石森章太郎&
小池一夫という凄い二人が組んだ作品、
「七つの顔を持つ男 多羅尾伴内」(
講談社刊)。

元ネタはもちろん比佐芳武原作・脚本の映画シリーズからきているので比佐芳武が原作クレジットとなっており、
石森章太郎(石ノ森章太郎)先生及び
小池一夫先生はどちらがどの役割かの表記が無く単純に連名作者。さすがに小池先生が作画に関わってはいないでしょうが、
「幻魔大戦」のように石森先生も原作に関わっている可能性は高そうです。
初出は1978年の
週刊少年マガジンでの連載で、単行本は少年マガジンコミックス(KCM)で全5巻。
片岡千恵蔵主演の映画シリーズ、高城丈二主演のテレビシリーズ(七つの顔の男)等で有名な
多羅尾伴内の話ではあるのですが、内容はそのコミカライズではなく続編。
『七つの顔の男』と呼ばれた探偵の多羅尾伴内、その姿すら変装姿であって実体は
藤村大造ですが、彼も今は老いさらばえているため、『二代目多羅尾伴内』となる人物を探しまわっていました。
そしてついに出会った若者が神父の息子で、子分が千人からいる"関東スケバン連合"のボス・
白鷺百代を彼女に持つ
紙袋順平(したいじゅんぺい)。知識、運動神経、行動力、優しさ、その他のセンスなどでこの男しかいないと惚れ込んだ多羅尾伴内は二代目になるべくせまるのですが、順平にその気は無く…
それを説得から実力行使まで様々な手を使い、1巻のラストでついに二代目多羅尾伴内が誕生しました!
それから一代目は変装道具や多量の秘密道具、知識、能力などを全て二代目に伝授します。
しかし多羅尾伴内といえばの決めセリフ、
『あるときは片目の運転手、あるときは外国航路の船員!あるときは大富豪、またあるときはキザな中年紳士!あるときは中国料理のコック、そしてあるときは名探偵多羅尾伴内!!
しかしてその実体は!七つの顔の男・・・・正義と真実の使徒 藤村大造だ!』という、ピンクレディーの
「ウォンテッド」(
阿久悠作詞)で歌詞の元ネタにもなったコレを言うのだけは嫌だと拒否する二代目。それは自己顕示の言葉でしかないと、自慢や誇張が大嫌いな順平には身震いするほど嫌だと。だからこそ、後で初めてその名乗りをやるシーンは感動するのですが。
一筋縄ではいかない二代目ですが、ともかく自分のやり方を取り入れながらも基本的には一代目を尊敬し、習うのです。

で、ついに二人の多羅尾伴内でタッグを組んで当たる不可解な殺人事件…鋭い推理で活躍し、ようやくミステリっぽくなってきました。
基本的には謎解きドラマなので起こるのは実現可能な事件、と言いたい所ですが、やはり石森章太郎作品なので人間レベルを超えた動きもあります。でもこれはまぁ、漫画ならではの魅力という事でいいでしょう。
いくつかの事件を解決した後で
鬼沢源次郎、通称『鬼源』と呼ばれる機械のように冷酷な殺し屋を相手にします。
そこで敵対するヤクザの組長に変装した一代目は鬼源らに捕まり、44オートマグで足、腕と撃ち飛ばされた上に命まで落とす…かけつけた二代目が怒りの鉄拳で鬼源をボコボコに殴りますが、時既に遅く命を落としました!
それでも後を継ぐ若者を得てからの事なので、その顔は満足そうでした。

これからは一人になった二代目多羅尾伴内ですが、しっかり事件を解決してやれる事を見せてくれました。
ただ性格が全然違うので、今までに無かった解決方法がありそうです。最終話となった日本の東西スケバン対決を収めた時もまさにそうでした。
逆に一代目だったら容易に解決していた事に手こずる事もありそうです。そもそも一代目を『変装キチガイ』呼ばわりしているシーンがありましたが、多羅尾伴内の見所でもある変装を小細工嫌いの二代目はそんなに多様しないでしょうね。
石森&小池の巨匠同士が組んだ貴重な作品ですが、どちらの特徴も出ていながらどちらも能力を活かしきれていなくて、正直中途半端な作品になってしまいました。最後の方のエピソードは出来がひどいからかな。それでも、この二代目版も小林旭主演で映画化されました。

DVD化もしたので観れましたが、設定がややこしいかったのか多羅尾伴内が二代目に代わる設定はカットされていました。
横溝モノなんかも髣髴とさせる血みどろスプラッター感有りのサスペンスで良かったのですが、でも子供向けヒーロー物っぽさも残っている荒唐無稽な物で、カルト映画ファンにしか売れなそうでした。水野晴郎閣下やその他チョイ役で出ている人たちが凄いし。
やはり興行的に失敗して2本で終りと、シリーズ化するには至らなかったそうです…
順平よ!二代目よ!
・・・・わしにはおまえがいる
・・・・おまえがいるからこそ わしはやつとの戦いに出向けるのだ
たとえわしが死んでも おまえがいるかぎり
多羅尾伴内は永遠なのだ!!
スポンサーサイト
- 2013/05/24(金) 23:00:00|
- トキワ荘
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0