大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(50) 川崎のぼる 6 「巨人の星」 2

梶原一騎原作、川崎のぼる作画の「巨人の星」(講談社刊)紹介の続きです。
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大昔…巨人軍の川上哲治監督と同世代に、名三塁手となるはずだったものの不運により去った星一徹が、人知れずわが子を幼少時代から野球のスパルタ教育で鍛えていた。その『巨人の星』を目指す夢の子供が、主人公の星飛雄馬
彼は貧しい家庭ながら高校に進学し、甲子園でライバルの花形満左門豊作らと対決する…
という所までを前回で書きました。

続きは準優勝して東京の星雲高校に帰る所からですが、飛雄馬の無二の友となった捕手の伴宙太は父親が青雲高校のスポンサーであり、伴曰く『ウルトラばか』でして…ある理由から星雲高校の生徒に襲撃される事件が起こります。当然問題になって犯人探しが始まりますが、底抜けに優しい飛雄馬は全てを知った上で自分が犯人の汚名をかぶり、身代わりになって学校を退学してしまいました。
この部分は2歳年上である花形達が卒業するので、それ以下のライバルしかいない(捕手もいないし)甲子園大会をあと2回も描く事を避けるために生まれたドラマでしょうね。まだ1年生ながらほとんど一人の力で準優勝までした天才投手、飛雄馬の住む長屋にはプロ野球の球団関係者がスカウトに詰め掛けましたが、肝心の巨人からは来ない…川上哲治監督は飛雄馬ではなく花形と左門を評価し、スカウトしていたのです。

飛雄馬は、というより父・一徹の言葉でですが川上監督に挑戦と巨人の新人公募テストに挑戦します。
出発前に一徹は巨人軍時代に愛用したスパイクを飛雄馬に譲り、亡き母・春江の写真にも挨拶していくよう命ずる…これは甲子園へ出発する時ですら無かった事で、合格すれば幼き頃から夢見ていた巨人軍に入団出来るこのテスト日こそが星親子一世一代の大勝負の日、という事。
会場は多摩川グラウンドで、伴も地獄の底まで飛雄馬について行くため入団テストを受けています。ここで速水譲次という日本陸上界のスター的なオリンピックボーイが登場しますが、彼は今後も同期のライバルとして出る事になります。それも花形や左門とは違う嫌な奴キャラで。
飛雄馬の苦手なバッティングもテストにあるため苦戦していると、飛んだ打球に合わせてスポーツカーが止まり、その球をグラウンドに打ち返してきた者あり!もう超人すぎ、花形が応援に駆けつけたのです。
この入団テストだけ見てもストーリー構成が抜群ですが、全て終わって結果は飛雄馬が正式合格。そして伴と速水も補欠合格で、この3人が巨人の二軍からスタート出来る事になりました。

入団が決まると、川上哲治監督は星家を訪ねてかつての同僚である一徹に挨拶をし、何とまだ実績はない飛雄馬に自身の持つ永久欠番『背番号16』を伝授!
花形満は阪神タイガースに、左門豊作は大洋ホエールズにとそれぞれ入団し、ライバル達は対戦の場をプロ野球へと移していきます。

飛雄馬はまず一軍入りするまでが一苦労ですが、ここで豆知識…
プロ野球選手というのはグランドに向かうバスの中でも座りません。むしろ揺れるバスの中を爪先立ちで足腰を鍛えているのですが、全員が立つ場所は無いために新米は椅子に座るという事で、目上の人に席を譲る世間とはまるで逆なのです!!
プロ野球界の事は何も知らなかった飛雄馬は、他にも様々なショック体験をします。例えば天下のON砲(長嶋茂雄・王貞治のコンビ)相手にバッティング投手をする光栄に預かった時は、本気の勝負を挑んで打ち取って天狗になるも、その意味を分かって涙を流す。

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1968年を迎え、ついに巨人の1軍入りを果たした飛雄馬ですが、全く喜んでいられず…今さらながら投手としての致命的な欠点を一徹が見つけたのです。
それを飛雄馬が尋ねると、一徹は幕末の志士・坂本龍馬の話を持ち出し、彼が残した言葉であるとして
『死ぬときは たとえどぶの中でも前のめりに死にたい』
の名言を教えます。辛く険しい道でも限りなく前進し、死ぬ時もそれがどこであろうと前向きで死ぬ、それが男だと。
続編も含めた「巨人の星」の中で何度も出てくる重要なフレーズであり、読者達は絶対知っている言葉ですが…だまされていました。実はこの言葉は龍馬の物ではなく、梶原一騎先生の創作だったのです。

ついに暴かれた致命的な欠点とは、飛雄馬の投げる球の球質の軽さ!しかもこれは体格に恵まれず小柄である事が原因なため、どう努力しても克服する事は不可能な物。
この問題は根強く、あの星一徹が老け込んで、そこらのありきたりなパパのように
『もし飛雄馬が敗者として傷つき つかれはてて帰ってきたら そのときは暖かくむかえてやろう』
なんて言うほどですが、この時は飛雄馬の姉・明子の方がそれでも勝つと信じているのでした。
ペナント・レース開幕の日、秘密をつかんでいる左門にやはりホームランを打たれた飛雄馬…球場を出るとガラの悪いファンに指を指されて『あいつだ!巨人軍のつらよごし!』とか言われているのだから勝負の世界は厳しい。

幼年期から野球一筋に生きてきた結果、結局は体格のせいで速球投手としては使えない事が判明した飛雄馬。さすがにでかいショックを受けて姿を消し、鎌倉の禅寺で座禅を組んで講和を聞いているのですが…ここでおぼろげながらヒントをつかみ巨人軍へ戻ると猛練習を始めるのでした。
それも台湾キャンプで偉大なる金田正一投手から変化球を習おうとした時にアドバイスされた通り、『カーブ、ドロップ、シュート』などという既にあるアメリカのマネ球でなく、今まで球界に無かった新しい独自の変化球を編み出すべく!
何故かボクシングや剣道を体験し、警察の射撃を見学するなど、不可解な訓練もしていますが…

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で、苦しんだ末に独自の特訓で磨いた洞察力を活かして生まれた魔球が大リーグボール1号!バッターの動きを正確に予測し、ボールを投手の方からバットに命中させて凡打にさせるという神業でした。
厳しい川上監督にも『コントロールだけなら日本一であろう』と言われた飛雄馬が、どうにもならない弱点とされた球質の軽さを逆に活かしたこの球で、速球投手としての飛雄馬に止めを刺した左門らを打ち取り、一躍スターとなりました。
9連勝した頃、マスコミの記者が『とにかくいまや きみは巨人の星!』と言って…そう、ついに第三者から出たその言葉!幼い日から巨人の星を目指せと、父が夜空に輝く星を指差していたわけですが、それを聞いて涙した飛雄馬は父にも電話越しで伝えました。父は…あの一徹なのでへそまがりな答えしか返しませんが、その目には涙が川のように流れているのでした。

星飛雄馬がこういう素晴らしい投手だからこそライバル達も燃え、死闘が繰り広げられます。
天才・花形が、これまたとんでもない特訓の果てに、ついに大リーグボール1号をバックスクリーンに叩き込みました!自身も様々な骨を複雑骨折するほどのダメージを負いましたが…
とにかくやられた飛雄馬は、再度捕手の伴と共に奇怪な特訓を始めて改良を加えるのでした。

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日本一となった巨人軍は『ワールド・シリーズ』で本場アメリカの名門セントルイス・カージナルスと対戦し、大リーグボール1号で度肝を抜く事になるのですが…ここでカージナルスの秘密兵器、アームストロング・オズマの登場!
球団に見込まれて幼少時代に孤児院から引き取られ、徹底的に野球教育を仕込まれた黒人選手で、テレビで見ていた明子が飛雄馬と似ていると見抜き、野球を離れた時の生活の匂いが一切無い二人を
『どちらもただ野球をやるための人形みたいなの 投げるそして打つようにぜんまいをまかれた 野球人形のムードなんだわ』
なんて一徹の前で言うもんだから叩かれる事になっちゃって。

このオズマの登場によって、新たなライバルという以上に父の命令通りに野球だけやってきた飛雄馬のアイデンティティが揺らぐ事になりました。
オズマは一応大リーグボール1号を破りながらも、勝負は飛雄馬の勝ちで終わりましたが、オズマVS飛雄馬の対談の場面で二人とも『野球人形』である事が明らかになりました。
しかも開き直っているオズマと違い、飛雄馬はそうじゃないと否定しながらも…やはり青春も恋人も野球だけ、本も音楽も分からないし野球関係以外の友達は一人もいない、夢も野球の事だけ、というわけで二人はまるで同じだという。

まだそれを認められず、否定したい飛雄馬はシーズンオフにテレビ局主催の新春ボウリング大会(司会は大橋巨泉)へ出て、そこで共演したアイドルグループ"オーロラ三人娘"の一人、橘ルミと並の人間らしく恋愛の真似事をしてみます。
このルミがいかにも芸能人なビッチ系で、ボーリングにかけても絶妙のコントロールだった飛雄馬(もちろん童貞)に『すてき!すてき!すてき!』とか言って抱きついて乳を押し付けてるし、『星さんのこと好きになっちゃった 帰りどいっしょしないこと?』なんて言ってゴーゴークラブなんて場所にこの野球しか知らない人間を連れて行きました!

ようやく一徹の野球洗脳とも言えた教育に疑問を持った飛雄馬なので、次は明子と長屋を出て東京タワーが良く見えるマンションに引っ越しました。
がらーんとしたボロ家で一人、大リーグボール養成ギプスを引っ張り出してみた一徹は、飛雄馬と二人で野球の特訓に明け暮れた日々を思い出して涙する…
それはあまりにも寂しそうな姿でしたが、ひとしきり泣いた後はとんでもない決意をするのが、球鬼・一徹!何と息子の飛雄馬がいる巨人軍とは敵対球団である中日ドラゴンズのコーチに就任し、しかも大リーグボールを打ち込める可能性のあるオズマを日本プロ野球界に呼び寄せるのでした。はたしてその真意は!?

一方の飛雄馬は自分が野球人形で無い事を証明するかのように橘ルミと遊びますが、こんな軽薄な女ではなく、ついに本当に愛すべき女性とめぐり合います。
それは宮崎キャンプの時でした。飛雄馬のミスで小児マヒの少女にボールを当ててしまい、付き添っていた看護婦にビンタを食らうのですが、その看護婦(免許は無し)こそ高校を中退して月給も無しで山奥の"沖診療所"に勤める日高美奈
美奈に惚れた飛雄馬は毎日のように小児マヒの子を見舞い、そして門限までの短い時間を二人で"平和の塔"だの"大淀湖畔"だのと散歩する、至福の時間を楽しむのでした。とはいえ二束の草鞋が通用する巨人軍でもなく、二軍落ちになりそうになると、もう二度と会えない事を伝えるべく"日南海岸"で座って話し合う二人。そしたら逆に、そこで美奈が黒色肉腫に犯されていて余命いくばくもないことを告げられました。
そうとなってはむしろ宮崎に近い都城にいられる二軍に落ちて、最後まで美奈の傍にいる事に決めました。そして最後の別れの時が来て…

この男の漫画、「巨人の星」においては唯一無二のヒロインと言えるのが日高美奈でしたが、12巻の途中から登場してこの巻のうちに死んでしまうのでした。
そして『もう女の人なんか一生愛さない』と誓い、絶望の淵に沈む飛雄馬は立ち直る事が出来るのか…この宮崎の場面、美奈と死に別れて一人で思い出の日南海岸を歩いて去っていく所で、『第一部 おわり』となります。実はこの作品、KC1巻~12巻が第一部、KC13巻~15巻の途中までが第二部、そこからラストまでが第三部にと分けられているのでした。

ちなみに12巻の巻末には、1968年の別冊少年マガジンで掲載された番外編の読切「巨人の星 余話」が収録されています。
本編で飛ばされた星飛雄馬の中学生時代エピソードで、隅田川中学校の同級生である青島光彦なるインテリクラスメートの目線で語られる物語です。中学時代のヒロインは橘カオルという女子だったりと知らなかった貴重なシーンを見れた上に、飛雄馬の野球の腕以上の優しさを再確認出来る話でした。
「巨人の星」は他にも番外編の短編がいくつかあるのですが、単行本未収録作品もあって読めていない物を、死ぬまでには読みたいものです。


うふふふっ
また 負けたぜとうちゃん・・・・
だが 負けてたたかれて 成長していくんだ
おれも 大リーグボールも!



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  1. 2013/06/14(金) 23:20:44|
  2. 梶原一騎
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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