大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(49) 川崎のぼる 5 「巨人の星」 1

梶原一騎原作、川崎のぼる作画の「巨人の星」(講談社刊)。
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まぁ日本一有名な漫画と言っても過言ではない作品ですが、初出は1966年から1971年までの週刊少年マガジンで、単行本はKC(講談社コミックス)で全19巻。
年代順に漫画史を作ってみれば一目瞭然ですが、この作品こそがこの後一世を風靡した『スポ根漫画』の走りですね。
野球をあまり知らなかった梶原一騎先生ですが、マガジン編集部の熱意に答えて『吉川英治「宮本武蔵」をタテ軸、ロマン・ロラン「ジャン・クリストフ」をヨコ軸にした』という原作をある程度書いた上で、作画担当者として川崎のぼる先生が選ばれました。しかし川崎先生も貧困生活の中で少年時代を送ったために草野球すらやった事が無いし知識が無く、一度は「巨人の星」の作画というこの歴史的な仕事を断った事が知られています。マガジンの編集者が必死で説得して実現したわけですが…本当に、良かった。

この名作「巨人の星」は、1958年春…日本プロ野球界の至宝であるミスタージャイアンツ・長嶋茂雄が読売ジャイアンツこと巨人軍に入団する事が決まり、その記者会見の場からスタートします。
長嶋が受け持つ事になるのは三塁のポジションですが、かつて不運から一度も公式戦に出場せずに巨人軍を去った星一徹という三塁手がいた事と、その一徹が編み出した魔送球について話題に昇るのでした。
そこにタイミングよく現れ、魔送球を長嶋に投げつけてきた少年は一徹によって幼年時から野球の英才教育を受けてきた少年・星飛雄馬!言わずと知れた主人公。
長嶋の大先輩で打撃の神様こと川上哲治がその場から去った飛雄馬を追ってみると、姉の明子と父の一徹とで貧乏なドヤ街の長屋住まいをしている星一家を目撃。さらに驚くべくは、幼い頃から遊びも野球しか許されなかった飛雄馬の左腕が持つ、神業的なボールのコントロール…

と、まぁここまではオープニング。
まだ小学生の飛雄馬はこれまでの練習で基礎が出来たとして、次なる秘密特訓に入るのですが、それが星一徹考案の"大リーグボール養成ギプス"。でかいスプリングを両腕に装着するトレーニング器具で、投球力を強化するために理想的な方法らしいです。このギプスは事あるごとに「巨人の星」の代名詞のように使われていて、現在に至るも知らない日本人は少ないのではないでしょうか。
(同じ梶原一騎原作による名作「夕やけ番長」では、野球編の時に自作のパロディ的に使われ、赤城忠治が投手用ではなく打者用にホームラン養成ギプスというのを発明していました)

さてそれから、宿命のライバル花形満の登場!大金持ちの花形モータース御曹司であり、英国留学でトップを極めて帰国するも『とびきりすじがねいりの不良』となっています。飛雄馬より2歳年上ですが、恐らくまだ小学生である初登場時にスポーツカーを乗り回していますよ!
さらに不良少年球団ブラック・シャドーズを率いている事から飛雄馬をスカウトしますが、結局敵味方に分かれて対戦する事となる…

このようにライバルも登場しつつも、問題だらけなのは星一家の家族内でしょうか。
飛雄馬も大リーグボール養成ギプスを常に装着させられて日常生活に支障をきたしている事で不満が爆発し、
『とうちゃんは野球きちがいだ!野球ばかだ!野球にとりつかれて人間らしい気持ちを忘れたかたわ者だ かたわ者の心の発明が このへんてこりんな悪魔のギプスなんだっ』
とぶちまけるし、花形のノックアウト打法に対する特訓時はガソリンをかけて火を付けたボールを飛雄馬にノックする特訓をして、控えめな明子までついに
『こんどというこんどは ねえさんもおとうさんの野球きちがいに あいそがつきたわ』
と、二人とも放送禁止用語を多用しつつ批判。
それでも日雇い人夫をしながら自分達を養う父を尊敬しているから、結局はまた彼の野球きちがいに付き合う事となるのです。

そうそう、最も有名な星一徹の行為は"ちゃぶ台返し"でしょうか。実はこのシーンは1回しか出てこないのですが、アニメ版のエンディングで毎回流れるからすっかり定番化しましたね。
そして行き過ぎたスパルタ教育が自動虐待の暴力親父として、近年槍玉に挙げる人は多い…大抵、そういう人は「巨人の星」をちゃんと読んだ事が無くて一部のシーン・記号だけ取って言ってるみたいですけどね。だって読めば、マイホームパパと真逆な子育てながらいかに深い愛情を持っているか、どれだけ息子のために涙をこぼしているかも、分かります。
ま、だからといって自分の敗れた夢を息子に強要するとか、過剰な暴力が許されるわけではありませんが。あと、息子に夢をかけ過ぎて、娘はほとんど家政婦扱いですし。

それから花形満も星飛雄馬も成長し、そのうちに高校進学の時が来ました。それが1966年…ここで作中の年が連載開始した年に追いつきました。
先に進学している花形は神奈川の無名だった"紅洋高校"野球部を有名校にまでしたスター選手になっていますが、飛雄馬はツギハギだらけの学生服を着て場違いな名門校"青雲高校"の入学試験を受けます。その面接会場で、父の職業を聞かれて答えたのが、
『はい!いま病気で寝ているぼくの父は…日本一の日やとい人夫です
と答えるのでした。

学科テストはほとんど満点の飛雄馬もこれで不合格がほぼ確定しましたが、青雲高校野球部で押しかけ応援団長をやっている柔道日本一の豪傑伴宙太。その父が青雲高校の有力スポンサーなので父の威光を使って伴は飛雄馬を合格させます。それも、野球部に入れてしごき抜くために。
皆さんもう知っているでしょうが星飛雄馬と伴宙太、これは後にバッテリーを組む事になる最大の友。しかし二人の出会いは、まず質問に答えない飛雄馬に業を煮やして伴が『こらっ なぜだまっとる おまえはおしか!』と恫喝する事に始まる最悪なものでした。
とにかく青雲高校に入学し、大リーグボール養成ギプスもついに外して…今まで隠して生活してきた飛雄馬の野球の才能が世に出ます!チームワークががたがたの弱小野球部で血と汗の対決をした結果ですが、飛雄馬の豪速球を取れるようになった伴も野球部に入ってキャッチャーをやる事になるのでした。

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それから花形満以外では最重要ライバルとなる左門豊作の登場です!
花形の紅洋高校と飛雄馬の青雲高校で行われた練習試合を偵察に来た、彼の初登場シーンがまた衝撃的でして…
飛雄馬と伴が球場の外を歩いていると花形の打った場外ホームランボールが飛んできて、これをたまたま通りかかった"熊本農林高校"野球部主将・左門が球場内へ打ち返すのです。伴に『いなかっぺ丸出しのくせに』と言われる風貌ながら、何という超人技!
研究家の左門は二人の天才に出会った感想などをノートに書き込んでいるのですが、普段の熊本弁で一人称は『わし』なのにノートでは『おれ』になってるし何か態度もでかい。浦見魔太郎の黒い手帳(怨み帳)みたいですね。

紅洋高校VS青雲高校の試合は紆余曲折あり面白い展開の末に勝負付かずでしたが、とにかくここで重要なのは初めて飛雄馬・花形・左門の宿命のライバル達が一同に会した事。
そしてライバル達以外にも青雲高校生で、青白きインテリの運動音痴で見る方専門ながら飛雄馬の親友になる漫画家志望の牧場春彦が登場、野球部には星一徹が一時だけ臨時コーチに就任して力を増し…
いよいよ高校野球の地区予選が開幕。ある事から余計な苦労をするはめにはなりましたが、超高校生級の飛雄馬が投げる青雲高校は、東京都代表として甲子園大会(全国高等学校野球選手権大会)出場を決めました。

続く甲子園大会ですが…あ、全国から三十校が出場となっていますが、確かこの時代は夏も選抜制だったのですよね。
牧場も応援のため現地に来ていますが、大阪の町全体が甲子園大会ムード一色になっている事を感じるのでした。が、あれ?甲子園って兵庫県では?
とにかく青雲高校は1回戦がいきなり前回優勝の中京代表・尾張高校でしたが、見事に勝利。ここでようやく飛雄馬の実家、長屋の人々も星家の正体を知り共に応援してくれるようになり、明子は
『とうとうこの日がきたんだわ・・・・長屋の人たちに かわり者呼ばわりされ ばかにされつづけた わたしたち一家に・・・』
と涙する。

準決勝は、いよいよ星飛雄馬VS左門豊作の初対決。
飛雄馬は左門の不幸な生い立ちと過酷な環境で幼い姉妹を抱える事情を知り、涙でストライクゾーンが見えなくなるピンチに見舞われ、弾丸ライナーに捕らわれるもその打球を捕球して勝利!しかし豪速球のため折れたバットが飛んできて、それを手刀で叩き落した飛雄馬は左親指の親指爪がパックリ割れるという致命的なケガを負うのです。

決勝の相手は当然、花形満。
もはやまともに投げられない飛雄馬は、宿命のライバルとの対決を何と敬遠して花形や観客から卑怯者とののしられる。それでも、ケガの事を誰にも告げられない理由がありました…
「巨人の星」全編でも個人的に最も泣けるこの決勝戦は花形の勝ち、紅洋高校の優勝で幕を閉じました。


そのとき そのときに全力をつくせぬやつに
なにが未来のゆめだ!巨人の星だ!
未来の巨人より いまは母校・・・・星雲だ
わらわばわらえ このわれたつめだけが知っている



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  1. 2013/06/12(水) 23:00:00|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
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田代ひろし 幸福実現党

興味深い記事です。
検討してみます。
  1. 2013/06/13(木) 16:29:04 |
  2. URL |
  3. 田代ひろし 幸福実現党 #yR7ZMEEQ
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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