ているのですが…当時世界一好きだった原田知世が声優として出演しているにも関わらず、ちょっとダメでした。原作好きとしては納得いかない部分が多すぎなんですよ。 これは映画パンフレット。
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でもここでの収穫は、何と音楽をキース・エマーソン(Keith Emerson)が担当している事!!エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)解散後のパッとしない時期ながら、あのキース・エマーソンが日本のアニメ作品の音楽を作るって凄すぎますよね。
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映画は確か1回しか観てませんが、サウンドトラックは年に1回とかのペースながら20年来聴いています。主題歌はローズマリー・バトラーが歌い、キース・エマーソンが演奏する「光の天使」(CHILDREN OF THE LIGHT)…名曲です!


いうなれば わたしは幻魔世界の芸術家なのだ 戦争芸術家なのだ!
それぞれ長い伝統と歴史を有する知的種族の かんぜんな滅亡には悲壮美があるのさっ
ほろびゆくものの かぎりなくかなしい美しさだ!
抵抗が大きければ大きいほど その美しさも大きくなる・・・・!わたしはそれに ひかれるのだっ
したがってきみたち地球人類にも ひっしの抵抗をこころみて・・・・
有終の美をかざってもらいたいとおもっておる



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  1. 2013/05/14(火) 23:59:59|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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