大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(51) 川崎のぼる 7 「巨人の星」 3

梶原一騎原作、川崎のぼる作画の「巨人の星」(講談社刊)の3回目、本編の紹介は今回で最後です。
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前回は星飛雄馬がヒロインの日高美奈と死に別れ、『第一部』が終わった所まででした。
続く『第二部』は、飛雄馬を幼い頃から鍛えた張本人で父親の星一徹が、息子と敵対する中日ドラゴンズのコーチに就任して黒人選手アームストロング・オズマを鍛える所から始まります。
一徹の暴力に怒り狂ったオズマがバリバリバリと着ている上着を素手で切り裂くと、その黒い肉体には…あの見覚えのあるギプスが!飛雄馬がしていたのより数が増えて体に巻かれており、"大リーグボール打倒ギプス"と名付けられています。『養成』じゃなくて、今度は『打倒』用のギプスですよ。

飛雄馬の方は、失意のどん底に沈んでダメになっています。
梶原一騎先生のもう一つの代表作である「あしたのジョー」でしょう…あ、梶原作品にヒット作は多々ありますが超有名作をこの「巨人の星」ともう一作挙げるのならばやはり「あしたのジョー」でしょう、あれと重要なキャラが死んで絶望しきった所で第二部に突入する構成は共通しています。
ただし力石徹と日高美奈の作品における重要度と比例するように、ジョーほどは長々と苦しまずにライバルの花形満による鉄拳、それと地球の神秘を目の当たりにした事により立ち直った飛雄馬!

再起して猛特訓の末に再び一軍に戻った飛雄馬ですが、見えないスイングを完成させたオズマ(その後ろに一徹)との対決である方法により魔球・大リーグボール1号が完全に打ち込まれてしまいました…
今度は野球の方でも息の根を止められるほどやられた飛雄馬。しかし諸々あって持ち直し、次の魔球・大リーグボール2号の完成に着手するのです。まず最初の魔球が1号と付いている以上、続きがあるのは誰にも想像出来ますよね。
そして同時に分かってくるのは、特訓して新しい魔球を完成させては対決し、いつかは破られる日が来てまた特訓に戻り次の魔球を…のループが続く事ですね。正に少年漫画のセオリー通りの手法ですが、大筋はマンネリ化しているようでも優れたプロットで様々な要素を絡めて緊張感を維持していて、どの巻も目が離せません。

で、ようやく完成した大リーグボール2号というのは正に奇跡、消える魔球です!
これはさすがのオズマも手が出ずに飛雄馬は復讐を果たしましたが、プロ野球は一発勝負ではないので結局また研究されるんですよね。ましてオズマ陣営には球鬼・一徹が付いているわけで。
ちなみにこの一徹が、自らの夢として鍛えた息子の飛雄馬と全力で敵対している真意は、やはり飛雄馬が完全な野球人として成長するためのものでした。見事父を乗り越えれば、その時こそ王者巨人の星座にあってひときわでっかい明星になれる、と。背番号84なのも、背番号16を持つ飛雄馬が父を飲み込めば足し算で100、すなわち完全にると。
…おっと、無理矢理鍛えられていた子供時代の回想で、毎朝のランニングコースが工事で通行止めだったために近道を走って帰ると殴る蹴るの暴行を加えられて血まみれで倒れるエピソードがあります。
『つらい苦しい遠まわりをえらんでこそ おのずと成長がある』という理屈を教えるためだったのですが、子供に対してぶったおれても蹴りまくるこの描写は、確かに虐待だ。この環境でも飛雄馬は卑屈になったりグレたりせず、誰よりも善人で成長した事が大リーグボール並に凄い!

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あっという間に終わった飛雄馬の恋愛の代わり…というわけでもないでしょうが何と、男達の影で健気に存在していた姉の明子。彼女がバイト先のガソリンスタンドで花形に出会って惚れられ、同時に飛雄馬の親友にして捕手の伴宙太からも!!
祝福しつつも奇跡の魔球で花形を倒せば必ず彼は男の勝負を選んで明子には目もくれなくなる事を心配し、それでも必ず自分の野球と姉の青春を両立させる事を誓う飛雄馬。
明子が花形と伴のどちらを選ぶのか…それは今作では決着が付かないのですが、後に出る続編で答えが出ます。

KC15巻の途中からは、『第三部 青春群像編』に突入。
「巨人の星」は実在の選手も絡めて物語にリアリティを出している作品ですが、最後は巨人軍にいた日本一の大投手金田正一の引退。当時のファン達にとって大ショックだったであろうこの件が長々とページ使って描かれます。

それから次のシーズンを前に、アメリカのセントルイス・カージナルスへオズマを返さなければならなくなった中日ドラゴンズ。
星一徹コーチが次に狙った選手は何と飛雄馬と同じ巨人軍、というか無二の親友である伴宙太。様々な陰謀が渦巻く中で伴を本当にトレードで手に入れるのです!
さらに一徹、大リーグボール2号を打つために六甲山中の雪の中で特訓する花形、同じく九十九里浜の海辺で特訓する左門豊作を尾行してこっそりその様子を覗いてますが、行動範囲広すぎ。

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大リーグボール2号は打たれるまでかなり長い時間をかけています。球が消える秘密も少しずつ小出しにして読者に推理させる楽しみもあったみたいですね。「巨人の星」は魔球が変化するメカニズムを、まぁ非現実的でもきちんと説明するのも良い。
やはりタネがばれて打たれる日も来ます。飛雄馬と伴の親友対決は盛り上がりましたが、ここはギリギリ飛雄馬の勝ちで終わりました。大リーグボール2号に完勝したのは次の阪神タイガース戦、つまり花形満でした。
毎度全力の命がけで戦っているだけに、この魔球が打たれてボロボロになって勝手にマウンドをおりて戦線離脱。自ら『寸たらずの非力なチビ』とまで言う飛雄馬の体型では速球で真っ向勝負が出来ない理由付けされていましたが、ここで大リーグボール1号だの2号だのは野球の邪道だ堕落だとまで、これまた自ら言っちゃってます。

そんな状態で左門が新宿の"竜巻グループ"なるズベ公達にからまれているのに遭遇したため助けるのですが、この集団の女番長・京子が飛雄馬に惚れて、左門が京子に惚れる三角関係も巻き起こります。
そこから新宿の暴力組織の中でも親分の中の大親分である鬼怒川組の組長と対面しての暴力沙汰へ。梶原一騎作品はほとんどヤクザが絡むのですが、この日本一有名な野球漫画でもそうなのでした。
少年の日を思い出してあの長屋に戻ってみたら、新しくスーパーマーケットを建てるとかで取り壊されていてまたショックを受けるし…

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が、飛雄馬はとにかくあるヒントから再起を図り、大リーグボール3号が誕生しました。今度はアンダースローで、何とバットをよける魔球!
この作品は後半になるにつれセリフや説明がくどくどと長くなってきまして、もちろんこの魔球の原理も明かされますが、これは投げると左腕の前腕部を酷使してボロボロになり、さらに続ければ『ビシッと音がして』左腕の指は永久に動かなくなると言われます。それでも投げ続け…『死ぬときは たとえどぶの中でも前のめりに死にたい』の、あの言葉通りに飛雄馬は戦うのでした。

連載期間約5年、単行本は全19巻に及んだ「巨人の星」最後の試合は巨人VS中日戦。つまり星飛雄馬VS星一徹(&伴宙太)。
あまりにも強大な敵が大リーグボール3号打倒の策も用意していますが、見事に勝利、しかも初のパーフェクトゲームを達成という快挙を成し遂げました。
しかし巨人軍を優勝させた張本人である飛雄馬は左腕を完全に破壊させました。「巨人の星」で描かれる野球という物は、そこらの格闘技なんかよりもはるかに厳しい道・苦行なので、まだ10代にして野球は出来ない体になって自ら姿を消すのでした…
星親子の勝負は終わった、そして巨人の星を掴んだ、という事だけを見たらハッピーエンドなのに、あまりにも暗いこのラストは見物です。

この作品が日本漫画史上でも有数の名作になったのは、作画を担当した川崎のぼる先生の力も大きいでしょう。
私は何十回も読んで分かりきった内容ながら大好きな川崎絵が見れるだけでこの本を開く事が多々ありますが、いい味出してますねー、ホント。連載終了から40年以上が経ってなおそこら中で「巨人の星」の絵を目にするのも、魅力が溢れているからでしょう。現在ではパロディの対象として扱われる事ばかりですが…たとえ古臭いと思われていても、人々が見て何も思わない絵だったら高い金出してテレビCMなどで使うわけがありません。
その川崎のぼる先生が梶原一騎原作と組んだのは、他にこの続編である「新・巨人の星」、既に紹介した「男の条件」「花も嵐も」、それから1966年の「大魔鯨」、1967年の「白い魔神」と、合計6作品もあります。どれも面白いのですが、「巨人の星」一本しかヒットしなかったのは残念でなりません。

これだけの有名作なので関連本・研究本の類も多々出ています。
例えば河崎実と重いコンダラ友の会著の「「巨人の星」の謎」や、堀井憲一郎著の「『巨人の星』に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ。」(共に講談社刊)。
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最後はこれ、小川雅也「巨人の星伝説 星一徹と50の名言」(読売新聞社刊)を載せておきましょう。
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これは星一徹の名言集という体裁を取りながら、『巨人の星第一世代』だという著者自身の記憶・思い出を基にした時代考察や現代社会批判などが繰り広げられて…けっこうな活字量だし難しめの表現で、購入した1997年の発売当時はポカーンとなった覚えがあります。


はてしなき 戦いあるのみ!
栄光のあとにも! 敗北のあとにも!
人の生きるかぎり なんらの差別なく
戦いあるのみ!



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  1. 2013/06/17(月) 23:59:59|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

素晴らしい!

お久しぶりであります。最近は石ノ森章太郎、梶原一騎と、私好みのラインナップが続いてますね。感謝、感謝です!ずっと読ませてもらってます!

「巨人の星」は、2003年に講談社から発行された『ジョー&飛雄馬』で全ストーリーを初めて知りました。私みたいな人間も多いかも。マガジン連載中は付録がついた「まんが王」「冒険王」等にまだ執心でした(笑)。小学生だったので。「巨人の星」KC版は高校生になって最終巻だけ買いました。最後の一徹に抱かれた?飛雄馬の笑顔がなんとも言えませんでした…。
  1. 2013/06/18(火) 11:18:44 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>秀和さま

…恐縮でございます。

しかし秀和さまほどの、当時からの漫画読者が2003年までこの「巨人の星」を読まれていなかったという事に驚きましたよ。

周りの話題は漫画といえば正にジョー&飛雄馬だったでしょうに、「まんが王」「冒険王」等にこだわりぬいたのは凄すぎますが。
初めての人はもちろん、もう一度当時の読者に読み返しさせた点でも、『ジョー&飛雄馬』の企画は良かったですね。私も単行本で穴があくほど読んだ2作ながら、大判で読めるので楽しんでました。フィギュアプレゼントでゲットしたりもしましたし。

次は、「巨人の星」続編やリメイク作などを紹介していきますね。
  1. 2013/06/18(火) 23:08:25 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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